宇宙の暗殺者

 

 

 

 

 

主人公作成&特殊ルール説明 --Space Assassin--

 

 さあ、今日から新シリーズスタート。

 久しぶりにSF作品の登場です。アンドリュー・チャップマン著の『宇宙の暗殺者(Space Assassin)』の開幕だあ!!

 

 今回の冒険の任務は、巨大宇宙船<ヴァンダーベッケン>に突入し、惑星の安全を脅かしている悪の科学者サイラスを法の裁きに照らすこと。

 “君”は暗殺者。高度な訓練を受けた戦闘マシーンであり、人類も含め、27に及ぶ種族のすべての格闘技に通じる達人だ。

 しかし注意したまえ!船内には、ロボットやミュータントなどの恐るべき怪物たち--いずれもサイラスの実験の産物たち--が待ち構えているのだ!(ばばーん!)

 

 という燃える設定なのですが、ここでキャラクター作成。

 当ブログ『Livre dont vous êtes le héros(君が英雄になれる本)』においては、SFの冒険はすべて「宇宙(そら)の一族シリーズ」と勝手に(妄想して)銘打っております。まあ、いわゆるキャンペーンにしちゃってるわけだな。

 1巻目の「さまよえる宇宙船」ではホクト・サワムラ艦長が登場しました。そして今回の2作目では、彼とソフィーの間にできた息子ハヤト・パウロ・サワムラ(以下ハヤト)“君”となります。よって、能力値は一子相伝で、前回のホクト・サワムラのものを引き継いじゃいましょう。だって新しいキャラ設定作るのメンドクサイし~( ´∀`)(←そっちがホンネかよ)

 というわけで今回の主人公、ハヤトくんの能力値は以下の通りになりました。彼は地球連邦軍士官学校を卒業したての18歳。意気盛んな熱血青年です。偉大なお父さんに負けないよう、がんばれよっ♪

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 さて次。Fighting FantasyGamebookでは、SF物には特殊なルールがいろいろ導入される傾向が強い。今回の『宇宙の暗殺者』もけっこう独創的だ。ひとつひとつ見ていこう。

 

 まずは原装甲点。これは1d6+6で決定されるのだが、銃撃戦(その行い方は以下を参照)で敵からダメージを受けたとき、技術点チェックと同じように2d6を振り、この値以下ならダメージを受けない、というものだ。しかしこのチェックを行うたびに、傷ついた装甲点は1点ずつ引かれていく。これはちょうど運試しと同じ考え方だね。

 はあっ!(コロコロ)うっ!!2か・・・原装甲点は8だ。けっこう低目かも・・・(><)

 

 次に購入点。これは1d6で決定される。この値を消費して様々な武器を購入する。宇宙の暗殺者である彼が購入できるウェポンは以下の通り。

----------------------------------------

◎電撃銃(拳銃。銃撃戦でダメージ2点を与える) ・・・購入点1

◎熱線銃(ライフル。銃撃戦でダメージ1d6点を与える) ・・・購入点3

◎手榴弾(その場にいる敵すべてに1d6ダメージ。

   ただし「使ってもいい」と指示されている場合のみ) ・・・購入点11個につき)

◎重力爆弾(超小型ブラックホール爆弾。戦闘を一瞬で終わらせる?) ・・・購入点3

◎装甲点補充(死にたくなければ強化しとけ) ・・・購入点1/21点につき)

----------------------------------------

 さて・・・はあ!(コロコロ)・・・1d6の出目は5だ。まあまあかな!(^v^)

 まずは基本兵器の電撃銃(1点)だな。これがあれば熱線銃はいらないか。ハヤトは技術点高いからなあ。その分を手榴弾3個(1点×3に回し、購入点残り1点で原装甲点を2点分上昇させられる。これで原装甲点は10に上昇したぞ。

 ああっと、重力爆弾は購入点高スギか・・・手が回らない・・・。

 

 かくしてハヤトの武器は電撃銃、手榴弾3個、そして原装甲点は10になった。

 

 お次は体力回復アイテムだ。今回の冒険では、活性剤という薬品を服用することで体力点を5点回復できる。この活性剤、冒険開始時に持っていけるのは4だけ。ペース配分を考えて大事に使わなければいかんゾウ。

