サイボーグを倒せ

 

 

 

 

キャラクター作成&ルール確認 --Appointment with F.E.A.R.--

 

 さあて真夏の極悪カーニバルはいったんこれにておしまい(←やや自嘲気味)。

 Fighting FantasyリプレイブログLivre dont vous etes le heros(君が英雄になれる本)』は、今日から新シリーズです。

 今回はシリーズ唯一のスーパーヒーローものですよー。

 『サイボーグを倒せ(Appointment with F.E.A.R.)』のスタートです!!

 

 この本における主人公、つまり“君”は、タイタン・シティ(Titan City)の善良なサラリーマン、ジーン・ラファイエットです。へえ、今回の主人公、名前があるんだ。こっちが悩んで決めなくていい分ラクだねえ。

 しかしこのジーン・ラファイエットくん、ひとたび事件が起こると、超能力を持ったスーパーヒーロー、シルバー・クルセダー(Silver Crusaderに変身します!

 おおースーパーマンやバットマンみたい!!(;^▽^)

 そして正義の使者シルバー・クルセダーは、タイタン・シティの市民たちをいろいろな悪者たちから守ってやらなければならないのです。しかし一連の犯罪者どもを組織する悪の秘密結社F.E.A.R.は、西側諸国(うお!なんてアナクロちっくな響き!!)の政府を倒して、自らの犯罪連合組織が支配するユートピアを作ろうと、恐るべき陰謀をめぐらせていて・・・ちょっと待て、悪の犯罪組織の名前が・・・F.E.A.R.・・・(o)

 

 Far East Amusement Reserch??? (゜ロ゜)

 

 いいえ違います。このGamebookにおいては、『ヨーロッパ・アメリカ破壊連合(the Federation of Euro-American Rebels)』なのだそうです。ちょっとホッとしましたね、日本のゲームメーカーの皆さん。

 まあ、そんなことはどうでもよく、著者はこの頃、脂が乗り切っている感のあるスティーブ・ジャクソン(英)。訳はSF系翻訳で手堅い仕事を見せた坂井星之氏です。

 イラストもアメリカンコミカライズでいいカンジ。それではさっそく、主人公であるシルバー・クルセダーの能力を決めましょう!!

 

 まずはいつもながらの能力値。

 4d6を振って、うち1個を原技術点に、2個を原体力点に、1個を原運点に割り振るとしようかねえ。それではー・・・はあっ・・・(コロコロ)・・・はぐっ!!

 

 1,1,1,4!!! ガ━━(゚ロ゚ノ)ノ ━━ン!

 シリーズにおいて最低の出目だーよ!

 

 ままま、待て、落ち着け、オレ。能力値決めるのはちょっと置いといて・・・

 先にシルバー・クルセダーの得意技を決めよう。このスーパーヒーローは、4つの超能力のうち1つを選択できる。

 

1【超体力】・・・強い力と空を飛ぶ能力を持つ。

2【思念力】・・・他人の心を読み、頭の中で命じるだけで物体を動かせる。

3【超技術】・・・ベルトの中にいろんな装置や仕掛け(ギミック)を有している。

4【電撃】・・・指先から稲妻を放射する。

 

 このうち(1)の超体力をもっと詳しく見てみよう・・・なになに・・・

 

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 君は大人が何人集まっても勝負にならない力を持っている。猛烈な力を秘めた腕と足の筋肉は(シルバー・クルセダーに変身したら)服の上からでもはっきりと盛り上がって見える。腕も足も君の持つ力を100%発揮することができ、いざ戦闘となれば、君は常に13点の技術点で戦いを始めることができる。君はまた、思い通りのスピードで空を飛ぶ力も持っている。空中で止まっていることもできるし、最も速いジェット機で追跡して追いつくこともできるのだ。

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 ふはっ!

 【超体力】なら、シルバー・クルセダーに変身したとき、技術点13でいいのか。

 よし、これだっ!ヽ(´▽`)

 本当は【電撃】の方が超人ロックっぽくてカッコいーかなとも思うけど、ぜーたく言ってらんない。とりあえずスーパーヒーローに変身して技術点13になれるなら、変身前のジーン・ラファイエットのときは、1の出目を回して原技術点7でもいいだろう。

 うん、そうだな。いつもは貧弱な青年ということで周りからバカにされているのだが、誰も彼の正体に気づいていない。タイタン・シティの平和を守っている正義の守護戦士、シルバー・クルセダーの正体は誰なのか・・・

 これってなかなかに燃えるシチュエーションですよ。いいーじゃないすかー!!

 というわけで、能力値はこうなりました。

 

 【原技術点7 原体力点14 原運点10

 ※ただしシルバー・クルセダーに変身すれば技術点13に上昇

 

 体力点が不安・・・めっさスタミナ不足・・・(>△<)

 でも運点に出目1を回して原運点7なんて自殺行為だしなあ。うーむコレ、平時の変身前は本当に仮面ライダー電王なみの最弱主人公だぞ。大丈夫かジーン・ラファイエット???

 まあ、やるだけやってみるしかない!

 がんばってF.E.A.R.の野望を食い止めるのだ!!

 

 それではルール確認。

 まずは戦闘だが、いつものFighting Fantasyのルールと同じ。技術点+2d6の振り合いで、運試しのダメージ増大または減少もそのまんま。軟弱サラリーマンのジーン・ラファイエットのときは技術点7だけど、超体力を持つシルバー・クルセダーなら技術点13になるからな。

 

 だけどちょっと注意。敵、つまり犯罪者の体力点を0にしてはならない。つまり、殺しちゃいけないのだ。体力点を2点以下にして逮捕しないと、英雄点が-1されちゃう。

 

 そう、このGamebookだけの能力値として「英雄点」というのがある。

 英雄点とは今回の冒険のスコアみたいなもので、悪漢を倒したり、犯罪を解決したり、スーパーヒーローらしい気高い行動をすると増えていく。特にゲーム中は使うことないんだけど、このGamebookをクリアしたとき、英雄点が高ければ高いほど、素晴らしいシルバー・クルセダーだったということだ。

 まあでも、今回のこの能力値じゃあ、クリアするのが精いっぱいだろうなあ・・・(´ⅴ`)

 

 ええと、それから「手がかり」2つ与えられる。

 すでに君はシルバー・クルセダーとしてタイタン・シティで活躍中であり、その過程で、悪の秘密結社F.E.A.R.に繋がる情報を得ている。そう、シルバー・クルセダーには、かけがえのない友達で情報屋の<マリファナ>ジェリーがバックアップしてくれているのだ!

 さてこの「手がかり」、選んだ超能力によって決まるのだけど、今回はこの2つです。

 

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◎何も知らない人々に悪どいイタズラを仕掛けてびっくりさせては喜んでいるという“ふざけた犯罪者”のスカーレット・ブランクスターが、彼のユーモアのセンスにぴったりの新しい家を建てた。君が彼の新居の近くにいて、しかも彼を探す機会を与えられたときは、その項の数から50を引いた新しい項へ進んで、彼を探すこと。

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◎殺人罪で告訴されていたリッチ親分(D.R.)が、つい先日大勢の弁護士を使って自由を得たので、また1つ市民への脅威が増えた。リッチ親分(D.R.)は変わり者の億万長者で、およそ金で買えるものなら何でも持っている。いま彼は、罪のない人々を殺すことに興奮し、怯える人々を見ることに異常な喜びを感じている。大変に金のかかる趣味を持ち、58番通りと113番地にあるマンションのペントハウスに住んでいる。

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 ふむふむ・・・_(_・。)^ メモメモ

 これらの情報はいずれ役立つときがくるだろう。よっし、これで準備OK!!

 それでは張り切ってまいりましょう。「君が英雄になれる本」特別編。『サイボーグを倒せ』のはじまり、はじまりー! (^v^)ノ

 

※いろいろ特別ルールがあったので、タイタン世界の紹介コーナーは、今回お休みです。

 どうかご了承くださいませませ(ー人ー)

 

 

 

この罪深き世界 --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点14/14 運点10/10】 【英雄点0

 

 ベッドに寝ている僕は、16の目に観察されていた--

 

研究員A「第25次検査、これで終了です」

研究員B「異常なし。全く問題ない!」

研究員C「ベクター細胞が完全に固定しています。おそらく常人の100倍強・・・いや、この数値は・・・すごい、すごすぎる!!」

 

 それは僕のいちばん古い記憶。

 白衣を着た研究者たちが、裸になった僕をとっかえひっかえ調べ回り、みな一様に自分の専門分野を得意げに話しているのだ。

 

研究員D「これで完全実用化か。いや全く、マンハッタン計画に匹敵する科学革命だ!」

研究員E「ああ。我々は自由主義防衛のための最終兵器を・・・ちょっと待て、なに?」

研究員F「司令部から緊急電だ。ばかな!この期に及んで中止だと!!」

 

 どうやら、僕を取り巻く計画は中途半端に終わったらしい。

 東西冷戦の雪解け、いわゆるデタントのおかげで。一説には、インドシナで金をばら撒き過ぎたアンクル・サムが、これ以上の不必要な研究を削減したかったらしい(そして、デビッド・ハルバースタムあたりがこの遺伝子研究をつきとめそうだった)。

 

研究員G「ではこの子はどうなるのですか?」

国務長官「処分しかない・・・所詮は試験管から生まれたタンパク質の塊だ・・・」

研究員H「そんな!それが私たちの国のやり方ですか!!」

国務長官「では他に方法があるかね?このミュータントベイビーが、この罪深き世界で、普通の人間としてまっとうに生きられるかね??」

研究員GH「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

国務長官「誘惑が多すぎる。危険なのだ、あまりにも」

研究員G「・・・私が育てます。人間として、彼を」

研究員H「ちょっと待て、本気か?」

研究員G「本気よ、ヘンリー。この子をこのままにしておけるものですか」

研究員H「じゃあ僕もだ。私たちには彼を生み出した責任があるんだ。そうだろう、グレース?」

 

 5歳のとき、僕はあらゆる検査をしなくてよくなった。

 僕の父と母が、本当の父と母でないとわかったのは、僕が12歳のとき。元理学博士だった父ヘンリーと、元脳外科医の母グレースは、僕を抱きしめて、ただむせび泣くだけだった。

 

 高校を卒業する頃、僕は、僕の力に、目覚めた。

 

 きっかけは全くの偶然で、カーテンの東側からやってきた殺し屋が、ヘンリーとグレースを拉致しかけたとき。

 怒りに我を忘れた僕は空を飛び、銃弾を跳ね返し、壁をぶち破り、乗用車を放り投げつつ諜報員のアジトを殲滅させた。

 遺伝子実験の結果である、胸に銀色の十字架がくっきりと浮かび上がり、ベクター細胞により筋肉繊維が350%増量した変わり果てた身体を見て、僕の義理の父と母は、自分たちの命が助かったことを神に感謝する前に・・・

 

 「とうとう目覚めたのだね」と、僕にこのような運命を課した己の所業を、呪った。

 

 どうか約束してほしい。ジーン。

 君の力は、君のために使うことは許されない、ということを。

 東西冷戦の渦巻く怨念の中、実行されたクルセダー計画。人工授精、人工培養された君の肉体には、遺伝子レベルでベクター細胞発生因子が組み込まれている。それは、君に空中飛行能力と筋肉活性能力を与える。

 胸に銀の十字の印が浮かび上がるとき、君はその能力を思うがままに使うことができる。 

 そう、君は、シルバー・クルセダーなのだ。

 望むべくは、君の力が、この罪深き世界を救わんことを・・・

 

 こうして僕は、自らの運命を知った。

 

 そして今。

 スイスに隠遁したヘンリーとグレースのもとを離れて・・・

 僕は、自らの真の姿を隠しつつ、アメリカ東海岸の大都市タイタン・シティ(Titan Cityの平和を守っている。表向きは中くらいの大きさの清掃用具販売会社の事務員。それが僕だ。

 月給はそこそこ。ダウンタウンのアパートで優雅に一人暮らし。だが口うるさい上司には「よく仕事をサボる奴」と睨まれている。

 なぜなら、僕が右腕にはめている腕時計型の犯罪探知機から、情報屋であり連絡員の<マリファナ>ジェリーより、ひっきりなしにタイタン・シティの異常事態を知らせ続けてくるからだ。その都度僕は仕事場から抜け出して・・・

 

 昨日だって夜中の3時まで・・・

 

 ジリリリリリ・・・!(←目覚まし時計の音)

 

ジーン「うっるさいなあ、なんだぁ?・・・ああっ!!」

 

 朝8時、会社に遅刻するっ!!

 

 

 

いらつきの街 --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点14/14 運点10/10】 【英雄点0

 

 午前8時。街のメインストリート、クラーク通りを全力疾走している僕。

 ちらっと腕時計を見る。やっぱり駄目だ間に合わない!こういう時こそシルバー・クルセダーの【超体力】を使うべきではないか?

 

 (どうか約束してほしい。ジーン。君の力は、君のために使うことは許されない、ということを)

 

 いや、ちょっと思っただけだよ。父さん、母さん。

 結局僕は脆弱なジーン・ラファイエットのまま、汗だくになって駆けずり回るしかないのだ・・・

 

 朝のタイタン・シティは活気と騒音に包まれている。

 寝ぼけ眼のドライバーを乗せた車やバスが通り過ぎ、新聞売りが強盗に関するニュースを叫んでいる。上空には交通監視ヘリのリズミカルな音、街角では年配のサラリーマンと大柄な婦人が口論をしていた。どうやら彼女の飼い犬が用を足したら一張羅のズボンに引っかかったようだ。

 別にどこも、普段と違うところはない・・・いや、本当にそうか?

 

 街の空気に微かながら緊張感がある。

 落ち着きのない人々のイラついた一挙手一投足。

 僕は本能で感じる。その様子はまるで大地震の直前、ネズミやミミズなどの小動物がザワザワと騒ぎ始めるのにも似た・・・

 そう、これは、何かが起こる予感。巨大な悪の陰謀が迫りつつあるのだ。

 

 WOOOO!!WOOOO!!WOOOO!!

 

 走り急ぐ足を止め、異常に気付いてちょっと考え込んでいた僕は、パトカーのサイレンの音で我に返った。

 黄色と黒に塗り分けられたクーガーGSが、乗用車を押し分けかきわけ、タイヤを軋ませて角を曲がり、左折してオーデュボン公園に入っていく。その後、車の流れは元に戻り、何ともない日常が再開された。

 いったい何の事件だろう?

 僕はオフィスで上司がカンカンになっていることを忘れ、直感的にパトカーを追い、公園の中に入る。そこでは野次馬たちががやがや騒いでおり、中心には人が倒れているようだ・・・

 

現場警官「はい、下がって下がって!立ち止まらないで!!」

 

 当直の警官が群衆を押しのけ、事件現場を確保している。

 

現場警官「ほら、君、近づき過ぎないで!」(どん、とジーンを小突く)

ジーン「あ、す、すいませ・・・うわあわ!」

 

 僕は野次馬の輪の中に押し返され、もみくちゃになってしまう。

 それもしょうがない。このままだと眼鏡で瘦せっぽちの非力な年、ジーン・ラファイエットだから。事件の解決に力を貸そうとしても、はっきり言って野次馬たちと全く変わらない子羊で、警察も相手にしてくれない。

 だから僕は公園にある電話ボックスに入った。眼鏡を通勤カバンの中に入れ、二言三言、精神を集中させる文句を唱える。

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

シルバー・クルセダー(以下S.C.)「やあ警察の諸君、何か事件かな?」

現場警官「ああ、シルバー・クルセダーさん。助かりますよ、どうぞこちらへ!!」

 

 改めてシルバー・クルセダーとなった僕が近づいていくと、周りの野次馬たちが尊敬と期待の念を込めて道を開けてくれた。警察官たちも従順に僕を事件現場に通す。

 そこでは男が地面に倒れて死んでいた。

 顔と上半身が猟奇的に切り刻まれた、失血死だ。おそらく被害者へ存分に苦痛を与えてから、その様子を楽しみ、ゆっくりと止めを刺した。高揚した異常な興奮も感じられる殺し方だ。

 被害者の男は、高価な背広から判断すると、かなりの資産家。だが・・・

 

現場警官「ガイ者は警備会社の社長です。名前はウェイン・ブルース。顔面がこの有様で見分けがつきませんが、財布の中に身分証明書がありましたので、すぐにわかりました」

S.C.「財布が・・・残っていた?」

現場警官「ええ、膨らんだ多額の紙幣もそのままに。それどころか、カバンの中にある小切手や会社書類、その他の金品所持品も、すべて手をつけられていません」

S.C.「つまりそれは、この被害者は・・・」

 

 何も盗られていない?

 

 つまり、殺されるためだけに、殺されたのだ。この哀れな男は。

 僕の視界の片隅でキラッと朝の光を浴びた何かが光った。運試しは吉。近くの薔薇の植え込みの中に僕は手を伸ばし、指が触れる。引っ張り上げてつかんだそれは・・・

 細い鎖につながった金のメダル。表面には「D.R.」と刻まれている。

 かなり高価な物だ。これを落とした持ち主はおそらく相当な金持ちだろう。

 この現場遺留品を警官に渡す?それとも宝石店に持っていく?

 いや、違う!

 このタイタン・シティで正義を守り続けている僕は、この陰惨な猟奇殺人を犯した人物の「手がかり」をつかんでいる。

 そいつは麻薬で財を為した億万長者。強盗目的ではなく殺人自体に、人に苦しみを与えていたぶることだけにエクスタシーを感じる異常性癖の持ち主。

 リッチ親分(Dealer the Ritchの仕業に間違いない!!

 

 『もし君がそうしたいのなら、その住所の番地と通りの番号を加えた数の項に進め』

 

 もう「手がかり」はある。奴の棲み家は58番通りと113番地にあるマンションのペントハウスだ。

 SHUBAAA僕は地面を勢いよく蹴飛ばして空中に舞い上がり、ジェット機の速度でその場所に急行する。

 以前からマークしていたが、やっとあいつの尻尾をつかんだぞ。

 あとは直接会って確かめるまでだ!!

