加奈子

「じゃあ、今度の日曜、ここに行って見る?」

それが事実上のプロポーズの言葉だったような気がするわ、
と加奈子は言います。
付き合って5年、お互いの家族からも公認。
お互いの家に遊びに行って、
遅くなれば当たり前のことのように泊まっていくことをすすめる両親達。

テレビで、結婚式場が集まったエキシビジョンのニュースをやっています。
それを一緒に見るとでもなく見ていた孝の母親が
「こう言うところで申し込むとサービスがついて結構お徳らしいわよ」
と言った言葉を受けて、孝が
「じゃあ、今度の日曜、ここに行って見る?」 そう言ったのでした。

その日から話はとんとん拍子に進み、加奈子は五ヶ月後 孝の元に嫁ぎ、
彼の実家での結婚生活をスタートさせました。
「同居がいやなんて思いもしなかったなあ」 加奈子はそう言います。
「もともと家事は得意ではなかったし、
仕事から疲れて帰ってきて 食事の用意が出来ているのはありがたかったもの」
舅姑共に、結婚前から良くしてくれ、結婚後は本当の家族のように 接してくれました。
孝の帰りが遅い夜、姑と、夫であり息子である孝の悪口に花が咲き、
舅が懸命に「男の言い訳」をする。
二人に加奈子を他人とする様子は全く無く、
二人のそんな自然な態度がとてもうれしかったと話してくれました。

そんな孝との結婚生活も5年目ともなると、
まだ若いから、仕事が面白いからと避けてきた出産問題も、
そろそろ避けがたくなってきます。
そして、何より加奈子自身が「子供を産みたい」と思うようになって来たのでした。

「ねえ、そろそろ子供欲しくない?」
そんな彼女の言葉に対して
「そうだなあ、子供もなあ」 と、あまりハッキリしない返事を返す孝。
でも、もともと口数が少ない孝のことだから、
それがやんわりとした否定の言葉であったとは、加奈子は気がつきませんでした。
いつもと同じようにベッドに入って、いつもと同じように体を合わせます。
そして、いつもの同じ慎重なまでの避妊。
それが3回ほども続いた時、 加奈子は我慢が出来なくなって、聞いてみました。
「今日は、避妊しなくてもいいでしょう?」
なにも答えない孝。
でも、そののち加奈子に触れていた手は止まり、 体を起こしてベッドの端に座ります。
「もしかして、子供欲しくないの?」
認めたくなくて、言いたくなかった言葉を口に出します。
「そうじゃないけど…」
遊びにくる兄弟の子供をかわいがる姿は、子供好きとしか思えないけれど、
実際に今の彼の態度は、そうとは思えない。
自分の子供は、作ろうとしてはいない。
孝は言いました。

「そうじゃ、ないけど…作っちゃ行けないんだよ」

加奈子は孝の言う意味がわかりませんでした。
「作っちゃ行けないってどう言う事?」
「まだ俺達には早いだろ?」
「もう5年だよ。私達よりわかい両親だって沢山いるじゃない」
「価値観の問題だよ。「俺達」にはまだ早いって事さ」
布団をかぶる孝。
狸寝入りだとはわかっているけれど、 それ以上はなにも聞けませんでした。
今の孝になにを聞いても答えてはくれない。
この10年、喧嘩無しに過ごしてきたわけではありません。
それまでの経験からわかり切ったことだもの。

そんなことがあった後でも寝室での会話が弾めば体を合わせることもあります。
それでも孝はかたくなに避妊の態度を変えません。
当初、加奈子にとって子供は切実に欲しいと言うものではありませんでした。
弱いものへの愛情、子供特有のミルクの匂い、
淡いピンクやブルーの おもちゃのように小さい産着や靴下。
そう言うものにあこがれる気持ちの延長であったはずなのに、
特に今すぐでなくては行けない訳ではなかったはずなのに、
駄目だと否定されれば余計欲しくなるのが、誰でも持つ感情。

しつこく子供を迫る加奈子に対して、
孝は次第に彼女の体に 触れることさえしなくなりました。
二人の異変に気がつく両親はさりげなく加奈子に伺いを立てます。
言葉を濁す嫁に、理由がはっきりわからないまま、
うまく行っていないことだけは 確信する人生の先輩たち。
その行動が裏目に出るとは考えもせずに息子を責めるのでした。

