山内和宏研究



(その1)全盛期の山内和宏のイメージを求めて


 山内和は、1980年秋のドラフト1位指名を受けて南海に入った。入団時点で23歳だった山内和は、1年目に5勝、2年目に11勝し、3年目には18勝して最多勝を獲得した。この頃が彼の全盛期だった。が、管理人は全盛期の山内和をあまり知らない。テレビでよく見たのは、力が落ちた晩年の姿だった。果たして全盛期の彼がどのような特徴を持ったピッチャーだったのか、ここでは文献史料をもとに迫ってみたい。
 まず成績を見ると、18勝(10敗)の1983年には、249回2/3を投げて242安打、24被本塁打、99四球、110三振で、防御率は3.93である。投球回数はパ・リーグ1位、完投が16回で3位なので、タフなピッチャーだったことは間違いない。1982年にも223回1/3を投げているが、これもパ・リーグ1の投球回数である。山内和は1984年1月の合同自主トレで、1軍39人の5キロマラソンで1位になったというが、基礎体力が優れていたのだろう。
 また、勝ち星の割に防御率はあまりよくないが、これは完投が多く、リリーフ陣も頼りない南海では仕方ないことだったろう(ちなみにリーグ1の23完投で14勝の鈴木啓も、防御率は3.70とあまりよくなかった)。疲れても投げ続けるからで、この点を悪く言うのは意味がない。西武のように、ピンチで左の強打者が出てくれば永射に交代、その後を森繁が抑えてしまう立場とは違うのだから。
 さて、その投球だが、速球派だったことは間違いない。が、投球術も優れてたようである。例えば、1983年の西武VS巨人の日本シリーズで、西武打線の抑え方について、山内和、山内孝のように緩急をつけるのがコツだと解説した新聞がある(たしか『朝日新聞』)。『週刊ベースボール』1984年5月21日号でも、山内和はうまくチェンジアップを使っていると自ら説明している。
 しかし、この山内和の投球術について、ライバルとして対戦した落合博満は違った捉え方をしている。山内和は「針の穴をも通すコントロール」を持っており、「どんな打者でもすぐにカウント2−0に追い込んだ。ここから、力のない打者にはキレのいいストレートをドスンとほうり込んで終わりにする。選球眼が良かったり、当てるのがうまいタイプは、ボールになる変化球などを使って料理した。私のように一発のある主軸打者になると、さらに慎重になり、2−2くらいまでボール球を使いながら根くらべをしてきた」というのである(『プロフェッショナル』136頁)。落合は当初、早打ちをして凡退することが多かったが、1986年から待球戦法に切り替えて山内をカモにしたという。
 落合は、山内のコントロールのよさを強調するのだが、そのわりに四球が多い理由がなんとなくわかってくる。追い込みながら粘りすぎてしまうのだ。1983年にも9回平均で3.6個の四球を与え(山内孝は1.5個)、1984年にはこれが3.9個となっている。落合は、パワーのある打者にももっとズバリと攻めた方がよかった(「これが山内にとって最高の投球であると私は思っていた」(138頁))としているが、これは山内和が緩急を使いすぎるとの批判にもなろう。
 なお落合は、山内和が性格が優しく、「内角の使い方があまりにうまくなかった」とする(139頁)。管理人が知る限り、1987〜1988年になって、シュートを使うなど内角攻めにこだわりだした筈だが、あまり好みではなかったのだろうか。


