典子 2
その頃離婚なんてよっぽどの事だったから、
離婚してまで実家に残るなんて
とんでもなくてね。
結局私主人についていったの。
関西に行ってからの生活ははっきり言って
愚痴を言っている暇はなかったな。
始めての二人暮し。
家の中を全部自分がし切って
主人は全く知らない土地での会社設立。
もちろん経費に余裕なんてないから
経理と細かい雑用は私に回ってきた。
新参者が始めたこんな小さな会社に来る地元の人間なんて
よっぽど職がなくて困っている人間か、
なんだか胡散臭い人ばかりで 怖かったわ。
そしてそんな中で私、妊娠したの。
双子の女の子でね。
だから重くて当たり前だったんだけど
妊娠している時は二人も入っているなんて思わなくて
体が重くてつらくて。
せつないと思っていても、
雑用とは言え、
会社の仕事は一日休んだらどうしようもないくらい
たまって行くし。
あぁ、これは今思うと、自分も始めてで
かなり要領が悪かったんだけど。
それに昼夜なく働いている主人を見ていたら、
自分だけ、体がつらいので実家に帰りますなんて
言えなくて。
結局子供が生まれたその時に
実家から母が二週間ほど来てくれただけで
私妊娠も出産も全部そこでしたの。
あの頃は確かに大変だったけれど
そんな事考える余裕がないくらい、
毎日毎日動いているので精一杯。
大変だ、なんて泣いてなんかいられなかった。
出てきた子供が二人だとわかって、
私は事務所に席をおく事はなくなったけど
でも一日の終わりに経理の確認をするのは
相変わらず私の仕事。
帳簿をつける人間を雇ったのだから
私は会社に関わらなくてもと思いもしたけれど
今になって思うとそれを私に任せてくれたのが
主人が私にしてくれた最高の事なのじゃないかしら?
+++++++++
もちろん喧嘩もしたし、嫌な事もあったけれど
荒荒しいと思っていた従業員さん達も
話してみれば悪い人じゃなかったし、
ゆっくりながらも仕事は結果になってかえって来たから
やり甲斐があった。
子供が小学校を卒業する前には
従業員さんと呼んでいた人達が
何時のまにか社員さんに変わって、
人数が50人以上にも増えて…。
そう、家を建てたのもあの頃だったわねえ。
それからは
五人兄弟の末っ子だった主人を頼って、
一番上のお義姉さん夫婦と、
3番目のお義兄さん夫婦が
いっしょに仕事をするようになり、
本当に、主人は一国一城の主になったんでしょうね。
お正月なんかも、集まるのは我が家。
兄弟も3人集まれば、子供の数もそれなりで
にぎやかで、
それはそれは楽しかったわ。
そして、はっきり言ってしまえば
末っ子である主人が
何時だって集まりの先頭に
いるのが誇らしかったな。
主人は、お義姉さんには、仕事で忙しかったお義母さんに代わって
小さい頃から世話をしてもらったという義理があったし、
お義兄さんは勝手に家を出て好きな事をしている主人を
何時もかばってくれていたのだそう。
そんな経緯を聞かされて、小さくなる私に
いま世話になっているのは自分達だからと
彼等は私にとてもよくしてくれたの。
そうして、家のローンも、
思っていたよりずっと早く払い終わって、
お義兄さんが仕事の経営の方にも携わってくれるように
なって、
少しは主人も楽になるかと思ったけど、
やっぱりね。
主人の仕事ぶりは相変わらず。
家も大きくなって、自分の仕事部屋も作ったけど
家に居る事はほとんどなくて
やはり会社を起こした頃と変わらず忙しかったわ。
それはそれで、主人はそう言う人と諦めがついていたけど
そんな中、お義父様が亡くなって
九州で一人暮しをしていたお義母様が倒れたという知らせが入ったの。
++++++++++
症状自体は対したものじゃなかったの。
実際検査も含めて2週間くらいで退院できたし。
でもお義母さんは、倒れてしまった事で
すっかり気が弱くなってしまって
九州に残っていた長男夫婦と同居を始めたの。
2年と持たなかったわぁ。
長男のお嫁さんは、彼より13も年下で
もちろん私よりも年下。
そんな彼女は甘え上手のかわいい人だったけれど
お義母さんと同じくらい気が強くてね。
その上、潔癖症じゃないか?って言うくらい
きれい好きで
一日中掃除している人だったから とうとう、
お義母さんの方が絶えられなくなってしまったみたい。
信じられない事に
結婚以来孫の顔だって見に来なかった人が
あっさり身の回りを整理して
こっちに来ると言った時は 正直驚いたわ。
私?
もちろん引き取りたくなんか無かったわ。
前に言ったでしょ?
結婚式の前にこの姑とあっていたら
結婚を止めたかもしれないって言うくらい
強烈な人だって。
こっちにも、もちろんお義兄さんだって、お義姉さんだっていたけれど
そこはね。
お義姉さんは引き取っても良かったみたいだけど
お義姉さんの御主人とお義母さんが合わないのは目に見えていたし。
お義兄さんも引き取るとは言ってくれたけど
立場上、自分が引き取ると言ったのは
やはり主人だったわ。
事実その頃、お義母さんが来て部屋を用意できるだけの
余裕がある家に住んでいたのは私達だけだったし。
と言うわけで、1階の和室に急遽
お義父さん用の仏壇を作って、
その部屋をお義母さんに使ってもらうことにしたの。
出来ればお義姉さんと一緒に住みたかったお義母さん。
暇さえあれば、お義姉さんの所に泊まりにに行きたがるのが
実際、どんな噂話をされているんだろうと
気になりはしたけれど、
(だって、そこは女同士。私となんだか気まずくなると
泊まりにいくのは当たり前になっていたんだもの)
後は、一緒に住んで見れば
子供たちには良くしてくれたし、
子供達も始めて接する祖母に懐いてくれて
まあまあ、なんとか暮らして行けてたわね。
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