 

 

 

血に飢えたリッチ親分を逮捕 --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点14/14 運点9/10】 【英雄点0

 

 ちょうどいいタイミングで目標地点上空に到達したようだ。

 総ガラス張りで成り上がり臭がぷんぷんするビルから3人のいかがわしい男が出てきて、急ぎ足で街角を曲がる。

 うち真ん中の男は、毛皮のコートを着て純金のアクセサリーを体中にぶらぶら下げている。なるほどその中からメダルが1つ千切れ飛んだとしても、すぐに無くなったことには気付くまい。

 なにか不機嫌そうにブツブツつぶやいている暗黒街の顔役、彼こそリッチ親分だ。そして脇を固める2人は屈強そうなボディガード。

 

リッチ親分「まったくこの俺がなんてザマだ!とんだヘマをした!!」

ボディガードA「しかし、親分自ら拾いに戻ることはないでしょう」

ボディガードB「あとで私の舎弟を出頭させますよ。警察は頭が抜けてますから、そいつを自首させて罪を被せれば・・・」

リッチ親分「馬鹿野郎!あとじゃ遅いんだ。問題は警察じゃないんだよ、それ以上・・・の・・・」

 

 リッチ親分の言葉が途切れたのは、僕がふわりと上空から舞い降りて着地したからだ。彼らの前に立ちはだかったのだ。

 “それ以上”の存在であるシルバー・クルセダーを見て、リッチ親分はごくりと唾をのむ。しかしすぐに動揺を抑えて、ヘラヘラと愛想良く話しかけてきた。

 

リッチ親分「これはこれはスーパーヒーロー様。あんたの英雄談も聞きたいところだが、今日はちょっと急いでるんでね、失礼!」

S.C.「そう慌てなさんな。落し物を届けに来たんだ」

 

 僕は自分の手からD.R.」と刻まれた金のメダルを垂らす。

 リッチ親分の顔が見る見るうちに青ざめた。脇のボディガードは指をぴくりと動かした。いつでも懐にしまった凶器を取り出す構えだ。

 一触即発の空気の中、リッチ親分は、かすれた声で言った。

 

リッチ親分「何のことやら、さっぱりだぜ、シルバー・クルセダー」

S.C.「こいつがオーデュボン公園に落ちていたんだ。君のだろう?」

リッチ親分「勘弁してくれよ。罪のない一市民をつかまえて・・・俺ぁビジネスで忙しいんだ!」

S.C.「相当急いでいるみたいだな。靴とシャツを替える暇もないのか?」

リッチ親分「!!!・・・チッ」(舌打ち)

 

 動かぬ証拠だ。リッチ親分の靴の先とシャツの袖には、被害者の血痕が付着していたのだ。

 もはや言い逃れできぬリッチ親分、そして2人のボディガードは、じりっと腰を落とす。それはまるで襲撃寸前のコブラのようだ。

 

S.C.3人とも警察まで来るんだ」

リッチ親分「お断りだねっ!」

 

 リッチ親分はベルトから長い銀のナイフを抜く。それが合図で、2人のボディガードがサバイバルナイフを抜いて突進してきた!

 僕は薄笑いを浮かべる。【超体力】を有する正義の味方に対して、いい覚悟だ。まずはボディガードから1人ずつ順に始末してやろう。だけど注意しろ、体力点0に低下させてはいけない。シルバー・クルセダーは血に飢えた殺人者ではないのだ!!

 

【ボディガード1 技術点8 体力点9

【ボディガード2 技術点7 体力点8

【リッチ親分 技術点9 体力点8

1R (ボディガード1/13)(S.C./16) ボディガード1/体力点-2

2R (ボディガード1/14)(S.C./21) ボディガード1/体力点-2

3R (ボディガード1/18)(S.C./16) S.C./体力点-2

4R (ボディガード1/11)(S.C./24) ボディガード1/体力点-2

5R (ボディガード1/15)(S.C./17) ボディガード1/体力点-2 ←Arrested!!

 「ぐわあ!」とどめのパンチを受けた凶漢は吹っ飛び、電柱に激突して動かなくなる。

 僕は腕についたナイフの傷をさすり、血を拭ってから、もう1人をくいっと手招きした。

 「くそ、このお、ナメやがってえ!」残されたもう1人のボディガードが喚く。

 おいおい、大丈夫か?黒サングラスの下が涙目だぞ?

6R (ボディガード2/11)(S.C./22) ボディガード2/体力点-2

7R (ボディガード2/15)(S.C./22) ボディガード2/体力点-2

8R (ボディガード2/17)(S.C./19) ボディガード2/体力点-2 ←Arrested!!

 2人目は1人目より簡単に片付いた。僕は彼を軽々と持ち上げ、ビルの入口に投げ飛ばす。

 ガシャーン!リッチ親分の建てたビルのガラスは安物で、粉々に割れてしまう。

 血まみれになって動かなくなった2人目のボディガード。ふふふ、建築費をケチっているな。

 「俺様のビルをよくも!」おおっと、今度はリッチ親分が相手だ!

9R (リッチ親分/13)(S.C./21) リッチ親分/体力点-2

10R (リッチ親分/12)(S.C./24) リッチ親分/体力点-2

11R (リッチ親分/21)(S.C./20) S.C./体力点-2

12R (リッチ親分/11)(S.C./24) リッチ親分/体力点-2 ←Arrested!!

 

 毒蛇の牙のように執拗なナイフ攻撃に苦しめられながらも、リッチ親分の頸動脈を締め上げる。やがて彼も口から泡を吹いて動きが止まり、僕は3人の犯罪者を無力化させた。

 ふうう、今日の1つ目の仕事が片付いた!

 シルバー・クルセダーの圧倒的な【超体力】の前に粉砕され、奴らは血まみれでぐったりとしている。白昼の街角での大立ち回りだ。やがて間もなくサイレン音が響き渡り、警察のパトカーが駆けつけてきた。

 僕は現場遺留品の金のメダルを見つけたことと、この状態に至るまでの経過を警官に報告し、猟奇殺人者であるリッチ親分を引き渡す。この逮捕劇により英雄点3がもらえた。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!!タイタン・シティで悪事を働く者は、この私が許さない!!!」

警官「殺人容疑でリッチ親分他2名、確かに拘束しました!」(敬礼!)

S.C.「それでは諸君、また会おう!!」(シュタタタ、と走って去る)

警官「感謝します、シルバー・クルセダー!」

 

 僕は曲がり角を走って去り、超特急の速度で手近な空きビルに入り、変身を解く。

 元のジーン・ラファイエットの背広姿に戻ったが・・・あっくそ、さっきナイフが刺さった腕からの血が滲んでいるなあ。とりあえずタオルを巻いておくか。

 ところで今何時だ?街のレストランは「ランチタイム」の札を続々と掲げ始めている。うわあ、もう午前11時半じゃないか。急いでオフィスに駆けつけないと!

 今度は僕が上司に逮捕されてしまう!!

 

 

 

すべてスーザンのせいだ! --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点10/14 運点9/10】 【英雄点3

 

 しかし世の中というのは、全く思う通りにいかないものだ。

 「パーカー、飛行場」僕の手首につけられた犯罪探知機に、情報屋の<マリファナ>ジェリーから連絡が入る。ああもう!僕はオフィスに向かう通りを離れ、逆の道を走るしかない。

 電話ボックス、もしくは公衆トイレ・・・ええい、どこかにないか!

 人目につかず変身できるところを探していると、また犯罪探知機のブザーが鳴った!よくよく今日は犯罪の当たり日らしいな!!

 

ジェリーの声「ピーター、研究所だ」

ジーン「緊急なのはどっちだ?飛行場?研究所?それとも僕のオフィス??」

ジェリーの声「さあね、自分で考えな」(ぶつ)

 

 いつものように無愛想な<マリファナ>ジェリーは一方的に通信を切る。犯罪を探知するのは自分の仕事、判断して解決するのはお前の仕事、か・・・

 僕はビルの陰のゴミ捨て場に入り、変身する準備を整えつつ考える。

 飛行場か研究所か、どっちかというと人々が多く行き交い、航空機が発着する飛行場の方が、事故った時に大惨事になりそうだな。よし!

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

 マッハ1の速度で、タイタン・シティ郊外にあるパーカー飛行場まで、僕は一直線に飛行して到着する。ここは1日に300便以上も発着回が繰り返される近代空港だが、その中枢を司る管制塔は騒然としていた。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! 諸君、何かお困りかな?」

 

(この緊迫した雰囲気で高笑いするのはどうみても場違いだと自分でも思うが、ベクター細胞が活性化すると躁状態になる副作用がある。だから哄笑するのはしょうがないのだ)

 

空港長「ああ!シルバー・クルセダー!トラブルの内容はもうお聞きになりましたか!」

S.C.「いや。しかし私が来たからには安心したまえ」

空港長「<拷問鬼>と名乗る男が、ロンドン行の満員のDC-10をハイジャックしたんです」

 

 ところがその<拷問鬼>と名乗るテロリストは何も要求してこないらしい。ただ「飛行機を墜落させてやる!」としか言わない。それから「すべてスーザンのせいだ!」とも。交信はその2つだけだ。

 これはどうやら精神異常者による自爆テロだ。スーザンという女性と、男女関係のもつれで絶望して、周りも道連れにして死んでやるというところか?

 

空港長「われわれには手の出しようがありません。あなたなら何とかできませんか?」

S.C.「スーザンという女性を探し出して、ここに連れてきて説得することは?」

空港長「無茶言わんでください。タイタン・シティに、スーザンなんてありふれた名前の女性が、どれだけいると思います???」

 

 ははは、そりゃそうだ。

 苦笑する僕。スーザンという名に全く「手がかり」がない以上、何か他の手を考えなくては。

 ところが悠長に構えているヒマはなかった。空港上空で旋回しているハイジャック機のDC-10がぐらりと揺れたのだ。

 まずい、燃料切れだ!

 僕は管制塔を飛び出す。【超体力】を用いて高度1,500mまで一気に上昇!

 そしてハイジャック機まで追いつき、非常脱出口のハッチをこじ開け、機内に突入する!

 ゴウッ!激しい空気が機内に流れる。僕は脱出口を元に戻しながら、乗客がパニックを起こさないようスチュワーデスに指示を出した。

 

S.C.「<拷問鬼>は?」

スチュワーデス「そ、操縦士を人質にしてコクピットにいます。気をつけて!」

 

 幸い、操縦席につながるドアは閉じられていて、奴は僕の突入に気づいてないようだ。時間がない、急げ!不意打ちを食らわせるべく、一気にドアをぶち破る!!

 中には2人の操縦士が壁にロープで縛りつけられ、怯えて震えていた。そして操縦席では、歯を剥き出しにしてニタニタと狂気の笑みを浮かべている、もじゃもじゃ髪の男がいる。

 こいつが<拷問鬼>か。うーむ確かに女性に嫌われるタイプの男かもしれない。

 そいつはシルバー・クルセダーの姿を見ると驚きの表情に変わる。そして「スーザンがいけないんだ!彼女が別れるなんて言うからあ!!」とわめきながら抵抗してくる!

 おそらく悪の組織によって相当なドーピングで構築されたのだろう。こいつの屈強な筋力は、それ自体が人を殺せる凶器だ。

 ぐら・・・また飛行機が揺れた。タンクに残っている燃料はあとわずか。この悪者は10ラウンド以内で倒す必要があるぞ!

 

【拷問鬼 技術点8 体力点9

1R (拷問鬼/15)(S.C./23) 拷問鬼/体力点-2

2R (拷問鬼/17)(S.C./17) Draw

3R (拷問鬼/13)(S.C./20) 拷問鬼/体力点-2

4R (拷問鬼/12)(S.C./21) 拷問鬼/体力点-2

5R (拷問鬼/16)(S.C./25) 拷問鬼/体力点-2 ←Arrested!!

 

 僕と<拷問鬼>がコクピットで取っ組み合いをしている間に・・・ガクーン!・・・ついに飛行機が急降下を始めた!

 そしてその急降下で<拷問鬼>がバランスを崩した瞬間にゴキッ!嫌な音がコクピットに響き渡った。僕が<拷問鬼>の両手両足の関節を外し、奴を無力化させたのだ。

 「へぐばああ!」<拷問鬼>は痛みで半狂乱の叫びをあげ、床に倒れてぐったりする。僕はその隙に急いで操縦桿に飛びつき「安全確保!」とスチュワーデスを呼んだ。

 スチュワーデスが走ってきて操縦士たちのロープを解き、僕から操縦を引き継ぐ。

 そしてあわやという瞬間に・・・飛行機の姿勢は立て直され・・・

 

 DC-10は無事着陸に成功した!! 

 

 ふうう!安堵のため息を一つして、僕は「スーザン!スーザァンン!!」と泣き喚く<拷問鬼>を、もう1回殴りつけて気絶させる。そして空港に駆けつけてきた警察の手に引き渡した。

 まったく人騒がせなハイジャック犯め、すべてスーザンのせいだ!

 その時だ。<拷問鬼>の胸ポケットからメモ紙がパラリと落ちた。こいつ、飛行機の無線でどこかと交信していたようだぞ。

 走り書きのメモにはF.E.A.・・・」という記号。そこにアンダーラインが引かれてある。それからその下にへたくそな字で「会合を今月27日」と書き留められていた。

 僕はしばらく調べてから、そのメモを折りたたんでベルトにしまうことにした。

 

警官「感謝します、シルバー・クルセダー!」

S.C.「それでは諸君、また会おう!!」(シュタタタ、と走って去る)

 

 僕は空港の男子トイレで、シルバー・クルセダーから普通の格好のジーン・ラファイエットに戻る。それから奴の落したメモの内容を<マリファナ>ジェリーに送信した。

 

ジーン「新しい手がかりになるかい?」

ジェリーの声「ん・・・まかしといて・・・」

 

 空港を大惨事から救った活躍により英雄点+2だが、気分は晴れない。このタイタン・シティに、何らかの悪の陰謀が進行している。そのことに気づいたからだ。

 そして落ち込む理由がもう1つ。

 現在の時刻は午後3時。これから会社に出勤しても、もはやどうしようもない・・・

 

 

 

ラッド広場の奇妙な怪物 --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点10/14 運点9/10】 【英雄点5

 

 僕は結局この日、会社に行くことなく、自宅に戻ってきた。

 テレビの前の椅子にどっかりと腰を下し、冷たいハイボールを胃の中に流し込む。ふう・・・とりあえずはリラックスできて体力点+6

 まったく何という1日だ!

 最近、僕が必要となる(呼び出される)件数が異常に増加している。前は1週間に1回くらいだったのが、今日だけで2件、昨日もそれくらい・・・おかげで僕の出勤カードは穴だらけ。ああ、明日出勤したとき、上司のジョナー・ホワイトにどう言い訳しよう?

 朝、オフィスにいちばんに出社すべきだな。そして反省と恭順の意を示しておかなければ。スーパーヒーローが失業者で職業安定所に並ぶ姿なんて想像したくもない。

 だったら早寝早起きだ・・・それから、明日は出勤するとき地下鉄を使ってみるか・・・そうすればオフィスまで15分くらい短縮できる・・・zzzzz・・・

 

 翌朝。

 僕がスーパーヒーローである限り、自分が望むとおりの生活を送ることなどできないのだ。

 「誰か助けて!」僕が乗った満員の地下鉄の車内で悲鳴が上がる。「スリだぞ!」うわあ、なんてことだ・・・また僕が必要となる事件が起こったようだ。

 僕は人込みをかき分け、ごった返している車両に向かう。 ち ょ っ と ど い て !

 何とかスリの被害に遭ったサラリーマンのところまで駆け付けた。しかしここで・・・

 BEEP!!BEEP!!犯罪探知機のブザーが鳴る!!

 

ジェリーの声「ラッド広場。緊急事態」

 

 ラッド広場というと・・・次の停車駅か。どうしよう。スリを追いかけるべきか、それとも地下鉄を下りて現場に急行するか???

 僕はちょっと考える。この満員電車の中で変身して、スリを追う?

 いやそれは無理だ。ジーン・ラファイエットが街の平和を守るシルバー・クルセダーであることは、決して知られてはならない。なのでもう一つの選択肢。僕は次の停車駅で下り、改札口を抜けて、男性用トイレの中に入る。

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

 僕は階段を駆け上って地下から地上に出る。さすがシルバー・クルセダーだ。まったく息が切れないぜ!

 ラッド広場はタイタン・シティで最も気持ちのいい場所の一つだ。涼しそうな噴水、咲き乱れるサクラの木、ベンチに座る街のご老人とにぎやかな遠足の小学生・・・そして緑の鱗に覆われた巨人・・・なんだってえ?

 噴水池の中央に、身長4mはある半魚人のような怪物が立ちはだかっている。そいつは遠足に来ていた1人の少女を口にくわえて、今まさに遅めの朝食というところだ。

 なんで街中にこんな怪物が突然現れるんだ?

 いやそんなことを考えている場合じゃない。少女を救わねば!

 

【噴水の怪物 技術点10 体力点11

1R (噴水の怪物/14)(S.C./22) 噴水の怪物/体力点-2

 僕は【超体力】を用いて宙を飛び、怪物のアゴにパンチを叩き込む。

 「ぎょうぇあああ!」そいつは驚きの叫びをあげ、加えていた少女を水の中に落とした。

2R (噴水の怪物/17)(S.C./23) 噴水の怪物/体力点-2

 「大丈夫かい?」「うん、ありがとうシルバー・クルセダー!」「くきゃあああ!」

 おっと危ない、僕は怪物の振りおろす腕をつかみ、ねじり上げる。

3R (噴水の怪物/15)(S.C./19) 噴水の怪物/体力点-2

 BASH!!GASH!! 僕は次々と拳の連打を浴びせかけるが・・・

 なんか変だぞ?こいつ、痛みを感じていないのか???

4R (噴水の怪物/21)(S.C./16) S.C./体力点-2

 くっ、しまった。迷いが出たので怪物の一撃をくらってしまった。

 集中しろ、目の前の戦いに集中!!

5R (噴水の怪物/13)(S.C./21) 噴水の怪物/体力点-2

 

 はあっ!僕が強烈なパンチを怪物の胸に叩きこんだその時だ。

 SHEEEEE・・・煙が噴き出すような音とともに、思ってもみないことが起こる。怪物が霧のごとく消えてしまったのだ!

 こうして中途半端にラッド広場の脅威は去った。僕も、そして戦いを見ていた人々も、信じられないという顔で怪物が消えたあとを見つめる・・・

 

老人「まったくこの世はどうなっておるんじゃね?」

 

 池の中に入って少女を手当てしていた勇敢なおじいさんが、ブツブツとつぶやいている。間もなく救急車がやってきて、少女は無事に搬送された。PTSDが残らなければいいが・・・

 

老人「あんな怪物はどこから来るんじゃろうか?恐ろしい悪夢以外に、あんな怪物は見たことがない。きっと最近流行の新技術とやらじゃのう!宇宙では恐ろしい兵器を作り、地上では怪物を作っておる。フン!」

 

 救急用具がないため仕方なく老人が血止めに使った新聞紙には「大統領、SDI計画を公表。宇宙開発競争で東側諸国を一歩リード」との、勇ましい見出しが躍っていた。

 最近流行の新技術・・・?宇宙での恐ろしい兵器・・・?

