「れっつ・ぷれい! とらんすれいと!」

〜その4;追補編〜

 

みなさんこんにちは。さて、今回は最終回。「追補編」と題して、訳した後に「どっちかって言えば気をつけた方がいいんじゃないかな」ってことを(ちょっとえらそうだけど)お話ししましょう。
※その前に;以下に述べているのはあくまでも抽象例、もしくはマッコイ自身への戒めです(ははは…)。特定個人を皮肉って攻撃する意図はありません。あしからずご了解ください。

 

1.友達の批評は神の声なのか?

 

 さあ、訳者の「ヤッくん」がルールをやっと訳しました! 仲間と遊んでみよう!! あら、何かおかしいぞ? どうもゲームバランスが崩れているような気が…

友  達「ねーこれさあ、近接戦闘の命中率がやけに高くない? ほら“相手の回避修正分をマイナス”っていうのが抜けてるよ」
ヤッくん「(むか)ああ、そーだねー、訳をまちがえたよ。」
友  達「ここもおかしいんじゃない? ほら、主語がGMじゃなくてPlayerになるはずだよ」
ヤッくん「(むかむか)あんま細かいところ気にすんなよ。そんな重要な文章じゃないだろ、そこ」
友  達「それからSearchのスキルを“探知”って訳したのは間違いだと思うな。“捜索”の方が…」
ヤッくん「(むきー!)なんだよ批評家ぶりやがって! じゃあ、お前、訳してみろ!!!」
友  達「おいおい、そんな言い方ってないだろ!」

 あーあ、ヤッくんやっちゃった…。何が悪かったんでしょう? 
 たしかに忙しい中に時間を割いて、こつこつ手塩にかけて完成した訳文を、何の苦労もしなかった友達に「まちがいだね」なんて矢継ぎ早に言われちゃあ、ヤッくんは「うー!」と思うかもしれません。でも少し深呼吸してみましょう。その意見によって自分の訳したルールが、より完璧になるとしたら?

 いいことじゃないですか! せっかくお友達が改良意見を言ってるんだから、謙虚に聞いた方が後々自分のためになるんです。爽やかに言いましょうよ。「気づいてくれてありがとう! 俺もそこが気になってたんだよ!」って。
 「でもでも、言い方ってもんがあるじゃないか。あんな否定的に言わなくたって…。俺だって真夜中に必死こいて英和辞書と格闘したんだぜ…」なんて感情的なモノもあるかもしれませんね。うんうん、わかるよ、ヤッくん。

でもヤッくん、お友達はあなた自身ではないのダヨ。あなたの本当の苦労はあなたしか知りません。それを「俺の苦労もわかれよ!」って言うのはちょっと自分を押し出しすぎ…かな? 子供っぽくないかい?

 だからって友達は、ズケズケとセッション中に翻訳ミスを指摘していい、って言ってるんじゃありませんよ。訳した人が努力したのは事実なんですから。それを踏まえて評価した上で、「…でもこういう文の方が、もっと意味が通るんじゃないかな?」って、セッション後の反省会とかの時に建設的な改良点を言ってあげましょう。

 指摘を受け入れる広い度量(magnanimity)。と、翻訳者の努力を評価してあげる思いやりの心(thoughtfulness)。それがあれば、もっと素敵なプレイができるはずですね。

 

2.これっていわゆる犯罪なのか?

 

友  達「ねえねえ、この前訳したルール、メールで送ってくれよ。俺英語苦手だから原書持ってないんだけどさあ、いい? すごいよくできてるから、今度コミケで売ろうと思うんだ。売上の半分はお前にやるよ」

ヤッくん「うーん…いい…かな…。」

 

 あああ…。待つんだヤッくん! これ、はっきり言えば、ヤバイです。何ででしょう?

 「知的所有権」って知っていますか? マッコイは法学部出身じゃないのでうまく言えないんですけど、通常、著作権や工業所有権など、人間の知的な創作活動などから生産されたものに対する権利の総称として使われています。
 小説も音楽も映画もデザインも、この権利によって著者が不利益を被らないよう、保護されているんですね。

そして、ゲームだって例外じゃありません。もし、ヤッくんが上記のように訳文で利益を得たら?
 当然、他人は原書を買わなくてもプレイできる。原書を買わないということは、著者には1セントも入らないってことです。しかも著者の知らないうちに物事を進めている…。これは悪意でなくとも作成者に不利益を与えている行為です。今ごろ「極東地域での売上部数が減っている、何故だ!!」なんてカリフォルニアの重役部会で話題になってたりして。