(その2)山内和・社会人野球で大活躍

 山内和は1976年3月に浜名高を卒業し、駒沢大学に入学した。が、すぐに中退してアルバイト生活を続け、やがて社会人野球のリッカー(本社は東京)に進むことになった。その山内の投球が注目されるようになったのは、高校卒業後4年目(1979年)のことである。
 それまでの同チームのエース格は、崇徳高を春のセンバツ(1976年)で優勝に導いた黒田真二だった。黒田は山内の1学年下だったが、日ハムのドラフト1位指名を拒否し、社会人野球界を転々としていた(後に1982年オフにドラフト外でヤクルト入り)。この年の都市対抗・都一次予選(6月)でも、黒田が先発し、他の投手とのリレーで2試合を完封していた(山内も2戦目に登板)。が、二次予選の1回戦では、黒田が4回でKOされてしまった。この後を高橋章が繋ぎ、さらに山内は2回1/3を1安打無失点という見事な投球を見せた。この試合(東京ガス戦)は2対3で敗れ、リッカーは翌日の敗者復活戦に臨むことになった。この時も黒田から山内へのリレーになったが、最後に山内が連打を食らい、サヨナラスクイズでの敗戦となった。
 それでもこの頃から山内の躍進は著しかった。黒田が肩を痛めたこともあり、9月の社会人選手権の予選では山内がエース格となっていた。都予選の1回戦では、鷺宮製作所を1安打で完封、2回戦は高橋章、黒田のリリーフを仰いだが、5対4で電電東京に競り勝った。翌日の準決勝では、山内は因縁の東京ガスを4安打、自責点0に抑えた(スコアは5対3)。これで関東大会への出場権を確保したので、この試合後に行われた決勝戦(プリンスホテル戦)では、両チームともにエースは投げず、3対11というスコアになった。
 関東大会(10月)の初戦・富士重工との試合にも山内が先発した。が、同点のまま日没で中断し、翌日に再開された後、リリーフ陣が打ち込まれて敗退した。
 これで社会人野球の本戦に出場できなくなり、チームはその代わりに秋季東京都支部大会に出場した(10月)。山内は2回戦の電電東京を完封し、準決勝のプリンスホテル戦でも延長13回を3点に抑えた(この時のプリンスホテルには、石毛宏典、中尾孝義、金森栄治、住友一哉らが在籍)。翌日の再試合も延長戦になったが、最後はリリーフした山内が打たれて敗れた。それでも山内の成長には注目が集まり、11月のドラフト会議では上位候補と見なされる程だった。
 結局この年のドラフトでは指名は受けなかったが、その次の1年間(1980年)で、山内はさらなる成長を遂げた。3月の社会人野球東京大会では、丸善石油を2安打で完封した。2日後の日本石油戦では5回で自責点2で降板し、チームも負けてしまった。
 4月の社会人野球選手権の東京都予選では、山内と黒田、さらには小林敦美(1983年秋に阪急が2位指名)が1戦ずつに先発し、無事決勝戦に駒を進めた(この時点で関東大会への出場権を確保)。決勝の東京ガス戦では、黒田、小林らが打ち込まれ大敗し、山内の登板はなかった。
 関東大会では、初戦を山内、黒田のリレーで軽く勝ち抜いた。が、準々決勝では黒田、山内の後を受けたスミスが打たれ、延長戦でサヨナラ負けを喫した。翌日の3位決定戦では、山内、黒田のリレーで日産自動車に勝ち(スコア4対2)、チームを本戦への初出場に導いた。
 選手権大会の本戦(5月)では、まず黒田、山内が、新日鉄堺を完封リレーで下した(スコア3対0)。黒田は7回途中までを4安打、山内はその後を1安打に抑える快心のピッチングだった。が、次の日本楽器戦では、調子の上がらない山内が3回で降板した。後を高橋章らが受けたが、結局1対4での敗戦となった。
 この後の6月にはチームは北海道に遠征し、社会人野球・北海道大会に出場した。その初戦では、黒田、山内のリレーで旭川鉄道管理局を1点に抑えた(スコアは4対1)。次の試合は、山内が新日鉄名古屋を相手に完投し、2対1で競り勝った。さらに準決勝でも、山内が王子製紙苫小牧を1点に抑え、チームは12対1で快勝した(7回コールド)。その試合後に行われた決勝戦には、山内は投げなかったが、他の投手が踏ん張り、日本石油を4対1で下してチームは優勝を収めた。
 このような活躍により、秋の都市対抗戦の前には、リッカーの投手力は東京都で1、2位だと評されるようになった。そして都予選では、山内が電電東京を完封し(スコア1対0)、チームは南関東予選に進出した。が、その初戦で、プリンスホテルに苦杯を喫してしまった。山内は1回に中尾孝義に2点タイムリーを浴び、3回で降板することになった(スコア0対8。中尾も山内和と同時にドラフト1位で中日入り)。
 翌日の敗者復活1回戦では、山内は東京鉄道管理局を4安打1失点に抑え、本戦出場に望みを繋いだ。が、次の日の東京ガス戦では、3連投となる山内は温存され、チームもここで敗れてしまった(スコアは1対7)。
 結局、この東京ガスが南関東地区の第3代表となったのだが、山内はその補強選手として、本戦に出場することになった。11月3日の初戦(丸善石油戦)では、エースの工藤真の後で登板し、9回の1イニングを無安打無失点に抑えた。が、次の札幌トヨペット戦(11月7日)では、この工藤が6回までに3失点で降板してしまった。山内はその後の2回を無安打無失点に抑えたが、味方打線が振るわず、試合は0対3での敗戦となった。
 11月26日のドラフト会議を前に、山内は12球団OKと語り、南海の1位指名を受けてプロ入りすることになった。



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