TORIPOLI
◆ケーキが名物
さらに北へ40km、トリポリ(3つの街)へ。ただし、6世紀の大地震で、3つあった街の1つは、海底に沈んでしまったそうだ。
ここは、お菓子が名物。新市街の菓子屋に立ちよる。ヘルワート・エル・ジブンというチーズ菓子のおすそわけにあずかった。甘いシロップをかけるらしいが、かけずに食べた。これも、おだやかな味で、おいしい。
ゴマをたっぷり振ってカリッと仕あげた、薄いクッキーをみやげに買った。さすが、「開け、ゴマ!」の世界。料理にもケーキにも、ゴマをたくさんつかう。
マムルーク朝の建物、ライオン塔を見る。入口のアーチにほどこされた簡潔な装飾が、こころよい。軍事施設の撮影は禁止だそうだが、建物のそばにおかれていた大砲が、どうしてもフレームにはいってきてしまう。
◆十字軍が180年にわたって支配
旧市街へ。ゴミのあふれるアブ・アリ川をはさんで、家々が乱雑に密集している。いたるところに、古いモスクやミナレットがある。
セント・ジル要塞にのぼる。十字軍ははじめてここに砦を築き、180年間こもった。4角い建物は、まるで金庫だ。これを奪還して、マムルークがつけ加えた、入口のデザインが新鮮に思える。
坂道をくだって、スークへ。アーチ門をくぐると、わきの古い小部屋で、小学校低学年の子どもたちが、パソコンにむかっていた。ちょっと意表をつく光景だ。
スークの路は狭く、魚市場みたいに、中央が深さ10cmばかり凹んでいる。商品を積んだリヤカーが、ひっきりなしに通る。香辛料の店から立ちのぼる匂いが強烈だ。名物のオリーブ石鹸の色もどぎつい。ひょいと曲がると、ハーン(隊商宿)がある。600年まえからつづくハンマーム(浴場)がある。
「トウキョウ? ナムアミダブツ、ナムアミダブツ」
北にきてトルコ系が多くなったのか、日本語の達者な少年がいる。そういえば、日本語も、トルコ語も、そしてシュメール語も、おなじ膠着語。
耳にも目にも鼻にも、喧騒と雑駁と珍奇がおしよせる。熟成した濃厚なシルクロードを満喫する。
あすは、ふたたびシリアへ。
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