XMU-05の開発再開


本機もテムジン同様、XMUプロジェクト時に既にXMU-05の開発コードのもと
開発計画が始動していたが、諸般の事情で中断されていた。
V-プロジェクトで開発再開が決定したときは、当初のコンセプト通り火力支援用とされていたので
機動性能についてはテムジンに比べてさほど厳しい要求は無かった。
このため、スケルトンの構造様式は既存の技術レベルの範囲内で手堅くまとめられていった。
機体の基本設計はテムジンよりも順調に進み、V-プロジェクト下での
試作1号機(XAV-05-t01)の完成は、実はテムジンよりも早かったのである。
その後行われた試作機の運動性能テストにおいても、
t01は支援機体としては十分以上の数値結果を出し、関係者は一様に満足した。


機体設計の変更


しかし、問題は搭載される主武装にあった。
当初搭載が予定されていた指向性弾芯内包型ビームランチャーが、期待されていたほどの攻撃力を発揮しなかったのである。
十分な火力が確保できなければ、支提機体としての存在価値は無い。
急遽代替火器が検討された。この時候補にあがったのが、艦載用の対艦レーザーAli-02aである。
Ali-02aは、短〜中射程に対応した攻撃用レーザーで、その威力は折り紙付きであった。
そこで、XAV-05-t01のスケルトンに必要最小限の改装を加えることによってこれを搭載できるようにすれば良い、
との見解が提出されたが、これは非常にナンセンスな話であった。
そもそも艦載用だったAli-02aは、「小型かつ高性能」をウリにしていたとはいえ、
それはあくまでも艦載兵器のそれとしての範疇の話であり、10数メートルの人型機動兵器、
という枠組み内ではあまりにも大型で重すぎた。
当時、0プラントの担当開発主任が発信した開発管理局へのメールには、以下のような内容が記載されている。
「・・・目先に安易な手段があるからといって、後先のことを考えずに飛びつくのは危険である。
XAV-05のような機動兵器に艦載用の装備を行うことは当初の予定にない。もし強引にこれを行おうとすれば、
機体構造の全面的見直しはもちろんのこと、駆動系、センサー系にも改修の必要性が生じることは火を見るよりも明かである。
上記箇所の再設計に要する人員、時間的コストは膨大なものになることは容易に想像できる。この件に関しては再検討の要請を行う。」

往々にしてあることだが、この場合も現場の人間の意向は無視され、t01にはAli-02aが搭載されることが決定してしまった。
そのため、t01の機構の一部を流用してAli-02a搭載を可能とする新機体、t02の設計が新たに行われることになった。
新規設計で問題になったのはAli-02aのマウントポジションである。
現実問題として、巨大なレーザー照射器が搭載可能なハードポイントは両肩郡のみであった。
もしAli-02aを両肩に装備することになれば、XAV-05は当初の予定を上回るトップヘビーの機体になり、
これは同機の機動性能に大きな制約を課すことになる。
結果、アビオニクス関係の全面見直しが並行して行われることとなった。
また、射撃統制システムも、t01のものはAli-02aには全く対応していなかったし、
Ali-02aのそれはXAV-05に搭載することなど前提とはしていなかったので、
これまた新たに作り起こすことになった。かようにしてやるベきことは膨大な量になったが、
開発スケジュール自体はt01開発時から変更されていなかったため、作業は殺人的なものになった。
この性急な開発体制は完全にコストを無視した乱暴なものであり、本機の生産性の最適化が考慮されることはなかった。
このことは、本樺の将来に重大な問題を投げかけることになる。


重戦闘VRの誕生


昼夜分かたず行われた突貫作業の末、驚異的な短期スケジュールで完成した試作2号機t02は、しかし脅威的な能力を示した。
とにかくAli-02rレーザー(Ali-02aは本機搭載用の仕様変更に伴い、型番がAli-02rに変更された。)の攻撃力が強大だったのである。
確かに機動性能、特に高速走行下での安定性能は低下したものの、火力支援型としては十分に許容できる範囲内であった。
t01譲りの歩行システムは元来大重量物の運搬に適していたし、新たに再構成された頑強なスケルトンシステムは
レーザー搭載による重量増加、そして各部のバラスト配分の大幅な切り替えに十分耐えた。
t01由来の手堅く、余裕ある基本設計の機体コンセプトは関係者の懸念を一掃したのである。

当初SAV-05(支援攻撃型)として制式化されるはずであったこの機体は、
しかし、予想を上回る完成度の高さから戦術区分も見直されて新たにHBV(重戦闘バーチャロイド)というコードが設定された。
こうして、XAV-05-t02は、制式コードHBV-05、「ライデン」という名称を与えられ、以後様々な伝説を生み出していくことになる。