「このままじゃ、駄目になっちゃうよ。大丈夫?」
久しぶりに加奈子の会社の近くでランチを共にしました。
彼女は、このところ孝はまともに家に帰ってきさえしないと ため息まじりです。
「はっきり聞いちゃうけれど、不倫なんて事は、ないの?」
わからない…そう言って首を振る加奈子。
彼女には言えなかったけれど、事情を知る口の悪い友達は
「外にいる女の人にきっと子供もいるのよ。 だから、奥さんとは別れない代わりに
子供は生まないで! なんて言われてるんじゃない?」
そんなことまで言っています。

そのくらい孝の「産んじゃ行けないんだ」と言う一言は衝撃的でした。

「私もわかってるんだ。ちゃんと孝と話をしなくちゃ行けないって」
「…そうだね。早ければ早いほど良いと思うよ」
私の顔を見て疲れたように笑う加奈子は、
そうだね、今夜辺りにでも聞いてみる。そう言って 会社へ戻っていきました。
その日、
「今日は帰ってきて欲しい」と言う加奈子の電話を受け
孝は11時過ぎに帰宅したそうです。
もう、両親は自室にこもっている時間。
もう寝ているのかもしれませんが、彼らは最近の孝の態度にあきれ果て
わざわざ出てきてお小言を言う事さえしなくなっていました。
夫婦の寝室に入る孝。
開口一番

「離婚して欲しい」

そう言いました。
見せ掛けだけで、頭になぞ何も入っていなかった本が
加奈子の手から落ちます。

「好きな人がいるの?」

話そうと考えていた言葉は全部吹っ飛び、加奈子の口から出てきた言葉は それだけでした。

「そんな人はいない」
「じゃあ、何故別れなきゃ行けないの?」
「それは…」
何も言い返さない孝に加奈子は悲しく言い返しました。
「別れようと思っているんだもの、別に隠さなくても良いじゃない」
「夫婦が別れる理由なんて、別に不倫だけじゃないだろ」
…二人の会話を後になって聞いた私は聞きました。
良くそれだけ冷静に話し合えたね、と。
加奈子は言います。
普通に考えたら女の人を疑うのでしょうけどね。
本当の事言うと、巧達にそう聞かれても、それはないと思っていたの。
彼が真面目だからだけじゃなくて、なんて言うのかな〜…
彼は本当に以前と何も変わらない彼だったから。
そうなのかな。
でもやっぱりあなたは冷静だわ。
私は、私も含めて離婚を切り出された女と言うのは
当然のように取り乱してヒステリックに騒ぐものだと思っていたから。

女もない。
特別なことは何もない。
ないない尽くしの孝。

そんな彼の「離婚」の理由はどこからくるのか?
それが知りたくて、加奈子は質問をしているような、
それでいて 自分の話をしているような、穏やかな口調で孝に話しかけます。
(とは、加奈子の言い分。その時の彼女がどんな様子であったかは
孝しか知らないことだけれど)
そんな話振りに引き込まれたのか、孝も次第に自分の話をし始めました。

「…結婚前から、もう、いわゆる恋愛感情なんてなかったんだ」

「親は君のことを気に入っているし、結婚するものだと思っていただろ」

「今更別れ様なんて言えなかったよ」

「本当言うと自分でもわからなかったんだよ。
自分が友達のような恋愛関係を築いているのか、
恋愛感情に似た友達関係なのか。だから余計に切り出せなかった」

結婚5年目の、この告白。
「悪かったって思ってるよ。でも、子供が欲しいって言われて
やっぱりこれは間違いだって、そう思ったんだ」
何も言えない加奈子。
孝はそのまま加奈子と同じ部屋で休むことに戸惑いを覚えたのか
リビングに行って休みます。
その日はそこまでがやっとの二人の会話でした。
それでも離婚することに納得の行かない加奈子は、
何度となく孝の時間に 会わせては話し合いをします。

この際子供はどうでも良くなっていました。
離婚と言う状況だけは避けたい。それが加奈子の願いです。
話す事は何もない。
二人の間に今までになかった険悪なムードが漂うになって 孝は、
もう一つ、新しい事実を教えてくれました。

「借金があるんだ。」

保証人になった友人が行方をくらましたのです。
総額で500万ちょっとでした。
想像もしていなかったことに最初は何も言えない加奈子。
彼は親にばれるのも時間の問題だろうと話しています。
彼のお給料では払いきれず、会社や彼の携帯にまで
催促の電話はかかってきていたのでした。

「でも、二人でがんばれば、返せない金額じゃないじゃない」

加奈子は、そう提案しました。

「それは、出来ない」
「どうして?遠慮することなんて何もないわ。夫婦じゃない」

500万と言う金額に驚きはしたものの 孝だって騙されたようなものですもの。
逆に、それが事の発端であるなら、
お金でかたがつくなら簡単じゃないか、 と加奈子はほっとしていました。
幸いお互いこの都市部に実家がある身、住むところには困りません。
自分たちで家を一軒買うことを考えたら500万なんて安い物です。