 そして最近の、タイタン・シティの著しい犯罪増加・・・

 

老人「わしにはあまり寿命が残っておらんが、それがときにはありがたくもある!」

S.C.「そんなこと言わないで、長生きしてください、ご老人!」

老人「ふむ・・・ですがクルセダーさん、わしらを助けてくれたことには感謝しておりますぞ。あんたは、わしらみんなの命の恩人じゃ!」

 

 老人はそう言うとニカッと笑い、バンバンと僕の肩を叩いてくれた。

 何はともあれ少女を救い、老人をはじめ広場の人々に感謝された僕は英雄点+2さらには群衆に囲まれてサインをせがまれ、赤ん坊にキスをして記念写真を撮ったりなど、ここで10分ほど市民への義務を果たすことになった。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! タイタン・シティのみなさん、交通ルールを守りましょう!」

群衆「きゃあーークルセダーさん、サインしてぇー!」

S.C.HA-HA-HA-HA!! 少年少女の諸君、知らない大人についていってはいけないよ!!」

小学生「今度僕たちの学校に来てよ、シルバー・クルセダー!」

 

 僕の庶民的な防犯啓蒙活動はいい宣伝になった。これでさらに英雄点+1を獲得だ。中には、高名なスーパーヒーローに何かを売りつけようとするいかがわしいネズミ顔の男もいたが、僕はこれを無視することにした。

 これ以上ラッド広場でやることはない。奇妙な怪物への疑念をそのままにして、僕は地下鉄の駅に戻る。

 そしてさえない瘦せっぽちのジーン・ラファイエットの姿に戻り、戦々恐々と会社に向かう・・・

 

 

 

素敵な同僚エルザ --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点9/10】 【英雄点8

 

ジョナー「ラファイエット。私の部屋に来い。す・ぐ・に・だ!」

 

 僕がオフィスに入るやいなや、上司のジョナー・ホワイトの怒声が轟き渡る。クスクス笑う周りの同僚。中でもその一人、明るいイタリア系移民の娘で同期入社のエルザなんかは、喉元に手をやり、首をかっ斬られる仕草までしてからかっている。

 大きなお世話だ・・・

 僕は恐るべきホワイト課長の部屋にそろそろと入っていく。もごもごと言い訳を口にしようとした瞬間に・・・

 

ジョナー「もうたくさんだ!お前は我々がここで何をやっておると思っとるんだ?慈善事業か?お前様に出勤いただいたことに、私が感謝するべきだと思っとるのか?しかもわざわざ私の部屋までお越しいただけるとは、実に何とも、ご立派なお方じゃないか!いいかよく聞いとけよ。私は今日は親切な気持がしとるのだ。休暇をとって休んでもいいぞ。無給でな!それから、もし明日の朝いちばんに来れなかったら他の職を探し始めることだな!!」

ジーン「 ・・・ 」

 

 息も切らさぬ嘲りと罵りの絨毯爆撃が約30分。そして僕はフラフラになって上司の部屋を出た。僕は何も言い返すことができない。だってどうしようもないじゃないか、僕がここに来るまでやってきたことを、どうして彼に説明できようか?

 ふう、一息入れよう。僕は廊下の自動販売機で缶コーヒーを買い、ちびっと飲みながら呟く。

 

ジーン「まったくスーパーヒーローってのは孤独な・・・」

エルザ「しょぼくれてるねジーン君!孤独がどうしたって?」

 

 うわっと!驚いて缶コーヒーをこぼしそうになる。

 僕の職場の同僚、エルザ・マルティーニが背後に迫っていた。僕と違って彼女は成績優秀。同期の中で営業成績第1位だ。僕らの仕事は清掃用具全般のセールスなのだが、彼女の--そう、まるで南イタリアの太陽のような--陽気なセールストークと猫を被ったスマイルに、商店主や金持ち主婦はついコロッと購買に転じてしまうのだ。

 そして彼女は主導権を完全に握って、ネズミをいたぶる猫のように僕をしょっちゅうからかってくる。今日くらいはそっとしておいてほしいのに・・・ああ・・・。

 

ジーン「やあエルザ、何でもないよ、ははは・・・」

エルザ「君、相当ヤバイよ。何でいつも休みがちなの?」

ジーン「いや、それは、ちょっと病気がちでゴホゲホ!」

エルザ「ふーん・・・」

 

 エルザは大きく澄んだ目で僕をじっと見て、身体を寄せてくる。

 うっ、仕事振りから察する通り、彼女はスゴク勘もいいんだ。僕の正体がバレないように気をつけなければ。さっきは危ないところだった・・・

 

エルザ「ま、大人しく机に戻って仕事するしかないわね」

ジーン「それが・・・今日はもう帰っていいってさ。1日停職処分になったんだ」(肩をすくめる)

エルザ「あら、まあ!可哀想というか、羨ましいというか・・・」

ジーン「ハハハ、じゃあ、僕はこれで・・・」

 

 そろーっと彼女の脇を抜けて会社のビルを出ようとする。さっさと自分のアパートに帰るとするか。まったく、何のためにここまで必死に駆けつけてきたんだか・・・

 ところが背後から「ジーン、ちょっと待って!」とエルザの声が響いた。

 

ジーン「ま、まだ僕になんか用が・・・?」

エルザ「ウィズニーランド遊園地。知ってる?」

 

 知ってるも何も、タイタン・シティでいちばん有名なテーマパークじゃないか。ネズミのウィッキーは全世界の人気者だ。

 

エルザ「そこのアトラクション責任者がスーケイ・ベナオヤージっておっさんなんだけど、おバカな大学生のアルバイトでも扱えるような新型掃除機の入れ替えを計画しているの。非常にセクハラおやじだから私は願い下げだけど、男のあんたならビジネスチャンスなんじゃない?」

ジーン「エルザ・・・」

エルザ「あの嫌味な上司を見返してみなさいよ、男なら!」

 

 エルザはパァンと、ファイルで僕の頭を叩いてくれる。もちろん激励の意味で・・・だよな?

 

ジーン(握手して)「ありがとう!このお礼はきっといつか・・・」

エルザ「ミュージカルがいいなぁ!」

 

 なぬ?

 

エルザ「今夜、ナローウェイでミュージカルRATSが初演日なのよ。知ってる?私の大好きなアンドリュー=ロイド=バーウェーの最新作よ」

 

 それなら知ってる。地下鉄に宣伝広告も出ていたな。劇評家も絶賛してたって・・・

 だけどお礼はさっそく今日じゃなきゃ、だめなの?

 

エルザ「開演1900だとチケット当日券は1600販売開始でしょ、並びたいけど、私、まだその時間お仕事があるのよねえ。どこかの誰かさんと違って・・・」

ジーン「わかった、わかったよ。並んどくさ。チケットを劇場前で渡してあげるよ」

エルザ「サンキュー!ジーン・ラファイエット!あなたは私のスーパーヒーローだわ!!」

 

 ぎくうう!どうしてそう、心臓に悪い冗談を次々と発射してくるんだ。この娘は!

 こうして僕はエルザと約束を交わし、夕方1830にナローウェイストリート劇場前で会う約束をした。もちろんチケット確保係は、僕。

 そのためには1600のチケット開始列に並んで・・・その前に、今は1100ちょっと過ぎだから・・・時間は十分にあるな。頼りになる素敵な(そしてちゃっかりしてサディスティックな)同僚エルザ・マルティーニの教えてくれたせっかくのチャンスだ。少しは会社の役に立つところを見せておかねば。

 僕はジーン・ラファイエットの姿でウィズニーランド遊園地に向かうことにした。市場調査だ!

 

 

 

怪盗「ふざけ魔」の新居 --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点9/10】 【英雄点8

 

 僕はモノレールに乗って、有名な遊園地のウィズニーランドへ向かう。

 50年前ウォルト・ウィズニーが考案したキャラクター「ウィッキーマウス」は、瞬く間に世界の人気者になり、映画とか漫画とか莫大な版権使用料のおかげで、このテーマパークは建てられた。

 そこかしこに黒くて円い耳をして肌色の顔をしたネズミやら、目つきが悪くガァガァがなり立てるダチョウやら、他にも犬やら象やら鹿やら、子供受けしそうないろんなキャラクターのぬいぐるみが、ぴょんぴょんと跳ねまわっている。

 そんな綿アメやホットドッグの香りが漂う中、子供たちが歓声を上げながら僕を追い抜いていく。思わずウキウキしてしまうが・・・

 いや、遊びに来たわけじゃないぞ、同僚のエルザに教えてもらった通り、アトラクション責任者のベナオヤージさんに会って、うちが取り扱っている新型掃除機の素晴らしさをプレゼンテーションしなければ!

 しかし、アポなしで突撃していったセールスマンは、1枚の看板で追い返されてしまった。

 

 【ただいま昼食中】

 

 うーん、しょうがないか。1時間か、2時間後にまた来よう。

 そういうわけでこの遊園地の中をブラブラする。西部開拓時代の汽車を模して、岩をくり抜いて走るジェットコースター「スモールサンダー・マウンテン」が鋭いカーブを切るたびに、客たちの楽しそうな悲鳴が聞こえてくる。

 僕もどこかに入ってみようかな、だけどあまり行列に時間がかかるのは嫌だし・・・あ、あそこはひっそりとしている。時間つぶしにちょうどいいかも。ちょっとのぞいてみようか。

 ええっと、この施設の名前は・・・「びっくりハウス」か。お化け屋敷というか、鏡の館というか、そんな趣向で客を驚かせ、楽しませるアトラクションらしい。

 チャリン・・・入場料のコインを支払って、僕は「びっくりハウス」に入館する。狭い通路を進み、暗い曲がり角を回ると・・・「ワハハハハ!!」うわびっくりした!

 目の前に青白く光る骸骨が現れたのだ。ふうん、子供だましだけど、よくできた仕掛けだなあ・・・と少し苦笑する。そしてさらにまた一歩踏み出したら・・・

 

 ヒューーーーン!どさっ!!

 

 いきなり僕は落とし穴に落ちてしまった。

 すごい落差だ。3mくらいはあった。下にはスポンジマットがあったから怪我しなかったけど、子供とか老人とかには、危ないんじゃないか???

 それに穴の中は全くの暗闇。遊園地のアトラクションにしては少し危険すぎる。あとでベナオヤージさんに意見を伝えようかな。いやでも余計な事を言って機嫌を損ねても困るし・・・

 そのとき、僕の背中にそっと手が触れた!

 驚いて飛び上がって振り返ると、暗闇の中から声がする。

 

男の声「ああよかった!他にも人がいた!私は2時間もここにいるんですよ。出口が見つからなくてね!」

ジーン「2時間?それはもうアトラクションじゃない。監禁というレベルですよ???」

男の声「そうなんです、その上財布まで無くなってしまって。しかも計画的にね・・・」

 

 迷い込んで途方に暮れていた被害者の男は、タイタン・タイムズ紙の新聞記者だった。名前はグラント・モーレイ。このところ世間を騒がしている怪盗「ふざけ魔」の正体を暴露するために取材をしていたそうだ。

 そして今日、ウィズニーランドの大観覧車で“取材協力者”からヒントをもらい、この館におびき寄せられて・・・

 

ジーン「落とし穴に嵌って、有り金を全部巻き上げられた、ってわけですか」

グラント「そうです、今思えば、あの取材協力者こそが・・・」

 

 ふざけ魔、だった・・・

 奴は悪どいイタズラが得意な変装の天才だ。この調子で遊園地に来た客から小づかいを巻き上げているんだろう。愉快犯を気取りながら。

 さて、ここにいてもしょうがない。僕とグラントは手分けして穴の底をくまなく調べる。すると・・・びっくりハウスの大広間に通じる隠し扉が見つかった!

 

グラント「やれやれ、助かった!」

ジーン「よかったですねモーレイさん。さあ、早くこのドアから出てください」

グラント「あれ?あなたは出ないのですか??」

ジーン「いやまあ、僕は暗闇の方が落ち着きますんで・・・ハハハ・・・」

 

 意味不明な僕の言い訳にグラントは小首をかしげつつ、穴の外に出た。バタンと隠し扉が閉まり、穴の中はまた真っ暗だ。うん、しっかり閉まっているな。これなら変身を見られることもないだろう。ならば!

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

  

 スーパーヒーローのシルバー・クルセダーに変身した僕は、【超体力】を用いて落とし穴を難なく飛び越え、そのままびっくりハウスの天井を突き破る!

 そう、この建物はウィズニーランドのアトラクションなんかじゃない。その中に紛れるようにして造られた、怪盗「ふざけ魔」スカーレット・ブランクスターのアジトだ!

 そして僕はこれまでの活動で、前もって彼に関する「手がかり」を得ている。

 

 『君が彼の新居の近くにいて、しかも彼を探す機会を与えられたときは、その項の数から50を引いた新しい項へ進んで、彼を探すこと』

 

 シルバー・クルセダーの【超体力】が、びっくりハウスの円屋根まで一気に突き破る。

 情報通りそこには、カラフルなピエロの服を着た男がいた。奴は驚いて飛び上がると、自分がつかんでいた紙切れを--証拠隠滅したいのだろう--丸めて自分の口の中に押し込もうとする。

 だがそのスピードは遅い!

 胸にチョップ一閃ぶち込むと、奴はゲホッと紙切れを吐きだした。僕はふわりと空中飛行して、地面に落ちようとしていたそれをつかむ。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! もうここまでだ、ふざけ魔!」

ふざけ魔「よくもミーの新居を壊してくれたザンスね!」

S.C.「君の新居だって?遊園地のアトラクションだと思っていたよ??」

ふざけ魔「なぬうう?」

S.C.「ずいぶんうらぶれた、さびれて人気もない、センスの悪い建物だな。と考えていたんだが?」

ふざけ魔「キイイイ!へらず口を叩くなザンスーー!!」

S.C.「貴様に似合う住まいは刑務所さっ!」

 

 奴はウサギのようにピョンピョン飛び跳ねながら、僕に襲いかかってくる。そのアクロバットとバランス能力は素晴らしいが、所詮は弱い者いじめしかしていない奴だ。シルバー・クルセダーの正義の力の前では、ただの見世物だ!!

 

【ふざけ魔 技術点9 体力点8

1R (ふざけ魔/17)(S.C./19) ふざけ魔/体力点-2

2R (ふざけ魔/16)(S.C./21) ふざけ魔/体力点-2

3R (ふざけ魔/18)(S.C./19) ふざけ魔/体力点-2 ←Arrested!!

 

 僕はこのふざけたピエロを終始圧倒して殴りつけ、最後は屋根から突き落とす。

 奴はガマ蛙のようにグエッと一声鳴きながら空中を落下・・・そして、地面にめり込み、気を失ってしまった!!

 

 

 

敵の名は恐怖(FEAR --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点9/10】 【英雄点8

 

グラント「と、と、特ダネだぁー!スクープだぁーーー!!」

 

 怪盗「ふざけ魔」を追って、びっくりハウスで僕といっしょに迷い込んでいたタイタン・タイムズ紙記者のグラント・モーレイは、取材目標の逮捕の瞬間を目撃して大興奮だ。

 崩壊した天井から降りかかる土煙もなんのその、手帳とボイスレコーダーを持ってシルバー・クルセダーの姿をした僕に対して突撃取材してくる。素晴らしきマスコミ魂だ。

 

グラント「シルバー・クルセダー!新聞の者です。怪盗ふざけ魔の捕縛について、一言!!」

S.C.「いやあ、楽な仕事だったね。タイタン・シティの平和を乱す輩は、何人だろうとこの私が相手になってやる!Mr.グラント・モーレイ、君の新聞にそう書いてくれたまえ」

グラント「素晴らしいお言葉です!・・・あれ?なんで私の名前をご存じなのですか??」

 

 ぎくっ!

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! さらなる悪が進行中だ。では私はこれで失礼!!」(シュタタタ)

グラント「あ、ちょっと・・・」

 

 ふう、危なかった。彼がタイタン・タイムズ紙の記者だと名乗ったのは、僕が変身前のときだったっけ。危うく自分の正体がばれるところだった。

 そういうわけで僕は、気絶した怪盗「ふざけ魔」スカーレット・ブランクスターをさっさと警察に引き渡し(英雄点+3、逃げるようにウィズニーランドを後にする。

 ああ、そういえばアトラクション責任者のベナオヤージさん・・・まあいいか、またいつか会いにくれば・・・。

 

 モノレールと地下鉄の連結ステーションにあるコインロッカーで、僕はシルバー・クルセダーの変身を解き、ジーン・ラファイエットの姿に戻る。

 そういえば戦いの前に、「ふざけ魔」が慌てて体内処分しようとした、このくしゃくしゃになった紙切れ・・・何が記してあるのだろう?

 唾液でベトベトしているのに顔をしかめつつ、僕は開いてみる。

 

 『忘れるな。会議は午前9時に始まる。 FEAR

 

 奴は親玉からの連絡、というか集合指令を受けていたようだ。発信元は以前<拷問鬼>を捕まえたときに拾ったメモと同じマーク。だが今度は完全に識別できる・・・

 F-E-A-R(恐怖)?

 僕は手首に装着している犯罪探知機で、陰の情報協力者である<マリファナ>ジェリーを呼び出した。

 

ジーン「こちらSC。はっきりわかったよ。タイタン・シティに引き寄せられている悪人どもは、親組織に統括されて集合指令を受けている。キーワードはFEAR(恐怖)・・・これで何か、つかめる?」

ジェリーの声「こちらマリファナ。もう調べ済みだ。そのイニシャルは“恐怖結社”だ」

ジーン「きょうふけっしゃ?」

ジェリーの声「ああ。正確には“ヨーロッパ・アメリカ破壊連合(the Federation of Euro-American Rebels)”略してF.E.A.R.・・・破壊と殺戮の犯罪集団だ。世界の西半分の裏側社会を統括する秘密結社さ」

 

 僕の背筋に冷や汗が伝う。

 

ジェリーの声「彼らは総会を北アメリカの要所たるこの都市で開き、新たなテロの陰謀を画策するはずだ」

ジーン「どんな陰謀?奴らは何を企んでいる??」

ジェリーの声「おいおい、それを突き止めるのが・・・」

 

 そうだ、僕の仕事だ。一刻も早く調査する必要がある。

 今月の27日、午前9時。それが奴らの総会の開催日時であり、僕のタイムリミットだ。

 それまでに奴らの計画を暴かなければ・・・だけど・・・とても困難なことかもしれない。思わずため息が出てしまう。

 

ジェリーの声「ま、できるだけバックアップする。一人でしょい込むな。俺たちはチームだ」

 

 僕の沈んだ気持ちを察して<マリファナ>ジェリーは気の毒そうに声をかけてくれた。

 いつもはクールな彼なのに、こんなのは滅多にないことだ。裏返せば、そんな彼が励まさなければならないほど、厳しい事態であるということか・・・。

 

ジェリーの声「気をつけろよジーン。キューバ危機、トンキン湾事件、文化大革命、テヘラン米大使館占拠、アフガン侵攻・・・世界史が書き変わるような物騒な大事件は、F.E.A.R.の総会後にことごとく起こっている」

ジーン「まさか!」

ジェリーの声「あくまでも噂さ。だけど奇妙な合致だ。無視できない」

 

 この広いタイタン・シティに蠢く巨大な悪の奔流に、今のところ有効に立ち向かえるのは、シルバー・クルセダーである僕一人だけ・・・僕一人だけで大丈夫なのか?

