宇宙の連邦捜査官

 

 

 

 

主人公作成&特殊ルール説明 --The Rings of Kether--

 

 はてさて、傷心のブリッツ君はひとまずおいといて・・・

 

 今日からFighting Fantasyリプレイブログ『Livre dont vous etes le heros(君が英雄になれる本)』は新シリーズ開始です。

 SF物の『宇宙の連邦捜査官(The Rings of Kether)』がスタートします!

 今回の主人公は銀河連邦警察のエリート捜査官なのだ。いわゆるFBIみたいなもんだね。全宇宙に蔓延する麻薬セイトフィル-Dの撲滅任務のため、流出先のアレフ・シグニ星系に潜入していきます。しかし麻薬犯罪組織に牛耳られ、汚職という腐敗にまみれたこの星での捜査は容易ではない・・・果たして目の前の人物は、敵か、味方か?

 くうっ、シブイねっ!!( ̄▽ ̄)

 一見パッとしないじみーなお話ですが、けっこうハードボイルドテイストですよ。男の美学だ背中が泣いてるぜってなカンジで、大人の文章が泣かせてくれます。著者は新進気鋭のA・チャップマン。訳者は久志本克己氏です。

 

 さてそれでは主人公作成ですが、当ブログではSF作品については「宇宙(そら)の一族」と銘打って勝手にやっちゃってます。つまりこれらはサワムラ家の年代記なワケで。

 1作目『さまよえる宇宙船』の主人公はホクト・サワムラ。

 2作目『宇宙の暗殺者』の主人公は、ホクトの子、ハヤト・パウロ・サワムラ。

 そして3作目の今回『宇宙の連邦捜査官』での主人公は、ハヤトの生んだ3人の子供のうちの長男、マサト・サワムラくんになります。警察官らしく正義感の強い、物静かでダンディな32歳。だけど完璧な人物だとツマラナイなあ。うーん・・・

 1回結婚したけど仕事が忙しくて妻とすれ違いが多くなり、バツイチだったことにしちゃおっか。そして普段は母親の方にいるのでなかなか会えないけど、いちおう可愛い1人娘がいるっていう設定はどうか?

 いいでしょう、OKです!なんだか燃えてきましたっ!!

 さてそんな仕事第一男であるマサト・サワムラの能力値ですが、これはサワムラ家の一子相伝ということで、今までの主人公のをそのまま引き継いじゃいましょう。よってこうなりました。

 

 【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 次に彼が操る宇宙船の能力も決めましょう。1d6+6原武装力点が決まります。はあっ・・・出目は、やたっ、6だ!!(^v^)

 そしてまた1d6。これは原防御力点になります。こっちの出目は・・・4か。まあまあ。

 かくして銀河連邦警察所属の宇宙船「サクラ号」の能力値は、こうなりました。え?何でこの船の名前がサクラなのかって?まあそれは彼の愛娘の名前ってことで(ベタだなぁ)。

 

 【武装力点12/12 防御力点4/4

 

 それではSF物につきものの特別ルール。

 個人戦闘は格闘戦と熱線銃による射撃戦になる。

 このうち格闘戦はいつものFFシリーズの戦闘と同じだ。だけど運試しによるダメージ増大はないから注意。

 射撃戦はいわゆる技術点チェック。先手は常にこっちから。これに成功したら体力点を格闘戦の2点ではなく、4点引くことができる。そしてまだ敵が生き残っていたら、こんどはあっちが技術点チェック。命中したらやっぱり体力点-4。もし敵が複数いたら、全員が技術点チェックで射撃してくるんだってさ((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 

 次に宇宙船の戦闘だ。

 まずはフェーザー砲を使うやり方。これは2d6で武装力点以下の目を出せば命中する。さっきの射撃戦とやり方は同じで、見るべき能力値は技術点から武装力点に変わったわけだ。もちろん先手は常にこっちから。命中すると、敵の宇宙船の防御力点から1を引ける。

 次に敵の宇宙船が同じ方法で射撃してきて、どっちかが防御力点が0になったら、ボカーン!と破壊されちゃうわけだ。やっぱり敵宇宙船が複数いたら、その全部が射撃してくる。だから敵宇宙船4隻に囲まれたら、一瞬にして((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 だが宇宙船サクラ号には、強力な武装であるスマート・ミサイルが2備え付けられている。こいつを発射すると、瞬時に敵の宇宙船を破壊できるのだ!こりゃあ強力な切り札だから、大事に温存しておく必要があるな。

 

 あとは雑多なルール。

 体力点の回復には体力回復剤を用いる。こいつは1錠飲むと体力点を6点回復できる。最初の携行数は4錠だ。

 それからアレフ・シグニ星系では、いろいろと現金が必要になる。特に賄賂とか賄賂とか賄賂とか・・・(笑)。最初の所持金は5,000コペックです。あ、ちなみにこのコペックって単位は国際標準通貨の略です。

 

 さあ、バツイチ捜査官、マサト・サワムラの準備はできたよ。

 アレフ・シグニ星系で麻薬組織を撲滅するぞ。おーっ!!ヽ(゚∀゚)

 

※タイタン世界の紹介コーナーは、今回お休みです。どうかご了承ください。 

 

 

 

娘の10回目の誕生日 --The Rings of Kether--

 

少女の画像「パパ、見て、このお花きれいでしょう?」

マサト「・・・」

少女の画像「理科の実験で作ったの。りっぱなブルーローズ(青薔薇)よ。私のがいちばん綺麗なフェデフラグ・ブルー(連邦旗の青)だって、先生も誉めてくれたの!」

マサト「・・・ ・・・ ・・・」

少女の画像「ところでパパ、今年の誕生日プレゼントなんだけど・・・」

 

 ここで画像が切れた。目的地がそろそろ近づいてきたのだ。

 おいおい、娘の10歳の誕生日だっていうのに・・・

 いや、切るように設定していたのだから別に文句は言うまい。

 銀河連邦警察(GUP所属の高速宇宙船「サクラ号」のメインコンピュータが、申し訳なさそうに告げる。

 

メインコンピュータ「マサト、娘さんからの楽しい便りを邪魔してすいませんが・・・」

マサト「わかってるよ。そう設定したのは私だ。君が謝ることはない」

メインコンピュータ「ワープ終了10分前です」

マサト「OK、このファイルは一時保存、メインライブラリに凍結。あとはこの星を出るまでのお楽しみだ」

 

 私は銀河連邦警察の制服をアタッシュケースに詰め、市井のセールスマンの格好に着替え始める。無重力状態のさ中、器用に。

 もちろん「サクラ号」の船籍もダミーに摩り替える。航宙コンピュータ登録上は、この船はアンタレスオレンジ300tを積んだ貧相な貨物船、そして私はいかがわしい星間商人に成り変わるのだ。

 

 私の名はマサト・サワムラ。

 祖父は偵察艦トラベラー号で、次元漂流から奇跡の生還を果たした名艦長ホクト・サワムラ。父は全人類を震撼させたヴァンダーベッケン事件で、単身乗り込んで見事テロリスト捕縛に成功したハヤト・サワムラ。

 そして、その「宇宙(そら)の一族」直系に連なる長男が、私だ。

 父は照れ屋で自分の功績をめったにひけらかさなかったが、やはり一族の血統というわけか、父を尊敬していた私もまた、宇宙への道を進むことに決めた。

 だが、私の見つけた仕事場は、祖父や父のように軍隊ではない。連邦に住まう人類の治安を守るため、銀河連邦警察(GUP)への道を選んだのだ。

 星々を又にかけ、不法と腐敗を暴く連邦上級捜査官への道を。

 

 仕事は危険だがやりがいのあるものに限る、と、父がよく言っていた。30代に突入して2年間が経過し、やっとそれがわかってきたような気がする。未だ断片的なものではあるが。

  「処刑執行人」

  「心臓がビス止め」

  「5年続けられたら奇跡」

  「アンタッチャブルズ」しばしばその後ろに感嘆符がつく)

 GUP職員の中でも尊崇の、あるいは憐憫のまなざしで見つめられる部署、連邦犯罪局。そこである一定の自由捜査権(フリーハンド)を与えられた連邦上級捜査官。その権威は人類が統べる世界すべてに轟き渡って・・・いるはずだ。

 私も、生死の狭間で犯罪者の放つフェーザー光線をかいくぐりながら幾多の事件を解決し、それなりに社会秩序を守る役割を果たしてきた、と思っている。

 だが家庭も省みることのできる理想の父親だったか、と、問われると疑問だ。

 特に、孤独な船内で、離婚した妻に引き取られた愛娘サクラ・ウィリアムズのホログラム・レターを見返すとき、つくづくそう思う。

 もっとうまく折り合いをつけられる人生は、なかったものかと?

 

 自己批判はあとにしよう。任務に集中しなければ。

 もうすぐ今回の捜査現場にジャンプ・アウトする。

 

 銀河連邦(Galaxy Unionは数多の文明世界から構成される緩やかな統合政体で、惑星政府それぞれが最高法規たる銀河連邦基本法と、他の様々な連邦法と条約を遵守する義務を負う。

 その1つに-19がある。これは麻薬の取引抑制に関するもので、要するに惑星間の麻薬売買を取り締まる法令である。ある惑星が自分達の利益を確保するために、他の惑星に麻薬を蔓延させることは違法なのだ。

 しかしGUPは、昨今爆発的に蔓延している不法麻薬セイトフィル-Dが、ある辺境のちっぽけな惑星から大量に流出していることを突き止めた。

 それが、私の今回の仕事場、アレフ・シグニ星系だ。

 A-19法違反に対する処理に惑星政府が明らかに失敗したので、不法麻薬セイトフィル-Dの源を突き止め、密売組織を発見し、これを潰すため、連邦犯罪局は私を送り込むことに決めた。

 銀河連邦に加盟した年月の浅いアレフ・シグニ星系政府は、辺境政府独特の公務員倫理を有している。すなわち--「まったく信頼できない」。

 そこに風穴を開けるのだ。銀河連邦に加盟する全惑星を悩ましている麻薬を撲滅するために。

 

メインコンピュータ「ワープ終了まであと5分」

 

 船内コンピュータの落ち着いた声色とともに、ブリッジに入った私は、同じくらい冷静に自動航法装置を休止させて船の操作権を自分に戻す。

 操縦桿を握り、これからの激務に思いをはせる。大丈夫きっとうまくいくさ。今までと同じように。そういえば次の面会日はいつだったっけかな。よせ、何を考えているんだ。

 ため息をつき、ちょっと間が生まれた。

 そして少し後悔する。

 

 もう5分遅くしておけば、サクラが欲しがってる誕生日プレゼントを、聞けたのか・・・

 

 

 

手荒な歓迎 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点4/4

 

メインコンピュータ「通常時空への突入に備えてください」

 

 次の瞬間・・・ストン。

 宇宙船の底が抜けたような感覚とともに、モニターにあらゆるものが舞い戻って映り出す。私が最後の瞬間にかかった乗り物酔いを除けば、正常にジャンプ・アウトしたのだ。

 正面のスクリーンに見えるのがアレフ・シグニ星系。黄色く光る恒星のアレフ・シグニ、そして唯一の惑星ケサール。事前に集めていたライブラリ情報では、ケサールは人間の居住が可能で、広大な大洋と点在する島をのぞけば、たった一つの大陸から成る。

 惑星ケサールの周りを巡るのは、あばた面の小さな月--リスピンズ・エンドだ。その他にもスクリーン上は見えないが、航法装置によって存在が探知できる太い小惑星帯がある。

 さて、どこから麻薬密輸業者の捜査を始めるとしようか?

 

 (1)ケサールの宇宙空港か?

 (2)月か?

 (3)小惑星帯か?

 

 小石を隠すには砂利の中、というが・・・

 今までの私の捜査経験からすれば、やはり人間生活圏から離れたところに隠れ家は設定されている。ここは基本どおりに(3)だ。小惑星帯に向かってみよう。

 私は高速宇宙船「サクラ号」をひとまず星系の外縁部に向ける。2つの核融合エンジンは3Gの加速で運んでくれるが・・・不意にアラームが鳴った!

 

メインコンピュータ「警告!警告!未確認の宇宙船が迎撃コースで小惑星帯より接近中!!」

 

 私はすかさずフレンドリーシグナルを発信する。この船は単なる貨物船だ、君達に敵意はない・・・そして衝突を避けるため、サクラ号をほんの少しターン。

 しかし2隻の宇宙船は衝突コースを保っている。私の船を捕捉して挟み撃ちにする機動だ!

 

メインコンピュータ「交信シャットアウト。何の反応も返ってきません」

マサト「サイズからすると、無人迎撃機か・・・」

 

 おそらくこの小惑星帯に侵入した船は、どんな反応を見せようと撃沈するように、優先順位プログラミングが為されているらしい。外来の船を入れたくない何者かによって。そして奴らは射程内に入るとフェーザー砲を撃ち始めた!

