◆「エデンの園」や「ノアの洪水」の世界
単線の鉄道にそった道をそれて、土くれの山のあいだをはいると、遠くに台形の赤土の山が見えた。チョガザンビル(大きなカゴのような山)。
よく見ると、低い台地のうえに、日干しレンガでできた階段式の建造物がのっている。はじめてお目にかかる、ジッグラトだ。50mのいただきに神殿があったという。いまは日干しレンガが溶けて、半分の25mになっている。
ジッグラトは、世界最古のメソポタミア文明をひらいたシュメールにはじまる。シュメール人の領土は、「日の昇る地(エラム)」から「日の沈む地(シリア)」までだったという。エラムとは、チョガザンビルやスサなどをふくむ、まさに、この地域だ。
◆エラム人たちの時代
こんなに湿度が高いのに、このあたりは古くからほとんど雨がふらない。そして、夏は40℃を超える高温。だから、日干しレンガがつくれる。日干しレンガでまにあう。
川の水には、めぐまれている。トルコの山やイラン高地から水をあつめて、大河がペルシア湾にそそぐ。遺跡の近くを、カルン川にそそぐデズ川が流れている。
この高温多湿の、ゆたかな流域で、農業がうまれた。「エデンの園」をめぐって、民族がしのぎをけずった。ときに「ノアの洪水」が起こる。もともと天に祈るジッグラトは、洪水にも崩れない丘のうえに築かれる。こうしてジッグラトは、いまにのこることとなった。
このジッグラトは、前1250年ごろ、エラム王ウンタシュガルが建てたもの。イランには30のジッグラトがあり、これがもっとも保存がよく、もっとも大きいという。100m×100m。
日時計だという円形の塔がある。下水設備がある。夜、光を発する色レンガがある。リン鉱石を混ぜてあるのだとか。タイルの原形だともいわれる。遺跡は世界遺産になっている。
チョガザンビルからハフト・テペへ。ゆたかな水路が走る田園地帯に、エラムの墳墓がある。墓室をささえる日干しレンガは、世界最古のアーチだそうだ。チョガザンビルから1000年もむかしの、前2250年ごろの遺跡だ。
のちに旧約聖書に書かれることになる、「エデンの園」や「ノアの洪水」の物語が、こういう風土のなかで展開したのかと思うと、興味はつきない。
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