林さん

「既婚者のための恋愛術」
ご縁があって一緒になった人だもの。ずっと仲良くやっていきましょうよ。
それをコンセプトに今まで「夫婦」のことについて色々書いてきました。
セックスのこととか、男の、女の色気、とか。
でも、結婚している以上、「紙切れ一枚」でつながっている以上、
問題はワタシとダーリンの間だけ、にある訳では無いようです…。

++++++++++

この間、久しぶりに大学の友達とお茶を飲みました。
いっぱしのお姉さんのつもりだったけど、今思うと本当お子ちゃまだったわねえ。
そう言い合って、お互いに全然変わらないつもりでいる自分たちを
笑いながらの楽しい時間でした。
それなりに仲良くしてはいたものの、
大学を卒業してから 年末年始の挨拶さえ途切れ途切れだったさおりと久しぶりに会ったのは、
彼女の舅がきっかけです。

お舅さんが私の勤める会社にクライアントとしてやってきたのですが、
ひょんな事から私の卒業校を知り、 私と、自分の息子の嫁が大学の同じクラスだった
と言うことが判るまで そう時間はかかりませんでした。
「鎌田さんは、お変わりない?」  
一通りの近況報告と思い出話も済み、会話が途切れたところで、
半ば社交事例的にお舅さんのことを尋ねてみました。

「元気、元気。相変わらずよ。わかるでしょ。 あの性格!私の一番嫌いなオヤジのタイプ!!」

…「一番」のところをとても強調していいます。
「でも、同居でしょ。そんなに苦手なんじゃあ、大変じゃない?」
「適当にやってるわ。用事がなきゃ絶対居間になんかいかないし。」
よほど嫌いなのか…機関銃のようにお舅さんの愚痴をこぼして、
最後に、余裕のある自分の実家にマンションの頭金を出してくれるよう
せっついているのだと、笑いながら話してくれました。

まあ、ダンナ様とはうまくいっているようだし、
子供もお姑さんに見てもらっている彼女です。
お舅さんの愚痴が出るのも、それなりに家庭がうまく言っているからなんだろうと、
ほほえましく思いました。
そして、またねといつになるかわからない次の約束をして、
彼女と別れました。

++++++++++

次の日、会社へ行くと同僚の林さんが、朝一番に伝えてくれたのは…

「良と、別れたんです。」

え〜!! って、この間まで、あなた達結婚の話してたじゃない?!
はっきり言って驚きです。
結婚の約束をしていた二人は、お互いの両親も承諾済み、共同で新車を買い、
同居していた二人のアパートは、彼の実家までスープが冷めない処か、
スープが熱いまま届けられる距離であったのですから。

「何かあったの?」
そうですねえ…彼女は首をかしげて考えるようにしてから 「なにも」と、笑って答えてました。
私の婚約指輪がとてもお気にいりで、
二人そろって行きつけのジュエリーショップ を聞きに来たり、(行きつける程宝石なんて買いませんて)
結婚式場のパンフレットを沢山持って来ては、
私達の結婚式のエピソードを 楽しく聞いていた二人です。

私が、なんと答えようかと困った顔をしていると、
彼の将来に自信が持てなかったのだと、彼女は話してくれました。
確かに今の時代、大企業に勤めていると言うのは保障のひとつには
数えられないかもしれないけれど…。
特に彼のような専門分野を持つ人間は、
仮に独立したとしても十分にやっていけるのではないの?