 

メインコンピュータ「敵船発砲!応戦準備完了です。コントロール・ユー・ハブ!!」

マサト「手荒な歓迎だな!!」

 

 いきなりだが戦うしかあるまい。銀河連邦警察所属のサクラ号を、単なるとぼけた貨物船だと思うなよ!!

 こうして私は宇宙船戦闘に突入した。

 

【迎撃機1 武装力点5 防御力点3

【迎撃機2 武装力点5 防御力点2

1R サクラ号射撃(7)命中 迎撃機2/防御力点-1

  迎撃機1射撃(7)外れ

  迎撃機2射撃(8)外れ

2R サクラ号射撃(11)命中 迎撃機2/防御力点-1 ←Destroy!!

  迎撃機1射撃(8)外れ

3R サクラ号射撃(4)命中 迎撃機1/防御力点-1

  迎撃機1射撃(12)外れ

4R サクラ号射撃(6)命中 迎撃機1/防御力点-1

  迎撃機1射撃(5)命中 サクラ号/防御力点-1

5R サクラ号射撃(4)命中 迎撃機1/防御力点-1 ←Destroy!!

 

 プログラミングされた単純な機動ならば予測は容易い。

 私は小刻みに操縦桿を動かし、最大効率・最短時間で迎撃機2機を撃墜する。しかしこちらも主翼に多少損害を負った。私は舌打ちしつつ小惑星帯に向かい続ける。

 ちっ、出だしからハンデを背負ってしまったか・・・

 

 そしてひとまず目的地に到着した。

 このあたりは恒星アレフ・シグニから4AUの距離にある巨大なリングだ。優秀なるメインコンピュータ氏が解析してくれたところによれば・・・

 かなりの大きさの岩が少なくとも10万。もっと小さなもの(それでも、隠れ家とするには充分な容積がある)でも100万は下らない。なんとまあ、そりゃまた大したもんだ。

 

メインコンピュータ「つまりは・・・」

マサト「わかっている。馬鹿げたことだ」

 

 宇宙船の基地を隠せるあらゆる岩をしらみつぶしに捜索するとすれば、銀河連邦の宇宙1個艦隊でも20年はかかる。これではどうしようもない。

 もっと有益な情報を得た上で、あらためて座標を特定しなければ。

 

マサト「仕切りなおしといこうか・・・」

 

 私は肩をすくめ、惑星ケサールに到着するコースを設定し直すのだった。

 

 

 

警察本部ビルにて --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 惑星ケサールに宇宙港1つしかなく、しかもそこは首都から10kmと離れていない。まあ、典型的な辺境星系によくあるたたずまいだ。

 着陸した私の宇宙船「クラリス・ベル号」(サクラ号の偽名)は、曳航トラクターにてパーキングエリアに曳かれていく。それからいきなり税関職員が乗り込んできた!

 

マサト「なんです、麻薬ですか?」

 

 さっそくカマをかけてみる。しかし彼らはいやに気取った様子でブリッジを眺めてから、ある一つの装置に目をつける。

 それは船外に向けて発せられるスパイ・ビーム発光システムだった。

 

税関職員A「いえ、テクノロジーです。これがその一例です」

税関職員B「申し訳ありませんが、この装置は輸入禁止措置が執られています。押収いたしますので、それでは」

マサト「いや、ちょっとま・・・」

 

 否応なしにユニットを取り外す彼ら。たしかにそんな高価な機械ではなく、所詮は官給品なのだが、宇宙船に乗り込んでの探査活動がしにくくなるのは間違いない。しかしここでゴネても余計なトラブルを生むだけだ。私は「いや、それは知らなかったなあ、かんべんしてくださいよぉ・・・」と、間抜けな商人の振りをして、泣く泣く手放す演技をする。

 しかし話はまったくかみ合わず「それではアレフ・シグニ星系へようこそ!」と、税関職員たちはいかにも官僚的な愛想笑いを返しつつ、私の船のタラップを降りていくのだ。

 ふーむ、なんとも無愛想な取り扱いだ!

 しかも彼らは、私の積荷を調べもせず、宇宙船に取り付けられた装置のみをチェックしていたようだが・・・

 

 宇宙空港は広いが、ほとんど人はいない。停泊している宇宙船は「クラリス・ベル号」(つまり私の船)と、ずんぐりしたシャトルが1機のみ。あとは警備用の迎撃戦闘機があるだけだ。

 だが暇そうにしている空港マーシャルがいたので、座談がてら情報収集してみることにした。

 わかったことは、この港がアレフ・シグニ星系で宇宙船燃料を補給できる唯一の施設だということ。

 もしそうならば、この星から輸出されている麻薬のすべては、この宇宙港を通過しなければならない、ということになる。

 とすると、結構早く手がかりは見つかるかもしれないな・・・

 私はまず惑星ケサールの警察本部に向かうことにした。どんな組織にせよ縄張り意識はある。こちらの方に上位捜査権があるとはいえ、自分のシマで好き勝手やられたら、相手はいい顔をしないだろう。それどころか捜査を妨害される危険もある。話を通しておくにこしたことはないのだ。

 

 警察本部に向かう途中で、惑星首都の規模がだいたい概算できた。

 実のところ直径10kmほど、小さく発展中の単なる普通の都市だ。市の中心部に50階建ての官庁ビルと高層マンションがいくつかあるだけだ。

 私が乗ったヘリタクシーは警察本部ビルの屋上に到着し、私はそこから犯罪局のセクションに向かう。

 

マサト「すみませんが、上級捜査官の誰かに話をしたい」

 

 当直の警察官に、私は自分の所属する連邦犯罪局のバッジを見せる。年をとって眠そうな男は「そうですか・・・」と顔を私に向けた。このバッジの持つ意味に気づいてくれるだろうか?

 ここで1d6を振り、出目は5、奇数だ。

 年配の警察官は神経質にネクタイを締め直す。わかってもらえたようだ!彼は制服のしわを伸ばしながら、長い廊下を案内していく。

 

警察官「いつもでしたら質問をお受けするのはペリー警部補ですが、彼は・・・ええと・・・会議に出ています。代わりにサミュエル警部補でもよろしいでしょうか?」

マサト「誰でもかまわない。話が通じるならばね」

 

 私は彼のオフィスに通される。

 サミュエル警部補は30歳くらいの小太りの男で、真ん丸い眼をして私を迎え入れた。どうやら私の為すべき仕事がよくわかっているようだ。よし、あまり好きではないやり方だが、ここは権威を嵩にきて高圧的に攻めようか。

 

マサト「私はGUPの上級捜査官だ。率直に言えば、アレフ・シグニ星系の麻薬組織を撲滅するために送り込まれた。情報を提供してくれるとありがたい」

サミュエル「あ・・・いや・・・」

マサト「君は私の捜査に協力しなければならない。拒否権はない」

サミュエル「・・・ ・・・ ・・・」

マサト「どうかしたのか?」

 

 なぜ彼はしゃべらない?

 サミュエルの目が泳いでいる・・・机の下・・・鉢植えのシダ・・・

 そうか!うかつだった!!

 彼は私の表情を見てこくんとうなづく。それから紙切れに何か走り書きすると、私に渡す。そして慇懃にドアを開け、私に出てもらうよう、丁寧な手振りで依頼するのだった。

 メモにはこう書いてあった。

 

 『ここでは話せない。今晩1930時にレストラン・ヴィククで会おう』

 

 まさか警察官が自分の本部で犯罪の話をできないとは!

 あのオフィスに隠しカメラか盗聴器が仕掛けられていたとすれば、図らずも奴らに宣戦布告してしまったわけだ。

 辺境惑星とはいえ、そこまで警察と密売組織との癒着が進んでいるとなれば・・・これは相当に困難な任務となるな。

 私はため息をつき、警察本部ビルを後にするのだった。

 

 

 

歓楽街での情報収集 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 1930時、レストラン・ヴィクク--

 すでにサミュエル警部補はボックス席に座っていた。私も彼も、もちろん私服。サミュエルは念入りに付け髭をして変装までしている。

 

サミュエル「つけられませんでしたか?」

マサト「大丈夫だと思う。さっきはすまなかった」

サミュエル「こちらも大丈夫。気づまりする篭の鳥生活とはいえ、来客モニター記録を抹消することくらいは、できますから」

マサト「・・・(ほっとして、グラスを掲げる)・・・」

サミュエル「あなたと会ったことが知れたら私も破滅ですからね。必死ですよ」(乾杯する)

 

 サミュエルはどことなくほっとした面持ちで、額を古いハンカチでぬぐい、グラスの酒をあおる。やっと懺悔する対象が来て、良心のつかえがおりたのかもしれない。食事をしながら、とぎれとぎれに告発していく。

 彼曰く、ここの警察本部はすでに賄賂にやられてズタズタになっている。中でも彼のセクションである犯罪局がいちばんひどいとのこと。

 

サミュエル「麻薬関係については、もう何ケ月も、どんな形の捜査も行われていません。上層部の連中は、おそらくは全員が、誰かに買収されているのです」

マサト「いったい誰が?」

サミュエル「それを探るのが・・・」

 

 自分の仕事だよな。そりゃ、確かにそうだ。

 愚問だ。どうも今回は調子が出ないな。仕事前に愛娘のホログラムビデオを見て、感傷に慕ったせいか。

 彼は腐敗組織の単なる末端だ。何も知りはしない。だが彼でも提供できる具体的な手がかりが2つあった。

 1つは、麻薬の一部がこの都市のヘリポートに--合法・不合法問わず--到着しているということ。

 もう1つは、暗黒街に1人、彼独自のルートで情報提供者を押さえていること。そいつは失業中の宇宙航法士らしい。

 どっちのルートをたどるか・・・私は合鴨のローストを口にしながら考える。ヘリポートをずっと見張っていても、いつ麻薬の積荷が入ってくるかわからない。もう少し準備したほうがよさそうだな。断片的な情報を集約して、1つの確信に変えなければ。

 

マサト「よし、君のいう“失業した航法士”とやらに会ってみよう」

 

 私とサミュエル警部補はそそくさとレストランを出て、次は宇宙空港の近在街にある汚い酒場に向かう。ぱっと見では飲んだくれのオジサン2人組だ。誰も注意を払う者はいない。

 サミュエルは入口で私に使い捨てホログラムを渡した。例の人物は、背が高く、アフリカーンスで、鼻が大きい。

 

サミュエル「この時間なら、彼はこの中にいます。こんな男です」

マサト「見分けはつきそうだ」

サミュエル「彼に私の紹介だと言ってください。では」

 

 そそくさとサミュエルは去った。

 私は1人、うらぶれた旅行者のふりをして酒場に入る。中はいかがわしいネオンサインがちかちかと光り、たばこの煙と揮発したアルコールでむせかえっている。

 そして目指す人物は…いた。カウンターに。私がサミュエルの紹介だと話すと、彼は話をするために空いたテーブルに連れていく。

 ビールのグラスの上に低くかがみこんで、ボソボソと話し始める元航法士。

 だがすでに酔っぱらっているらしく、情報というよりも、独り言に近い。採用できそうな情報はあまりなかった。声は小さくくぐもっていて、酒場の騒音で録音もできない。ほとんどが聞き逃してしまう。

 だがそれでも、なんとかなだめすかして、酒をおごりつつ、粘り強く情報収集していった。彼がしゃべったことは…

 

 なにか奇妙なことが月のリスピンズ・エンドで起こっている。

 そしてその「奇妙なこと」に深く関わっているのは、私の背後のテーブルでけたたましい嬌声を上げている太った女だ。

 

 ここまで話して、彼は恐ろしそうに眼を伏せた。私の対面に座っているから、彼はずっとその「太った女」の姿を見続けていたことになる。いったい誰なのか?

 私は振り返って背後のテーブルを見る。そこには・・・

 

 うわっ!

 こいつは人類か???

 

 でぶっちょのその女性は、なんとも恐ろしかった。歯は隙間だらけで、ビールに酔っ払っていて、始終げっぷをしながら歯を鳴らし、股をボリボリとかいている。私はそそくさと体の向きを元に戻し、視線を合わせないように背筋を曲げる。

 しかし一緒にカードで遊んでいるチンピラたち(全員それなりの容貌をした美少年だ)に命令する態度から、それなりの地位と実力を保持していることもわかる。どんな実力を持っているかは、まだわからないが・・・

 いつの間にやら情報提供者の元航法士はふらふらと千鳥足で酒場を出て行ってしまった。私はテーブルに1人、ビールをちびちびとやりながら、背後のテーブルをひっそりと監視する。

 

太った女「ゲハハハハ、フラーッシュ!私の勝ちね、報酬は体で払うの、それ!」(脇にいたちんぴらの服を脱がせる)

チンピラ「うわあ、やめてくださいよお!」

太った女「ちょっとなに・・・(げふっ、と大きなげっぷをしてから)・・・私の言うこと聞けないっての???」

チンピラ「う、わ、わかりました」

太った女「逆らった罰よ、そこに座って、射精して頂戴!!」

チンピラ「そ、そんな、マダム・・・」

太った女「ああ?チ◎◎コついてんだろが、あああああ???」

 

 この乱痴気騒ぎをいつまで監視してればいいんだ?

