Making Of SCENARIO シナリオの作成の内幕

開催卓 2002.8.18 Roads to Load

シナリオ名「ぼくたちのなつやすみ」 レポート

 

Act1>

「香坂さん、次のシステム、何やる?」

いろんな人から、このような質問を受けるとき、香坂はいつも困ってしまいます。

 理由は・・・そのとき、何も考えていないからです。大体そういう時は、庭の草むしりとか、パワパフのバターカップのこととか、横浜ベイスターズの来シーズンに向けての中継ぎ投手補強策とか、WWUフィンランド軍におけるソ連鹵獲戦車とかってことを考えているのです。

 んで、今回は、ちょうど、友達と一緒にいたときに話していたシステムを、とっさに思いついてこう答えることにしました。

「んー、じゃあ、ローズトゥロード(RtoL)だー」

「オッケー、RtoLねー」

 ということで、8/18のSTARSで香坂がやるシステムはRtoLに、何の気張りもなく、ゆるゆると決まってしまったのであります。

 RtoL! 久しぶりだねえ。

 この前エンターブレインから復刻した奴です。

実際、RtoLは香坂が購入したTRPGの順番では、1ケタ台に入る。高校時代の「旧友」とも言えるシステムなのです。

 

Act2>

で、家に帰って考えました。

来月はどんなシナリオにすんべかな? というか、RtoLにはどんなシナリオが向いているか?

 このとき香坂は、自分がやるシステムのいいところとイマイチなところを考えてみます。

 

[いいところ]

・ルールが簡単。すぐ説明できる。

・ユルセルームという独特の世界がある。

(香坂にとって)なつかしい。

[イマイチなところ]

・戦闘が簡単すぎてやや単調。

・魔法の数が少ない。面白いシステムだけど。

・誤植が多い(・・・)。

 

 ルールブックを見て驚きました。なんとまあ、ツクダ・ボックス版や遊演体版の昔に比べて、ルールがわかりやすくてすっきりしてること! 魔法カードなんかステキなマンガ絵だよ! 赤丸とか緑三角じゃないよ!!(今の人はビックリするでしょうね。「え、この出来でしっかりしてるって?」 ええ、そう、昔のTRPGをナメちゃいけませんぜ。いっちゃん最初のRtoLなんか戦闘結果表が5%ずつズレてたんだから・・・)

 何か、高校時代ヘビメタとかやってて学校休みがちだった友達が、大学生になって久しぶりに会ったら就職活動中で、リクルートスーツなんかでビッと決めてるから「お前、変わったなー」ッて感じが・・・こほん、まあ、そんなことはどうでもいいですね。

 

Act3>

問題は、こいつに合うセッションのやり方です。

 ルールが単純なシステムは、例えばダンジョンタイプのような長々とした単一状況は飽きてしまうでしょう。しかも、戦闘ルールは単純で魔法が読めないので、戦闘自体がクライマックスでも2〜3分で終了することもありえます。ならば・・・

ショートシナリオで攻めるべきでしょう。マシンガンのように、PCの通るところ通るところでシナリオフックを連射する。幸い、世界観の説明は豊富なので、魅力的なNPCやモンスターの発掘には事欠かない。プレイヤーが乗ってきそうな話はいくらでも作れそうです。

 状況はシティアドベンチャー。それこそ、何の変哲もないパン屋や鍛冶屋が、それぞれの背景を持ってPCに問題を持ちかけてくる。今回は、宿屋は回復場所じゃないし、武器屋はアイテム補給場所ではない。それぞれ1個の人間が運営している生活経済地点として設定することにします。

 しかしそこまでリアリティを増加させた場合、ユルセルームという詳細な世界観と相乗効果を生み出し、RtoLが始めてのプレイヤーは気後れするかもしれない。「あまりにも内容がマニアックで・・・ユルセルームを知らない自分にはちょっと・・・」という反応が予想されます。

ならば、舞台は架空の町にしましょう。汎用的なファンタジー都市を1個用意して、そこに冒険をごった煮にしてサルサソースの如くぶち込む。そんな町でPCは何をしている? 元からそこで生活しているの? だったら何で街中を歩き回らなきゃいけないの?