 心なしか、今、街で歩いている人々すべてが犯罪者で、僕をつけ狙っている目つきをしているように感じる。

 

ジェリーの声「幸運を祈る。再度繰り返すが、俺たちはチームだ」

ジーン「うん、お互いにベストを尽くそう」

ジェリーの声「ああそうだ。ついでに調べたところ、A席ならまだ空きがあるぞ」

ジーン「・・・え?」

ジェリーの声「ナローウェイストリート劇場、もうすぐ1600だ」

ジーン「あ!」

 

 思わず時計を見ると1545。ミュージカルの当日券を確保する約束を、同僚のエルザとしていたんだ。すっかり忘れていた。

 

ジェリーの声「よいデートになるといいな。こっちも幸運を祈る」(ぶつ)

ジーン「いやこれは単なるビジネス情報のバーター交換・・・あ、切りやがった・・・」

 

 僕は急いで地下鉄に飛び乗って、ナローウェイストリート劇場にたどり着く。そして長蛇の列に並び、何とかミュージカル“RATSのチケットを1枚確保した。

 そして開演30分前に彼女が現れる。

 いや実は、服も化粧もアクセサリーも、いつものオフィスでの恰好じゃないキンキラキンだから、最初は全く気づかなかった。ハンドバックで頭を小突かれてやっと彼女だとわかった。

 

ジーン「ひょっとして・・・着替えてきたの?」

エルザ「当たり前でしょ、ここは天下のナローウェイよ!さあ入りましょう!!」

ジーン「でもここにあるチケットは君の分、1枚だけだ」

エルザ(地団太を踏みならして)「ああもう!ちょっと待ってて!!」

 

 エルザは僕からチケットをむしりとり、劇場付近でたむろしているダフ屋に声をかけ・・・

 その巧みな話術と笑顔で・・・

 

エルザ「A1枚がB2枚になったわ。さあ行きましょう」

ジーン「ふうん、さすが仕事が早い・・・って、僕も!?」

エルザ「あのねジーン、劇場ってのはレディが1人で入るとこじゃないの、わかる?」

 

 こうして僕は彼女に引きずられるようにして劇場の中に入る。

 明日も絶対あるだろう、激烈な悪との戦いに備えて、今晩は自宅でゆっくりしたいところなのに・・・ああ・・・

 

 

 

劇場内ではお静かに!! --Appointment with F.E.A.R.--

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点9/10】 【英雄点11

 

 舞台から遠くてはじっこのB席ながらも、RATSは意外とおもしろかった。

 勇気ある街ネズミの一団が、海ネズミの助けに応じて、島を脅かすイタチ軍団を成敗するという大筋だ。僕でもわかるくらいのストーリーなのでハラハラしてしまう。

 隣に座っている同僚のエルザはメロディラインにうっとりと聞き惚れている。主演女優のローラ=マンチェは、劇評家の推薦文通りに素晴らしい美声を披露しているのだ。

 そしてフィナーレ。悪いイタチ“カース”はついに倒された。ローラ=マンチェ演じる“シウォージィ”は勇士のネズミたちの前で抒情たっぷりに歌うのだ。

 

ローラ「 ♪ Moonlight あおぎみて 月を ・・・ きゃあ! 」

 

 彼女の歌は唐突に終わる。蛇の扮装をした男優が彼女を抱えあげ、舞台そでに走り去っていったからだ。いきなりの展開に呆然と立ち尽くす共演者のネズミたち。

 ふうん、凝った演出だなあ。まだここからひと波乱あるのかな?

 と、初めのうちはそう思っていた。だが・・・

 

エルザ「おかしいわね、こんなシーン原作本にあったかしら?」

 

 エルザがパンフレットをパラパラめくって「ヘビ男」役の男優は誰なのかチェックするが・・・載っていない・・・客席がザワザワし始める・・・あっ、そうか!

 

エルザ「ちょ、ちょっとジーン、どこ行くのよ!」

ジーン「ごめん、ちょっと、トイレ!」

 

 主演女優が悪人に誘拐されたのだ!! 

 こうしてはいられないぞ。僕は劇場ロビーに出て、故障している自動販売機の裏側に隠れる。ここなら誰にも見られない死角だ。そして・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

ホールの人(口に人指し指を当てて)「ちょっと、シルバー・クルセダーさん」

S.C.「む?」

ホールの人「公演中はお静かに!例えスーパーヒーローでも、マナーは守ってください!」

S.C.「いや、これは失敬。申し訳ない」(ぺこりと頭を下げる)

 

 劇場関係者に怒られてしまった僕は、シルバー・クルセダーの姿のまま、ションボリして肩をすくめ、芝居が終わって照明がつくまでロビーに用意された長椅子に座ってるしかない。

 じりじりと経過する時間が・・・2分・・・3分・・・

 ここで運試し、吉。

 劇場内で騒いではいけないけど、外でならOKだということに気づいた。

 ナローウェイストリート劇場の外周をぐるぐる巡回しながら、誘拐犯が出てくるのを待ち構えるとしよう。作戦変更だ!!

 

 そして10分後・・・ビンゴ!!

 1つの扉が開き、蛇のマスクに安っぽい緑色の衣装をつけた男が、ローラ=マンチェを片腕に抱えて出てくる。奴は歪んだ笑みを浮かべ、口からはシューシューと音を発している。マスクなんかじゃないぞ、あれは本物の蛇の頭部だ。こいつは改造人間の怪人ヘビ男なのだ!

 

ローラ「ムググ!ムグググ!!」(猿ぐつわをされている)

ヘビ男「シュー!我ながらお手柄だシュー!これで俺様もF.E.A.R.の幹部に昇進・・・うっ!」

 

 ヘビ男はギクッとして立ち止った。正面に僕がマントをひるがえして立ちはだかったからだ。

 

S.C.「ネズミを大好物にしているのは、蛇。では、悪人が大好物なのは???」

ヘビ男「シュー!シュー!」(牙をむいて威嚇)

S.C.「この私、シルバー・クルセダーだ!HA-HA-HA-HA!!

 

 劇場脇の狭い路地裏で、僕とヘビ男は戦闘に突入!

 気をつけろ、ヘビ男は強力な秘密兵器「毒牙」を持っている。ダメージを受けたらさらに1d6を振り、12だと技術点-1になってしまうのだ。だが!しかし!!

 

【ヘビ男 技術点8 体力点8

1R (ヘビ男/18)(S.C./18) Draw

2R (ヘビ男/13)(S.C./17) ヘビ男/体力点-2

3R (ヘビ男/13)(S.C./19) ヘビ男/体力点-2

4R (ヘビ男/17)(S.C./19) ヘビ男/体力点-2 ←Arrested!!

 

 しょせん【超体力】の敵ではない!

 僕はさんざんにヘビ男を痛めつけて無力化する。

 奴は苦しげにうめき「許してくれえ、見逃すなら情報をし教えてやるシュー・・・」と懇願してくる。だが正義の味方はそんな取引には応じないのだ。さらにギリギリと締め上げて白状させる。さあ、お前が知っていることを洗いざらい、しゃべれ!!

 口から泡を吹きながら、ヘビ男が切れ切れに漏らした「手がかり」は、以下の2つ。

 

F.E.A.R.の幹部の一人は、<虐殺鬼>イリヤ・カルポフである。

F.E.A.R.は、2日後にタイタン・シティへ到着する大統領を暗殺する計画を練っている。暗殺者はリージェント・ホテルの屋上に隠れることになっているのだ。

 

 !!!・・・2つ目はものすごく重要な情報だ。

 

 (これにより、大統領が到着する場所に駆けつけたとき、暗殺者を逮捕するために、

  その項の数から100を加えた項に進むことができます)

 

 僕はおっとり刀で駆けつけてきた警察に怪人ヘビ男を引き渡す。F.E.A.R.の準備した陰謀を暴く情報を得た僕には運点+2が与えられた。

 そしてさらに特別ボーナス・・・KISS救出されたローラ=マンチェが、感謝してほっぺたにキスをしてくれた!英雄点+2だ、ヒャッホー!

 まったく忙しい毎日だが、あんな美人女優にキスされるなんて、役得もあるんだなあ。

 僕はジーン=ラファイエットの姿に戻ると、ホクホクして劇場内に戻り、自分の席に戻る。長い間置き去りにされた隣のエルザは、ぷんすか怒っていた。

 

ジーン「やあ、おまたせ」

エルザ「ちょっと、もう、お芝居終わっちゃったわよ・・・って、あ!」

 

 彼女は僕の顔を見てワナワナと震えている・・・ん、なんか付いてるの?・・・顔を手でぬぐってみると、袖についているのは・・・あれれれ??

 まさか活性化していたベクター細胞が元に戻っても、皮膚に付着した口紅は消えないなんて!

 そんなこと聞いてないよ!実験データ不足だ!!

 

エルザ「もう、サイッテーだわ、ジーン・ラファイエット!!」

 

 彼女は僕の頬についたキスマークの上に、ジャストミートで・・・バチーン☆

 

 

 

フローレンス叔母さんのお誘い --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点10/10】 【英雄点13

 

 やれやれ、ひどい1日だった・・・。

 非力なジーン・ラファイエットの姿(技術点7)である僕は、エルザの平手打ちによる直撃弾を受け、頬に赤い手形をつけながら1人しょぼくれて自宅に戻るしかないのだった。

 アパートに戻るとポストに手紙が1通届いていた。

 宛名は・・・あっ、フローレンス叔母さんからだ。

 彼女は、僕の(一応名目上は)母であるグレイスの妹で、タイタン・シティの郊外にある閑静な住宅地コクニー・グリーンに住んでいる40代のたおやかな女性だ。

 僕が「目覚めた」あと、スイスに隠遁した研究者の父ヘンリーと母グレイスに代わって、大学時代何かと資金援助や食料援助をしてくれた。もちろん一介の主婦なので、両親が行っていた研究も、僕の正体も知らない。ジーン・ラファイエットのことはちょっと不器用な甥っ子だと思っている。

 料理とガーデニングが趣味で、どこか癒される感じがして、子供のころは彼女の家へ遊びに行くのが楽しみだったなあ・・・と甘酸っぱい思いとともに、封筒を開ける。

 

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 元気ですか?

 この前スイスに旅行してきて、あなたの父さんと母さんに会ってきました。

 いろいろお土産をもらってきたので、仕事帰りにでも取りにいらっしゃい。

 久しぶりにケーキを焼きました。いつでもどうぞ。

 あっそうだ。できたら、シュター・モールでハンドクリームを買ってきてほしいわ。

 コクニー・グリーンではなかなか肌に合うのが見つからなくて。 お願いね! F

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 都会の孤独に疲れ果てているときに、僕のことを温かく見守っている人がいるのを再確認して、思わず涙が出そうになる。

 大統領の訪問予定日は明後日だ。その日はシルバー・クルセダーになって敵の陰謀を阻止しなきゃいけないけど、明日は比較的自由な時間がある。よし、邪魔が入らなければ、会社帰りに寄ってみようかな。

 スーパーヒーローにも休息は必要だ・・・。

 

 翌朝。

 

 たっぷり睡眠をとった僕は会社に行く。

 

 犯罪探知機は全く沈黙したままだ!ブラボー!!

 

 何と僕は上司のジョナー・ホワイトよりも先に出社することができたのだ。せっせと仕事を片付けている僕を見て、目を丸くするジョナー。

 そして昼休み。会社の廊下で、昨日なぜか強烈な一撃を見舞ってくれた成績トップの同僚、エルザ・マルティーニとすれ違う・・・うっ、気まずいぞ・・・

 ところが彼女はいつもの陽気な調子で、おどけてインディアンの挨拶の真似などしながら、僕の背中をパンとファイルではたいた。

 

エルザ「ハウ!」

ジーン(びくっとして)「や、やあ、エルザ。昨日は・・・」

エルザ「いいのよもう。だけど、他の娘とデートしてたんなら、そう言って欲しかったわ」

ジーン「そうじゃないんだ。えっと、トイレのあと、ロビーの椅子でウトウトしていたら、悪ガキにいたずらされてしまったんだ。顔に落書きされたの気づかなくてさ」

 

 我ながらすさまじく苦しい言い訳だ。だけど、美人女優に感謝のキスを浴びせられたと告白するよりかは、まだましだとは思うが・・・。

 彼女は会社の仕事でいろいろと僕を助けてくれる。数少ない味方を減らすわけにはいかないぞ。ここは下手に出といた方がいいな。殴られた僕が謝罪するのも情けない話だが、つい頭を下げてしまう。

 

ジーン「確かに長い時間、君をほったらかしにして、悪かった。謝るよ」

エルザ「ふうん・・・」

 

 エルザは近づいて僕の顔をまじまじと見る。「なんか隠してない?」と探るように、大きな瞳の中に僕の姿が映っている。そしてふっと溜め息をついた。

 

エルザ「まあいいわ。いきなりミュージカルなんて、君には難しかったかもね。もっと男の子の趣味に合わせた・・・(ぶつぶつ)・・・」

ジーン「あ、あれ、エルザ・・・?」

エルザ(パッと思いついて)「そうよ!明日は土曜日、NFLだわ!!」

 

 いいっ?

 

エルザ「タイタン・タイガースvsメトロ・モホークス。取引先から券を2枚もらっちゃったんだけど、私の女友達は汗臭いアメフトなんて願い下げだって言うし、よければ、どう?」

 

 えっと、明日は、大統領暗殺を阻止しなければならないんだけど!!

 

エルザ「なに、その顔???」

 

 あ、いや、思わず壁に背中をつけ、タジタジとなる僕に向かって、エルザがズイッと迫る。

 

エルザ「よ・け・れ・ば・ど・う・?」

ジーン「はいっっ!」

 

 なんだかよくわからないけど、彼女の勢い、というか気迫に押されて、ついうなずいてしまう。

 というわけでエルザと僕は、明日の昼間にアメフトの試合を見る約束をかわした。待ち合わせは正午、タイタンズ・スタジアムの5番ゲート。

 うーん大丈夫かな?このゲーム、キック・オフは1300だろ。新聞報道では、大統領がレセプションでタイタン・シティに到着するのは1900頃らしい。

 試合終了後、さっさと彼女と別れて・・・何とか現場に駆け付けられるかな・・・

 

エルザ「それじゃあ、明日ね、ハウ!」

ジーン「は、はう・・・」

 

 僕と約束を取り付けたエルザは、足取り軽く外回りの営業に出かけていった。

 気楽なもんだよ一般人は!!

 オフィスに残された僕はそんなことを心の中で呟きながら、バリバリと事務仕事をこなし、いつの間にやら午後5時。

 今日は本当に平和だった!何も事件がなくて、そして彼女と仲直りできて、運点+2だ(だけど運点は原点になっているので、このままです)。

 

 オフィスを出て仕事帰りに、一応警察署に向かいつつ、<マリファナ>ジェリーへ今日の犯罪発生状況について質問してみる。

 だけど彼が抑えている情報も、暴力スリ、押し込み強盗、自動車泥棒、刑務所の脱獄、エトセトラエトセトラ・・・いたって普通のタイタン・シティだ。それらの事件はシルバ-・クルセダーが出向くこともなく、すべて警察が解決してしまうだろうということだった。

 

ジェリーの声「だけど油断するなよジーン・ラファイエット。悪の秘密結社F.E.A.R.は、お前と同じく今日1日、エネルギーを充填したということだ。おそらく明日が山場だな。忙しくなるぞ・・・」

ジーン「うん、お互いがんばろう!」

 

 僕とジェリーは通信を切り、今夜はそれぞれのやり方で英気を養うことにする。

 ジェリーはおそらく、コンピュータゲームとかでリラックスするんだろうな。それとも最近流行っているゲームブックかな?「火吹山の魔法使い」とか・・・

 さてそれでは、僕もフローレンス叔母さんのところに出かけて、おいしい夕食をごちそうになるとしようか。

 あっと、その前にショッピングセンターのシュター・モールで、叔母さん御用達のハンドクリームを買っておかなきゃ。

 

 

 

ショッピングセンターの激闘 --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点10/10】 【英雄点13

 

 シュター・モールは何百種類のもの店が広大な敷地に並んでいる、タイタン・シティNo.1のショッピングセンターだ。およそ世界中のあらゆる品物が手に入る場所と言っていい。

 そしてその中の薬局に行って、フローレンス叔母さんが指定した銘柄のハンドクリームを1セット、お土産で購入しようとした僕は・・・

 「きゃあー!」女性店員の悲鳴にハッとする!

 薬局の周りにできた人込みをかき分けてみると、堂々と店に押し入った強盗がいた。そこでは2人の男が薬品棚をひっかきまわし、もう1人の男は、恐怖に震える一般客を部屋の片隅に追い詰めている。

 こいつら3人がただの強盗と違うところは・・・

 1人は4本腕の男、もう1人は虎の上半身をした獣人。そして一般客を威嚇して「私の研究活動にご支援を頂戴したい!!」と金品を巻き上げている男は・・・

 天才外科医<Dr.死神>じゃないか!

 <Dr.死神>は生体移植手術の権威だが、世界は彼の進歩についていけず、彼の施す改造手術は犯罪と見なされている(彼の開発した2人の手下を見れば、わかる通りだ)。なので医学界から孤立している彼は、研究資金と薬品材料の調達を兼ねて、たくさんの人と金が集まる場所にやってきたというわけだ。

 彼の開発した凶悪な改造超人どもに、ショッピングセンターの警備員や警察が立ち向かえるはずがない。そう、今こそシルバー・クルセダーの出番だ!

 僕は店の倉庫に隠れ、誰もいないのを確かめてから・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

4本腕の男「むむ!貴様は!!」

タイガー・マン「シルバー・クルセダー!ガウー!!」

Dr.死神「君の身体に漲るベクター細胞因子・・・素晴らしい・・・実に素晴らしい実験材料のお出ましだ!フハハハハっ!!」

 

 こっちは1人。敵は3人。高らかに笑って優勢を誇示する<Dr.死神>。

 だが【超体力】を有する僕にはちょうどいいハンデだ。ゆったりと、余裕を持って挑発に乗る。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! 残念ながら悪人どもと出会えた今日、私はすこぶる気分がよくてね。君の診察は必要としていないのだよ!」

Dr.死神「君が健康かどうか、身体を切り開けばわかることだ・・・(にやりと笑いつつメスを舌なめずりして)・・・さあお前たち、やってしまえ!!」

4本腕の男&タイガー・マン「イーッ!」

 

 僕は店の中で<Dr.死神>及び手下の改造超人2体と大立ち回りを演じることになる。薬局の陳列棚をうまく壁にすれば囲まれることはない。1人ずつ順に倒していけ!!

 

4本腕の男 技術点8 体力点6

【タイガー・マン 技術点9 体力点5

Dr.死神 技術点7 体力点7

1R (4本腕の男/11)(S.C./21) 4本腕の男/体力点-2

2R (4本腕の男/12)(S.C./17) 4本腕の男/体力点-2 ←Arrested!!

 DOGOM!! 僕はまず1人目の超人をパンチでふっ飛ばす。

 奴はベビーパウダー置場に頭から突っ込み、身体中真っ白になって気絶しやがった。

3R (タイガー・マン/14)(S.C./18) タイガー・マン/体力点-2

4R (タイガー・マン/16)(S.C./21) タイガー・マン/体力点-2 ←Arrested!!

 大きく口を開けて襲いかかる獣人の上顎と下顎をつかみ・・・GAAKKK!

 僕は奴の牙をへし折った!タイガー・マンは口を血まみれにして苦痛にのたうちまわり、

 歯ブラシの棚へ折り重なって倒れる。さあ、あとはお前だけだ。<Dr.死神>!!

5R (Dr.死神/14)(S.C./22) Dr.死神/体力点-2

6R (Dr.死神/10)(S.C./17) Dr.死神/体力点-2

7R (Dr.死神/12)(S.C./20) Dr.死神/体力点-2 ←Arrested!!