 連邦上級捜査官は本当に過酷な職務だ・・・

 

 

 

尾行者たちの夜 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 数時間後、頽廃と享楽の乱痴気騒ぎは終了した。

 太った女は特大のげっぷをして立ち上がると、店から通りへと、よろめくようにして立ち去る。周りの男どもは彼女についていく気力はない。だらしなく疲れてカードを下し、カウンターに突っ伏した。うん、気持ちはわかる、気持ちは・・・

 と、こうしている場合じゃない。彼女を追跡調査しよう。

 私はグラスを置いて飲み代を支払うと、そっと女の後を追う。驚いたことに、彼女は運転手つきの車を使わず、ふらふらと表通りを歩いている。

 外は夜。私が彼女を追うのに隠れる場所はいくらでもある。

 ここで技術点チェック・・・成功だ。銀河連邦警察学校の厳しい訓練、そしてその後の数多くの任務で磨き抜かれた私の尾行術に、彼女は全く気づかない。

 

 しばらくするうちに、彼女は5階建てのアパートにたどり着いた。そして4階の窓に明かりがつく。

 私はアパートの玄関に回り込み、住民一覧表をチェックする。4階に居を構えているのは?

 

 【 ゼラ・グロス 恒星間・惑星間 輸入/輸出 】

 

 なるほど・・・

 いかにもだ。その筋の人間であることは間違いない。

 私は「ゼラ・グロス」という名が判明した太った女の部屋を張り込み続けることにした。彼女が”その筋”の人間ならば、同じく“その筋”の誰かとコンタクトをとるに違いない。

 彼女の部屋は一人暮らしで同居人はいないようだ。まあ確かに、あの風貌と性格では男の方が蒸発してしまうだろうが。

 

 カツ、コツ、カツ、コツ・・・

 

 ん?誰かがこのアパートにやってくるぞ?

 私はアパートの玄関にある凹みに身を隠す。ぎりぎりのところで、痩せた男が通りを横切って、ここに入ってきたのだ。男はインターホンで4階を呼び出す。

 私は銀河連邦警察から支給された空気振動探知イヤホンを耳に装着する。官給品だが高性能だ。100m先のささやき声だって集波盗聴できる。

 やがて眠そうな女の声が機械越しに、バチバチと途切れ途切れに聞こえてきた。

 

痩せた男「ゼラ?」

ゼラの声「だれ?」

痩せた男「アーサーです」

ゼラの声「うん・・・わかった、上がって」

 

 オートロックの扉が開く。彼は建物の中に早足で入っていった。

 あれだけ飲んで騒いだ後で、今度は間男と逢引きか!

 私は頭をかく。恐ろしく精力的な女だ。コトが終わるのはどれくらい後だろうか。おそらくこってりと・・・やめよう、想像したくない・・・

 いや待て、もう出てきたぞ!!

 まだ10分も経っていないのに、アーサーと呼ばれた男はすぐにゼラの部屋を出て、注意深くまわりを警戒しながら早足で去っていった。

 ということは情事じゃない。何らかの受け渡しだ!

 うまくいけば物証が入手できる。私はゼラのアパートを離れ、今度は彼を尾行することにした。

 

 ところが、アーサーという男は、ゼラよりも数段警戒心が強かった。

 彼は私に気づくと、脇道にひょいと逸れる。私は急いで曲がり角を回るが・・・どこにもいない・・・と思った矢先に・・・ぐいっ!

 不意に手が私の腕を捕まえて、建物の間の暗がりに引きずり込んだ!!

 「なに・・・?」私は第一声を発する前に、口を押さえられる。押さえつけたのは私が尾行を試みていた張本人のアーサーだ。

 彼は有無を言わさず、紙切れを出して何事かを書きとめ、私に見せた。

 

 『静かに!見張られている!!』

 

 アーサーを尾行していたのは、私だけではなかったらしい。いや、ひょっとしたら、アーサーを尾行していた私が、さらに別の何者かに尾行されていたのかもしれない。

 いずれにしろ、私はコクっとうなずくだけだ。

 続けてアーサーは、紙切れに次の言葉を書き加えた。

 

 『ホテル・ミリマールで会おう。1201号室。1時間後』

 

 そしてアーサーは再び周りを警戒しながら、早足で立ち去っていった。見事なまでの人混みへの紛れ方だ。あっという間に姿が消えてしまった・・・。

 雑踏の中で置いてけぼりとなった私は立ち止まり、考え込む。いきなり協力者らしい態度を見せてくれたアーサー。果たして信ずるに足る男か?

 宇宙港歓楽街の夜は騒々しく更けていく。さて、私はどうすべきだろう。

 申し出通りのアポイントメントでアーサーに面会するか?それともゼラ・グロスのアパートの監視を続けるか?

 

「彼は敵か?」

 罠の危険性は多分にある。アーサーは餌だ。行けば麻薬組織が待ち構えていて・・・。

「それとも味方か?」

 たった1つのか細い捜査線を、ここで無に帰すのは惜しい。

 

 この星では、誰が味方で誰が敵なのか、全くわからない。わからなければリスク回避もできない。できないのならば心配をしてもしょうがない。よし!

 

 結論--私の足はホテル・ミリマールへ向かっていた。

 

 

 

アレフ・シグニで最も危険な男 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 深夜。ホテル・ミリマールのエレベータは故障していた。

 30過ぎた肉体に、12階まで登るのは結構つらい。息を切らしながら階段を上っていき、呼吸を整えようと階段口に寄り掛かる。

 するとアーサーがいる(と思われる)1201号室のドアが開いた。先客がいたのだろうか。胡散臭い顔つきの男がジャケットに何かを入れながら外へ出てくる。

 階段口でだらしなくもたれかかっていた自分と目が合い「・・・!」少々驚いたようだ。

 奴は落ち着かない様子でエレベータを待っているが、故障であることがわかると、階段を足早に降りていく。そのとき間近ですれ違った私はピクンと気づいた。間違いない、この臭いは・・・

 血の臭い!!

 私は瞬発的に体の向きを変え、階段を下りて行った男を追いかける。

 間もなく背後の12階から「きゃあああ!」という掃除婦の悲鳴が聞こえた。やはりな!あの殺し屋はドアに鍵を掛けず出て行ったのだから、掃除婦はアーサーのなれの果てを目撃したのだろう。

 階段を駆け下りながら推論をまとめていく。おそらく組織を裏切ろうとしたアーサーは粛清されたに違いない。私が追う殺し屋が持っているもの--ジャケットに急いで隠し入れたもの--は、ゼラが彼に渡した麻薬セイトフィル-Dか、それとも・・・

 私は階段を下りた殺し屋を追って通りに出た。

 幸い、奴は私に気づいてはいない。車が彼の前に停まると、そそくさと乗り込み、走り去っていく。私は急いで流れのエアタクシーを呼びとめ、警察章を振りかざした。

 

マサト「警察だ、あの車を追ってくれ!」

運転手「か、カンベンしてください・・・関わり合いになりたくないですよ・・・」

 

 ごくまっとうな反応だ!

 

マサト「頼む、非常に重要なんだ」

運転手「だめです。別のタクシーをつかまえてください」

 

 そう言って小市民の運転手はハンドルから両手を離す。そうしているうちにもどんどん目標車両は遠ざかっていく・・・

 やむをえん、非常手段だ。

 私は熱線銃を抜き、彼のこめかみに突き当てた。

 

マサト「追うんだ」(カチャリ・・・)

運転手「ひ、ひいっ!!」

 

 アクセルを踏み込む運転手。やっとエアタクシーは発進した。

 覚悟を決めたのか、私の乗ったエアタクシーは可能な限り高速で殺し屋の車を追いかける。私は後部座席で腕組みをしているだけでいい。

 やがて追跡の舞台は市の郊外に移り、車は1つの倉庫の中に消えた。

 私はそこから1ブロック離れた所にエアタクシーを止め、運転手に非礼を(丁重に)詫びてから、金を支払う。あとでタクシー会社から苦情が来るかもしれないな。まあでも、それは自分の仕事の中では日常茶飯事だ。

 

 さてここは、倒産した機械製造会社の、打ち捨てられた倉庫だ。

 私は正面の大きな表門に近づいてみた。大きなスライド式のドアはカギがかかっておらず、簡単に開いた。

 中は真っ暗だ。

 大きな木箱の輪郭がぼんやりと見える。

 目の前には殺し屋が乗ってきた車が認められる。

 こっそりと、注意深く、暗闇にまぎれながら忍び込む・・・

 

悪党ども「とまれ!!!」

 

 突然、木箱の陰から6,7人の男が飛び出す!!

 しまった、罠だ!

 

 奴らは全員、熱戦銃の銃口をぴたりと私の身体に向けていた。

 完全に包囲された形だ。どこにどう動こうとも、十字砲火を受ける位置に私ははまり込んでいた。私は頭上に手を上げるしかない。

 ならず者たちは薄笑いを浮かべながら接近してくる。車のドアが開き、私が追っていた殺し屋が出てきた。そしてその後ろから、おそらく彼らのリーダー格である胡散臭い顔つきの男も。

 直感が告げる。こいつはアレフ・シグニ星系で最も危険な男だ。

 そいつは45歳くらいの痩せた男、理知的な表情だが、切れ長の目には凶暴な光がこもっている。奴はゆっくりと、何か思案でもしている様子で私の方に近づいてくる。

 

???「ケサール到着1日目から精力的なご活動だな、上級捜査官殿」

マサト「はあ?私は一介の星間商人で・・・」

???「ああそうかい。サミュエルとアーサーはすべて話したよ。それから罰を受けた」

 

 自分がGUPの潜入捜査官であるということは完全にバレている!

 私は衝撃を隠しながら、交渉の余地を必死で探った。

 

マサト「あなたは・・・あなたは、どなたですか?」

???「友人は、私を“ブラスター(熱線銃)”と呼ぶ。でも君には、それは関係ない」

マサト「どうして関係がないのですか?」

 

 ブラスターはのんきそうな声で応対する。だがそこに、一切の良心は感じられなかった。

 

ブラスター「なぜって、君はすぐに死ぬからさ」

周りの悪党ども「げひゃひゃっ!」

ブラスター「我々は小惑星帯からの通信を今晩ここで待っているんだ。わかるかね?」

マサト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

ブラスター「せっかく嗅ぎまわっていたのに、君には残念だが・・・」

 

 そこまで話すと彼は、目を細めて、喉に指を走らせた。全銀河共通の合図だ。

 

ブラスター「よし、お前ら、屋上で頭に銃弾3つだ」

 

 私はガンマン2人に背後で銃を突き付けられ、倉庫の屋上まで登らされる。

 屋上まで伸びている鉄骨構造の非常階段が、遠く、遠く感じられた・・・。

 

 

 

クライブ・トーラスの友情 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 銃を突き付けられ、両手を上にして階段を登る。

 私の命の灯火が消えるまで、あと30秒、20秒、10秒・・・

 頭上に横木がある。飛びつけ!

 ここで運試し、最初の運点は12なので自動的に吉。私は横木をつかみ、鉄棒の要領で反動を用いてガスッ!1人目の悪党を両足で蹴る。奴は非常階段を転げ落ちていった。

 もう1人の悪党はアワアワしながら熱戦銃を構えなおすが、すでに私は接近している。もう一度ハイキック!バシッと手にしていた銃を蹴りはたく。そして間髪入れずに延髄に手刀を入れ、奴も気絶させてから階段の下に放り投げる。

 

ブラスター「逃がすな!蜂の巣にしろ!!」

 

 ZAP!ZAP!ZAP! 階段の下から熱戦銃の光線が私を襲う。これはたまらない。急いで階段を上り、倉庫の屋上に姿を消した。

 だがここからどこに行けばいいのか。非常階段を駆け上がってくるブラスターの手下たち。このままでは袋のネズミだ!やはりここで終わりか。嫌だ、死にたくない、娘よ!!

 

???「おーい!」

マサト「・・・!!」

???「おーい、あんた!」

 

 私が上った倉庫の反対側の地面から声が聞こえる。

 見下ろしてみると、暗がりの中で、1人の男がしゃがみ込んでいた。口笛を吹き、こっちへ来いと言わんばかりに手を振っている。

 おそらくは彼もブラスターの子分にちがいない。だが、他に手段はない!