「そうじゃ、ないんだ」

孝としては、そう言えば加奈子が彼にあきれて離婚を決意して くれると思ったのでした。
このお金を君に払ってもらおうとは思っていないし、
そう言う意味で 君に話したんじゃない。
それとこれとは別だよ。
離婚したいと言う気持ちには変わりはないんだ。

彼の離婚の理由はあくまで恋愛感情の問題。
かたくなに孝の態度は変わらず、加奈子もまた、納得がいかず。
離婚が成立しないまま、少し時間をおこうと言うことで
加奈子は実家に戻って、両親との生活を始めました。

「ちょっと孝の事を忘れた生活をしてみたら?」

そんな私達の薦めもあって、加奈子は、イタリア語スクールに通い、
ずっと時間のせいにして取っていなかった車の免許も取得します。
もともと語学センスがあるのか、彼女のイタリア語は1年で驚くほど 上達し、
それはキャリアアップにまでつながるのですが、
残業や出張でどんなに仕事が忙しくなっても 彼女の頭から孝の事は離れません。

…きっかけは友達と遊びで寄った道端の占い師でした。
「あなたの結婚は一回きりだよ」
その言葉に孝を運命の人と確信した加奈子は、
当たると有名な占い師のところへ足を運びました。
「3年待ちなさい。3年待てば彼の心は和むから」
それか彼女への答えでした。

二人が別居を始めてもう2年になります。
相変わらず孝の離婚の意思は変わりません。
前述の口の悪い友人は 「女もいない、借金も返してやる。
そう言ってんのに 離婚したいなんて、アンタ、よっぽど嫌われてんだよ。
そこまでして嫌われてる男のそばにいたいかねえ」

そんな風に言われても、加奈子の心には響かないのか、
占い師の言葉を信じて彼女もまた離婚には応じていません。
彼女が孝の事が好きなことは痛いほどにわかります。
結婚と言う器にこだわってるだけなのではなく、
彼とのつながりを断ちたくないと言う強烈な意志は、
これもまた 愛情の一つなのだろうと思います。

孝に関しては…私は彼と親しいわけではないけれど
「出来る女」である彼女に安らげないのかなあなんて 感じていたりして。
自分より収入の多い妻に劣等感を感じるタイプではありませんが、
一緒に人生を切り開いて行く妻より、
そばにいて安心できる女性が良いのではないかなあ などと思ってしまうのです。

良く問題にされる、
お互いの両親との関係になんの問題がなくても
家庭の外に好きな相手が出来てしまったわけでなくても
経済的な問題が何もなくても、
うまく行かない事だってある。
孝の「恋愛感情のない結婚生活はいけない」と言うのも理解できる 気がするし、
反対に、恋愛感情を超えて関係を築いていくのが結婚生活と言う 気もするし。

う〜ん。
結婚て難しいのですね。
孝と加奈子は、これからどうなって行くのでしょうか?
1年後にまた、彼らに進展があれば、

その時にまた、お話したいと思います。  

 

back

給料前でお金がない・・ 生命保険の切り替えはココ 生命保険の切り替えはココ
[PR] | 店舗設計監視カメラESTA 申請トイプードル ブリーダー吉祥寺越谷豊洲本厚木中国SEO対策消費者金融車 買取テンプレート沖縄旅行免許合宿二輪引越しプレゼントゴルフ会員権留学レーシックマッサージFXアフィリエイトFXホームページ制作デイトレード海外現地情報ハワイ旅行タイバンコクハワイ レンタカーベスト ハワイ ホテル レーツバリ島Hawaii hotelsHawaii Activitiesbhhrハワイホテルテキスト広告
【運営会社「パラダイムシフト」サービス】 ハワイ現地オプショナルツアーリラックマ) - ビジネスクラス航空券 - 格安航空券(1) - 格安航空券(2) - 海外ホテル - 韓国旅行 - タイムシェア - ホテル 予約
無料ホームページ - 携帯ホームページ - 無料ホームページ作成 - レンタルサーバー - ブログ - ヴィラ - ハワイ コンドミニアム - バリ島 ホテル - プーケット ホテル - タイムシェア - 評判 - Timesell - 格安国際電話 - ホノルルマラソン - サイトパトロール - 誹謗中傷 - 宿泊料金比較 - デルタ 航空券 - 宿泊料金 比較