やんちゃ坊主
シニアの離婚って一体何が原因なのでしょう?
夫への長年の不満。
妻の怒り爆発…
そんなところが私の印象なのですけれど、
皆さんはどう思いますか?
この間知り合いのご夫婦が離婚しました。
夫63歳、妻60歳。41年連れ添った後の決断です。
原因はなんだったのでしょう?
スコットランド系アメリカ人のダンナ様は
ケンタッキーのカーネルサンダースを思わせる
いつまでたってもやんちゃ坊主なおじいさん。
奥様は中国系シンガポール人のとても小柄な人なのに、
怒ると倍以上の体格のダンナ様まで小さくなっちゃう
きっちりかっきりの仕切り屋さん。
傍目にもとってもお似合いだったんですよ。
やんちゃ坊主さんは言います。
一人っ子ですでに両親もいない私は大家族の妻の実家が大好きなんだ。
仕切り屋さんは言います。
いつもいつも実家に来ては姪っ子甥っ子に大判振る舞い。
彼の子供好きにも参っちゃうわ。
でも子供たちは成長するに連れ、次第にサンタクロースの到来よりも、
仲間とのパーティで頭が一杯になります。
ハイ、アンクル。久しぶりだね。元気だった?それじゃあ、また。
一通りの挨拶のあと、
彼を置いて子供達は次々に大切にしている
自分達の世界へと飛び出して行くのです。
マリもその中の一人でした。
赤ん坊の頃はよくアンクルの肩に乗って散歩し、
あごの髭を引っ張ってはアンクルを困らせたものでしたが、
今ではもう、友達とボーイフレンドの話をし、
パーティに何を着ていったらよいか、
そんな事に夢中になる年頃です。
でも、彼女が他の子供達と違ったのは、
手持ち無沙汰にしているアンクルを見つけると
パーティのこと、友達のこと、両親のことを、
(ボーイフレンドのことは内緒だったけど)
つたない彼の国の言葉で一生懸命伝えたのです。
やんちゃ坊主さんはいいます。
友達が欲しかったんだ。心からの友達がね。
親に束縛されて育ち、常に生活に追われていた私には
今まで心の友と呼べる者がいなかったんだ。
し切り屋さんはいいます。
ハニー、あなたには私がいるじゃない。私はあなたの一番の友達だわ。
彼女をそうインポータントにしないで。
電話、メール、バースディプレゼントの交換。
し切り屋さんの気持ちをよそに
マリとやんちゃ坊主さんの友情はどんどん深まります。
「マリに小さな車をプレゼントしたいんだ。
あの大学までの通学は
女の子には厳しいからね」
やんちゃ坊主さんはそんなことを言います。
「あら、良いアイディアね。でも他の子供たちのことも考えてみて?
マリにだけプレゼントするのは、後々よくないことじゃないかしら?」
仕切屋さんはやさしく意見しますが、
かえってやんちゃ坊主さんの機嫌を損ねます。
「友達にプレゼントするのに、なぜ他の子供の事まで
考えなきゃ行けないんだ」
「それはあなたが平等に彼らにとっての叔父だからだわ」
「違うね。他の子供たちは自分の事に忙しくて私の方になんか
見向きもしない。
マリは何でも話す、他の子とは違った
私の友達だよ」
そんなやり取りから始まった二人の大喧嘩。
騒ぎが大きくなったので、私たちが止めに入ります。
そして車の件はマリの両親が
「マリには早すぎる」と断ったので
話は立ち消えたのですが…。
天気の良い午後。やんちゃ坊主さんは自宅のテラスに椅子を引っ張り
出してきて本を読んでいます。
ちょっと蒸し暑い今日のような日は冷たいレモネードが最高。
私は自分の分と二杯のレモネードを用意して
やんちゃ坊主さんに話し掛けました。
「一緒に座っても良い?」
私はやんちゃ坊主さんに聞いてみました。
「マリを愛しているの?」
彼は笑って言いました。
「ああ、愛しているとも。大切な友達だからね。」
どうやら彼には、大切な友達が必要みたい。
お互いの事を何でも話し合える、親友と呼ばれる友達が。
「し切り屋さんは、あなたの大切な友達にはなれないの?
あなたをとても愛しているのよ」
「もちろん僕だって愛しているさ。僕の一番大切な人だもの。でもね…。」
彼女は人生を一緒に戦って来た戦友みたいなものだ。
戦友と友達は違うんだ。
彼女とは何でもわかり合っている。
世界で一番気の知れた相手だよ。
でもね。だからこそ言えない事もあるんだ。
結婚して今まで、私は彼女だけだった。
もちろん私だって男だから、間違いを犯す事もあった。
それでも私が愛しているのは彼女だけだったんだよ。
人生ももう定年を迎える時期だ。
これからの人生に、戦友ではない心の友を作りたいと思う事は
そんなに行けない事なのだろうか?
そう言って彼は結局、自分の気持ちを理解してくれない妻と離婚します。
それまで一緒に戦ってきた“戦友”と戦利品である
財産や子供達を自ら放棄したのです。
それは彼にとって今までの人生を否定するにも値することなのに、
そうしてでも彼は友達が欲しかった。
残念ながら、私はし切り屋さんの気持ちを聞くことは出来なかったけれど、
彼女は私に
「彼の気持ちを理解したから、離婚するしかなかったの」
と話してくれました。
???
どちらの気持ちもよくわからない。
ただ私は、二人はまだ愛し合っているのではないのかなあと思えてなりません。
それでも離婚する二人。
シニアの気持ちを理解するには、もっともっと経験が必要なようです。
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