 装備品ルール。敵の巨大宇宙船「ヴァンダーベッケン」で携行品を持っていくにはバッグパックを使う。このバッグパックの収容量はアイテム5個までだ(武器と活性剤は含まない)。いろんなものを手当たり次第に拾ってくことはできないのだ。

 

 最後!(みんなついてきてるー?)戦闘ルールの銃撃戦について。

 このGamebookの戦闘は、通常FFルールの戦闘、攻撃力振り合いの格闘戦と、もうひとつの戦闘方法として銃撃戦がある。さっきの電撃銃や熱線銃や手榴弾はこっちの戦闘で使うわけだ。その手順はこんな感じになる。

 

1)手榴弾

 使ってもいい指示があるなら、投げてもいい。

 手榴弾は、その場にいる敵すべてに1d6ダメージを与える。

2)ハヤトの銃撃

 技術点チェック(2d6で技術点以下かどうか)を行い、成功したら命中。

 命中したらその武器のダメージだけ、敵の体力点を引く。

3)敵の銃撃

 敵も技術点チェックを行い、成功したら命中。

 だけどこのときハヤトは装甲点チェックを行える。

 2d6を振り、出目が現在の装甲点以下ならダメージを受けなくてもいい。

 失敗なら敵からダメージを受ける(しかし成功失敗にかかわらず、装甲点は-1されてしまう)。

4)どちらも死んでいなければ、(2)と(3)を繰り返す。

 

 敵が複数の場合「敵は同時に君を銃撃する」と表記されているときがある。その場合は最悪だ。ハヤトの銃撃は(2)の一度だけだが、敵は人数分だけ(3)で銃撃してくる!それはつまり、あっというまに装甲点を使い果たし、蜂の巣に・・・Σ(´Д`lll)

 そそそ、そうならないように、良いパラグラフを選ばなくちゃな!!

 

 (ここまでルール説明にけっこうスペースを使っちゃったので、毎回恒例のタイタン世界の説明はお休みです。どうかご了承ください)

 

 それでは、大宇宙が俺を、呼んでるぜえっ!!!

 

 (^v^)ノ

 

 

 

卒業式にやってきた男 --Space Assassin--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点10/10

 

特務将校「ハヤト・パウロ・サワムラ君だね?」

 

 地球連邦軍士官学校の卒業式当日、いきなり黒づくめのスーツを着た男に呼び止められた。彼は特務将校だと名乗る。そして、士官学校における数々の成績を分析した結果、君にしかできない任務がある、と矢継ぎ早に状況説明を終え、自分をエアカーに乗せた。

 

 言い遅れたけど、自分の名はハヤト・パウロ・サワムラ。

 父はホクト・サワムラといい、偵察艦トラベラー号を異次元漂流から救った奇跡の艦長として知られている。ちなみに母もトラベラー号の医務官だった(詳しくは『さまよえる宇宙船』を参照)。

 サワムラ家は代々宇宙の大海原を仕事場とすることを誇りとした、いわゆる「宇宙(そら)の一族」だ。もちろん自分も、尊敬する父と母に近づきたくて、地球連邦軍の士官学校に入り、それなりの成績を収めて、今日、無事に卒業した。

 そして明日より、希望に満ちた士官候補生として巡洋艦「パーシヴァル」に乗艦する予定だったのだが・・・配属先が変わったのだ。それは地球連邦軍ではよくあることなのだろうか。

 サングラスをはめた特務将校は、エアカーの中で封筒を渡す。

 

特務将校「気の毒だが、1日目にして転属だ。読んでおきたまえ。」

ハヤト「どこへ?・・・失礼しました。どこにですか、サー?」

特務将校「黒い稲妻を知っているかい?」

 

 心臓の鼓動を覚える。「黒い稲妻」のインシグニア(胸章)。それはつまり地球連邦軍の中において、決して本人からの配属希望を受け付けず、独自のリクルーティングシステムによって人員が補充される唯一の部門、すなわち--連邦軍中央情報局。

 

特務将校「習得した異星人格闘技27、射撃訓練成績A+、模擬兵棋演習973敗、語学テスト300点パーフェクト。エトセトラエトセトラ・・・。どれを取っても見事な成績だ。ハヤト准尉」

