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中東紀行 3つの大陸のつなぎ目を歩く 2000年5月

1日目

 

5月10日◆水曜日

アンマン→死海→アカバ

AMMAN死海へ

◆旧約聖書の世界へ

真夜中、1時10分、ヨルダンの首都アンマンの空港についた。空港から市内にむかう道。バスのヘッドライトのなかに、むこうからやってくる、30頭ほどの羊の群れが浮かんだ。すでに旧約聖書の世界だ。

市街にはいると、白い石垣が目についた。どの家も、ちよっとした家なら、白い石垣でかこってある。このあたりは石灰岩の山地が多い。そこから切りだされた石灰岩をつかった建造物が、夜目にも白く建ちならんでいる。

旧約聖書では、アンマンはラバ(大いなる川)という名ででてくる。街の北をヤボク川が流れている。古くから人が住んだのは、水のゆたかな土地だったからなのだろう。

古代ローマの時代には、この地方のローマ支配下にあった10の都市「デカポリス」の1つだった。フィラデルフィア(兄弟愛の街)とよばれていた。いかにも紛争地帯らしい、政治的な匂いのするネーミングだ。

◆各時代の遺跡が重層する城塞の丘

短い睡眠のあと、アンマン市内の高台ジュベル・アル・カラー(城塞の丘)にのぼった。乾いた白砂のうえに、真紅のポピーや濃紫のアザミが咲いている。半袖の腕に、太陽が痛い。寝不足の目に反射が、痛い。

ローマ時代のヘラクレス神殿跡があり、大きな柱が3本のこっている。見おろすと、下街にローマ劇場が見える。ふりかえると、国立考古学博物館のまえに、巨大なヘラクレス像の手の部分だけがのこっている。まず目にはいるのは、ローマ世界の風景だ。

しかし、この丘のうえには、ローマ文明の遺跡ばかりではなく、石器時代からイスラム時代までの遺跡が、重層している。ローマよりもはるかなむかしから人が住み、ローマからあとも街の中心となっていたのだ。

石灰岩を多用した白い遺跡。過剰な光の燦爛が、廃墟によく似あう。

丘をくだり、ローマ劇場を見て、死海にむかった。

 

標高0m

ここからまだ400mもくだったところに死海がある。アンマンとの標高差はなんと1,200m!
 
 
 
 

コラム 死海体験
奇妙な浮遊体験を味わった。死海の底のミネラルたっぷりの泥を、体にぬりつける泥んこパックは、1ドル。
 
 
 
 
 

シャラー山地

荒々しい山肌が、赤と緑に染めわけられている。鉄と銅がふくまれているそうだ。旧約聖書時代からの銅の産地。この風景が死海からアカバ湾までつづいている。

アンマンへDEAD SEAアカバへ

◆死海でなら、オレだって泳げる

アンマン市街をでて、バスは南にむかう。気づくと、いつのまにか樹木のない山の道を走っていた。アンマンは標高800mの高みにある。この高さから、バスはぐんぐん山坂をくだる。鼓膜の弱いカミさんは、気圧の変化に耳をおさえている。

とちゅう、まだ下がはるかにかすんで見える場所で、バスがとまった。標高0m。

まわりの白茶けた岩山からは信じられないような緑が、眼下に見えた。ヨルダン渓谷だ。いまは、この渓谷がヨルダンとイスラエルとを分断している。

ここから、さらに400mほどくだって、死海の岸についた。海は青い。岸は白い。まだ、とくべつの海だという実感はない。

ホテルにはいり、海辺の脱衣所で着がえて、海にはいる。水は生ぬるい。海底の石につまづきそうだ。

ヘソがちょっと沈んだところで、仰むけになる。浮かんだ! 沈みはしないが、ひっくりかえって、塩水を飲みそうだ。落ちつかない。体の平衡を保ちにくい。なんとか慣れたところで、この奇妙な浮遊体験がおわった。

◆モーゼがさまよった地を南へ

死海沿岸の道を南下する。岸は波に洗われ、塩で白くなっている。

南北に長い死海の中間点あたりで、東の峡谷から川が流れこむ。アルノン川。真水がそそいで塩分がうすいぶん、ここは死海でも泳ぎやすい場所だそうだ。

ひだりてに岩山、みぎてに死海。モーゼやキリストがさまよった世界だ。

この過酷な風土から、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の、3つの1神教が生まれた。多神教の日本の、放っておいても死にはしない、めぐまれた風土とのちがいを痛感する。

死海から1時間半。ひだりての山の裂け目をおくにすすむと、ワディー・ムーサ(モーゼの谷)があるという。山頂に白い建物があるのは、ホル山(またはアロン山)。モーゼの兄アロンが死んだとされる山だ。3日目に訪れるペトラ遺跡は、あの山のかなたにある。

ゴロゴロと石のころがる砂漠地帯。ひだりてに、樹木のないシャラー山地が延々とつづく。赤と緑に染めわけられた山肌。鉄と銅が採れるそうだ。この風景が、アカバまでつづく。死海からつづく地溝は、アカバ湾、紅海を経て、深くアフリカまで食いこんでいる。

夕刻、シュロの茂る港町アカバについた。
  

『3つの大陸のつなぎ目を歩く』 つぎは2日目。アラビアのロレンスの世界へ。

 

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