SHIRAZ
◆バラの国イラン、バラの園エラム庭園
この地で殉教したアリー・エブネ・ハムゼの廟にでかける。カミさんは、備えつけのヘジャブを着せられた。
ハムゼは、8代イマームのレザーの従兄弟にあたるという。シラーズには、その兄のアフマドの廟もある。兄弟ともに殉死したらしい。
建物の内部は、全面ガラス張り。万華鏡の派手さかと覚悟したが、あんがい水底の静けさがある。中央に霊廟がおかれている。そのすそにすがって、老人が祈っている。殉教者にたいして、千数百年の時をへだてて、いまも激しく共振する、イラン人の心の共鳴体とは、いったい何なのだろう。
市の西北にあるエラム庭園へ。エラムとは楽園の意。300種のバラが植えられている。バラはイランの国花。カジャール朝につくられ、いまは背後の丘のうえにある、シラーズ大学の付属庭園だ。
池をまえにして19世紀のエラム宮殿がある。外壁をかざる壁画の、宮廷の群像のなかに、シラーズ生まれの詩人ハーフェズが描かれている。
しばし散策を楽しんだ。鈴なりのカキの木があった。カキはともかく、なぜかイランの樹木は丈高い。
キャリム・ハーン要塞をひだりに見ながら、ショハダー広場をすぎ、バザール・ヴァキールへ。このバザールは、ヘビのように長い。しっぽだけで750mある。でっかい頭の部分は、長さ400m、太さ250m。頭のなかは、迷路だ。骨董・香辛料・宝石・細密画・絨毯・寄木細工など、あれこれ買い物に迷う、刺激に満ちた店が多い。
もちろん市民の日常生活のための品物もあふれている。それを見るのが楽しい。裏通りにナンをつくって売る店があった。昼近くで忙しいのに、ぼくのカメラにつきあってくれた。ナンを買ったじいさんが、包みをさしだしてきたのは、食べてみろということだったかもしれない。
ぼくたちはバザールのそばの、もとはハマムだったというレストランで、壷に煮込み料理をいれて供する伝統料理、アーブ・グーシュトを食べた。
歩いてナシル・アル・モスクへ。街の金持ちが寄進したモスクだという。屋上からシラーズの街を見た。山にかこまれ、青いモスクが点々。京都にかよう古都の風情だ。風にそよぐ林のような柱のあいだに坐り、ステンド・グラスからもれくる光の底で、しばし休憩をとった。
|