 「ば、ばかな、この私があああ!」

 彼のメスでは、僕の肌を傷つけられない!完全勝利だ!!

 

Dr.死神「こ、これが・・・ベクター細胞の力か・・・(ガク)」

S.C.「否、正義を愛する者の力だ!!」

周りの見物人「おおー!」(大拍手)

 

 僕はこいつら悪人どもを警察に引き渡し、英雄点+3を得た。そして倉庫に戻って急いで変身を解き、ジーン・ラファイエットの姿となり、別の薬局でハンドクリームを買い求める。

 いやあ、スーパーヒーローとしての責任を果たしたとはいえ、余計な道草を食ってしまったな。

 急がないとコクニー・グリーン行きのバスが出てしまう!

 

 はあ、はあ、なんとか間に合った・・・。

 お土産を手にして目的地行きのバスに飛び乗る。そしてバスに揺られて30分ほど・・・フローレンス叔母さんの住む郊外住宅地コクニー・グリーンに到着した。

 彼女の住まいに最寄りの停留所は「コクニー墓地前」だ。

 そう言えば子供の頃、叔母さんの家へ遊びに来たときは、ここでよく肝試しをしては怒られたっけなあ。僕はちょっと懐かしさを感じつつ、もう夜も更けてきたので、近道も兼ねてこの墓地を通り抜けていくことに決めた。

 そう、このときまでは、僕はひと時の平和な休息を楽しんでいた。

 このときまでは・・・

 

 ゴロゴロゴロ・・・

 墓地に足を踏み入れるとともに、空が曇り始め、雷鳴が轟く。そして・・・ポツ。ポツ。ザザー!容赦ない突然の豪雨が僕に襲いかかってきた。

 ううう、ついてないなあ。僕はサラリーマンの書類鞄を頭の上に掲げて雨滴を避けるが、無駄な抵抗だ。濡れネズミになりながら早足で先を急ぐ。だが・・・

 カタ、カタ、カタ・・・ 

 なんだこの音は?真新しい墓の方から聞こえてくるぞ・・・?

 墓の盛り土のてっぺんに据え付けられた石板が動いている。何かが出てこようとしているのか?

 いったい・・・何が・・・うわああああ!!

 

 

 

生ける屍を倒し、つかの間の休息・・・ --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点12/14 運点10/10】 【英雄点16

 

 墓の中から1本の手が伸びる。

 驚愕のあまり思考がフリーズした僕の目の前で、ザバーッと土中の泥濘をかき分け、死体が墓穴から身を起こした!

 なんてこった!こいつは名だたる悪が所属するF.E.A.R.の中においても、とびきりの恐怖を与える怪人。力を求めるあまり、定命の肉体を捨てて屍を選んだ男・・・<ゾンビー>だ!

 

ゾンビー「 オマエ ノ イノチ ホシイ! ウバウ! 」

ジーン「うわわわ、来るな、こっちに、来るなあああ!!」

 

 スーパーヒーローだって、怖いものは、怖い。僕は尻もちをついて後ずさる。

 だが、灰色の肌を持つ<ゾンビー>は、鉤爪のついた指を曲げたり伸ばしたりしながら、腐臭を撒き散らしてヒタヒタと僕に向かって歩いてくる。

 くそっ、なんだってこんな生ける屍が、普通の墓地にいやがるんだ!

 たぶんバカな役人が、ゾンビーの伝説を信じずに埋葬してしまったのだろう。

 だがこれだけはたしかだ。ここで僕が逃げてしまえば、奴はここから動き回り、墓地の近くに住んでいるフローレンス叔母さんにまで危険が及ぶ!それだけは避けねば!立ち向かえジーン・ラファイエット!!

 僕は恐怖を振り払い、精神を集中する・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

 僕は降りしきる豪雨の中、動く死体怪人<ゾンビー>と対峙する。

 鈍い動きながらも、こいつは強敵だぞ。どうやったって奴は殺せない。なぜならすでに死んでいるからだ。

 そして普通の悪人とは違うので、今回の戦闘では敵の体力点を0にしなければならない。そうしないとまた墓穴から動き出してしまう。完全に粉砕しておく必要があるのだ!!

 

【ゾンビー 技術点10 体力点12

1R (ゾンビー/15)(S.C./18) ゾンビー/体力点-2

2R (ゾンビー/15)(S.C./18) ゾンビー/体力点-2

3R (ゾンビー/16)(S.C./19) ゾンビー/体力点-2

 僕の連撃を潜り抜け、ゾンビーはまっすぐ僕に向かってくる。

 なぜ怯まない?そうか、奴には痛覚がないのだ!

4R (ゾンビー/20)(S.C./16) S.C./体力点-2

5R (ゾンビー/20)(S.C./16) S.C./体力点-2

 ついにリーチ内にまで迫ったゾンビーが鉤爪で僕をとらえた。

 ZASH!!ZASH!!僕の上半身から血が噴き出る。

 くっ!負けるか!!僕は泥の中、踏ん張って反撃する!!

6R (ゾンビー/16)(S.C./21) ゾンビー/体力点-2

7R (ゾンビー/17)(S.C./21) ゾンビー/体力点-2

8R (ゾンビー/18)(S.C./22) ゾンビー/体力点-2

 遅い、遅いんだよ貴様!くらええーーー!!

 

 ゴスッ!鈍い音とともに僕の右拳が、奴の土手っ腹に風穴を開ける。そして・・・

 バシャアア!!泥の上にひっくり返る<ゾンビー>。もはや立ち上がることはなく、ピク、ピク、と身体を小刻みに動かすだけだ。こいつどうしようか?

 このままにしておくと、いずれまた復活するのは間違いない。

 僕は一時処置として、警官を後日連れてくるその時まで、<ゾンビー>を地中深く埋めておくことにした。そしてその土饅頭の上には、とびきり大きい墓石をいくつも重ねて置いておく。これなら復活しても、おいそれとは地表に出てこれないだろう。

 僕はジーン・ラファイエットの姿に戻る。さて、体力点4点もマイナスして、今回の事件も解決したのだが・・・英雄点は与えられない・・・。何故なら僕が<ゾンビー>を倒したところを、誰も見ていなかったからだ。

 社会のために尽くす者が、褒美を当てにしてはいけないということか。僕は肩を落とし、ずぶ濡れ泥まみれの姿で、やっとフローレンス叔母さんの家までたどり着くのだった。

 

フローレンス「ジーン!まあ、あなた、なんて姿なの!!」

ジーン「いやははは、雨に降られちゃって、おまけに転んじゃって・・・」

フローレンス「もう、子供の頃から、いつもボーっとしているんだから!」

 

 僕の母グレイスの妹であるフローレンス叔母さんは、純朴なお嬢さんがそのまま年をとったような、ほんわかとした雰囲気の女性だ。40まで年を重ねながらも、彼女の癒される笑顔は、今も全く変わらない。

 彼女は甥っ子の僕と久しぶりに再会して大喜びだが、さっきまで生ける屍の怪人<ゾンビー>と一戦交えてきた--もちろんそんなことは彼女に言えっこないが--僕のだらしない格好には眉をしかめ、とにかく、まずはシャワーを勧めてくる。

 ふう。疲れ切った僕の身体には、熱いお湯のシャワーも、そして叔母さんの小言すらも、心地よい。「どうしたらこんな切り傷を作れるの?」なんてブツブツ言いながらも、さっきの対<ゾンビー>戦でこしらえた僕の傷口もしっかり包帯を巻いてくれる。

 ありがたい。ただただ感謝。

 それからおいしい夕食と、食後のお茶、クリームケーキ!

 残念ながら体力点は回復しないが、それでもゆったりと僕はくつろぐ。今日はもう、ここから動きたくないなあ。だからフローレンス叔母さんの「今晩は泊っていったら?」という誘いも受けることにした。

 なによりも明日は土曜日、仕事に行く必要はない!!

 

 就寝前、親類とのおしゃべりが何よりも楽しみな叔母さんは、アルバムを片手にスイス旅行の話をいろいろしてくれる。ヘンリーとグレースにも会ってきたようだ。

 

ジーン「父さんと母さんは、元気?」

フローレンス「ええ、悠々自適に暮らしているわ。うらやましいわねえ。宝くじに当たるって!」

 

 そう、僕の(名目上の)父ヘンリーと母グレースは、100万ドルの宝くじに当たり、老後のことを考えてスイスに移住したことになっている。表向きは。だけど本当は「クルセダー計画」を秘匿し続けるため、永世中立国に隠遁することになったのだ。

 

フローレンス「そうそう、それでね、お土産があるの!」

 

 彼女はスイスチョコレートを1箱、僕に渡してくれる。ヘンリーとグレースが、特にこの箱を指定して買ってきたというのだ。とってもおいしいから、ぜひジーンに食べさせてね、と・・・

 

ジーン「へえ・・・」

 

 ということは、ヨーロッパの方から、何か僕に知らせたいことがあるんだな。緊迫した表情を悟られないようにしながら、僕はそのチョコレートの箱を開ける。

 案の定、1つのビターチョコに、巻紙に見せかけた通信紙が入っていた。僕は叔母さんに見られないよう、こっそりと内容を確認する。

 

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【要警戒】ウラジミールがモスクワを出た。ウィーン経由で26日にタイタン・シティへ到着する見込み。彼はKGBから通信衛星に関する資料をごっそり盗んでいった模様。

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 ウラジミール・・・ウラジミール・ユトシュスキーか・・・

 まだ遭遇したことはないが、噂には聞いたことがある。最強最悪の秘密結社「F.E.A.R.」の首領だ。ついに総元締めが御出陣というわけか。

 望むところだ!

 

フローレンス「ジーン、どうしたの?急に黙りこくっちゃって?」

ジーン「・・・叔母さん、そろそろ眠たくなったので、寝室に上がるね」

フローレンス「もう?だって金曜の夜10時よ。明日は会社ないんじゃないの?」

ジーン「ごめん、明日も仕事なんだ」

 

 そして僕は彼女に「おやすみなさい」と言い残し、空き部屋のベッドに潜り込む。精神の休養は、ここまでの叔母さんの笑顔でもう充分。あとは肉体の休養をしっかりとっておかねば。

 そう、明日も仕事なんだ。

 悪をせん滅する、という。

 

 

 

ウラジミールの宣戦布告 --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点10/10】 【英雄点16

 

 翌朝の別れ際、ニコニコ笑いながら、フローレンス叔母さんは僕の頬にそっと手を当て、諭すようにして忠告をくれた。

 

フローレンス「いくら仕事が忙しくても、心に平穏を忘れずにね。一人でしょい込まないように。あなたの味方は、必ずどこかにいるはずだから・・・」

ジーン「うん、ありがとう」

 

 そして僕は優しい叔母さんの家を出て、再びタイタン・シティに戻る。

 さあ、今日は恐怖結社F.E.A.R.が企てている、大統領暗殺を何としても阻止しなければ!

 (だけど、ええっとその前に、エルザとアメフトを見る約束もしていたな・・・)

 BEEP!!BEEP!!

 1日のスケジュールを組み立てつつバスターミナルを降りたところで、さっそく犯罪探知機に情報屋の<マリファナ>ジェリーから報告が入ってきた。

 

ジェリーの声「こちらマリファナ。ウラジミールがパーカー飛行場にお出ましだ」

ジーン「こちらSC。すでに知ってる。そこからどこへ向かった?」

ジェリーの声「ホワール・コートの博覧会センター。ここって、お前の会社の守備範囲じゃないか?」

 

 そう、僕のかりそめの仕事は、清掃用具販売会社の事務員だ。オフィスでの日常の仕事が思い出される。その会議場センターは、今日、確か・・・

 

ジェリーの声「ああ。“未来の家庭用品展示会”が開催されている。奴はセールスマンに化けて会場に潜入した」

ジーン「何やってるんだ?そんなところで??」

ジェリーの声「さあな、行ってみればわかる」

 

 あまりに・・・あまりに意味不明だ・・・。

 悪の決起集会が行われるまさに前日、その組織の首領が家電製品の展示会に姿を現すなんて、無意味すぎる行動だ。ヒマをもてあそぶ主婦じゃあるまいし・・・

 だが、とにかく、F.E.A.R.の親玉を逮捕できるチャンスには違いない。<マリファナ>ジェリーの言う通り、行ってみて確かめてみるしかないだろう。

 

 午前中の暖かい陽光の中、僕はバスを乗り継いで、ホワール・コートに到着した。

 昨日と同じ背広姿なので、一介のサラリーマンと変わりなく、展示会に入る。そこには「未来の家庭用品--明日の技術を今日見よう!」と書かれた垂れ幕がかかっている。

 あちこちで見物客(主に奥様方)の興奮した声が聞こえてくる。僕のオフィスにも様々な白物家電会社のパンフレットが備えつけてあるが、こんなにたくさんの現物が一同に会してるのを見るのは初めてだ。

 マツシタの全自動洗濯機、ソニーの新型ゲーム機、ヒタチのカクテル作成機・・・

 そして、大きな台の上では・・・

 

セールスマン「さあ、未来の家事は、彼一人にお任せ!“疲れ知らずの執事”(The Tireless Butlerを紹介しましょう!!」

見物客「おおー!」(歓声)

 

 ウィーンと台がせり上がり、そこから2mはあろうかという全金属性の人型ロボットが登場した。パシャパシャとカメラのフラッシュが瞬き、円い眼鏡をかけたセールスマンは陽気な笑顔で芝居っ気たっぷりにお辞儀する。

 ずいぶん愛想のいい奴だ。まさに営業の鑑だな。

 さらに彼は遠巻きで眺めていた僕を指さし、台の上に招こうとした。

 

セールスマン「さあ、そこのあなた、ぜひわが社の開発製品を間近でご覧ください!」

ジーン「いえ、先を急いでるんです。すいません・・・」

セールスマン「まあまあそう言わず、私はあなたとお話したい!」

ジーン「・・・?」

 

 セールスマンは悦に入った表情で、葉巻を取り出し、腰をかがめる。すると隣にいたロボットが、勝手知ったる様子でさっとライターを差し出してきた。

 ロボットの手がセールスマンの頭を触り、そのとき、彼の頭髪がちょっとずれた。

 彼はかつらを被っているのだ。

 僕はハッとする。両目に特徴ある発光ゴーグルを装着していないから、わからなかった。

 しかしはげ頭なら、あいつの正体ははっきりしている。手配写真と一致する!

 

 恐怖結社の首領!ウラジミール・ユトシュスキー!!

 

 手が届く範囲内に、奴がいる!

 この悪の大首領を逮捕するタイミングについて、僕が脳細胞をフル稼働させているにもかかわらず・・・セールスマン姿の標的は、緊迫感もなく同じ調子で、ぺちゃくちゃとセールストークを続けているのだ。

 いったい、何を目的としているのか全く見当がつかないが、僕を普通のサラリーマンと見なして完全に油断している。これは予期せず舞いこんだ絶好のチャンスだ!!

 僕は唾をゴクッと飲み込んでから、ゆっくりと壇上に近づく・・・

 

ウラジミール(陽気なセールスマンの口調で)「さあ、近くでよくご覧ください!」

ジーン(無害なサラリーマンの口調で)「うわあ、精巧な造りですね・・・」

ウラジミール「スゴイでしょう、こいつ1人で何でもできるんですよ!このスイッチは掃除モード、このスイッチは調理モードです。そして背中にある、このスイッチは・・・」

ジーン「このスイッチは?」

 

 ここで初めて、奴の顔が邪悪に歪む。そして、僕にだけ聞こえるように、ぞっとするような冷たい小声でこう言った。

 

ウラジミール「暴力モードだよ、シルバー・クルセダー」

ジーン「・・・貴様!」

 

 なぜ僕がシルバー・クルセダーだと・・・!!

 その瞬間、ガッと、奴の手が僕の手首をつかむ。すごい力だ!!

 

ウラジミール「まんまとおびき出されたな!!」

 

 そうか、僕の仕事が関係する場所で、待ち伏せていたというわけか。

 痛い・・・ぎりぎりと手首が捻じ上げられる・・・彼の耳元で強がりをささやくしか、僕にできることはない・・・

 

ジーン「くっ、ウラジミール!お前らの陰謀はすべて把握済みだ!」

ウラジミール「ほほう・・・」

ジーン「大統領は暗殺させないぞ!」

ウラジミール「おめでたい奴めが。それは我々の計画の、ほんの一部にすぎん!」

ジーン「何だと・・・うわあっ!」

 

 ウラジミールは尋常ならざる力を発揮し、僕を投げ飛ばして台の下へ突き落とす。

 まだ変身前の非力なジーン・ラファイエットである僕は、どうしようもなく、人込みの中にダイブするしかない。くそう!

 僕を吹き飛ばしたウラジミールは、満足気にうなづいてから、ロボットの背中にあるスイッチを押す。そして一目散にこの場を離れて姿をくらました!

 

ロボット「ウィイイイン・・・戦闘システム稼働・・・障害物を除去します・・・」

 

 奴に置き去りにされたロボットの目が邪悪に赤く光る。それから・・・不気味な電子音を発しつつ・・・ガシャン、ガシャンと、台を降りる。そして僕のちょうど目の前に立っていた見物客に、閃光のように強烈な右フックをお見舞いするのだった!

 ガツーン!顎の骨を砕かれ、その場で腰が垂直に落下する一般市民の不運な犠牲者。ちくしょう、なんてこった!

 

ロボット「障害物を除去!障害物を除去!」

 

 凶暴さをむき出しにして、さらに周りの人々に襲いかかり、暴れまわる人殺しロボット。

 パビリオンの中では、パニックになって逃げ惑う人々の悲鳴に紛れて、ウラジミール・ユトシュスキーの背筋が凍るような笑い声が聞こえてくる。

 決して姿を現さずに、この混乱した状況を、楽しんでいやがる!!

 

ウラジミール「ハハハハハ!これが私の宣戦布告だ、シルバー・クルセダー!!」

 

 

 

少年の見つけた物は? --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点10/10】 【英雄点16

 

 「未来の家庭用品展」は修羅場と化した。展示台の周りには怪我人が折り重なって倒れ、見物客たちは慌てふためいて、危険な機械人間から逃れようと右往左往している。

 パニックに乗じて逃走してしまったから、すでにウラジミール・ユトシュスキーの姿は見えない。後を追っても見つからないだろう。だとすれば、ここで僕がやらなきゃならないことは一つだけ。あの凶悪なロボットを退治することだ!

 僕は壊れたテーブルの陰に隠れて、精神を集中する・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

見物客たち「きゃーーいやーーうひゃああ!!」

ロボット「障害物を除去!障害物を除去!」

S.C.(すたっとロボットの前に着地する)「そこまでだ、殺人ロボットめ!」

少年「あ、お母さん、シルバー・クルセダーだよ!」

お母さん「ええ、彼が来たら、もう安心だわ!」

ロボット「ピピピッ、警戒信号!警戒信号!危険レベル・トリプルA。除去!除去!」

少年「がんばれっ!シルバー・クルセダー!」

S.C.HA-HA-HA-HA!! 少年よ、君が信じる者の力を、とくとご覧あれ!とうっ!!」

 

 ぐわーん!!展示センター内に轟音が響く。僕が【超体力】を用いて、ロボットの強烈なパンチを食い止めたのだ。

 そのまま両手をつかみ合い、ギリギリと押し合うロボットとシルバー・クルセダー。

 だが・・・(ぷしゅー!)