 私は雨どいを伝って彼のいる地上に着地した。屋上の倉庫では「どこに消えやがった、探せ!」とガンマンたちが悪態をついている。

 私と、私を窮地から救った男は、暗闇にまぎれてコソコソとその場を脱出した・・・

 

 追手をまいたところで、改めてこの男を観察する。

 私と同年代の30代のハンサムな男性だ。コーカソイド系の顔立ちをしており、どことなく神経質そうな、繊細な感じも受ける。物腰は丁寧で、さっきの悪党どものような粗暴さがない。おそらくはブラスターの組織内でも頭脳労働職なのだろうが・・・

 

クライブ「私はクライブ・トーラス。仕事を一緒にできるかもしれません」

マサト「・・・おや、本当かな、どうやって?」

クライブ「ここでは言えません」

マサト「それで、どうして君を信じろと?この敵だらけの星で??」

クライブ「私とアーサーは幼馴染で、同じスラムの出身なのです」

 

 完全に奴らのアジトから離れた。もう追手の心配はない。男2人、明け方の街をさまよいながら、クライブはポツポツと自分の身の上を話しだす。

 私と接触したかどで粛清されたアーサー、そして目の前の男クライブ。彼ら2人は不良少年の頃から、暗黒街の顔役であるゼラ・グロス、そして彼女の密輸パートナーであるブラスター・バベットの傘下に入って生きざるを得なかった。

 クライブには持ち前の計算高さがあり、やがて荷物取引を扱う事務管理職となって、相応の住まいと美しい妻がいる家庭を持つに至った。しかし要領の悪いアーサーは下っ端の域を出られず、使い走りとなり、ついにボスの手によって殺された・・・。

 境遇が隔たった2人ながらも、共通項はある。

 一つは、生命を分け合った幼い日の友情を忘れたことはないということ。

 そしてもうひとつは、彼らの上司、ゼラ・グロスの暴虐と、ブラスター・バベットの冷酷に日々脅え続けていた、ということ・・・

 

クライブ「私はアーサーの遺志に従わなければならない。私のデスク上で取り扱っていることならば、何でも提出しましょう。連邦上級捜査官殿」

マサト「・・・!」

 

 待て。むやみに食いつくのは危険だ。

 君の亡き友への想いはわかった。しかしまだ罠の可能性が捨てきれない。

 

マサト「ひとつ聞いてみて、いいかな?」

 

 私は言葉を選びつつ、慎重にクライブへ質問した。

 君は麻薬組織の中でも、それ相応のポジションにあるとお見受けした。このまま私をブラスターないしゼラに引き渡せば、君は上司から更なる恩顧と信頼を得るだろう。だが君は、私に麻薬取引の情報を譲るという。組織に決定的なダメージを与える情報を、だ。

 

マサト「幼い日の友情というのは、そんなに強固なものなのか?」

クライブ「ああ、それは、あこがれていたんですよ、私たちは。あなたのような職業にね」

マサト「む・・・?」

クライブ「星々を股にかける正義の使者。連邦上級捜査官。この薄汚いスラムを脱出して、いつの日か、夜空に浮かぶ幾千の星に向かおう。自らの操る宇宙船で、悪漢どもをなぎ倒して・・・」

 

 クライブ・トーラスは、はにかんだように、頭をかいた。

 

クライブ「いささか妄想めいてましたけどね、少年なら誰でも持つ夢じゃないですか?」

マサト「買いかぶりすぎだ。現実、私はそんなヒーローじゃないよ。実際・・・」

 

 妻と別れたときに何の言葉も返せず、愛しい娘に贈る誕生日プレゼントすらわからず、年中四苦八苦している。ついさっきも迫りくる死に怯えて震えていた。そう。ただの孤独な男だ。

 

クライブ「捜査官殿?」

マサト「いや、なんでもない」

クライブ「今日の朝、0900時。喫茶店『連邦の英雄』で会いましょう」

マサト「了解した」

 

 ここでクライブは私と別れ、再び奴らのアジトに向かって駆け込んでいった。

 0900時まではまだ、間があるな。アレフ・シグニ星系に来てからここまで、捜査で動きづめだった。ちょっと休息しておくべきか。

 1人になった私は24時間営業のバーガーレストランに入り、裏口に一番近い奥の席に座る。

 コーヒーとフィッシュ&チップスを注文したのだが、それが来る前に、いつしか泥のように眠っていた・・・

 

 

 

夫の遺志を継ぐ妻 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 少々の仮眠をとったあと、喫茶店『連邦の英雄』に入った。

 そこは市郊外の小さな店だった。メニューに書いてあるところには、この店を取り仕切るマスターは、昔、銀河連邦の駆逐艦の主計長(料理番)だったらしいが・・・そんなことはどうでもいい。肝心なことは・・・ 

 クライブ・トーラスが0900時を過ぎてもやってこない。

 すでに2時間たったが、店に入ってきたのは2人の年金暮らしの老婦人、それと子供連れの若い夫婦だけだ。

 彼は現れるつもりがないのだろうか。やはり、心変わりしてしまったのか?いやな予感がする。となれば危うくなるのは、ここにノコノコやってきた私の身柄の方だ。

 さっさと移動しよう。自分から動かなければ。

 私は喫茶店の主人にコンピュータ端末を貸してもらい、彼の住所を探してみることにした。こんな田舎惑星の個人情報保護など、電子戦訓練を受けた私にはちょろいものだ。あっという間に住民情報システムを閲覧することが可能となる。

 C・・・C・・・あったぞ、C.トーラス。

 この町には1人しかいない。住所は、市内の5番街113番地だ。

 私はコーヒー1杯分の会計を済ますと、そそくさと喫茶店『連邦の英雄』を出た。

 

 タクシーにで向かうときにわかったが、5番街は高級住宅街だ。

 しかもトーラスの住まいの庭は、高そうな色とりどりの植物で覆われていた。本人が手を染めている仕事はともかく、彼は家庭を大事にしているのが、よくわかる。

 瀟洒なたたずまいの玄関にあるヴィジホンを鳴らす。

 すると、おびえた様子の女の表情が映った。おそらくは彼の妻だろう。

 

トーラスの妻「ど、どなた?」

マサト「Mr.トーラスはこちらに?」

トーラスの妻「・・・夫はいません・・・」

 

 彼女は懸命に涙をこらえている。そして、もう一度同じ答えを繰り返した。

 

トーラスの妻「夫はいません!」

 

 彼女はひどく狼狽している様子だ。私は・・・

 

 (1)クライブの同僚のふりをする。

 (2)麻薬捜査官であることを彼女に知らせる。

 

 いったいなんだって、彼は自宅でグズグズしているのか?

 ここは彼女を落ち着かせるため、悪党のふりはしないでおこう。(2)だ。私は出せる限りに役人風の声を出す。

 

マサト「こんにちは、トーラス夫人。私は銀河警察の連邦上級捜査官です。ご主人と話をさせていただけませんか?」

トーラスの妻「クライブは・・・クライブは死にました!」

マサト「・・・!」

 

 彼女は私を邸宅の中に招き入れる。遺体はすでに片づけられていた。血痕自体も拭い取られているが、それでもなおリビングルームにおびただしく広がるルミノール反応。敵ながら完璧な仕事だな・・・。

 

マサト「誰がですか、トーラス夫人、誰がご主人を?」

トーラスの妻「主人の仲間、一緒に仕事をしている人たちです。主人はもうこれ以上彼らのために働きたくなかったのです・・・それで彼らは主人を殺したのです」

 

 くそ、そういうことか。

 やむを得ずトーラス夫人を聴取する。彼女の夫、クライブ・トーラスは、ゼラ・グロス(もちろんトーラスのボスだ)の証拠物件を大量に保有していて、それを市内の銀行の貸金庫に収めていたのだ。どんな捜査も及ばぬよう、ID識別が家族までに限定される私用金庫に。しかも暗号キーつきで。

 ここにやってきた殺し屋は、その貸金庫から取引書類を引き出し、処分するよう彼を脅したが、頑なに拒まれ・・・ズドン!

 そして私はアーサーに続き、また情報提供者を失ってしまった・・・。

 

 だが、まだここでやることはあるぞ。

 私は妻の同意を得て彼の私室に入った。そこにある書類引き出しを探る。家庭用品のカタログ、夕食の約束のメモ、どうってことのない請求書が何通か・・・そして、テレックスをプリントアウトしたペーパーが1枚。

 

===================================

000561402

UAB:通信衛星よりXX597134XX終了

UAX:省略

 ゼラ、カレンシスは税関の連中にもっとやりたいと言っています。 クライブ

===================================

 

 警察だけでなく、税関もグルか!!

 ここまで常に先手を打たれている。敵の防衛ラインは思いのほか強大だ。

 私は急いでこの家を出て宇宙港に向かおうとする。こうなったら、ここに書き付けてある「カレンシス」とかいう税関の元締めを脅してでも・・・

 と、その時ここで、トーラス夫人がぼそっとつぶやいた。

 

トーラスの妻BLUEROSE

マサト「はい?」

トーラスの妻「主人の好きな花でした。青い薔薇、それがパスワードだと。もし俺に何かあったら、この8文字を入力してくれ、と」

マサト「それはつまり」

トーラスの妻「あなたが欲しがっているものはトーラス家の私用金庫の中にあり、ID識別は私も対象内です。もし・・・もし必要でしたら、お渡しできます」

マサト「それはあまりに危険です」

トーラスの妻「かまいません。それが夫の遺志ならば」

 

 一介の市民をそこまで危険にさらしていいものか?

 しかしそんな人間らしい情念とは裏腹に、私は任務遂行のために最適解である行動をとっていた。そこには事件を解決するための冷酷な計算しかなかった--恥ずべきことだが。

 私は色気たっぷりに警察流の敬礼を行い、協力に感謝の意を示す。

 

マサト「ありがとうございます。役に立ちます。受け渡しは?ここは多分危ない」

トーラスの妻「では、今日の正午、植物園で」

 

 

 

ビール缶に刺さったストロー --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 植物園は首都のほぼ真ん中にある。待ち合わせ場所に取り決めた大温室は、エキゾチックな植物がとりとめなく広大に展示されていた。

 トーラス夫人は先に来て待っていた。だが彼女は、まだ私には気づかずきょろきょろと周りをうかがっている。貸金庫から取り出したアタッシュケースが、よそいきの女性の服装といかにも不釣り合いだ。

 さて、では行こうか・・・いや、その前に。

 ここまでさんざん煮え湯を飲まされ続けてきたんだ。周りを少し「掃除」してみることにしよう。私は彼女と接触する前に、植物園一帯に不審な人物がいないかどうか調べてみることにした。

 運試しは・・・吉。案の定、ひどく疑わしいものが2つ見つかった。

 1つは、強力な狩猟用ライフルを持って木立の中にいる男。そしてもう1つは、大温室の裏に停めてある、窓が遮光ガラスで中の様子がわからない黒のスポーツセダンタイプのエアカー。

 車の方はこの距離からではどうにもならないが、あの狙撃手は厄介だ。トーラス夫人は気が付いていないが、彼女は奴の完全射程圏内にいる。

 だが、私からも射程圏内にいるんだがね。

 私は自分の熱線銃を抜き、ヒットマンに狙いをつけた。この殺し屋はトーラス夫人に集中しており、私の方に背中を向けている。ここで技術点チェックは・・・成功!

 では、死にたまえ。ZAP!!

 私の射撃は見事に奴の延髄を貫いた。もんどりうって倒れるヒットマン。

 銃声によって木々が振動で震える。いきなりの銃声にびくっと振り向くトーラス夫人。

 私はゆっくりと射殺した相手に近づく。なんとこいつは、私と同じメイド・イン・ジャパンの勤勉な男だった。IDカードにはユウ・ダンシタと書いてある。たぶんアーサーとトーラスを屠った殺し屋だったのだろう。だが最後の最後で詰めを誤ったな。

 私は何食わぬ顔で茂みから出て、青ざめた顔をしたトーラス夫人の元に出た。

 

トーラス夫人「今の音は・・・?」

マサト「こんにちは。トーラス夫人。書類はお持ちですか?」

 

 真っ正直に答えて相手をさらに脅えさせるほど馬鹿ではない。

 さっさとブツを受け渡してもらって、罠だらけのこの場所から出よう。さっき見つけた不審車の方も気にかかる。

 

トーラス夫人「え、ええ。ここに持っています」

マサト「それは結構。では・・・」

 

 大温室は熱帯を模した蒸し暑い空気に支配されていた。

 だから彼女の近くにあるゴミ箱から、何者かによって捨てられたビールの空き缶がキラッと光を反射する。それと飲み口に刺さったストロー。ビール缶にストロー?

 いや違う。あれは・・・起爆信管!!

マサト「伏せてっ!」

 

 私がそう叫び、彼女に抱きついて地面に引きずり倒した瞬間だった。

 

 BAZOOOOOOOM!!!!!!