ここで、香坂はセミの声を聞きました。はっ。そうか、今は夏休みじゃないか! PCはこの町に観光で来るんだ! だから会う人会う人がみんな初めてで、新鮮な驚きが連続する。だからシナリオフックを求めて歩き回るのだ。そしてやっぱり夏と言えば海だから、架空の町は港湾都市にしよう。

というわけで、シナリオのメイン目標が決まります。「架空の港町を用意し、限られた夏休みの中で、PCはショートシナリオをこなしていく。徹底したフリーシナリオ形式で、どこに行くか、何を解くかはプレイヤー次第」

 これでグランドデザイン決定!

 

Act4>

 今回のシナリオ分量を決める。ショートシナリオは30本、PCの滞在日数は30日。1日1個解いて行く計算です。

・・・長くないかい?

 大体1日の行動ってのは、じーっくり考えると最低でも15分くらいかかります。これではコンベンション終了の18:00には終わらない!

 じゃあ、日数を削りましょう。別にプレイヤーが30個フルコンプリートできなくてもいいじゃないか。その方がPCも有意義に1日の過ごし方を考えるでしょう。

何日にする? 18:00終了確実なのは10〜15日・・・しかし、その日数の夏休みは、現実世界でもあるはず。やっぱ、夏休みというからには・・・20日だ! 「20日間の夏休みをください」なんて会社に言えるか? 俺は言えません。やっぱりTRPGをやるからには、現実では出来ないことをしなければ!

 でも真正面に20日過ごさせると、やっぱり時間が厳しい。ということで、強制的に終わらせるファクターとして「国家緊張度」を導入することにします。

PCのシナリオの達成度が下手だと、「風が吹けばなんとやら」で国家間の緊張を生む。国家緊張度がある程度のレベルを超えると、戦争がはじまって休暇取り消し! これで数日は短縮できるはず。プレイヤーも自分の休みがかかってるから、気張ってショートシナリオに取り組むでしょう。これはユルセルーム世界というバックボーンがあるRtoLだからこそ、説得力が出てくるギミックといえます。

シナリオ分量、決定!!

 

Act5>

 いよいよコンベンションの週。

 シナリオはスムーズに生まれました。プレイ時間30分くらいのシナリオを大体1日7〜8個ぐらいずつ考えて、5日間でショートシナリオ30本を集めたシナリオブックが完成します。

実は、これには強力な助っ人がいました。かって社会思想社から出ていた「RPGシティブック」です。ここにある魅力的なシティキャラクターを採用して、彼らが勝手に歩き回ってくれてがんがん自分からアイデアが湧いて出てくる。多すぎて泣く泣く削ったのもあるくらい。(ありがとう作者のL・ディティリオ! そしてありがとう社会思想社! あなたの犠牲はけっして忘れはしない。安らかに眠れ・・・ぶくぶく・・・)。

 それから、それぞれのNPCの外見や内面の特徴をイメージします。結果として、出てくるNPCは36人になりました。それぞれ同じ人は1人としていないことにして、性格やキメ台詞などを設定。彼なら冒険者に対して、どんな反応を見せるだろう? そして彼らが運営する店の屋号も決める。ろうそく屋の「愛の灯火」、花屋の「タンポポ亭」、銭湯の「光の沐浴館」などなど・・・。一風変わっていて、「何、ここ? 行ってみようかな!」とプレイヤーに好奇心を喚起させるような屋号を考えていきます。

あと、NPC同士で似た名前がないか最終チェック。あーだめだ。「シェリ」と「シェイクリ」で、かぶってるじゃん。どっちかの名前を変えなきゃ・・・。

 次に町の詳細地図を作ります。といっても、海岸線を書いて、城壁を線で囲って、その中に家の記号である四角を書き込むだけ。テレビのナイター観戦しながらベイスターズのふがいなさに憤慨しながら作っていきました。そしてメインストリートなど、街中の各地点における地名を考える。やっぱり港町だから「潮騒通り」「白の砂浜」「巻波岬」・・・祝い事があれば鳴り響く「鐘楼広場」デートスポットの「恋人橋」神殿の近くには「大社門」・・・スラムの方にはそれっぽい「口紅小路」や「残飯小路」・・・シムシティみたいで、結構楽しいな、これは!