 しだいに・・・(ぷしゅー!ぷしゅー!)

 奴の駆動が空気の抜ける異音を生じ始め、あちこちから蒸気が漏れる。明らかにオーバーヒートだ。僕の正義の力が勝ったのだ!!

 僕はぱっと体を入れ替え、ロボットの胴体をはがい締めにする。そして奴を掴んだまま上空に舞い上がり、ビルの屋上まで運ぶ。

 それから下に誰もいないスペースを確認し、手を離して落下させた!

 

 ヒュウーーーー・・・DOGOMM!!

 

 自由落下の風切り音の直後、轟く爆発音。自重3tの殺人ロボットは150m上空からコンクリートの床に激突し、完膚なきまでに破壊されたのだ。

 しゅたっ、と上空から舞い降りる僕。うん、大丈夫だ。奴は腕も足も壊れてねじ曲がり、しゅうしゅうと音を立てているだけで、もはや危険は感じられない。

 僕は後始末を警察に任せ、サラリーマンに化けていたウラジミールが、セールストークを繰り広げていた場所を調べてみることにする。

 なにか「手がかり」が見つかるといいが・・・むむっ?

 1枚の興味ある書類が見つかった。パーカー飛行場発行の領収書だ。それは、セールスマンに扮装していた彼が身分を隠して27日にジェット機のチャーターを依頼しており、無事それが為されたという通知書類だ。

 それから、さっき声援を贈ってくれた少年が、何かを持ってトコトコと近づいてくる。

 

少年「シルバー・クルセダー!」

S.C.「む、何かな?坊や??」

少年「これ、台の近くに落ちていたんだ。僕見たんだよ、あの悪者、台から飛び去る前に、ロボットからこいつを引き抜いたんだ!」

 

 その少年が差し出したのは・・・小さなペンのような機械部品。「回路妨害器」とある。

 なるほど、奴はこいつを取り外したから、下僕のロボットは出力限界を超越したわけか。

 僕はそれを自分のものとして、少年の頭をなでる。

 

S.C.「どうもありがとう、君は今、悪と対決する切り札を見つけてくれたんだ!」

子供「えへへー!」

 

 屈託なく、僕に憧れている笑顔を見せる男の子。

 この子の信頼を裏切らないためにも、タイタン・シティを滅ぼそうとする悪の陰謀に立ち向かっていかなくては。よし、がんばるぞ!!

 決意を新たにして、残骸に隠れつつ僕は変身を説く。展示場センター内は、徐々に人々のパニックが収まりつつあった。殺人ロボットを破壊したことで、僕には英雄点4が与えられた。

 おおっと、もう正午近くじゃないか。そろそろホワール・コートから立ち去ろう。午後は同僚のエルザ・マルティーニと、フットボール観戦をする約束をしていたんだ。

 

* * * * * * * (さて、こちらは悪の組織F.E.A.R.) * * * * * * *

 

 恐怖結社F.E.A.R.の秘密基地。その所在地は誰も知らない(作者すらも)。

 真っ暗な室内、椅子に座っているサイボーグ。彼はにやにや笑いつつ、ホワール・コートで起きたロボット暴走事件のニュース映像を眺めている・・・。

 彼の鋼のような肉体を支える身体駆動装置は、フシュー、フシュー、と恐ろしげな異音を放ち、まるで瘴気を発しているようだ。顔にはめられた発光ゴーグルの奥底から、赤色レーザーの瞬きが放たれる。

 そう、奴こそは変装を解いたウラジミール・ユトシュスキーの、真の姿だ!

 

TVのアナウンサー「かくしてまた、シルバー・クルセダーの活躍で、この街の平和は危ういところで保たれました。ありがとう正義の死者、ありがとう、シルバー・クルセダー!!」

 

 その直後、ZAP!! 奴の放った目からのレーザーが、テレビを粉々に破壊した。

 

ウラジミール「ふふふ・・・のんきな市民どもだ・・・イリヤ!イリヤ・カルポフ!!私に次ぐ怪力と残虐さを持つ者よ!!!」

虐殺鬼「おう、ここにいるぜ、ウラジミール!」

ウラジミール「<虐殺鬼>よ、狩りの時間の始まりだ・・・(にやーり)・・・」

虐殺鬼「俺様の出番だな。ギタギタにしちまって、いいんだな???」

ウラジミール「うむ。私が彼に付けた小型発信器によると、ジーン・ラファイエットはタイタンズ・スタジアムに向かっている。同僚の女性とフットボール観戦だそうだ」

虐殺鬼「舐められたもんだなっ!!」(怒りの雄叫び)

ウラジミール「手段は問わぬ。暴れまわってこい!」

虐殺鬼「承知!!」

 

 恐怖結社のNo.2、<虐殺鬼>と称する褐色の皮膚をした筋骨隆々の超人は、獅子のような咆哮を上げる。それから莫大なエネルギーを有する垂直跳びで天井を破壊し、そこからジャンプを繰り返しながら、まっすぐスタジアムに向かっていく!

 ドゴン!ガスン!彼が着地するたびに、地面は陥没し、目撃した人々は悲鳴を上げる。

 その圧倒的な破壊の様を見て、ウラジミールはニタニタと笑い、呟くのだった。

 

ウラジミール「48000人の観客が地獄への道連れだ・・・くふふふふ・・・」

 

 

 

虐殺鬼が来る!こっちに来る!! --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点10/10】 【英雄点20

 

エルザ「で、どうして君はスタジアムに背広姿で来たのかね?ジーン君??」

 

 タイタンズ・スタジアム。待ち合わせ場所の5番ゲートに来ていたエルザは、腕組みをして小首をかしげ、僕の上司ジョナー・ホワイトの嫌味な口ぶりを真似て茶化してくる。

 そう、ホワール・コートで暴走ロボットと一戦交えた後、直接この場所にやってきたので、僕の服装は昨日の会社で退社したときのスーツ姿のまま。確かにTPOをわきまえていないとからかわれてもしょうがない。

 

エルザ「それに手首の赤いみみず腫れ・・・何それ?傷痕??」

 

 さらに、先ほどウラジミール・ユトシュスキーの怪力でねじ上げられた僕の右手首の関節は、くっきりと見事に内出血していたのだった。

 相変わらず、すごく細かいところまでチェックしているなあ。僕は彼女の鋭い観察眼に舌を巻く。そしてまた、僕がいつものようにアワアワと言い訳する前に・・・

 

エルザ「ま、いっか!来てくれただけでも」

ジーン「へ?」

エルザ「いやいや何でもないの。さあ、ビッグゲームになるといいわね!」

 

 なぜか、タイタン・タイガースのチームグッズに身を固めたエルザ・マルティーニはご機嫌で、僕の腕を引っ張ってメインスタンド指定席に連れていく。そして彼女の期待通り、試合は緊迫した素晴らしい展開になった。

 タイガースが押し気味に試合を進めるものの、どちらも攻勢が続かず、前半終了間際にモホークスが同点のフィールドゴールを決める。

 華やかなチアリーディングによるハーフタイムショーのあと、後半だ。

 タイガースが契約金100万ドルで獲得したランニングバックが、稲妻のように素晴らしい独走でエンドゾーンに飛び込んだ。

 タッチダウン!

 熱狂する超満員の観客。このスタジアムにいる48000人が、スーパープレイに歓声を上げる。僕とエルザも興奮してハイタッチを交わしていた。

 

エルザ「見て、バックスタンド!ウェーブが起こってる!!」

ジーン「うわーすごいなあ」

 

 ウェーブとは、観客が座ったり立ったりして波のようなうねりを作る応援法だ。最近はそこかしこのスタジアムで見られるようになってきたのだが、ここまで超満員のスタジアムが作り出すそれは、圧巻だ。

 だけど、今日のタイタンズ・スタジアムのウェーブは・・・

 

ジーン「いや、ちょっと待って、うねりが変だぞ!」

 

 そう、ウェーブは、人工的なものではなく、本当に起こっていた。スタジアムのスタンドが、土台ごと直に波打って震動しているのだ!!

 

エルザ「ちょっと・・・やだ・・・地震??」

 

 フィールド上のプレイが中断し、ザワザワとスタジアムが異常に気づき始める。

 その中で、このスタジアムにいる48000人すべてが想像できない大惨事が展開した。

 

 バックスタンドの日よけ屋根がガラガラと崩壊して人々を飲み込んでいく!

 

 幸い、僕たちがいるのはメインスタンド。バックスタンドの対面だ。だから今のところ被害は及んでいない。ショックで顔を手で覆い、目を背けるエルザ。しかし僕は・・・

 スーパーヒーローとしての義務で、しっかりと見た。

 スタンドの屋根が崩れたのは、手抜き工事のせいでも、構造上の欠陥があるわけでもない。

 

 鋼鉄の支柱の間に、うろこの生えた褐色の大男がいて、唸り声を上げながら支柱を揺さぶっている!あいつはF.E.A.R.の幹部イリヤ・カルポフ。通称<虐殺鬼>だ!!

 

 なんという怪力!なんという破壊!!なんという暴虐!!!

 なんという、なんという、なんという・・・

 呆然と僕は奴の暴れっぷりを眺める。100人ほどの警官隊が取り囲むと、猛り狂うそいつは全員を暴風のようにふっ飛ばし、凄まじい跳躍力で血まみれの観客を踏み潰して・・・来る、こっち側に来る、僕のいるメインスタンドに!!

 

虐殺鬼「ちっぽけな人間どもめ、<虐殺鬼>様を相手に何ができると思っているのだ!」

エルザ「え、そんな待って、ウソでしょ・・・」

虐殺鬼「俺を止めてみるなら止めてみろ。その前に大勢の人間が死ぬことになるのだぞ!」

エルザ「来るわ、あいつ、こっちに来るっ!」

虐殺鬼「そっちにいるのか、そこにいるんだな!シルバー・クルセダー!!」

エルザ「逃げるわよ・・・って?ジーン、どこ?どこに行ったの??」

 

 いつの間にか姿をくらました僕をキョロキョロと探すエルザ。ごめんよ、僕にはすぐにやらなきゃいけないことがある。素早くスタンド内の売店の陰に隠れて・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」 (ぴかっ!!)

 

 ところが、事態は思いのほか早く推移していたのだ。

 グワシャーン!奴はとうとうメインスタンドに到達し、GWAOOO!!キングコングのような戦慄の雄叫びを放つ。その場所は・・・僕がいるべき元々の席・・・エルザ・マルティーニのすぐ近くだ!

 そして続けて虐殺鬼は、彼女の頭丸ごとくらいはありそうな大きさの拳を、容赦なくエルザに叩きこもうとする!!

 

虐殺鬼「まずは取巻きのお前からだ。これでも喰らええ!」

エルザ「きゃあああああ!!!」

 

 次に来る人生最期となる破滅の衝撃を予測して、身を縮める哀れな一般人の彼女。だが・・・

 

エルザ「 ・・・ ・・・ ・・・ ??? 」

 

 彼女の身には、何も起こらない。なぜなら・・・

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!」

 

 間一髪、僕が間に合ったからだ!!

 

エルザ(そーっと目を開けて)「シルバー・クルセダー!」

S.C.(虐殺鬼の拳を受け止めつつ)「レディ、大変な目に会いましたね。ですがもう大丈夫!」

虐殺鬼(地団太を踏む)「うううう!おーのーれーっ!!」

S.C.(不敵な笑みを浮かべて)「ここじゃあ人目が少なすぎると思わないか、虐殺鬼?」

エルザ(S.C.に間近で庇われて)「・・・?」

S.C.(放送席のブースを指差し)「あそこで決着をつけようじゃないか!」

エルザ(間近にあるS.C.の手首を見て)「うそ・・・?」

虐殺鬼(哄笑して跳躍する)「それも一興。承知した!!」

エルザ(S.C.に手を差し伸ばす)「その手首のあざ・・・シルバー・クルセダーは・・・」

S.C.(同じく哄笑して跳躍する)HA-HA-HA-HA!!

エルザ(しかし彼女の手は届かない)「あなたなの?ジーン・ラファイエット??!!」

 

 ベクター細胞をフル増幅させた僕には、彼女の問いかけは聞こえなかった。ただただ来るべき死闘の予感に震えつつ、彼女の傍を離れ、【超体力】で風を切って上空に飛ぶだけだ。

 そしてシルバー・クルセダーである僕は、<虐殺鬼>とともにメインスタンド上方にある放送ブースのコンクリート建物の屋根に上る。この頑丈なスペースなら、少々派手なことをしても、スタジアムはこれ以上壊れない。そう思って誘い出したのだ。

 スタジアム内の全ての人々が、固唾を飲んでこの戦いを見守る・・・

 さあ、思う存分暴れてみろ!! 

 

 

 

危うしシルバー・クルセダー --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点10/10】 【英雄点20

 

TVリポーター(上空の中継ヘリから)「タイタン・シティの皆さん!画面映ってますでしょうか?現在タイタンズ・スタジアムで、我らの英雄シルバー・クルセダーvs怪力超人<虐殺鬼>との戦いが繰り広げられています!!自由と正義の戦士シルバー・クルセダーは街の平和を守ることができるのでしょうか?おおっと!<虐殺鬼>が飛びかかった!ものすごい勢いです。大丈夫かシルバー・クルセダー!!善良なる市民の皆さん、彼にぜひ応援のメッセージを!ファックス番号はこちらです!!」

 

 ・・・やかましい。応援するのは勝手だが、巻き添えを食うからこれ以上近づかないで。そこから動かないでくれ!

 そう、奴は強敵で周りを気にする余裕はない。これまで出会ったF.E.A.R.の悪人どもの中で、最高の能力値だ!戦闘開始っ!!

 

【虐殺鬼 技術点12 体力点14

1R (虐殺鬼/19)(S.C./21) 虐殺鬼/体力点-2

 敵の嵐のようなタックルを用心深くかわし、カウンターで蹴りを入れる。

2R (虐殺鬼/16)(S.C./22) 虐殺鬼/体力点-2

 続いてもう一度ローキック!序盤戦のラウンドは僕がとったぞ!

3R (虐殺鬼/19)(S.C./19) Draw

 しかしここで奴が僕のキックを腕で受け止める。

 そしてニタリと笑った。まずい!!

4R (虐殺鬼/24)(S.C./20) S.C./体力点-2

 グワン!顔面に逆襲のパンチをぶち込まれた!!

 思わず首ごと持っていかれそうな衝撃!

5R (虐殺鬼/22)(S.C./20) S.C./体力点-2

 虐殺鬼の連打!連打!僕は屋上の縁まで追い詰められる・・・

6R (虐殺鬼/19)(S.C./24) 運試し吉 虐殺鬼/体力点-4

 なめるな!僕は空中に舞い上がり、落差をつけたとび蹴り!

 強烈な一撃が見事胸部に命中し、虐殺鬼はグラッとよろめく。

7R (虐殺鬼/19)(S.C./18) S.C./体力点-2

 しかしここで僕の息が上がる。しまった、スタミナ切れか!体力点残り2点!

 瞬発力はベクター細胞で増幅されていても・・・

8R (虐殺鬼/18)(S.C./18) Draw

 ・・・持久力は非力なジーン・ラファイエットのままなのだ!

 両者ギリギリと押し合うが、徐々に足が滑り、押し込まれていく。

9R (虐殺鬼/19)(S.C./19) Draw

 僕は奴の突進を跳ね返す力はない。とうとうもんどりうって、

 スタジアムの屋上の縁から両者リングアウトした!!

 

TVリポーター(上空の中継ヘリから)「ああっと!今、画面から両者の姿が消えました!!放送ブース屋上から落下した模様です!建物の陰に・・・完全に隠れました・・・どうなったのでしょう!視聴者の皆さん申し訳ありません。ここからは見えません!様子がつかめません!!」

 

 僕と虐殺鬼が倒れ込んだ場所は、ちょうどスタジアムの観衆からも死角に入った。

 しーんと押し黙って経過を見守るタイタンズ・スタジアムの全員。

 再び私たちの前に姿を現すのは、はたして剛腕の怪人か。それとも正義のスーパーヒーローか???

 

S.C.「くそ・・・このっ・・・!」

虐殺鬼「グーハーハーハー!死ねええええええ!!」

S.C.「・・・甘い!」(くるっと身体を回す)

虐殺鬼「な、なにいい!!」

S.C.「これでタッチダウンだ!!」

 

 僕は落下しつつ体勢を入れ替え、関節をとって奴の身動きを封じ、そのまま万有引力を利用して地面につき落とす!そして・・・ZUGOOON!!そのまま地面にめり込ませた!

 

10R (虐殺鬼/20)(S.C./21) 運試し吉 虐殺鬼/体力点-4 ←Arrested!!

 

 観客の前に出てきたのは、シルバー・クルセダー!!

 しぶとい<虐殺鬼>は墜落の衝撃でついに気絶して・・・シュシュシュシュ・・・身体が縮んでいく。そして変身前の人間であるイリヤ・カルポフの姿に戻った。

 もはや無力となった破壊テロリストを拘束して、僕は体力の限界を隠しながら、笑顔で観衆の前に出る。

 <<<拍手喝采!!>>>

 スタジアムの、いや、街の平和を維持した僕には英雄点5が与えられる。そして被災者救助のため、警察や民兵がスタジアムにやっと駆けつけてきたので、彼をさっさと引き渡した。

 こうしてF.E.A.R.の幹部<虐殺鬼>イリヤ・カルポフは逮捕されたのだった。

 

 救護隊が活動している中、僕はスーパーヒーローの姿でスタジアムを後にする。

 「ジーン!どこにいるのっ!お願い返事して!!」切羽詰って叫んでいるエルザ・マルティーニの声が、背後からかすかに聞こえてきた。瘦せっぽちのさえないサラリーマン、ジーン・ラファイエットである僕が、どうやら破壊の渦に巻き込まれて行方不明になったと思っているらしい。

 だけど・・・ごめん・・・

 変身を解いて、彼女に無事な姿を見せて安心させるヒマはない。

 これだけの大惨事だ。公共交通機関が乱れに乱れているのは必至。タクシーも同じこと。

 だから僕はシルバー・クルセダーそのままの姿で、本日夕方に大統領のパレードが実施される七番街まで飛行して移動する。それがベストだろうと判断した。

 暗殺犯を阻止するために!