「そう言う意味ではないんですね。彼の性格のことなんです。
このまま変わらない彼でいてくれるかどうか、自信がないんです」
私はあんぐりと口を開けてしまいました。
それはちょっと、あまりにも彼がかわいそうなんじゃない?
結婚する前から離婚を心配して、結婚しなかったようなものじゃないですか。

「そんな事まで考えていたら、誰も結婚なんてできないわよう! なに?彼と喧嘩でもしたの?」
結婚の話まで出ていた二人が別れたと聞いて、
理由を経済的なところに求めてしまった私。
そこは私が既婚者たる所以かもしれない。

よく考えてみれば、 と言うか、自分の独身だった頃を思い出してみれば、
これから一緒に未来を築いていこうと言う二人に金銭的な問題って
「二人で解決していける」
小さな問題に過ぎないんですね。
薬指に光る指輪をはめて、真っ白のドレスに身を包んだ自分の姿を
楽しそうに想像していた彼女が、それをあきらめる程に
「自信の持てなかった」彼の性格って…一体??

理由は彼のお父様でした。
理由もなく彼女達のアパートの周りをうろついてみたり、
(どうぞと言っても中には入らないそうです。かと言って散歩とも思われない。)
来客がある時にわざわざ掃除を始めてみたり。

自分たちと楽しく話していたかと思えば、
同じ席にいるお母様には癇癪を起こしたような話し方をする。
彼によると、昔はお母様に手を上げることもあったとか。
物を大事にする方ではあるけれど、
拾ってきたものを庭の隅に山積みにしておくのは、 衛生的に見てもあまり好いこととは思えない。 などなど。

まあ、趣味の良い行動とは言えないけれど、無くて七癖。
誰にだって、自分じゃ気がつかない行動ってあるんじゃない?
年寄りって、みんな多かれ少なかれ偏屈なところ、あるし。
それに、だからってそれは彼のことではないんだし…。
彼がいずれそうなるとは限らないでしょう?

「彼の行動や、言動の中にね、お父様の影が見えちゃうんですよね。」
彼の良いところだなあと思っていた彼の行動に、
彼の父親の行動が重なって見えた時、 以前は親子だなあ、似てるなあとしか思わなかったのが、
だんだん嫌悪感に変わっていきました。
つまり、将来的に彼がお父様のようになるような気がして、
そんな彼と暮らして行くことが限りなく不安だったそうです。

「ずいぶん悩んだんですよ。彼のこと、好きだし。
お互いの両親や親戚にも挨拶していたから、世間体も気にしちゃって。
でもね、結婚話が進めば進むほど、迷路に入り込んじゃった感じがして
怖いとは感じても、全然うれしくなかったんです。」

「後悔してないの?彼のことはまだ好きなんでしょう?」
私がそう聞くと、彼女はしてません、とはっきり答えてくれました。

「だって、私すっきりしたんです。結婚を止めて。
親や親戚、挙句の果てに近所のおじさんおばさんにまで 彼のことで散々責められました。
本当に自分がなにかものすごい罪を犯してるような気分に させられたこともありました。
でも、それでも嫌だって言う気持ちは変わらなかったんです。
親はまだなんだかんだ言ってますけど、私は結婚止めたらなんか軽くなれました。」

「そうか。」
私はそう言って笑って、彼女に同調しました。
私が言ってあげられる事は何もなさそう。
だって、彼女はそう言いながら、最近とんと見ることのなかった、
さわやかな笑顔であったのですから。

そうか、世間では、よく嫁姑問題なんて言うけれど、
本当の問題はそこにはないのかもしれないなあ。

あなたの嫌いなお舅さんも、あんなにうるさいお姑さんも、
しっかりがっちり確かに、あなたのダーリンと「血」と言うDNAによって
切っても切れない縁で結ばれているのですから。

舅の、姑の、あそこが嫌い!って言う処のDNAが
ダーリンには運良く組み込まれていないって保障はどこにもありません。
ダーリンはさておき、あいつは…なんて、ありえない話ですよ。

あなたは、ダーリンのご両親を愛せますか?

そう言えば、さおりもお舅さんの愚痴こぼしてたっけ…。
(覚えていますか?このお話の最初、No.9に出てきた私の同級生です。)

「あなたのダーリンはお舅さん似?」

何て、突然電話したら驚くわよねえ。
それとも、余計な忠告はやめて黙っていた方がいいかしら??

 

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