ハヤト「一家の名に恥じないよう、励みました」

特務将校「その君の才能が必要だ。オドのことを?」

ハヤト「・・・ヴァンダーベッケン?」

特務将校「さすが英雄の息子。話が早い」

 

 惑星オド。つい最近、20年ほど前に地球連邦が築いた太陽系外の植民惑星。いわゆるフロンティア。辺境開拓地帯。治安が行き届かないこの星域に、忽然と現れたのがテロリスティック・サイエンティスト(悪の科学者)のサイラス教授だ。

 彼は冷酷なロボットやミュータントらしき凶悪な生物たちを引き連れ、宇宙海賊よろしく惑星に降下して、罪もない人々を誘拐して身代金を請求している。払われなかった人質は彼の人体実験の材料となり、払われた身代金は彼の根拠地の保全費用となる。その彼の根城とは・・・

 

 巨大宇宙船<ヴァンダーベッケン>

 

 もともとは地球連邦軍の最新鋭モニター艦になるはずだった。しかし開発主任だったサイラス教授は、この船の制御コンピュータを我が物とし、いつの間にか自らの船としてしまったのだ。それはつまり、地球連邦軍最大の汚点、空前絶後の横領行為である。大臣・幕僚長・参謀本部など、首が飛んだお偉方の数は、両手の指ではとても足りない。

 そして彼は、辺境星域で今もなお、暴虐の限りを尽くしている。ここまでは普通のニュースネットでも流されている情報だ。しかしそれ以上のことを、特務将校は話し始めた・・・

 

特務将校「サイラスからの最新テロ予告が届いた。これまでで最悪のものだ。連邦政府により“辺境防衛の業務委託金”名目の4億クレジットが支払わなければ、惑星オドの地表全体に放射性同位元素とナノウィルスをばら撒く。期限は30宇宙日後」

ハヤト「交渉の余地はあったのですか、サー?」

特務将校「決裂した。・・・これは極秘事項だがね」(肩をすくめる)

 

 特務将校は淡々と事実を述べる。僕も勤務経験が長くなると、ここまで他人事のように感情を抑えられるのだろうか?

 地球連邦政府は1年分の国家予算規模とオドの開拓植民400万人を天秤にかけ、前者を選択した。サイラスの凶行も已む無しと判断したのだ。現在稼動可能な地球連邦軍の艦船で、ヴァンダーベッケンを撃沈できる船はない。

 もちろん手をこまねいていたわけはない。政府が表に立てないのならば、と、名うての民間の賞金稼ぎを雇い、極秘裏にサイラスを暗殺しようとした。しかし残念ながらこれも未達成に終わり、かえってサイラスの態度を硬化させてしまった。

 その賞金稼ぎの名はベルカ・ロバヤニという・・・

 

ハヤト「そんな、ベルカさんが!」

特務将校「確か君の父の部下だったはずだ」

 

 ベルカさんのことは良く覚えている。幼い頃、年に1度、父ホクトと母ソフィーは家族旅行に私を連れて行ってくれた。行き先は必ずメキシコ。そこで旧友と昔話を楽しむのだ。

 そのとき、まだ子供だった自分にセラミックナイフの扱い方を教えてくれた、寡黙だけど優しい目をした、まるで黒豹のようにしなやかな身のこなしのアフリカーンス女性。40過ぎてまだなお現役のフリーランス、それが彼女だった。どれだけ母は悲しむことか!

 

特務将校「ここまで君に話した。ということはつまり・・・」

ハヤト「ええ、私に拒否権はない。というか、志願します。ベルカさんの任務は、私が引き継ぎます。サー」(敬礼)

特務将校「そういうと思っていた。これも調査の通り」

ハヤト「調査?」

特務将校「軍としては政府の方針に従わざるを得ない。すばらしきシビリアンコントロールさ。だけど犠牲者も出しておきたい。後々“何もしなかった”と言われないために」

ハヤト「僕を志願させた」

特務将校「君のような、血気盛んな若者が、ね。ああもちろん、サイラスの排除に成功すれば、これ以上の結果はないと考えている。誤解しないでくれたまえ。我々はできる限りのことはする。だがオド星域に着いたら、君は自分の意志で勝手に行動する。軍の命令ではなく、だ」

 

 ここまで話したところで、エアカーは連邦軍中央情報局ビルの前に止まった。

 正面入口には石版があり、彼らのモットーが刻まれている。

 