 

 しかし・・・ここ数日の相次ぐ激闘で・・・肉体はもう・・・ボロボロだ・・・

 

* * * * * * * (さて、こちらは悪の組織F.E.A.R.) * * * * * * *

 

 恐怖結社F.E.A.R.の秘密基地。その所在地は誰も知らない(作者すらも)。

 TV中継されていた<虐殺鬼>玉砕の瞬間を、F.E.A.R.の首領ウラジミール・ユトシュスキーは見ていなかった。

 別の仕事に没頭していたからだ。

 生体サイボーグである自分の電気仕掛けの身体を、コンピュータに直接ジャックインして、モスクワのKGBから持ち込んだ暗号コードで東側の通信衛星を意のままに操り・・・

 そして成層圏外。ウラジミールの意図したとおりに、通信衛星は指令電波をとある座標に中継送信し、制御データの再設定を開始する・・・

 この一連のローディングルーチンには、数ギガバイトのデータ容量が必要とされるので、送信完了まで数時間は要する。辛抱強くじっと待つウラジミール(注:だってほら、このGamebookが書かれた1985年当時のコンピュータだし)。

 この作業にかかる貴重な時間を<虐殺鬼>が稼いでくれた。

 彼が暴れまわったタイタンズ・スタジアムでの死闘で、にっくき敵であるシルバー・クルセダーの肉体は、もはや限界に近づいている。これから始めようとする恐怖と破壊の大計画に比べれば、イリヤ・カルポフを失ったとて、充分割に合う取引だった!

 そしてさらに、あの正義のお坊ちゃんの注意は、今度は大統領暗殺阻止に動いている。私の現在やっていることは、奴の目から完全に隠蔽できたのだ。

 つまり、この計画は・・・F.E.A.R.の陰謀は・・・

 

 <<<COMPLETED!!>>> (←画面にようやく表示された)

 

 完璧に遂行される!!

 

 

 

大統領暗殺阻止 --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点2/14 運点8/10】 【英雄点25

 

 ふらつきながらもタイタン・シティ上空を飛び、大統領暗殺犯の襲撃予定現場に向かう僕。くそっ身体が重い。まるで鉛の板を背負っているみたいだ!そんな僕を案じて<マリファナ>ジェリーが通信をよこしてきた。

 

ジェリーの声「ジーン、悪いことは言わない。今日はもう休んだ方がいい」

S.C.「らしくないなジェリー、情報を提供するのは君の仕事、事件を解決するのは僕の仕事、そうじゃなかったか?」

ジェリーの声「時と場合によりけりだ。いいかジーン、大統領の代わりとなる政治家はいくらでもいる。だけど、スーパーヒーローのシルバー・クルセダーはお前だけなんだぞ。自重するんだ」

S.C.「もう遅い、現場が見えてきた」

ジェリーの声「それにお前、共和党員じゃないだろ?」

S.C.「リージェント・ホテルは・・・よし見つけた。突入する!」

ジェリーの声「ああもう!勝手にしろ!!」(ぶつっ)

 

 タイタン・シティの中心である七番街。大通りの両側に何千もの市民が、歓迎のために集まっている。彼らの手には星条旗の小旗が翻り、前奏のブラスバンドの音が流れ始めた。

 大統領が到着するまでには、まだちょっと余裕がある。僕は怪人ヘビ男から手に入れた「手がかり」をもとに、リージェント・ホテルの非常階段を駆け上がっていった。

 

 (ここで「手がかり」に基づき、現在のパラグラフ番号に100を足します。すると・・・)

 

 ホテルの屋根にたどり着いたとき、歓声がひときわ大きくなる。とうとう大統領のオープンカーが七番街の入口にやってきたのだ。

 いた!

 向こうの隅に、黒づくめの男が一人身を潜めている。そして屋根の端から身を乗り出し・・・高性能ライフルのテレスコープを調整して・・・引き金を・・・BONK!!

 僕は電光の素早さで奴の正面に出て殴りつける。スナイパーは仰向けに倒れて射撃姿勢は崩されてしまい、凶弾は虚しくあさっての上空へ飛んでいった。危ういところで間に合ったのだ!!

 

暗殺者「貴様・・・!」

S.C.(意外に感じて)「・・・普通の人間なのか?お前??」

 

 暗殺者は舌打ちして、今度は銃口を僕に向ける。この距離ならば【超体力】で戦えるぞ。しかし残り体力点はわずか2点、銃弾を一発でも食らったら即死だ。

 だがそれがどうした。生と死が交錯する中で、僕は自らの正義の力を信じて戦いに挑む!!

 

【暗殺者 技術点9 体力点8

1R (暗殺者/17)(S.C./18) 暗殺者/体力点-2

2R (暗殺者/17)(S.C./20) 暗殺者/体力点-2

3R (暗殺者/16)(S.C./22) 暗殺者/体力点-2 ←Arrested!!

 

 ガツ!ゴス!ドカッ!!意外なことに・・・

 圧勝だ!奴は改造超人でも何でもなく、射撃が得意なだけの「ただの人間」だった。詰めが甘かったな『恐怖結社』め。お前らの野望は見事に阻止してやったぞ!!

 僕は意気揚々とリージェント・ホテルの屋上から地上に降り立ち、失神した暗殺未遂犯を大統領のSPに引き渡した。彼らも独自の調査で暗殺犯が潜んでいる情報を手に入れていたらしく、僕に先を越されて少々悔しそうだ。

 もとラジオアナウンサーであり、青年時代は映画俳優もこなしたこともある大統領は、人好きのする笑顔で僕に握手を求めてくる。

 

大統領「合衆国を代表して感謝するよ。シルバー・クルセダー。一緒に夕食でもいかがかな?」

S.C.HA-HA-HA-HA!! 大統領閣下。お誘いはありがたいのですが、私には倒すべき悪人どもの先約が入っておりまして」

大統領「うーむそれは残念。ではせめて、次女のモーリーンにサインをしてくれないかね?」

S.C.「ではこれで失礼!!」(しゅたたたっ!)

 

 どうして僕がこんな傷だらけにならなければならないのか?

 この国全体の治安向上の必要性を、彼に滔々と訴えかけたいところだが、僕はぐっと自制した。あなたとの記念写真なんて、どうせ支持率上昇の道具に使われるのがオチだ。

 とにもかくにも大統領暗殺を阻止して、僕には英雄点6が与えられる。すごいぞ、この1日だけで3つの凶悪事件を解決し、英雄点を15点も稼いでしまった。新記録だ!

 しかしその代償は、ボロボロになったKO寸前の僕の身体。

 やっと変身を解いた僕は、足を引きずりつつ家路に向かう・・・

 

* * * * * * * (さて、こちらは悪の組織F.E.A.R.) * * * * * * *

 

 時は成った!

 恐怖結社F.E.A.Rの首領、ウラジミール・ユトシュスキーはほくそ笑んだ。

 人工衛星を用いた壮大な計画も完了。あとは総会で皆の称賛を受けつつ、実行ボタンを押すばかり。そして今日1日、立て続けに起こしたシルバー・クルセダー包囲網で、奴の身体はもう限界、一発殴りつければジ・エンドだ。

 あとは直接私がジーン・ラファイエットの自宅前で引導を渡してやる。奴の気取った銀色のマスクをはぎ取り、明日開かれる総会の手土産にしてやるのだ。F.E.A.R.に所属する者は全て、私の所業を礼讃し、さらなる忠誠を誓うだろう!!

 SHBAAAAA!! ウラジミールは自身に内蔵されたジェット飛行ユニットを用いて、あらかじめ場所を調査済みのジーン・ラファイエットの自宅まで、30分で移動した。

 しかし標的はまだ戻っていなかった。ふふん、そこまで動きが鈍いとは、相当に疲れているようだな。難なくカギを破壊して奴の部屋の中に入る。うむう、汚い小部屋だ。それではここで待ち伏せするとしよう。ところが・・・

 キンコーン!来客のベルが鳴り、彼より前に、意外な人物がここへやってきた。

 

エルザ「ジーン、戻ってる?大丈夫??」

 

 ウラジミールは発光ゴーグルでドアを透視する。階段を上ってやってきたのは・・・若いイタリア系の女だ。ああそうだ、たしか彼と一緒にスタジアムでフットボール観戦をしていた、エルザ・マルティーニとかいう小娘だ。

 

エルザ「自宅まで押し掛けて迷惑だった?だけど救護所にも、収容先の病院にもいなかったから、そんな大した怪我じゃなかったのかなって、一応あなたの無事を確認しようと思ったのよ。スタジアムに誘ったのは私だから、責任もちょっと感じてたし・・・」

 

 一人でぺちゃくちゃとうるさい。ええい、早く去れ!

 

エルザ「ねえ、いないの?それとも怒ってるの?私の顔なんか見たくないってわけ??」

 

 いや待てよ、彼女はジーン・ラファイエットと関係の深い人物らしい。それならば奴に対する切り札として使えないか?・・・そうだな計画変更だ。明日の総会でそんな余興もあると、ひときわ盛り上がるってものだ!!

 

エルザ「わかったわ。今日はもう退散する。だけどドア越しでいいから一つだけ教えて。あなたとシルバー・クルセダーとは、どんな関係が・・・きゃあ!」

 

 彼女は驚いて飛びずさった。ドアが開いたら、全く予想できない者が現れたからだ。

 それははげ頭の大男で、身体の半分は機械に覆われてフシューフシューと奇怪な音を発しているサイボーグだ。ゴーグルの内側から邪悪な赤い光が自分を睨んでくる。哀れなウサギのように、逃げたくても足がすくんで動けない・・・。

 

ウラジミール「君はエルザ・マルティーニ君だね。ジーン・ラファイエットの同僚だろう?」

エルザ「ええ、そうですけど、あなたは・・・いったい・・・」

ウラジミール「私はウラジミール。彼の仕事仲間だよ」

エルザ「仲間って・・・ウソよ。あなた悪人でしょ。いやあっ、来ないで!!」

ウラジミール「御名答!勘がいいのは素晴らしいがね、逃がさないよ、くくくっ!」

 

 ウラジミールは両手のパワー増幅ガントレッドを伸ばし、彼女の頸部をわしづかみにする。エルザは若干ジタバタと暴れたものの、まるで奴に力を吸い取られるかのように、手足の筋肉の動きが遅くなり・・・やがて失神した。

 悪の結社F.E.A.R.の首領は、ぐったりと動かなくなった彼女を肩に担いで、この場所を去る。

 そうだ、そうだな、明日はきっと楽しい日になるぞ。

 シルバー・クルセダーは目の前で愛する者を失い、絶望の真っただ中に突き落とされて、破滅するのだ!!

 

 

 

TIME IS NOW!! --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点2/14 運点8/10】 【英雄点31

 

 (エルザ・マルティーニ誘拐から2時間後)

 

 棒のようになった脚を引きずって、自分の部屋までたどり着いた僕。

 ドアについた焼け焦げのあとも、カギが壊れていることも、室内が朝の様子とは違うことも、全く僕は気付くことなく、ベッドに直行してどさっと身体を投げ出し、眠る・・・。

 

 ZZZ・・・ZZZ・・・(体力点+6・・・ZZZ・・・BEEP!!BEEP!!

 

 ガバッ!! 僕は飛び起きた。

 目覚まし時計ではなく、犯罪探知機のアラーム音がひときわけたたましく鳴り響いたのだ。

 

ジェリーの声TIME IS NOW!! TIME IS NOW!!

           確実な情報。『恐怖結社』の総会は本日開催!!」

 

 現在朝7時。寝られたのは4時間か。それでも身体を休めることができて、頭はすっきりしている。体力点が回復したぞ。

 よし、これだけ元気ならば戦える!

 窓を開けて朝の陽光を感じ、顔をぴしゃりと叩いて気合を入れる。そう、今日は決戦の日なのだ。僕は自分の部屋の中で精神を集中する・・・

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

 そして部屋の窓からシルバー・クルセダーとなって、朝晴れの爽やかなタイタン・シティ上空に飛び出すのだった!

 

 良い日だ。

 僕の下に見えるタイタン・シティの人々は、素敵な日曜日を満喫すべく、足取り軽やかに通りを闊歩している。

 こんな素敵な街を、のどかな人々の暮らしを、乱す者は断じて許さない!

 僕は決意を新たにして飛行速度を加速させる。行き先は決まっている。F.E.A.R.の総会が開かれる場所の目星は付いているのだ。

 そう、昨日殺人ロボットと一戦やらかしたホワール・コートの「未来の家庭用品展」で、すでに手がかりはつかんでいる。

 

 パーカー飛行場!

 

 タイタン・シティの郊外にあるこの空港は、すべてが正常に動いているように見える。今日も朝一便の航空機が発着して轟音が空気を裂く。そして旅客ターミナルでは一般の利用客が集まりだしている。

 だが、ここにおびただしく存在している航空機の中で、少なくとも1つは、『恐怖結社』がチャーターしているものなのだ。そしてその中では総会が開催されようとしている!!

 ここからは慎重に行動しなければな・・・

 僕は飛行場に到着したのち、地上に降り立って、人目につかないよういったん変身を解いてジーン・ラファイエットの姿に戻った。

 

ジーン「こちらSC。パーカー飛行場にいる」

ジェリーの声「こちらマリファナ。昨日航空機が搬入された格納庫が3つある。たぶんそのうちどれかが、ビンゴだ」

 

 ザビエル格納庫には自家用の豪華なジェット機。

 サマーズ格納庫には救急用ヘリコプター。

 マッコイ格納庫には鈍重な軍用輸送機が格納されている。

 このうちどれかというと・・・それも「手がかり」を得ている。

 ウラジミールが依頼していたのはジェット機のチャーターだ。だから僕はザビエル格納庫の方へと忍び寄っていくのだった。

 

 よし、いいぞ。今までの一連の活動で入手した「手がかり」によって、ここまでは順調。スムーズに事が進んでいる。あの憎き悪のサイボーグ、ウラジミール・ユトシュスキーをはじめ、悪人どもを一掃できる自信がだんだん湧いてきた。

 奴らは完全に手詰まりだ。大統領暗殺も阻止されて、最大の陰謀が頓挫した今、ウラジミールはどんな顔で仲間たちに釈明するのだろう・・・

 だが、ちょっと待て、昨日セールスマン姿の奴は、僕になんて言ってたっけ?

 

 (おめでたい奴めが。それは我々の計画の、ほんの一部にすぎん!) ←回想

 

 僕はぴたっと足を止めて立ち尽くす。待てよ、ちょっと待て・・・

 これまでのが、すべて、大統領暗殺計画も含めて、ウラジミールが立案した陽動作戦だったとしたら?

 F.E.A.R.の総会において、最終作戦が未だなお進行中だとしたら??

 恐ろしく嫌な考えだが、だとすれば大統領暗殺未遂犯が強力な改造人間ではなく、ただの非力な人間であったことも合点がいく。そいつはただの囮にすぎないのだ。

 

ジェリーの声「ジーン、俺が回線を逆探知したところでは、昨日から国防総省が大騒ぎしている。厳重なプロテクトが仕掛けられて全容はつかめないが、SDIシステムの運用に重大な支障が生じているらしい。それとF.E.A.R.がどう関わるかはわからんがな」

ジーン「SDIって、成層圏に浮かぶ、あの役立たずのスターウォーズ衛星だろ?」

ジェリーの声「うむ。それともう一つ、これは些細なことなのかもしれないが、いや、お前にとっては重要かも・・・」

 

 こんな風に、歯に物が挟まった言い方をするジェリーは、滅多にない。

 いやな予感に震える僕に告げられた次なる情報は、その予感をも上回る凶報だった。

 

ジェリーの声「エルザ・マルティーニが行方不明なんだ。昨日の夜、お前のアパート前にいたのが、目撃された最後の情報だ」

ジーン「なんだって!」

 

 僕は飛行場を横断してザビエル格納庫にたどり着く。あらかじめ入手していた情報通り、ここには新品のジェット機が鎮座していた。

 だが、気分はさっきとは正反対だ。僕は確信したからだ。

 もう終わったわけではない。むしろこれから始まるのだ。奴らの悪の大計画は。

 僕は壁にかかっていた作業服を見つけ、整備士に扮して飛行機を点検するふりをして、ジェット機の荷物倉庫内に忍び込む。

 どこも怪しいところはない、今のところは。しかし・・・

 F.E.A.R.はまだ手札を残しているはずだ。とっておきの破滅のカードが。

 

(ここで本文の指示通り、総会の開催される日付「27」日と開始時間「9」時の数字を足し、

 さらにここのパラグラフの数字「394」を足します。そうすると・・・)

 

 しばらくして、事態は動き始めた!

 

 

 

破滅への秒読み --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点8/10】 【英雄点31

 

 僕の忍びこんだ荷物倉庫の中で、1機のジェット機がガクンと揺れ、徐々に動き出した。飛行準備が完了したのだ。

 分厚いコートの襟を立てた6つの人影が現れ、タラップを上って客席に入っていく。それらの顔を見分けることはできないが、1人は他の5人よりずっと大柄で、コートは不自然に膨れ上がっている。そして飛行機に乗り込むとき、金属の触れ合う音が聞こえ、鋼鉄の脚をしているところが覗けた。

 チタニウム・サイボーグ、ウラジミール・ユトシュスキー!!

 そしてさらに、僕の抱いていた嫌な予感が現実となる。ウラジミールは郵袋を担いでいる。それはエルザを拉致して詰め込むのにちょうどいい大きさの袋だ!

 キィィィィィ・・・

 エンジンの風切り音が大きくなる。ジェット機は格納庫を出て滑走路をテイクオフし始めたのだ。

 このままじゃ追いてかれてしまう。急いで奴らの機体に乗り込まねば!僕は格納庫の中で急いで精神を集中した。

 

ジーン「正義の銀十字よ、わが肉体に宿れ・・・」

 

 ピカッ! HA-HA-HA-HA!! シルバー・クルセダー参上!!

 

 シュタタタタタ!!

 シルバー・クルセダーとなった僕は【超体力】により高速で疾走し、今まさにVR速度を突破して離陸寸前となったジェット機に追いつき、飛び移った。

 そして翼下車輪のところにしつらえてある緊急用入口のハッチを開け、機体に潜り込む。いよいよ最終決戦だ。覚醒しろ僕のベクター細胞!!

 

 僕を乗せたまま、ジェット機はふわりと飛び上がる。

 足音を殺して忍び寄る豹の如く、静かに機体下部からメインキャビンへと移動する。もうここまで来たら脅威はないと判断したのだろう。護衛のチンピラどもの姿はない。いやもしかしたら、ウラジミールは、自分1人だけですべての侵入者を撃退できる自信があるのかもしれない。

 会議室の中では、とうとうF.E.A.R.の最高幹部総会が開かれるところだ。僕が向こうに控えている隔壁越しにウラジミール・ユトシュスキーの自慢げな声が聞こえてきた。

 

ウラジミール「・・・結論として、我々は完全に衛星システムを掌握した!」

腹心A「ペンタゴンを完全に出し抜いた、というわけですな!」

腹心B「今ごろ奴らは大パニックでしょうな。自らの国土を防衛するための計画が、まったく制御を失っているのだから。愉快愉快!」

ウラジミール「そう、ここにある通信コンピュータで意のままに操作可能なのだ!フハハハッ!!」

腹心たち「ははははっ!」

ウラジミール「ひゃーははははっ!!」

???「HA-HA-HA-HA!!