 最後にNPCの店であるシナリオポイントを配置。全般的にバラけるようにして、このときばかりはちょっと慎重に行いました。

 町の名前は「エレバン」にしましょう。この名なら発音的にもはっきりしていてすぐ覚えられる。「え? もう1回言って?」ってプレイヤーが聞き直すこともないでしょうから。

 こうしてシナリオとマップ、完成!

 

Act6>

 コンベンションまであと2日。最終調整をします。

 まず、20日間PCがどんな行動をするかという「日記帳」を用意してプレイヤーに配ることにしました。形式は単純なもので、1列を4分割して、それを20行つなげたB4の用紙1枚。これで行動を逐一記録していかないと、今は何日でどこにいるのか、誰もわかんなくなっちゃうからです。

 それからNPCの数が36と多いので、整理するため36人の名前だけ書いた「登場人物表」も用意してプレイヤーに配ることにしました。どういう人か、説明文はプレイヤーに記入させていくかたちです。

 これらのギミック以外にも、キャラシートや装備品表(誤植だらけなんだこれが・・・)、シティマップ、戦闘サマリーのコピーを人数分用意していきます。

 あっという間に書類ファイルがパンパンに膨らんでしまいました。泣く泣くパワーパフガールズ・ザ・ムービーの紹介用チラシを捨てます。当日ばら撒く予定だったのに。くそう。

 そして前日は、早く寝る!

 

Act7>

 コンベンション当日。当日は台風接近中、しかも地味なシステムにも関わらず、いろんな人が卓に入ってくれました。ありがたいことです。ほんとに「としちゃんかんげきー」という感じです。

 あまりやったことのないシナリオ進行だけに、途中ちょっと冗長になったところもありましたが、まあ、プレイヤーの皆さんも上手くて、まとめられたんじゃないかな、と思っています。アンケートも好評だったみたいです。

 そして、プレイヤーの人たちが面白そうに生き生きと夏休みをエレバンの町でプレイしてもらえたので、それがよかった!

 

<追記>

 思うに、きっとそれなのです。自分にとってマスターの醍醐味というのは。時々シナリオにつまって七転八倒すると、根源を問い詰めなおすときがあります。「何で俺はマスターなんかするんだろう」と。

 何でだろう? 自分なりに考えてみましょう。

 何で香坂がマスターやるかって言うと、それは「マスタリング技術を披露して存在意義を高めたいから」とか、「TRPGゲーマーとしてベテランであるところを認めてもらいたいから」とか、「自分の作ったよく出来たシナリオをみんなに味わってもらいたいから」とか、「最高だと思っているシステムをみんなにも紹介したいから」とか、そーいう「俺さまの妙技を味わえ!」的な自己顕示欲から来るものじゃないのです。

 んじゃ、なんで?

 これはもう、照れ臭くて偽善者といわれちゃうかもしれませんが、実際そうなのでどうしようもないですね。

 結局、香坂がマスターをするのは、卓に入ってくれた人が楽しんでくれるのを、楽しみにしているからです。他人が喜ぶことで、自分も喜びをもらう。ある種の自己満足に近いものがあるのですが、まあ、うまく好循環の結果を生み出してるし、よいじゃないですか!

ときどき香坂は「どんなシステムをマスターするのが好きですか?」と質問されるときがあります。答えとしては、今、自然体でやりたいシステムをやるのが、いちばんいいのだと、今は思っています。今はね。TRPGは自分の子供のようなもので、自分の子供はみんな可愛いのだから、「外道を憎んでシステムを憎まず」というか、排斥も攻撃も行わずにみんなで盛り上がってハッピーで終われば、これに越したことはないのです。これはもう、夢想に近い超理想主義かもしれませんが。

どっかのコピーにもありましたが、香坂のTRPGのスタンスは・・・

 

TRPGに関する全てのニュースに、自分の解釈を。」

TRPGへの全ての否定と断定に、陽気で優雅な反論を。」

TRPGに対する全ての慈しみと親切な心に、感謝と評価を。」

TRPGについての全ての理不尽さと惰性に、異議申し立てを。」

 

 ・・・てな感じなのです。つまり「Love Makes the World Go Round」ですね。

 

最後はちょっと脱線して熱く語ってしまいましたが、これでおしまいにします。

 

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