 

 空き缶に擬装してゴミ箱に隠されていた仕掛け爆弾が、情け容赦なくあらゆるものを空中に放り投げる。そして大温室のガラスも粉々になって飛び散った。

 くそったれ、奴ら、どこまでこちらの動きをつかんでいるんだ!?

 ここで2d6の分だけ体力点が低下するが、体力点-4で助かった。いち早く地面に伏せられたため、植物が運良くクッションになってくれたようだ。トーラス夫人もショックで気絶しているが、呼吸は確かだ。ひとまず一命はとりとめている。

 私がよろめきながら立ち上がると、例のスポーツセダンに1人の男が乗り込むところだった。奴はトーラス夫人の持っていたアタッシュケースをすでに拾い上げており、小脇に抱えて持ち去るところだった。

 やがてシュイイインン!と、エアカー独特の音を発して黒のスポーツセダンは音もなく発進していく。

 

 逃がさん!

 私は額の傷口もそのままに、顔面血だらけになりながら、黒い快速車を追って道路へ走り出た。

 だが植物園へピクニックに来ていた行楽客がパニックになっており、私は人込みにのまれそうになる。くそ、通してくれ!そこをどけっ!!

 ZAP!ZAP!ZAP!!

 何とか射線が通ったので、黒のスポーツセダンが丘の向こうに消える前に、ひざまづいて何発か熱戦銃を撃ち込んでみる。だが、肝心なところで目の中に血がにじみ、狙いを外す。当たらなかった!奴らの車は通りを疾走していく・・・

 まだだ!まだゲームオーバーじゃないぞ!

 私はこちらにやってくる車の前に出て、大きく手を振った。驚いてクラクションを鳴らし、急停止する不幸な運転手。

 

不幸な運転手「なんですか?」

マサト「銀河連邦警察だ、失礼!」(彼を車から引きずりだす)

不幸な運転手「ちょっと・・・待ってくれ!」

 

 私は不幸な運転手を蹴飛ばして路面に置き去りにすると、ぐるりと車を回して、逃走する悪漢を追って発進する。後ろでわめく声が聞こえるが知るもんか。

 少しはツイていたようだ。この車はツインタービンエンジンを搭載した6輪スポーツカーだ。こいつなら時速数百キロまで出せるぞ!

 交通レーダーのスイッチを入れ、前方を走る黒の快速車を捕捉する。

 そしてアクセルブースト!

 一気に速度計の針は200km/hまで上がった。

 

 

 

デス・チェイス --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点14/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 黒のスポーツセダンの目標車は300m先を165km/hで快速に走っている。長く幅広のカーブを鋭く切るような走行だ。

 左に脇道があるのが見えた。うまくいけば裏道を使って間を詰められるが?

 一瞬の判断で却下。この街の街路図をよく知らない。私は本線に留まり、目標を追い詰めることに決める。

 

 やがて目標車は加速して直線に入り、丘の稜線を越えて消えた。

 彼我の距離は相変わらず300m奴らが越えていった丘はこぶ状の峠なので、その先がどうなっているか見ることができない。

 ここはGPS方位システムを・・・操作すればスピードを落とさざるを得ないか。ヤマ勘で走らせるしかないのだが・・・ぞくっと背中に何かを感じた。

 第六感に従い、エンジンブレーキを用いて加速を緩める。すると・・・

 丘の向こう側はヘアピンカーブだった!

 減速はぎりぎり間に合い、スポーツカーの6つの車輪が軽くきしむ。あのまま突っ込んでいたら完全にコースアウトだったのだ。

 ツキはこっちにある。いけるぞ!

 きついカーブをこなすと、あとはまっすぐな下り坂だ。ツインタービンを吹き上げ、一気に差を100mまで縮める。なんとしてもクライブ・トーラスの資料を奪い返さなければ!

 

 敵を追い込むチャンスを見つけるべく、じりじりと追走し続ける。

 彼我の距離は約90m。そのまま、やがて道路は森林に入った。

 道は起伏とカーブが多くなってくる。木々は濃く、低く垂れこめている。道がまっすぐかどうか知るのはほぼ不可能。

 だからどうした!

 私は200km/h超でこの森林道に突入する。

 き・・・つ・・・い・・・S字カーブ!!

 私は車をコース上に保とうと必死にステアリングと格闘する。ここで技術点チェック。失敗すれば即座にこの世とおさらばだが・・・成功!

 車は少しばかりテールスピンを起こしかけたが、何とか路上に留まった。

 

 安堵のため息をつく暇もなく、続く道は森を抜ける。先は緩やかな右カーブだ。目標車がエンジンブレーキで少し速度を緩めた。

 チャンスだ!反対車線を使ってショートカットすれば距離を詰められる。

 リスクは?もちろん対向車。運悪くやって来たら正面衝突でサヨナラだ。

 そして私の仕事は・・・そんなこと日常茶飯事だ!

 私は迷うことなく分離線を飛び越し、反対車線に車を入れる。対向車は・・・来ない!賭けに勝った!!敵は驚いたかのように小刻みに横滑りする。

 

 お互いの距離はついにテール・トゥ・ノーズ。

 そろそろ仕上げといこうか。連邦犯罪局のやり方でな。

 群れから離れて怖れおののく迷い羊を仕留める狼のように、私はゆっくりと車を近付けていく。

 ほんの数m先でS字カーブ。明らかに動揺している目標車の運転手は、ぎこちなくカーブに突っ込んだ。

 早すぎる!ここだっ!!

 奴らがカーブを曲がろうとステアリングを返した瞬間、私は後方正面から追突をかます!!!

 

 GASHHHHHH!!!

 

 きしむ金属音と飛び散る火花。

 前に飛び出した私の車(正確には捜査協力者のだが)は、目標車である黒のスポーツセダンの後部に激突し、コントロールを失わせるに必要なだけの弾みを与える。

 目標車は尻を振って道から飛び出し・・・激しくゴロンゴロンと横転し・・・100m程先で煙を吹きながら止まった。ふううう!!

 カーチェイスを生き延びた充実感は後回しにして、私は車を道端に止め、熱戦銃を片手に黒のスポーツセダンの残骸に近づく。

 車内には誰も生き残っていなかった。首の骨を折ったドライバーと、脊髄が変な方向にひしゃげた助手席の人間。両方とも即死。

 苦しまずに死ねてよかったじゃないか。

 それ以外何の感情もなく、私は助手席の悪漢が抱えていたトーラス夫人のアタッシュケースを奪い返し、現地警察の第一陣到着が来る前に現場からそそくさと離れた。

 

 アタッシュケースの中にあったのは、まさに「金鉱」だった。

 この麻薬犯罪の主犯格、ゼラ・グロスとブラスター・バベットに関する犯罪書類。

 不法麻薬セイトフィル-Dを造るのにたくさんの原料の請求書。

 アレフ・シグニ星系官僚の買収に支払われた金額の明細。

 そして最も重要なものは・・・

 

 惑星ケサールに存在する麻薬保管施設の位置。

 

 アレフ・シグニ星系各地で精製されたセイトフィル-Dは、宇宙空間からシャトルによって、主要大陸沿岸から4000km離れた海洋に浮かぶ小さな島に到着している。そして星系外に船積みされるまで、そこに保管されるのだ。この書類には島の施設の正確な座標まである。

 

 ・・・よし。

 果実はたわわに実った。ここからは収穫の季節だ。

 シフトチェンジといこう。今まで防戦一方だったが、それもおしまいだ。

 私は銀河連邦の中で最高最悪の攻性組織に所属している。その恐ろしさを味合わせてやろう。

 

 

 

集積所への潜入 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点14/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 私は宇宙港にとって返し、自分の宇宙船「サクラ号」の格納庫に積んであった高速ジェットヘリに乗り込む。第一種装備の潜入武装パックとともに。

 

メインコンピュータ「お早いお着きで。情報収集は終了ですか?」

マサト「ああ。娘のホログラムビデオは・・・」

メインコンピュータ「ご心配なく。しっかり保管してあります。今ご覧になりますか?」

マサト「いや、やめておこう」

 

 雑念が入ると怖い。捜査に専念しなければ。

 クライブ・トーラスの情報をもとに、目標値座標を設定。

 ここからは・・・約3時間か。準備をしておこう。

 フェライト塗装を存分にまぶされた潜入スーツを着込み、上から防弾ジャケットを羽織る。腰には個人用フライヤーベルトを装着し、顔には赤外線ゴーグル。

 ちなみに、このゴーグルは官給品ではなく、元諜報局員だった父から譲られた年代物だが、まだまだ使用にたえるものだ。

 そういえば、私たち兄弟を育ててくれたあのアンドロイド、まだ作動しているのかな?名前はなんだったっけ・・・

 

 そんな余計なことを考えているうちに、やがて自動操縦のジェットヘリは、植物に覆われた熱帯の小島まで私を届けてくれた。

 上空旋回して偵察する。星間シャトルの着陸パッド1つ、ジェットヘリの着陸場2つ、反重力車両のある大きな空地・・・現在、地表に出ている生命存在はゼロ。

 潜り時だ。今すぐ動こう。

 私は後部格納庫を開けた。ゴウッ!気圧差から大きな風が吹き込んでくる。私を放出した後は無人のまま宇宙港まで戻るよう、ジェットヘリをプログラミングした上で・・・

 GO!!

 フライヤーベルトのバーナー出力を全開にして、スカイダイビングの要領で空中に飛び出す。地表まで100m・・・50m・・・10m・・・どさっ。

 こうして私は麻薬組織の集積所に降り立った。

 

 ここはジェットヘリの着陸場だ。周りに等間隔になって斜道が3つ並び、うち2つは普通の入口につながっている。3番目の斜道の終わりは大きな貨物用扉だ。どっちの扉から入るか・・・いやその前に、ここに停めてある反重力車を調べてみよう。

 こいつはがっしりとした灰色の機械で、ジェットヘリ2機を縦に並べたくらいの大きさだ。ドアロックは簡素なものなので易々と壊して操縦席に乗り込むことができた。なんだ、セーフティキーも粗雑なつくりだ。ここをこう、直結させて・・・シュイイインン!反重力車は発進して地上1mに浮かび上がる。

 ならば使わせてもらおうか。私はこいつを貨物扉の方向に向け、アクセルを踏み込む!

 タービンエンジンが唸りを上げ、加速して恐るべき速度で斜道を下り・・・ゴガアッ!重大な質量をもった鉄塊はまっすぐ突っ込んだ!!

 運のいいことに貨物扉の向こうには、野蛮な顔つきの警備員4がいた。そいつらは見事に吹っ飛ばされ、プラスチックコンテナの周りで気絶している。

 私は車を降りて難なく奴らを拘束してから、周囲を捜索する。

 ここにあるプラスチックコンテナはセイトフィル-Dで満載だ。大陸へ運ぶ準備が終わっているのだろう。証拠映像はばっちり録画したぞ。他にも失血死で丸まった男の死体があるが・・・調べている時間はないな。騒ぎで他の警備員が駆けつけてくる前に、さっさとこの部屋を出た方がいいだろう。

 

 先の通路はやがて八角形の部屋につながっていた。

 その部屋の中央に存在しているのは、クロムシルバーの色をした警備ロボットだ。7つの電子センサーのうち4つは私を睨んでいる。設計も製作も明らかに地球外異星人の手による高機能ロボットだ。

 そいつは関節が7つある脚で立ち上がり、私の方にアンテナとマイクロ波センサーを何本か伸ばしてきた。そして「ヨウコソ」と、たどたどしい地球語で話しかける。

 

警備ロボット「ワタシハアカイ サソリノシンゾウダ シカシ クモデハナイ ハサミヲモッテハイルガ ソレハミエナイ イチゴデコタエヨ ワタシハナニカ?」

 

 どうやら認証パスワードを求めてきたようだ。もし間違えたら、ロボットに仕掛けてある熱線銃が私を射撃し始め、さらには集積所内に侵入者警報が鳴り響くだろう。

 ここは慎重に答えねば・・・赤い?・・・サソリの心臓?・・・そうか!

 

マサト「アンタレス」

 

 頭の中にすんなり浮かんだ答えを告げると、警備ロボットは床に降下した。味方と識別したためオートシャットダウン機能が働いたのだ。

 

警備ロボット「ドウゾ」(シュシュシュ・・・と動作停止音)

 

 私は安堵しながら集積所の最深部に潜入を開始する。

 思い出した。そうだ。

 忙しい私の両親に代わって乳母の役割を果たしてくれたウェイクマン社製XJ-9型アンドロイド。彼女の名は“ジェニー”だった。

 あのアンドロイドがよく話してくれたのは、巨大宇宙戦艦ヴァンダーベッケンを陥落させた父の英雄談と、それからビデオライブラリにあった私のお気に入りの絵本「ギリシャ神話-星座のお話-だったのだ。

 さそり座の一等星、アンタレス・・・偶然とはいえ苦笑してしまうな・・・

 幼いときに植えつけられた絵物語の記憶に、今ごろ助けられるとは!