ウラジミール「???・・・待て、今の笑い声は、誰だ!」

 

 「私だ!」ドカンと隔壁を蹴破り、僕は奴らの前に姿を現す。

 「げえっ!シルバー・クルセダー!!」緊急事態に5人の腹心メンバーが慌てふためいて立ち上がる。すでに高度1000m、逃げ場はない。予想しなかった僕の侵入に肝をつぶして顔が青ざめている。

 「下がっていろ。会議の途中だ」しかし、テーブルの奥にいるチタニウム・サイボーグだけは冷静だった。興を削がれて明らかに不愉快そうな、ザラザラした声色で僕をたしなめる。目として使っているゴーグルの中で、まばゆい怒りの光が点滅していた。

 

S.C.「どのような会議なのだ、ウラジミール?」

ウラジミール「ふん、お前には関係ないが・・・まあいい、実践してやろう」

S.C.「させるかあ!!」

 

 そして僕は奴を拘束しようと飛びかかる・・・しかし!うわっ!なんて能力値だ!!

 

【チタニウム・サイボーグ 技術点18 体力点20

 

 グワキイイイ!物凄い衝撃に跳ね飛ばされ、ゴロゴロと床を転げる僕。半分は人間で半分はロボットのこの男は、電子的に補強された強力な腕で容赦なく僕をひっぱたいたのだ。アームブロックごと吹っ飛ばされた!

 ゲホッゴホッ!口の中で血の味がする。だがあきらめない、正義の使者シルバー・クルセダーは、決してあきらめない!!

 力の差を絶望的に感じながらも、再度挑みかかろうとする・・・なにっ?

 

腹心たち「動くな!」

エルザ「いやああ!離してっ!!」

S.C.「ちっ、貴様ら・・・!」

ウラジミール「おやおやどうした、君にゆかりある人物なのかな、その女性は?フフフフフ・・・」

 

 何と卑怯な!F.E.A.R.の他の幹部連中が、ジタバタともがくエルザ・マルティーニを5人がかりではがい締めにして、顎に拳銃を突きつけている。

 ウラジミールを攻撃すればエルザの命は危うい。エルザを救出しようとすればウラジミールの超高速パンチが僕を襲う。だから会議室で為す術なく立ち尽くすしかない・・・。

 

ウラジミール「どうした、かかってこないのかね。それとも地球の危機より、小娘の命の方が、優先順位が上とでも?」

S.C.「くっ、どっちも大事さ・・・」

ウラジミール「甘いな。シルバー・クルセダー。それが貴様の弱さだ・・・さて、私はデモンストレーションを続けさせてもらおう・・・」

 

 人質を取られた僕が何もできないその隙に、悪の大首領は、自分の机の上にある高性能コンピュータのキーボードをカタカタとパンチングしている。そして最後の仕上げとばかりに、実行ボタンをゆっくりと、押した。

 

ウラジミール「一緒に数えようじゃないか、この世界の、破滅への秒読みを!」

 

 奴のコンピュータが発した無線指令は・・・

 成層圏上まで届き・・・

 SDI衛星が遠隔操作され・・・

 地表に向けて砲口をセットし・・・

 太陽光エネルギーが収束されてレーザー光線が・・・

 

S.C.「そんな、ばかな、まさか!!」

 

 ZEEEEEEEEEPPPP!!!

 遥か上空から雲を突き抜けて光の直線が降りてくる。光速のスピードで、恐ろしき破壊力を秘めた煉獄の柱は、僕たちが乗っているジェット機の脇を通り抜けた!

 機体がビリビリと震動する。そして一瞬の後、破壊レーザーは大西洋のバミューダ諸島沖に着弾する。海面が蒸発して1つの小島が跡形もなく消滅した!!

 

ウラジミール「実験は成功だ!」

腹心たち「うおおおお!!!」(熱狂した賞賛の咆哮)

 

 僕は唇をかむ。これが奴らの陰謀の正体か!!

 そう、悪の大結社F.E.A.R.は、強大な大量破壊兵器を手に入れた。ペンタゴンが開発したSDIレーザー「スター・ウォーズ」防衛システムをハッキングし、自らの意のままに使用できるようにしたのだ。

 宇宙から十分な破壊力を持ったレーザーが降り注ぐ!F.E.A.R.がセットするだけで、地球上のあらゆる場所を、奴らは灰燼に帰することができる!!

 

エルザ(がくがくと震えて)「なんてことを・・・」

ウラジミール「さあて、次はどこに落とそうか、パリ?ロンドン?トーキョー?おう、タイタン・シティを忘れてたよ!シルバー・クルセダーがこよなく愛する、美しいあの街を・・・」

S.C.「やめろ!」

ウラジミール「ははは、各国政府が要求に応じれば、やめるさ。我々が活動を続けるに十分な額を支払ってくれるならな!」

 

 全世界を脅迫して金をむしり取るだと!奴は世界を征服するつもりなのか!!

 確かに今の奴なら不可能なことではない。慄然とした僕を見て、満足そうにウラジミールは下卑た笑いを浮かべる。

 そして机上のコンピュータから手を放し、奴はガシュン、ガシュンと足音を立ててゆっくりと近づいてきた。それからぐいっと僕の胸倉をつかみ、顔と顔を最接近させ、冷たい声でこう言うのだ。

 

ウラジミール「だがまずやることは、ここにいる一匹のハエを退治することだ」

 

 圧倒的な能力差に物を言わせ、僕を排除するつもりなのだ。ウラジミール・ユトシュスキーはチタニウムの上腕部に動力を送り込む。そして僕に強烈なパンチを喰らわした!!

 「いいぞ、もっとやれ!」「きゃあああ!もうやめて!」

 腹心どもの歓声とエルザの悲鳴をバックに、僕はまた吹っ飛び、床をゴロゴロと転げ回る。

 

ウラジミール「軟弱な賓客など、チタニウム・サイボーグの敵ではないわ!」

 

 さすが技術点18の一撃だ。効くなあ・・・げふっ・・・

 

 

 

リバース・カードは「回路妨害器」 --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点8/10】 【英雄点31

 

 敵は技術点18で体力点20。僕は技術点13で体力点8

 かくして正義を守る戦いは・・・バッドエンド???

 まさか!シルバー・クルセダーは決してあきらめない!

 

 「くははは!どうしたスーパーヒーロー!」猛り笑うF.E.A.R.の首領ウラジミール・ユトシュスキー。僕の能力を完全に凌駕する機械仕掛けのサイボーグは、一方的にパンチを繰り出そうと、引き続き右手を振り上げる。

 が、そのとき・・・ZE・・・ZEZEEEEE・・・

 ぱちぱちと奴の体の周囲に火花が飛び散り、動作は徐々に鈍く、スローダウンしていく・・・

 ぺちっ。速度が完全に減衰された奴の右拳を、僕は易々と受け止めることができた。

 

ウラジミール「貴様・・・私の身体に・・・」

 

 チタニウム・サイボーグの顔から余裕の笑みが消える。そして僕は唇の端から血を流しながらも、にやりと笑う。リバース・カードは最後までとっておくものさ。

 そう、さっきあいつからの一撃を受ける直前に、僕はベルトからある装置を引き抜き、奴の背中に瞬速の業で突き刺していたのだ。

 それは「回路妨害器」!

 ホワール・コートで殺人ロボットから取り外され、正義を愛する男の子が拾った現場遺留品の電子機能妨害装置だ。

 そいつを奴の手が届かない脊髄の中心に、ぐっさりと突き刺してやった!!

 HYUUUUN・・・情けなくパワーダウンしていく両手両足のパワーユニット。自重に耐えきれずウラジミールはがくりと膝をつく。ゴーグルの奥で明滅する眼光が力なく青色を灯す。突然の出力低下に奴の口元は苦悶で歪んでいる!

 

腹心たち「そ・・・そんな、ばかな!」

S.C.「今だ、エルザ!」

エルザ「えーいっ!」

 

 予想外の形勢逆転に慌て、隙ができたのを僕は見逃さなかった。そして勘のいいエルザも。

 彼女は押さえつけていた悪漢の1人の股ぐらにひざ蹴りを入れた。「ぐは!」男として非常に不運なそいつの手が緩んだところで、彼女はさっと身を屈める。

 その上を・・・GASH!!!!!

 僕の閃光のドロップキックが通過した。所詮は実戦部隊を引退して幹部に昇進し、肉体トレーニングを怠っている中年男の親分どもだ。

 あっ、と、いう、間に!5人ともコテンパンにのしてやる!!

 

S.C.「か弱いレディを人質にとる卑怯者め!こうしてくれるわ!!」(とどめのパンチ!)

腹心ども「ひいー助けてくれえーーー!!」(鼻血とともに吹っ飛ぶ)

エルザ「シルバー・クルセダー!」

S.C.「エルザ、大丈夫かい?」

エルザ「ええ、ちょっとふらふらするけど・・・って、どうして私の名前がエルザだと?」

 

 (ぎくっ!!) いや、それは、その・・・

 しまった、グラント・モーレイのときと同じミスをしてしまった!!

 

エルザ「まあいいわ、積もる話は後にしましょう!」

 

 僕がごまかす前に、エルザは腹心どもが床に落とした拳銃をさっと拾い、会議机の上にまだ存在している、SDIシステムを操作できる通信コンピュータに狙いをつける!

 BANG

 見事射撃が命中し、机の上のコンピュータは火花が飛び散り、完全に破壊された。「やられっぱなしで頭来てたんだからっ!」銃口から漂う煙をふっと口で吹き消す彼女。その様はまるで西部劇の女ガンマンだ。

 すごいやエルザ!ついでにもうちょっと働いてくれるとうれしい。僕はコクピットを映しているモニターをちらっと見る。うん、やっぱり自動操縦だ。中には誰もいない。チャンス!

 

S.C.「エルザ!操縦席に行くんだ!通信機で飛行場の管制司令官を呼び出せ!」

エルザ「OK!

 

 僕は指示を飛ばし、エルザはパッと動く。まるでずっと昔から一緒に仕事をしているような、息の合った連携。そして僕が息絶え絶えとなった腹心どもを拘束しているとき・・・

 

ウラジミール「ゆ・る・さ・ん・・・・」

 

 じりっと悪の大首領が、機械だらけの身体を動かした。

 出力が減退していながらも、よろよろと立ちあがるウラジミール・ユトシュスキー。大した根性だ!さすが『恐怖結社』のNo.1なだけはある。まだ戦闘意欲だけは十分にある構えだ。

 でも悪あがきはよすんだ!僕は通信コンピュータの残骸を奴に見せつける。

 

S.C.HA-HA-HA-HA!! これで貴様の陰謀もジ・エンドだ。非力なイタリア娘に粉々にされるほどの、詰めの甘い計画だったということさ!」

エルザ「ちょっと!“非力なイタリア娘”って、誰のこと??」(操縦席から怒り声)

ウラジミール「お前に負けたわけではない・・・」

S.C.「おとなしく抵抗を停止しろ!」

ウラジミール「私は、私の策に敗れたのだ!お前に負けたわけではない!」

 

 負け惜しみを言いやがって!

 奴のパワープラントは悲しいまでに低下している。引導を渡せ!

 

【チタニウム・サイボーグ 技術点9 体力点10】 ※出力減衰状態

1R (チタニウム・サイボーグ/16)(S.C./18) チタニウム・サイボーグ/体力点-2

 BOM!! 奴の左腕がバックファイアを起こして引きちぎれた!

2R (チタニウム・サイボーグ/20)(S.C./23) チタニウム・サイボーグ/体力点-2

 CLACK!! 僕は奴の背中にある飛行ユニットをとり剥がす!

3R (チタニウム・サイボーグ/15)(S.C./24) チタニウム・サイボーグ/体力点-2

 BAHOON!! 奴の足首から下がグニャリと折れ曲がった!そして・・・

4R (チタニウム・サイボーグ/15)(S.C./18) チタニウム・サイボーグ/体力点-2 ←Arrested!!

 とどめだ!僕は奴の眉間に制裁の鉄拳を打ち込み、発光ゴーグルを完全に破壊した!!

 

ウラジミール「ぎゃあーーーーー!」

 

 レーザー光線を目から発するため、電圧負荷が相当かかっていた発光ゴーグルから漏れた電流。そいつが奴の剥き出しとなった肉体を青白く包む。

 そして常人なら死に至るほどの感電ショックを受け、ウラジミールはゴトリと床に倒れる。

 奴に取り付けられたすべての機械が活動を停止し、気を失ったのだ・・・。

 

 さて、エルザの方は大丈夫かな?

 僕はウラジミールと5人の腹心どもを完全拘束し、会議室に閉じ込める。それから気もそぞろにジェット機の操縦席へと向かった。

 でも心配は御無用。コクピットでは、すでにエルザがパーカー飛行場の管制タワーに現状を報告していた。明晰な彼女曰く「ビジネスで培った要領を得た報告」により、飛行場側はすぐ反応し、やがて州軍所属のF-5戦闘機が飛来してくる。

 緊迫したスクランブル体制の戦闘機パイロットに、太陽のような笑顔で手を振り返すなんて、まったくたいした度胸だ!

 あと僕に残っている仕事は、護衛戦闘機の誘導に従い、操縦桿を操って犯人ごとジェット機を滑走路に着陸させるだけ。

 タッチダウンの瞬間、シルバー・クルセダーである僕とエルザ・マルティーニ嬢は、思わずハイタッチを交わす!

 

 かくして正義は勝利した。『恐怖結社』F.E.A.R.はこれでおしまいだ!!

 

 

 

440!そして夕暮れのタイタン・シティ --Appointment with F.E.A.R.-- 

 

【技術点7/713/13) 体力点8/14 運点8/10】 【英雄点41

 

 戦いは終わった。

 僕は自らに宿る正義の力で、世界で最も危険な犯罪組織『恐怖結社』を一網打尽にやっつけたのだ。SDIレーザー衛星による無差別ピンポイント爆撃を未然に阻止し、文明世界を防衛した僕には破格の英雄点10が与えられる。

 犯罪探知機から<マリファナ>ジェリーよりねぎらいの通信が入ってきた。

 

ジェリーの声「上機嫌だね、シルバー・クルセダー」

S.C.「ああ。この勝利は、君の的確な情報提供のおかげでもある」

ジェリーの声「その通り。俺が通報してスクランブルしてきた州空軍は役に立ったか?」

S.C.「え?飛行場に連絡したのは、操縦席にいたエルザだろ・・・」

ジェリーの声「何言ってる。お前の乗っていたジェット機からは、何も発信されていないぜ」

 

 僕はコクピット脇の通信機スイッチをちらっと見る・・・それは見事に・・・「OFF」に入っていた。

 そうか、動転していて主電源をつけることを忘れていたんだね、エルザ。

 まあ、いいとしよう。結果オーライだ。

 

S.C.「これで長い恐怖も終わりだ。明日からちょっとはヒマになるかな?」

ジェリーの声「そうだといいな、今度一杯つきあうぜ」(ぶつ)

 

 相変わらず唐突に通信を切る奴だ。いや、これは彼なりの照れ隠しかもしれないな。

 さて、飛行場では、警察が装甲車を引き連れてやってきて、『恐怖結社』の最高幹部どもをがっちり拘束して収監していく。

 ペンタゴンは秘密保持のためのパスワードを即日変更し、レーザー防衛システムへの第三者介入は不可能となった。そしてチタニウム・サイボーグの首領ウラジミール・ユトシュスキーは、残る一生を厳重に見張られながら過ごすことになるだろう。

 そう・・・そうさ、これで一件落着!

 僕はたった1人で『恐怖結社』から世界を救ったのだと、胸を張って言うことができるのだ!

 とん、とん・・・ん?誰だ、僕の肩を叩くのは?

 振りかえると、そこにエルザ・マルティーニがいた。

 

エルザ「コホン・・・たった1人で?」

S.C.「あ、いやいや、ご協力感謝しますよ、お嬢さん!HA-HA-HA-HA!!

エルザ「どういたしまして、ジーン!」

S.C.HA-HA・・・(高笑いがぴたりとやむ)」

エルザ「やっぱりね・・・カマをかけてみたんだけど・・・」

 

 しゅ・しゅ・しゅ・しゅ・・・

 身体が筋骨隆々のシルバー・クルセダーから元の姿に戻っていく。瘦せっぽちのさえない清掃用具販売会社の事務員、ジーン・ラファイエットの姿に。

 事件の後始末は警察とFBIにすべてを託し、ここは飛行場のターミナルの物影。僕とエルザ以外に見ている人はいない。

 だから観念した。彼女の勘の良さにはかなわない。

 

ジーン「そう、僕がシルバー・クルセダーなんだ」

 

 シルバー・クルセダーの活躍により、タイタン・シティの平和は、これから相当な年月の間守られるはずだ。正体を知られたとしても、僕がこの街を出ればいいだけの話さ・・・。

 ところが僕のクライアウトに対して、彼女は想定外の行動を見せる。

 まるで貴族のお姫様のように、スカートをちょっとつまみ上げて、足をクロスさせてお礼を返したのだ。頬を少し赤く染めて。

 

エルザ「助けてくれてありがとう」

ジーン(そろそろと上目使いで)「マスコミに・・・リークする・・・?」

 

 緊張の一瞬。そして彼女の答えは・・・

 

エルザ(ニッコリ笑って)「もう!そんな目をしたら、何も言えないわ!」

ジーン「え?じゃあ??」

エルザ「あー、昨日から何も食べてなくて、おなか減ったわぁ!」

ジーン「えーと、わかったよ。口止め料としてパスタでもどう?」

エルザ「サンキュー!私のスーパーヒーロー!!」

 

 そしてエルザは僕の腕に手を回してきた。

 僕たちはそーっと飛行場を後にする。そういえば今日は日曜日。てんやわんやでもう夕方になってしまったけど、2人でどこかのイタリアンレストランに行こう。密かに祝杯を上げるのも悪くない考えだ。

 何よりうれしいことに、彼女は僕の正体を秘密にしてくれるらしい(少なくとも今のところは、だけど)。だから明日、僕は会社に辞表を出して、世捨て人のようにこの街を去らなくていいんだ。

 そんなこんなでホッとした僕の表情を見て「油断しているね?」と、彼女はにーっと笑みを浮かべ、僕の肩に小さなあごを乗せてきた。

 あっ、ネズミをいたぶる猫のような眼をしている!!

 

エルザ「明日のランチは、君のオゴリだよ」

ジーン「へ?」

エルザ「明後日も、そのあとも、ずーっと!」

ジーン「ちょ、ちょっと・・・」

エルザ「ふううん、いやなの?じゃあ新聞社にでも電話して・・・」

ジーン「いや、君と一緒に食事できるなんて、すごく光栄だよ。ハハハ!」

エルザ「そのとき教えてあげるわ。あんたの上司ジョナー・ホワイトとの戦い方を!」

 

 夕暮れのタイタン・シティ。晴れやかに闊歩する僕とエルザ。

 この平和はシルバー・クルセダーである僕が守り抜いた結末だ。

 誇らしく充足感に包まれた僕の脳裏に、フローレンス叔母さんの言葉が思い出される。

 

 (いくら仕事が忙しくても、心に平穏を忘れずにね。一人でしょい込まないように。

  あなたの味方は、必ずどこかにいるはずだから・・・)

 

 

 

【特別編『サイボーグを倒せ』はこれでおしまいです】

【そして次回はSF編。サワムラ一家の登場だあ!今度の冒険は『電脳破壊作戦』です!!】