誰よりも先に見よ 誰よりも先に聞け

誰よりも先に知れ 誰よりも先に死ね

 

 それを見た自分は思わず、ここまで随行してくれた特務将校を振り返る。彼はにやりと笑い、僕に道化めいたお辞儀をした。彼はひとクセもふたクセもあるゼスチャーで、こう言ったのだ。

 

特務将校「さしずめ私はメフィストフェレス・・・」

 

 そしてあとは、映画によくあるようなお決まりのモンタージュ・コース。

 本部で集中記憶システムによる基本訓練を受け、特殊武器を支給され、お偉方との握手。それからオド星域に特殊潜宙艇で運ばれ、ヴァンダーベッケンを発見し、その補給艇に忍び込み・・・

 

 

 

<ヴァンダーベッケン>に潜入成功・・・ --Space Assassin--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点10/10

 

 補給艇に首尾よく潜入し、テロリストどもの母船<ヴァンダーベッケン>へと向かう。

 自分は補給艇の緊急脱出エアロックに入り込んでドッキング音を待った。ヘルメットの中には補給艇のコンピュータが伝える、ドッキングまでのカウントダウンが聞こえてくる。それがゼロになった瞬間、スイッチを入れて補給艇から飛び出した。

 <ヴァンダーベッケン>の銀色の船体が、すぐ下を滑るように流れていく。思わず固唾を呑む。大きい・・・小型衛星くらいはあろうかという・・・なんて巨大な宇宙船なんだ・・・。

 だが、もう退くわけにはいかない。

 後ろでは、補給艇が小さな矢のように母船の中に収容されていく。自分は船体の上を数メートル滑空し、やがて黒い円盤のような小さな絞り開きのエアロックを見つけた。おあつらえ向きの潜入口だ!

 磁力吸盤を射出し、滑空を停止して、エアロックの上にふわりと浮かぶ。手際よく開閉装置をいじくると、たちまちエアロックが開いた。

 中に入り、外扉を閉じ、エアロック内に空気を満たす・・・

 

 さあ、こうして自分は、<ヴァンダーベッケン>内に侵入した!

 

 エアロックから出るとそこは短い通路で、その突き当たりは保安扉になっていた。

 保安扉の左右にはどちらも小さな保守用ハッチ1つずつあり、“注意”という文字が彫り込まれている。それから保安扉の手前に小さなぼろの山があるのも視認した。

 

 このぼろの山から調べてみるか・・・死体だった。

 小さな猫背の異星生物の死体だ。ぼろぼろの布は衣服の成れの果てで、体の下に6本の手足が絡み合っている。床にこびりついた血の跡をたどると、どうやら右のハッチから出てきたようだ。

 やれやれ最初の遭遇物がこれか。縁起でもない・・・。

 肩をすくめ、この死体を転がしてみると、彼は片手に電子装置を握りしめていた。この電子装置を拾い上げる?

 ・・・いや、やめておこう。未知の領域に、未知の異星人種だ。死体から病原菌が感染する可能性も、なくはない。彼に触れずここは放っておくに限る。

 というわけで次の行く先を検討する。重力爆弾を持っていない自分には、この頑丈な保安扉はぶち破れない。

 とすれば右か左の保守用ハッチのどちらかだが・・・

 死体には右からやってきた血の跡がある。つまり右は何らかの危険がある。そう考えて左のハッチを開け・・・あれ、開かないぞ?ガン!ガン!(拳で叩く)

 ガタンッ!

 技師のミスだろう。立て付けの悪いハッチは手前にいきなり倒れてきた。いっしょに電源高圧ケーブルも引きずり出して!!

 ここで運試しは・・・最初は12点なので自動的に吉。バチバチバチ!自分は危ういところで電源高圧ケーブルによる火花のシャワーを避けることができた。

 ふう。最初っからいきなり77,000ボルトの電圧に感電するところだった。ここは敵地なんだ。気を引き締めていこう。

 