 

 

 

麻薬密売人ゼラ・グロスを逮捕 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点14/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 警備ロボットのセクションルームを通過すると、やがてT字路に出た。左右に分かれた通路のどちらも薄暗い黄色の明かりが灯され、曲がって視界から消えている。

 左か・・・右か・・・特別な情報を入手してないので、あてずっぽうで私は左に行くことにする。

 通路の先はドアになっていた。ドアにかけられた真鍮の札には・・・「ゼラ・グロス」とある!拘束すべき最重要容疑者の片割れだ!

 私はドアロックを・・ZAP!!

 熱線銃の短い一撃を浴びせてショートさせ、一気にドアを押しあける。

 醜く太った彼女--惑星ケサールを取り仕切る麻薬密売人--は、隙間だらけの歯から漏れたげっぷ交じりの声で、秘書ロボットに口述筆記している最中だった。

 

マサト「ゼラ・グロス!」

 

 私は彼女に向けて熱線銃を構える。彼女は入ってきた私に見向きもしない。どうやら私のことを部下だと思っているらしい。慇懃無礼に鼻毛を抜きつつ声をかける。

 

ゼラ「なにぃ?どうした?」

マサト「連邦犯罪局だ。あなたを拘束する。」

ゼラ「・・・!!!」

 

 ゼラはここで初めて侵入者たる私に気づいた!

 だが秘書ロボットは「ナニィ・・・ドウシタ・・・」と、忠実に筆記している。

 

ゼラ「黙りな、このバカロボット!敵だ!!」

 

 肥満体とは思えない俊敏さで、彼女は机の上の熱線銃に飛びつく。応戦して銃撃戦に持ち込むか?それとも素手で格闘するか??

 つまりは、射殺か?逮捕か?

 一瞬の判断。何か有益な情報を入手できるかも・・・よし!

 私はアクロバティックに宙を舞い、瞬時に机の上に飛び乗った。そして回し蹴りで彼女が手にしていた熱線銃を叩き落とす。

 

ゼラ「こ、このおお!!」

マサト「無駄な抵抗はよせ。今なら懲役刑ですむ」

ゼラ「キイイイイィ!!」

 

 まるで人間以外の何かのような叫び声をあげ、ゼラ・グロスは飛びかかってきた。さあ格闘戦だ。私と彼女は床に倒れ、まるでグレコローマンレスリングのような様相となる。その突進はものすごいエネルギー質量だ!

 

【ゼラ・グロス 技術点8 体力点11

1R (ゼラ・グロス/11)(マサト/20) ゼラ・グロス/体力点-2

2R (ゼラ・グロス/20)(マサト/16) マサト/体力点-2

3R (ゼラ・グロス/10)(マサト/14) ゼラ・グロス/体力点-2

4R (ゼラ・グロス/14)(マサト/16) ゼラ・グロス/体力点-2

5R (ゼラ・グロス/19)(マサト/18) マサト/体力点-2

6R (ゼラ・グロス/17)(マサト/18) ゼラ・グロス/体力点-2

7R (ゼラ・グロス/16)(マサト/19) ゼラ・グロス/体力点-2

8R (ゼラ・グロス/11)(マサト/19) ゼラ・グロス/体力点-2 ←Knockout!!

 

 ボスッ!!私のボディブローが柔らかいみぞおちに決まった。ゼラ・グロスは嘔吐物を吐瀉しつつ、目を回して床にひれ伏す。

 くそ、噛みつきやひっかきに手こずったのは予想外だった。しかし所詮はアマチュアだ。体力活性剤を服用しておこう(体力点+6・残り3錠)。

 それから陸に上がったクジラのように横たわった彼女を手錠で拘束する。そして頬を思い切り叩きつけ、本人の望みとは関係なく意識を回復させた。

 

マサト「ゼラ、組織のことを話すんだ」

ゼラ「う・・・うう・・・」

 

 残念ながら彼女は激しい運動で消耗していて、あまり事情聴取は意味を成さない。だが、荒い呼吸の途切れ途切れに、こうつぶやいていた。

 

ゼラ「上・・・上、それから左・・・」

 

 なにかの符合だろうか?

 とりあえず頭に留めておき、拘束した彼女を肩に担いで(重い!)部屋の奥から出る。

 次の間は間違いなく司令室だった。巨大なテレビスクリーン、床から天井まで壁一面のコンピュータ。さらには不規則な間隔で入力端末が置いてあり、どれも静かに動いている。

 スクリーンに表示されているのはセイトフィル-Dの月産トン数。この島と大陸の間のジェットヘリ便の発着時刻。

 そして星系内シャトルの発着先・・・つまりは・・・麻薬のすべてを生産している小惑星の正確な座標を突き止めた!

 ビンゴだ!!!

 私は興奮を抑えて記憶スティックを取り出して、すぐさまデータをコピーする。アレフ・シグニ星系にある数多の小惑星の中から、やっと奴らのアジトが割り出せたのだ。

 

 集積場の建物を出て、ここまで私を運搬してくれた「サクラ号」のジェットヘリを信号で呼び出す。無人自動飛行中だったそれは、まるでタクシーのように、主人を迎えに来るため時間通り忠実に現れた。

 操縦席に戻って自動操縦をオフ。自分の手で操縦桿を握り、ジェットヘリを緊急上昇させ、さっさとこの島を後にする。

 それから、まだ気絶しているゼラ・グロスを睡眠カプセルの中に押し込み、タイムメモリを10日後にセットして強制睡眠モードに入らせる。次に目覚めた時、彼女は自分が銀河連邦警察の中央拘置所に拘禁されていることを知るだろう。おやすみ。よい夢を!

 さあ、こっちはもうひとがんばりだぞ。

 次なる潜入捜査地点は・・・明確に決まっている。

 排除しなければらないのは、この情報に記録された小惑星工場だ!

 

 

 

小惑星工場に肉迫する --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点16/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点3/4

 

 私は大陸にある宇宙港に戻ってきた。

 すると、連邦犯罪局の直属の上司が到着していたので、私はここで拘束したゼラ・グロスを引き渡した。労をねぎらったあとで、彼は銀河連邦警察本部からの連絡として、私に二者択一を迫る。

 

◎敵の(おそらくブラスター・バベットの)アジトが判明したので、捜査を終了し、しかるべき武装特殊ユニットに引き継ぐか?

→この場合、分厚い捜査引継報告書をまとめなければならない。

 

◎捜査を継続して小惑星帯に飛び出し、自分の責任で敵の(おそらくブラスター・バベットの)アジトをせん滅せしめるか?

→この場合、任務終了後に2週間の特別休暇がもらえる。

 

 自分の命が大事?

 いやそれよりも、娘の10回目の誕生日に面会することの方が大事だ!

 というわけで後者を選択し、私は「自己責任で」さらなるアブノーマル・ミッションに挑むことになる(いちおう“これは強制ではない”という誓約書を書かされたりもした)。

 

 私の操る高速宇宙船「サクラ号」は惑星ケサールを勇躍リフト・オフし、小惑星帯に向かう。

 情報通りの航過ラインをトレースすると、メインスクリーンにWARNINGと赤く光る警告が浮かび上がった。

 

メインコンピュータ「マサト、目標周囲に機雷原です」

 

 船外モニターで調査する。疑惑の小惑星の周りにキラキラと輝く光点。そう、球形の宇宙機雷がびっしりと浮かんでいるのだ。私はこの危険宙域を・・・

 

 (1)機雷を撃って航路を空ける

 (2)機雷原の中を注意深く抜ける。

 

 この船に搭載しているフェーザー砲を1発斉射すれば、たちどころに誘爆して除去できるだろう。だがそれは莫大な爆発エネルギーとなり、小惑星工場の奴らに潜入を確認されることになりかねない・・・(2)だ。

 

マサト「悪いが、ちょっと船を揺らすことになるよ」

メインコンピュータ「アイ、シー。すべては艦長の指示のままに」

 

 私は十分に減速して機雷原のただ中に「サクラ号」の船体を滑り込ませる。

 メインスクリーンできらびやかに映される赤い点。もちろんこれらは宇宙機雷。その1つにでも質量計測範囲内まで近づいたら、周囲の機雷も反応して爆発に取り込まれて・・・私は宇宙の塵となる。

 私の手による微妙な操縦桿の動き、そしてメインコンピュータが割り出す的確な軌道計算・・・人間と電脳が一体化したチームワークは・・・ここで技術点チェック・・・

 出目は7、成功!!

 

メインコンピュータ「危険確率0.003%まで低下」

マサト「抜けた・・・ようだな・・・」

メインコンピュータ「うまくいきましたね。あなたが操縦者で良かったです」

マサト「はは、お世辞でもうれしいよ」

メインコンピュータ「いえ、機械はお世辞をメッセージしません・・・いえ、ちょっと待ってください、次の危険性が・・・?」

 

 次なる脅威は小惑星工場に覆われた無人フェーザー砲台だ。

 機雷原を通過した「サクラ号」を警戒し、プログラミングされた運動で砲口をこちらに向け・・・

 BASH!! 対宙砲火を撃ってきた!!

 私は小惑星に着陸する前に、この外部防御陣地と戦わなければならない。これは宇宙船戦闘になる。しかし有り余る麻薬密売資金で強化されたこの砲台陣地は・・・

 

【小惑星防御陣 武装力点9 防御力点6

 

 固い!!軌道要塞並みの火力じゃないか!!!

 いや待て。もしここでスマート・ミサイルが残っているなら、それを1発射つたびに小惑星防御陣は防御力点-2となる。

 積んであるスマート・ミサイルは2基か。ケチケチしてもしょうがない。ここは荒っぽくいこう!

 

マサト「スマート・ミサイル全弾発射!」

メインコンピュータ「了解。発射しました。着弾まで5秒・・・4・・・3・・・2・・・1・・・爆発確認」

 

 冷静なメインコンピュータの報告がブリッジ内にこだまする。「サクラ号」の翼下からスマート・ミサイルによる2本の発射焔が伸び、すべて命中したのだ。これによって敵の防御力は大きく減衰された。さあ、行くぞ!

 

【(損害を受けた)小惑星防御陣 武装力点9 防御力点2

1R サクラ号射撃(7)命中 小惑星防御陣/防御力点-1

  小惑星防御陣射撃(6)命中 サクラ号/防御力点-1

2R サクラ号射撃(11)命中 小惑星防御陣/防御力点-1 ←Destroy!!

 

 よし、小惑星防御陣は無力化された。もうこれで私の接近を阻む脅威は何もない。

 私はコンソールにそっと手を触れ、自分の宇宙船をねぎらう。

 

マサト「よくやってくれたね、ありがとう」

メインコンピュータ「どういたしまして。ご武運を」

マサト「ああ。君は十分任務を果たした。ここからは・・・」

 

 私は船外活動スーツに着替え、熱線銃をホルスターに差し込む。そして装備確認。体力活性剤よし。証拠撮影モニターよし。赤外線ゴーグル異常なし。

 では、行こうか。準備屈伸運動をしてから船外直通ハッチに向かう。

 自動操縦をプログラミングされた「サクラ号」は、先ほどのスマート・ミサイルの爆発で半ば黒こげとなった小惑星工場のメイン・ドックに、ゆったりと着陸針路をとる。

 

 さあ、ここからは・・・人間の出番だ。

 

 

 

防衛システムを順次突破 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点16/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点2/4

 

 小惑星工場のメインドッグに入り、自分が着込んだ船外活動スーツの安全を確認をしてから、「サクラ号」のエアロックを開ける。するといきなり・・・ZAP!!

 真っ赤なパルスレーザーのお出迎えだ!

 ここにはすでに球形の防衛ロボットが配備されており、無重力の中でふわふわと漂いながら、私に射撃を加えてきたのだ。

 動態反射で私は身をよじって避け、船体外壁を蹴り上げてくるっと空中を舞いつつ、ホルスターにしまってあった熱線銃を抜く。射撃戦だ!

 

【防衛ロボット 技術点9 体力点4

1R マサト射撃(7)命中 防衛ロボット/体力点-4 ←Destroy!!

 カウンターが一閃!DOGOM!!

 私の熱線銃の一撃は、完全に防衛ロボットの胴体を刺し貫いた。ロボットの破片はきらめきながら真空中を漂う。私はがらんとしたドッグをエアロックから出て、無重力のトンネル内を通って小惑星の中心部へと向かう。

 

 やがてトンネルの突き当たりは、大きな円筒形の部屋に通じていた。

 目の前で進路に立ちふさがっているのは、奇妙な形の自動防衛システムだ。そいつは、4つの立方体が中心の抜けた十字形に組み合わさっているような、幾何学的な形状をしている。中心の穴には明るい青の電光が飛び交っていた。

 この自動機械は、空間に侵入した質量(つまり、私)を感知すると、ブーンと低音を発して接近してくる。このままだと私は中心部の放電にさらされ、確実に感電してしまう。

 さあ、どうする?