生産状況


その後、第1回の生産予定は120機とされ、本機の行く末は順風満帆のように見えた。
ところが、予定生産分の予算が計上された時点で、関係者は我が目を疑うことになった。
性急な開発スケジュール下、それまでひた隠しにされてきたコスト面の問題がついに表面化したのだ。
ライデンの標準仕様機体を1機製作するのに必要な経費は、同レベルのテムジンの場合の実に21倍もの高額に達していたのである。
追い討ちをかけるように更なる問題が生じた。確かに試作機段階では、装備するレーザーは買い叩いたAli-02rでまかなっていた。
しかし、正規量産型ライデンについては、残存するTf社のラインを買収してDN社規格のものを生産し、これを装備していく方針であった。
ところが、この段階になって初めて、間題のTf社のプラントが既に別会社の手で改装されてしまっていることが判明したのである。
これでは、そもそもAli-02の即時生産など望むべくもない。もしAli-02の生産ラインを新たに設営するとなると、
ライデンの生産が開始できるのは、どんなに早くても最低5年以上は先のばしになる。
これでは、商品として十分な機体数がいつ揃うことになるのか、分かったものではない。
情報管理の素人的甘さから生じたこの事態は、最高幹部会をして激怒させた。
厳しい責任追及が行われた結果、0プラント内ではスタッフの大粛正が進行した。
結果、ライデンは(レーザー搭載にこだわる関り)MAX40機しか生産できないという物理的眼界が生じた。
しかも、その生産コストの馬鹿げた高さから、実際に作られた数は更に少なかった。
OMG直前の時点で試作機を含めて稼動可能なライデンは、わずか26機だったのである。


部隊編制の経緯〜独立特殊部隊としての運用


26機のライデン。「まるでお話にならない・・・・・・!」当時のDNAの一幹部をして、こう慨嘆させたのもうなずける状況であった。
いかに優秀な兵器といえども、十分な救が揃わなければ持てる力を発揮することはおぽつかない。
そして、能力の実証できない兵器には、商品としての成功など望めないのだ。
DNAは散々頭を悩ませた末に、ライデンを超高級兵器ブランドとして印象づけ、
限定商品としての価値をアピールしていく方向性を打ち出した。
このため、DNA内での運用や組織編成には細心の注意が払われた。
特にパイロットに関しては、当時既に配備が進んでいたMBV-04を基幹とするVR部隊より、
搭乗時間、練磨、適性憶に関して規定値をクリアしている者が抽出された。
これは、要するに「引き抜き」であり、部隊間では何がしかの軋轢が生じたが、構わず強行された。
また、技術要員としてプラントのスタッフが10数人ほど派遣され、部隊の赴くところ必ず同行することになった。
彼らは、この貴重なVRの行動、状況、戦果を常に記録、チェックし、より適切な運用に関して研究を行った。
その機体数の乏しさから、ライデンの通常編成はまず不可能だった。そこで、DNAでは別の方向性が模索された。
1個小隊を2機で編成するとして、4個小隊をもって1個中隊とするならば、予備機体を考慮に入れると2個中隊の編成が可能である。
この2個中隊で1個大隊を構成し、独立部隊として運用するという線が選択されたのである。


伝説の源


「・・・ライデンは、希少性とコスト面の根本的欠陥によって、今後とも、その存在意義を正当化させる必要が生じる。
その際、運用面での特殊性が強調され、本機の存在は必要以上にアピールされ得る。
往々にして本機の本質とは性格を異にした虚像が演出されることもありえる。」

これは、重戦闘VR大隊の構成員全員に配布された教本の後半に記された総括訓辞である。
量産がかなわぬことが判明した段階で、ライデン商品化の是非についてはDN社内でも意見が割れていた。
そのため、大隊は自らの存在の正当性を勝ち取るペく、意識を共有する必要があったのである。
訓辞は続く。「・・・ライデンは決して最強の兵器ではない。しかし、決して扱いにくい機体でもない。
我々はこれを使用して戦闘に勝たねばならない。我々のライデンは、我々が扱うことによって初
めて最強となる。また、そうあらねばならない。
それが、商品としてのライデンを成功させる唯一の道である」
・・・この、愚直なまでの喜撃な決意こそが、
その後のライデンの奇跡的奮戦として描かれる戦闘行動を生み出す原動力たりえた。
そして、まさにこの一点ゆえに、彼らの駆るライデンは無敵VRとして伝説化されていくことになる。



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