 さっきよりもいささか慎重になって、自分は右の保守用ハッチを開けた。

 こちら側は簡単に開き、アルミのパイプが縦横に走る、長くて暗い保守用トンネルが現れる。そのトンネルに入り、電撃銃を構えながらゆっくり歩いていくと・・・

 左手の壁に、また別の保守用ハッチがある。ハッチの向こう側からはくぐもったうなり声が聞こえてくる。

 そっとハッチを音もなく開けると、そこは小さな拘禁室だった。おそらく看守だろう、顔のない人間型ロボットがいる。奴は熱線銃で武装しており、その向こうには2つの独房がある。さっきのうなり声はそのうちの1つから聞こえてくるのだ。

 まだロボット看守は僕に気づいていない。独房にいる囚人を解放できるチャンスだ!だけど派手な銃撃戦はマズイ。だとしたら・・・

 自分はベルカさんの形見となったセラミックナイフを取り出し、そろそろとロボット看守の背後に忍び寄り、装甲版の継ぎ目に突き立てた!

 ビイーーーッ!ロボット看守の体内アラートが鳴り響き、奴はありえない角度で上半身をひねる。だが至近距離で熱線銃の取っ手を押さえていたので、敵は発砲できない!

 さあ、訓練の成果を見せろ。格闘戦だ!!

 

【ロボット看守 技術点7 体力点8】 (格闘戦)

1R (ロボット看守/13)(ハヤト/18) ロボット看守/体力点-2

2R (ロボット看守/12)(ハヤト/17) ロボット看守/体力点-2

3R (ロボット看守/13)(ハヤト/18) ロボット看守/体力点-2

4R (ロボット看守/14)(ハヤト/21) ロボット看守/体力点-2 ←Destroy!!

 

 まあ、初歩的な戦闘パターンのプログラミングなので、読みとることは簡単だ。難なくロボット看守を破壊し、セラミックナイフで粉々に解体することに成功した。そして奴の武装である熱線銃を拾う。うん、まだ使えそうだ。肩に担いでいこう。

 それから囚人を解放だ。あわよくば有益な情報が手に入るかもしれない。

 自分は相変わらず苦しそうな咳が聞こえてくる第一の独房へと向かった。

 

 

 

ネズミどもに慈悲をかける謂れはない --Space Assassin--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12 装甲点10/10

 

 独房にいたのは全身傷だらけの老人だ。

 体いっぱいに包帯を巻いている。まるで干からびたミイラ男だ。彼はロボット看守が倒されたのを見ると顔を輝かせ、自分の身の上を話し始める--私はサイラスに誘拐され、仲間になることを拒んだため、拷問を受けてここに収監されていたのだ。ぜひ彼を倒してくれ・・・

 

ハヤト「もとよりそのつもりだ。だが爺さん、何か<ヴァンダーベッケン>の情報を知らないか?そうすれば自分の任務もより達成しやすくなるんだが・・・」

老人「ふむ・・・私も目隠しされてここに連れ込まれたでな・・・すまんな」

ハヤト「いや、いい。とりあえず自分のことは忘れろ。あんたは何も見なかった。何も出会わなかった。いいな?」

老人「う、うむ・・・いや待て、そうじゃ!教えられることがあった!<ヴァンダーベッケン>のパイロットのことじゃ」

ハヤト「!!!・・・ぜひ話してくれ」

老人「あのパイロットは用心深い機械でな、ひどくおかしなことばかり考えておるんじゃ。いいかね、もし奴に考えていることや感じていることを聞かれたら、知らないと言いなさい。それがいちばん安全な方法じゃからな」

 

 <ヴァンダーベッケン>を動かしているのは、サイラスではなく人口知性ということか。

 願ってもない情報だ!自分は老人と握手すると、とりあえずの救急キットと飲料水を彼に分けてやった。これで彼の命も少しは永らえるはずだろう。

 

 さてそれから自分は、もうひとつの音がしない独房も調べてみることにした。ここには一見、誰もいないように見えたが・・・「キキーッ!!」

 うわわっ!いきなり戸口の上から何かが体の上にのしかかってきた!!

 ガリガリガリッ!奴の爪で装甲宇宙服が削られる音がする。こいつは毛むくじゃらの小鬼だ!

 そんなに力のある生物じゃない。素早く対応してはたき落としたが、奴の爪と牙の不意打ちにより、装甲宇宙服に大きな傷をつけられてしまった・・・装甲点-1だ。クソッ!