 そんな大げさな…って、思うかもしれません。でも、今はネットでどんどん情報がやり取りされる時代。いつの間にやらヤッくんの訳文がネットオークションに出回ってて、それであぶく銭を手にしている人がいるかも…。

 ましてや、アメリカは裁判沙汰が日常茶飯事の国。そして荒涼としたアフガンの大地からウサマビンラディンたった一人をピンポイントで見つけ出すような国です。ある日突然ヤッくんのポストに「よぅもワイらのルール無断で頒布しよったな。ちぃっと今度の月曜にカリフォルニア州裁判所まで顔貸せやオラ」なんて英語の手紙が届くかもしれませんよ(ぶるぶる…)。

 じゃあ、せっかく自分の訳したルール、他人に見せちゃいけないの? せっかく訳したのに!! 自分以外にもマスターできる人を作りたいのに!!

 いやいやちょっと待ってください。渡す相手が不当に利益を得ているから問題なのです。「個人として使用するためだけに(Permission granted to copy for personal use only)」母国語の翻訳文書を渡すのは問題ないはず。だって私達アメリカ人じゃないから、それがないと遊べないんだもん。

 自分の訳文を譲渡する場合は、信頼できる人であることを確認してから! これ、大人のルールですよ。
(ってマッコイも実は最近知ったんだけどさ。ホントはそれもやばいのかな…、専門の方がいたらゼヒ教えてください)

 

3.翻訳することはエライことなのか?

 

ヤッくん「よう久しぶり。お前、今、キャンペーンやってるんだって。何のシステム?」

友  達「あ、××××だよ」

ヤッくん「なあんだ、まだそんな日本のシステムやってるのか。古臭くない、それ」

友  達「いや、でも、これがいちばん慣れてるし…」

ヤッくん「この前訳したsystemなんかさ、skill level がcard suitでさ、dicelessなんだよね。アメリカのシステムはやっぱちがうよな。HeroPointがexcellentでd20でもbest matchingなんだよ」

友  達「ふうん…ああ、そう…」

ヤッくん「まあ、お前も日本にへばりついてないでさ、俺みたくアメリカのTRPG訳してみなよ。眼からウロコが落ちるから。」

 

おやおやヤッくん、○○な奴になっちゃった(意図的に伏字にしましょう;笑)。こんなヤッくんとプレイしたい人って、いるのかな?(やばっ!)

でも正直な話、こんな人ってどこかにいそうですよね(あっ!)。新しい知識を得た優越感って、やっぱ甘美なものなんですよ。他人より多くの物事を知っているということだけで、どうしても視野狭窄になって見下しやすくなってしまう。いやはや、人間というのは弱い生き物です。

 でも、でもね、ちょっと考えてみましょうよ。ヤッくんはたまたま友達より英語が得意なだけじゃないかい?

 言うまでもなく、そして残念ながら、翻訳には能力が必要です。でも「英文を翻訳する能力」って、ぶっちゃけて言えば「うまいマスタリングをする能力」や「うまいロールプレイをする能力」とは全く別物である、という気がします。

 つまり、日本のシステムだけしか知らない人の中にも、とても素敵なプレイヤーさんはたくさんいるっていうこと。

その逆もしかり。海外のTRPGをたくさん知ってるからって、必ずしもTRPG界において上級者であるとは限らないということ(そもそもTRPGの上級者って何だ? いや、その議論を始めるともう収拾がつかなくなる気が…)。

 ここはマッコイがヤッくんに聞いてみましょうか。「君は、何でそのシステムを訳したの?」

 友達に自慢したいから? 周りにベテランって認められたいから? 自分のコレクションを披露したいから?

 それとも、TRPGで遊ぶことが好きだから?

 もしいちばん最後の理由だったら、君と一緒に遊んでくれる人は認めてあげた方が…いいんじゃないかな!

 

 というわけで、最後は説教くさくなって面目ない。いちおうこれで連載はおしまいです。最後まで読んでくれた人には心から感謝をささげます。願わくば今後のセッションで、ダイスの女神があなたに微笑みますように。

 

 よく、マッコイに「いやあ、訳さなきゃいけないTRPGが多くてさあ」なんて言ってくる人がいます。これってとても不幸なことだと思います(だってせっかく楽しむための趣味なのにmust beなんて、ねえ)。それから「いやあ、訳したいTRPGが多くてさあ」なんて言ってくる人もいます。こっちはとても幸せなことだと思います。微妙なニュアンスの違いだけど、わかりますか?

そう、このホビーを楽しみ慈しむ「愛」が大事だってこと。それさえあれば言葉の壁なんて!

何はともあれ、楽しんで訳しましょう! だからこの連載の題は「Let’s play! translate!!」だったのです。

 

〜おしまい!〜

 

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