 熱線銃で動きを止めるか?いや、それはだめだ。

 爆発したら狭い部屋の中、破片を避ける術はない。

 だったら・・・!

 一瞬の判断で、私は通路の下面にへばりつき、スライディングの要領で足のつま先から滑り込むことにした。4つの立方体の隙間を通り抜けるのだ。

 バチバチと電磁波の火花を発しながら、ものすごいスピードで迫ってくる自動機械。わずかでも触れたら感電してショック死だ。両腕を胴体の上でクロスさせ、できるだけ体の表面積を減らし、1本の針のような姿勢をとる。こいつの回転周期にうまく合わせろ!

 技術点チェックは成功!

 私は立方体の隙間を縫いつつ、迫ってくる自動機械をうまくかわしてやり過ごした。そして振り返る間もなく、私は急いで次のセクションに向かう。

 

 出口は別の無重力トンネルにつながっていて、さらに先へ進むと交差点に行き当たった。さあどっちへ行こうか。左か?右か?直進か?

 

 とりあえず右の通路へ・・・だが・・・こっちは間違った選択だった! 

 右の通路はトンネルを下り、エアロックを抜け、小さな円錐形の部屋にたどり着く。そして向こう端--すなわち円錐の頂点--には虹彩形のエアロックがあり、ガシャ!私が入ると共にそれは大きく開いた。その先には宇宙空間が見える!

 グオオオオオ!!室内の空気が流出し始め、私を尋常ならざる速度で小惑星の外に連れ出そうとする。つまりここはゴミ投棄室なのだ!

 

マサト「ぐうっ・・・!!!」

 

 私はとっさの判断で背後のエアロックドアにしがみつく!

 空気の流出が止まるまでひたすら耐えろ・・・!

 ・・・! ・・・! ・・・!

 ふう・・・まだツキはあったようだ。

 幸運なことに、このエアロックはつかまっていても壊れなかった。すぐに虹彩形の投棄口はカシャッという音とともに閉まり、室内に空気が唸りを立てつつ充填される。

 もう少しで宇宙の塵になる危機を脱し、私はほっと安堵してから交差点まで引き返す。そしてもう一方の左の通路へと向かった。

 

 こっちはプラスチックコンテナが高く積まれた倉庫につながっていた。

 超音波アナライザをコンテナに取り付け、開梱せずに中を探る。このコンテナ群の中身は・・・各種薬品、天然鉱物、包装材料・・・どれもセイトフィル-Dの生産に欠かせない原料だ。

 私は収集したアナライズデータをばっちり「サクラ号」のデータベースに転送させておく。逮捕時に証拠として一緒に提出すれば、これでもう、奴らは言い逃れができなくなるはずだ。

 

 そしてさっきの交差点に戻る。今度は直進しよう。

 さらなる防衛システムが作動する前に、奴らの中核に到達しなくては。

 急げ、時間は最良の武器だ!!

 

 

 

中枢セクションに到達 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点16/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点2/4

 

 トンネルの突き当たりは巨大な荒削りの洞窟だった。

 洞窟の中央には、向こう側の出口まで列を成して、金属球が3つ浮かんでいる。金属球にはハンドルが取り付けられていた。

 それ以外に洞窟にあるものといえば・・・あれは植物か?

 球根から触手をうねうねと廻らせている、感覚器官をもたない宇宙生物が漂っている。そのグロテスクな外見にちょっとゾッとしてから、私は・・・

 

 (1)球から球へとジャンプして、向こう側へ行くか?

 (2)球根状の生き物の間を通り抜けるか?

 

 金属球の安全が確認できない以上、触れない方がいいだろう。私は(2)を選択し、洞窟の壁に張り付くように移動し始める。

 すると無重力の中、不意に宇宙生物のうちの1匹が、船外活動スーツをなでつけた。

 そうして私を認識したら、1本、もう1本と、どんどん触手を絡みつけてくる!しかも他の宇宙生物も、どんどん私の周りに集まってくる!!

 数多の触手によって私は壁から引き離された。すごい力だ!宇宙生物の球根がカパッと開き、中から鋭利な牙をのぞかせる!!私を捕食しようとしているのだ!!!

 技術点チェックは成功。私は船外活動スーツのパーソナルジェットを噴射させ、突発熱量で驚かせた隙に触手から逃れ、何とか洞窟の入り口まで戻る。

 ふう、危ないところだった。

 ここから奥のセクションに行くためには、中央に浮かぶ金属球につかまるしかないか。たぶんこれらの球体は、この小惑星を本拠としている悪党どもが、安全確保のために据え付けた装置なのだろう。

 私は船外活動スーツをうまく作動させながら、金属球を伝って向こう側の出口に急ぐ。というわけで3回連続の技術点チェックだ。

 

 1つ目の球体・・・ふわっ・・・成功。

 2つ目の球体・・・ふわっ・・・これも成功。

 3つ目の球体・・・あっ!・・・しまった。しくじった!!

 

 3回目の技術点チェックが出目12で失敗だ。

 私の手は金属球のハンドルから滑り、バランスを失った左足が、近くに漂っていた宇宙生物2匹に触れる。そいつらは巨大な牙でいっぱいの口を開き、私の足に噛みつく!

 うあっ!!

 苦痛で顔が歪む。ドジな身体運動の代償は体力点-4だ。 

 私は死に物狂いでそいつらを体から引き離し、急いで向こう側の出口に飛び込んだ。そして応急手当て。出血は相当だが毒はない。しっかり止血しておけば大丈夫だ。

 そうだ、ここで体力活性剤も服用しておくか(体力点+6・残り2錠)。これで何とか体力点は原点まで戻ったぞ。先へ進もう。

 

 宇宙生物の洞窟を抜けると、そこは化学実験室に通じていた。

 いたるところに薬品製造ユニットが乱立している。稼働中の機械もある。それらが吐き出している錠剤パックは・・・セイトフィル-D!!

 間違いない。ここは奴らの中枢ポイント、不法麻薬セイトフィル-Dの生産区画なのだ!!

 私は即座に機械の陰に体を寄せて十分に警戒する。しかし誰もいない。警備ロボットもなしだ。ならば今のうちに!

 証拠映像を収めた後に、私は熱線銃でせっせと機械を破壊することにした。

 ZAP!ZAP!ZAP!・・・生産施設が次々と無力化されていく。

 よし、もうこれくらいでいいだろう。最悪、この先私が任務に失敗したとしても、この小惑星工場で稼働が再開するまでには、数カ月の時間と相応のコペック資金が必要になるはずだ。

 私は化学実験室のドアを開け、次のセクションに向かった。

 

 次のセクションには重力があった。

 目の前にあるのは、手すりのない狭い橋がかかった深くて広い隕石孔。そして橋の上には厄介なことに3本の足と3本の手を持った蛸のような異星人がいる。

 アークトゥルス人だ。

 おそらく用心棒で雇われているのだろう。3本の手にはそれぞれエレクトリック・ボウガン(電子弓)を携行している。そいつは3つの目で私をじっと凝視し、バカでかい口--ありがたいことに、口は1つしかない--を開き、涎を飛ばしながらこう言った。

 

アークトゥルス人「トマレ!」

マサト「断る。言っておくが、私には射殺権限があるぞ」(連邦犯罪局のバッジを掲げる)

アークトゥルス人「ジョーキューソーサカン、ダト!?」

 

 アークトゥルス人はもともと議論の得意な種族ではない。問答無用でエレクトリック・ボウガンは発射し、まばゆい電光を私に放ってくる。射撃戦に突入だ!

 

【アークトゥルスの怪物 技術点7 体力点10

1R マサト射撃(10)命中 アークトゥルスの怪物/体力点-4 

   アークトゥルスの怪物射撃(4)命中 マサト/体力点-4

2R マサト射撃(6)命中 アークトゥルスの怪物/体力点-4 

   アークトゥルスの怪物射撃(8)外れ

3R マサト射撃(8)命中 アークトゥルスの怪物/体力点-4 ←Kill!!

 

 訓練で鍛え抜かれた身の動きで敵を翻弄する。奴のボウガンは虚しく外れ、部屋の壁を焦がすのみ。「ぐぅぎいいい!」焦った雄叫びを上げるアークトゥルス人の用心棒。

 甘いな、冷静さを失ったその時点で、君の負けだ。

 私の3発目の射撃が、敵の中央視床下部を撃ち抜いたとき、勝負は決した。奴はどうっと倒れ、ずるずると橋から滑り落ち、隕石孔の中に落ちていくのだった(そう、このセクションには重力があるのだ)。

 やれやれ・・・ここでも生き延びたな・・・。

 もうかなり中枢まで進んできたはずだ。証拠も十分に収集できたし、そろそろ麻薬組織の首領ブラスター・バベットに遭遇してもいい頃だ。あの時の借りを返したいのだが・・・

 

 

 

ブラスター・バベットは2人いた --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点14/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点2/4

 

 アークトゥルス人の立ちふさがっていた橋梁通路を突破し、さらに先へ進む。

 やがてT字路についた。右か?左か?

 ・・・さっきは右に行って、危うく宇宙のゴミとして片付けられるところだったな。だから今度は左に行ってみよう。

 

 左の通路は、小さな立方体の部屋に続いていた。

 私の体がふわりと宙に浮く。ここからまた無重力空間に戻っているのだ。

 そして、この立方体の部屋には、6つの面すべてにドアが取り付けられている。どのドアも明るい赤色で、中央には小さな黒いボタンが設置されていた。

 さあ考えろマサト・サワムラ。ここから先に進むには、どこのドアから出ればいいか???

 

 前? 後ろ? 左? 右? 上? 下?

 

 まあ後ろは自分が進入してきた方向だから無視するとして・・・

 ここで私は、あの太っちょの麻薬密売人、ゼラ・グロスを拘束したときを思い出した。確か彼女はうわごとでヒントを言ったはずだ。

 

 (ゼラ「上・・・上、それから左・・・」)

 

 そうか、まずは上だ。私は入ってきたドアに対して上方角度にあるドアまで飛び、そこの黒いボタンを押す。プシュ・・・気圧の漏れる音とともにそのドアは開いた。

 そして次にあるのは、さっきと全く同じ形状の立方体の部屋。

 やはりな。私は次も上に向かう。そして黒いボタンを押した。

 ところがそれは罠だった!

 まぶしい電撃がボタンから放射される。感電したので体力点-1だ。

 なぜだ?

 私は体力活性剤を服用して体力点を原点に戻し(体力点+6・残り1錠)、落ち着いてもう一度ゼラ・グロスの呟いたメッセージを思い返してみる。

 上・・・上・・・それから左・・・

 あの時の彼女を思い出す(あの醜悪な顔は思い出したくもないが)。いや待てよ、1回目の「上」と、2回目の「上」の間に、唇を舐め、もう一度声を絞り出したような表情だったのを記憶している。

 2回目の「上」は、1回目の言い直しじゃないか???

 そうするとこの立方体の部屋が2つ目で、2つ目の方角に対応するのは・・・

 左だ!

 ドアが開く。そこは・・・

 

 豪華な部屋だ!

 ふかふかのカーペット、地球連邦時代のモダンな家具、それに拡散光の照明。外世界の明媚な風景が描かれた最新式の可動パーテーションもある。

 そして重力に酸素もある。私は船外活動スーツのヘルメットを外し、呼吸を楽にした。この快適な居住空間はどう見ても・・・そうだ・・・

 どうやらたどり着いたらしいな。

 私は熱線銃を構え、ゆっくりと部屋に入っていった。

 

マサト「ブラスター、どこだ?いるんだろう?」

 

 だが返事はない。さらに1歩、2歩、周りを警戒しつつ、連邦犯罪局のバッジを掲げて進む。

 

マサト「月並みだが・・・無駄な抵抗はするな。もう君に勝ち目はない。お互いスマートに終わらせようじゃないか」

 

 事実だ。

 以前、惑星ケサールの廃工場では手下に囲まれてしまったが、11なら、銀河連邦警察の猛訓練を受けた私に、中年の彼はかなうまい。

 そして私としても、これ以上殺人はしたくない。血を見ずにさっさと終わらせたい。今回の任務が終わったら、待ちに待った娘との面会日なんだ!

 だが・・・そんな父親の控え目な望みなど・・・

 関係なく事態は推移した。

 

 ZAP!! 反射的に飛びのく!

 

 敵の熱線銃のフェーザーが足もとの絨毯が焦がす。

 可動パーテーションの後ろから、悠然と、今回のセイトフィル-D事件における最重要参考人が姿を現した。麻薬密売組織の首領。アレフ・シグニで最も危険な男。

 ブラスター・バベット。

 以前遭遇したときと同じく、冷たく酷薄な笑みを浮かべている。左腕の下に持っているのはバンク社の巨大熱線銃。特殊部隊がよく装備している代物だ。

 そして不思議なことに・・・彼の身体は・・・

 

マサト「???」

 

 なぜ彼の身体が・・・2つ存在している?

 ブラスター・バベットは2人いた。2体とも、全く同じ姿をしているのだ!

 そしてその左右2体とも、クスクス笑いながら、同じ抑揚で声をそろえて告げる。

 

右のブラスター「こんばんは。死ぬ潮時だよ。連邦捜査官」

左のブラスター「こんばんは。死ぬ潮時だよ。連邦捜査官」

 

 それから2体同時に、熱線銃で私の胸に照準を定める。

 私はここで・・・どっちを狙う!?

 

 

 

なかなかにスマートな終わり方 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点2/4

 

 右のブラスター・バベットか、それとも左のブラスター・バベットか?

 

 お手上げだ。どちらが本物か全く見分けがつかない。

 私は自分の熱線銃をカーペットに投げ捨て(???違和感)両手を上にあげた。そして落胆した表情で宣言する。

 

マサト「負けたよブラスター。お前の勝ちだ」

右のブラスター「命乞いをしても無駄だ。死ね」

左のブラスター「命乞いをしても無駄だ。死ね」

 

 完全降伏したのに・・・くそっ・・・

 それを許諾せず、銃口を突き付けるブラスター・バベット。

 まあ、私が逆の立場でもそうするだろうが。連邦上級捜査官の末路なんてこんなものか。君に誕生日プレゼントは届けられなった。許してくれ、娘のサクラよ・・・。

 

 と、悲観するほど、私はアマチュアではない。

 

 最後の最後まで活路を見出そうと、脳細胞が高速核増殖炉のようにフル稼働している。そう、今考えているのは私が降参したとき。あのときの違和感はなんだったのだ?

 先ほど熱線銃を床に投げ捨てたとき、ブラスター・バベットはそれを一顧だにしなかった。彼の視線はずっと私の顔に向け続けていた。

 自分を狙う敵の武装が、望みのままに無力化されたのに、それに注目していなかった。

 

 違う。

 注目しなかったんじゃない。見られなかったんだ。

 なぜなら!!!!!

 

 とっさに私はぐるりと身体を回転させ、後ろ回し蹴りを背後の可動パーティションに入れる。

 ドガン!

 十分な角度と速度で叩き込まれたそれは、大きく揺れ、衝立の向こう側に予測外の衝撃をもたらした。

 

???「ぐっ!」

 

 不意を打たれた何者かの驚愕。ドスンと床に尻もちをついて倒れたのは・・・ブラスター・バベットの本体だ!

 そう、この可動パーテーションには、光学偏差装置が仕掛けられていたのだ。つまり、私の目の前にあった2体とも虚像で、私の背後にいる本体を映写していたのだ。

 私の眼の届かぬ角度から、今まさにとどめの一撃を放とうとしていたブラスター・バベット。

 しかし詰めが甘かった。いきなりの形成逆転に冷酷な笑みの余裕の表情が消え去る。再び熱線銃を構え直そうとするが、私はその前にとびかかる。

 電光石火の動きで奴の銃を持った手に関節技を決めた。それから・・・もちろん今はスポーツの時間じゃない・・・即座に手首の骨をへし折る!

 だが敵もさる者。苦悶の叫びは後回しにして滑らかな動きでブーツの底から隠しナイフを取り出した。そして私に向けて的確な重心移動で切りつけてくる。

 見事な悪あがきだ。おかげでもう一仕事しなくてはならなくなった。代償は高くつくぞ!

 体力勝負の格闘戦だ!!

 

【ブラスター・バベット 技術点10 体力点8

1R (ブラスター・バベット/15)(マサト/1ゾロ) マサト/体力点-3

 いきなりファンブル!私の肩に突き刺さるナイフ!!

2R (ブラスター・バベット/21)(マサト/21) Draw

 だがそのナイフをしっかりつかみ、私は奴の利き腕の動きを止めた。

 痛い・・・が・・・任務優先っ・・・くっ・・・!!

3R (ブラスター・バベット/13)(マサト/1ゾロ) マサト/体力点-3

 しかしここでまたファンブル!

 奴はサディスティックな笑みとともに、ナイフの尖端をぐりぐりとえぐり込ませてくる。

4R (ブラスター・バベット/14)(マサト/16) ブラスター・バベット/体力点-2

 調子に乗るなよ!敵の顎にひざ蹴りをかます!!

 「ぐはっ!」思わずのけぞるブラスター。

5R (ブラスター・バベット/17)(マサト/21) ブラスター・バベット/体力点-2

 密着したお互いが離れた。続けて奴の延髄にひじ打ち!

 床へはいつくばらせるのに十分な衝撃を与えた!!

6R (ブラスター・バベット/16)(マサト/17) ブラスター・バベット/体力点-2

 敵は平伏した状態からナイフで反撃しようとする。

 だがその突きを紙一重でかわし、私は奴のナイフを自分のものとした。

7R (ブラスター・バベット/19)(マサト/21) ブラスター・バベット/体力点-2 ←Knockout!!

 奪った凶器を情け容赦なく奴の太ももに突き刺す!

 これで勝負あり!!敵の力が急激に抜けていくのがわかる。

 

ブラスター「ま、待て!!」

 

 ナイフが相手に渡ってしまったので、絶体絶命となったブラスター・バベットは、傷む足を引きずってじりじりと後ずさる。

 私はゆらりと奴に迫る。そして訓練通りの動きで彼の上半身にのしかかり動きを止めた。首根っこにお互いの血で塗れたナイフをつき当てる。

 任務も大詰め。あとはこいつの頸動脈を切断するだけだ。

 

マサト「連邦上級捜査官には、抵抗する容疑者の殺害権限が与えられている」

ブラスター「・・・!!」

マサト「立証責任はない」

ブラスター「ひ、ひいっ!!」

マサト「 知 ら な か っ た の か ? 」

ブラスター「う、う、うわああああ!!」(泡を吹き、白目をむく)

 

 冗談だよ。

 私は空いている方の手で、左胸の隠しポケットから携帯用の催眠ガス噴射器を取り出す。そして奴の鼻腔の至近距離でひと吹き。

 

 なかなかにスマートな終わり方だろう?

 

 

 

400!そして次の冒険への幕間 --The Rings of Kether--

 

【技術点11/11 体力点12/18 運点10/12】 【武装力点12/12 防御力点2/4

 

 すべての事が終わったので、私は封止していた船外宇宙スーツの無線装置をONにする。

 すると程なくして、私の宇宙船サクラ号のメインコンピュータから通信が入ってきた。

 

メインコンピュータ「マサト、マサト、聞こえますかどうぞ?」

マサト「こちらマサト。すべて終わったよ。迎えに来れるかな?」

メインコンピュータ「待ってください・・・今・・・発信をキャッチしました。他のお仲間も先導しています。あと15宇宙分で到着予定、オーバー」

 

 この部屋にある外部直通スクリーンから覗ける宇宙空間の虚空に、光点が次々と現れる。私のサクラ号以外にも、銀河連邦警察の高速宇宙船が集結している。この小惑星工場にいるブラスター・バベットの子分どもを一網打尽にするつもりなのだ。

 あっと、そうだ。今のうちに・・・

 

マサト「他の銀河連邦警察の奴らと通信リンクを外せるか?君だけに頼みたいことがある」

メインコンピュータ「できますが?」

マサト「実は・・・」

 

 かくしてアレフ・シグニ星系における不法麻薬セイトフィル-D事件の主犯格、ブラスター・バベットとゼラ・グロスは、銀河連邦警察に逮捕された。

 おそらく迅速な審理の上、流刑惑星アルカトラズへ収監されることだろう。人間の平均寿命をはるかに超越した懲役刑とともに。

 そして私は、おっとり刀で駆け付けた連邦犯罪局の同僚どもからやっかみと称賛を受けつつ、2週間の特別休暇をもらった。

 命をカット&ペーストした報酬が、たった14宇宙日の自由時間だ。

 やらなきゃいけないことは山ほどある。妹ケイトの昇進祝いパーティで父母の実家に戻らなきゃならんし、サクラ号の娯楽室にビリヤード台を取り付ける予約を船体工事業者としていたし、弟リュートの住む惑星タロスで農作物の刈入れも手伝わなきゃならない(なんで私が?)。

 そういうわけでいろいろあって、離婚した妻の元にいる娘、サクラ・ウィリアムズとの面会日を調停どおりに設定できたのは、彼女の10回目の誕生日から3宇宙日が経過したところだった。

 

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 

 いつの間にか、彼女が私を呼ぶ通称は“パパ(daddy)”から“お父さん(my father)”に変わっていた。

 うれしいような悲しいような。リアクションに迷う。

 

マサト「・・・本当にこんなものでいいのか?」

サクラ「うん、おとうさん、ありがとう!!」

 

 今、私は宇宙港のショッピングモールにいる。

 別れた妻譲りの頑固さで、全く妥協せず、娘は5件目のトイショップでやっと探し当てた。品切れ続発中の、全銀河ローティーン少女渇望のアイテムだ。

 基本セットの価格は30コペック。だったら・・・

 

マサト「もう23個、まとめて買っとこうか?」

サクラ(ちっちっ、と指を振り)「わかってないなあ。11個じゃないと、だ・め・な・の!」

 

 はあ。そういうものか。

 実のところ、けっこう財布は膨らんでいるのだ。今回の特別危険手当に加えて、捜査費用5000コペックも、私は全く手を着けずに解決してしまったからだ。

 そっちについては、サクラ号のメインコンピュータ君が会計処理能力を駆使して「必要経費」として処分してしまった。なので、なぜか、私の手元にある。

 いやまあ、それを依頼したのは自分なのだけれど。ブラスター・バベット逮捕時のどさくさにまぎれて。

 

 娘の10回目の誕生日プレゼント、それは「マジカルコメット☆ヴィジホン」だ。

 ローティーン少女のカリスマスター、フェイ・リン・ヤン--彼女の祖父は、私の祖父と面識があったらしい--が演じる新作公開映画「マジカルコメットのグレート・ジャーニー」で、これ見よがしにかっこよく駆使していたアイテム。もちろん娘が欲しがっているそれは、それを模した玩具用の製品だ。

 見たところ普通の携帯通信端末だが、かなり高スペックな光学偏差AIが組み込まれていて、(これも玩具会社配給の)メモリチップを入れると、ミュージシャンだかアイドルだかの映像が立体素粒子で再生される。しかもそれは通信でお友達に送信したり、銀河ウェブネット内の仮想空間でアバターとして活用したり、さらにはその仮想空間内で(十分に課金すれば)カスタマイズして技能や能力を成長させることもできるという。

 

マサト「光学偏差AI、ねえ・・・」

 

 まったく、お父さんはそれの応用技術で殺されかけたというのに。

 

マサト(ため息をつき、頭をかいて)「ま、いいか」

サクラ「なんか言った?」

マサト「いや別に。どこかで昼飯でも食べようか」

サクラ「でもダイエット中なの」

マサト「10歳の君が!?」

サクラ「ええ、みんなやってるわ」

マサト「ああ・・・そう・・・。この先のスピカ料理店を予約していたんだけど・・・」

サクラ(残念そうなマサトを気遣って)「あ、でも、付き合うわ」

マサト「ホントに?」

サクラ「えーと、まあ・・・うん!」

 

 そんなこんなで微妙にすれ違いのある会話を味わいつつ、私と娘の時間はゆっくりと過ぎていく。

 3宇宙日が経過したら、この休暇も終わり。

 そして連邦犯罪局のブリーフィングに参加して、新たな任務を受ける。ほかの警察官では解決できそうもない、とびきりハードなケースを担当するのだ。しかしそれはサワムラ家--宇宙(そら)の一族--に連なる人間にとってみれば、人生にふさわしい任務でもある。

 いつか、宇宙のどこかで、また私は困難な局面に遭遇するかもしれない。

 でもその時には今日のような平和な日常を渇望し、生きる意志を捨てなければ、今回みたいに成功するだろう。特に根拠もなくそう感じている。

 

 (ピッと、電子音)

 

サクラ「どうしたの、お父さん?」

 

 宇宙港に停泊していたサクラ号のメインコンピュータを中継して、私の携帯端末に連邦犯罪局からの交信が入った。

 さあ、もうすぐまた、星々の海を駆ける日々の始まりだ。

 

 

 

『電脳破壊作戦』に続く】

【そして次からはファンタジー編『海賊船バンシー号』のスタートです。極悪船長ブリッツ君の活躍を見逃すなっ!!】