 小鬼はサササッと壁を駆け上り、赤い目で上方から自分を睨みつけている。

 睨みつけたいのは自分のほうだ!とんだ寄り道で貴重な装甲点を無駄にしてしまった。自分はチッと舌打ちしてから、拘禁室を出て、元の通路に戻った。

 

 トンネルを数メートル進むと、またひとつ小さなハッチがある。耳をそばだてるが何も聞こえない。ただこのハッチは少し暖かいような気がする。向こう側は暖房された部屋なのだろうか?

 ハッチを開けて向こう側を調査してみることにした。何本かの太い鋼鉄の排気パイプが、床から天井へと走っている。熱はこのパイプから放射されていたらしい。

 その先にスライド式の扉がある。

 熱線銃を構えて音もなく近づき、中にいる者を確かめてみよう・・・

 大きな部屋だ。すばらしい家具が整っているが、それは異星人にとってのもので、奇妙な形で自分には合わない。そして椅子に座り、電子シートに目を通しているのは、ネズミに似た2人のフォスニク人科学者だ。白衣を着ており、小さな鼻眼鏡(その奥にある目もやはり小さい)をずり上げては議論を交わしている。

 その内容は・・・いかがわしい人体実験の報告会だ・・・。

 

フォスニク人1「やはり被検体αに放射性毒素が見られる」

フォスニク人2「ベクタ人遺伝子注入は裏目に出たようだな」

フォスニク人1「ああ、まるで軟体動物のように脊椎がぐにゃぐにゃ・・・待て」

フォスニク人2「どうした?続きを話せ??」

フォスニク人1「君の後ろのドアの向こうに生命反応・・・人間型生物だと?」

 

 気づかれた!ならばやることはひとつ!

 勢いよく扉を開け、機先を制して中にスライディングして飛び込む。そして回転して起き上がりざまにZAPZAPZAP2人のフォスニク人科学者に対して熱線銃で一斉射撃を加えた。所詮は首謀者の手先となって人体実験を繰り返していたネズミどもだ。慈悲をかける謂れはない。訓練どおりの正確な射撃だ!

 彼らは武装していない上に不意を突かれたこともあり、悲鳴を上げないまま難なく急所を撃ち抜かれて絶命する。だがぼやぼやしていると警備装置が作動するかもしれないぞ。自分は手際よく彼らの遺体を探ってみた。

 特に興味を引くものはないが、彼らは2人とも長い鎖を首にかけており、鎖の先には円筒がついていた。それには「保安用電子キー」と刻まれている。自分はそのうち1つを引きちぎり、バッグパックに入れた。

 どうやらこのキーで、部屋の先にある保安扉も開けて中枢部に入れるようだが・・・

 

 いや、深入りはやめておこう。

 ここでの銃撃を嗅ぎ取った警備プログラムが何らかのワナを仕掛けている予感がする。サイラスを突き止める確たる証拠がない限り、突出するのは危険だ、と自分の戦闘本能が告げる。こういう“虫の知らせ”には従ったほうがいい。 

 そういうわけで入ってきたスライド式扉をくぐり、元の保安用トンネルに戻ることにした。

 

 

 

開発技術者の自慢話 --Space Assassin--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12 装甲点9/10

 

 保安用トンネルは曲がりくねり、<ヴァンダーベッケン>の奥へと続いている。

 しかしやがて合流点に到達した。T字路だ。同じようなトンネルが左右の暗闇の中に伸びている。そして自分の目の前には小さなハッチがあり、こう書かれていた。

 

 『注意 危険絶大 許可なき者の立ち入りを禁ず』

 

 このハッチを開けようかどうか、どうしたものか、一瞬迷う。

 サイラスに関する重要区画かもしれない。だが、この中が何らかの警備ブロックであった場合、敵に見つかったらあっという間にTHE ENDだ。自分は侵入者だ。巨象の体内に入り込んだ虫みたいなものだ・・・。

 よし、このハッチはスルーだ。何事も慎重に行こう。とすると、右と左、どちらのトンネルに曲がろうか?どちらも手がかりがまったくないなら・・・

 ピン・・・!コインを弾いて出た結果、自分は左へ曲がることにする。

 

 こちらの通路は幅が広く、まっすぐだった。どちらかというとハイウェイといった感じ。

 そして間もなく、通路の突き当たりで2つのハッチがある場所にたどり着いた。1つは通路を塞ぐ真ん前に、もうひとつは通路の壁にある。

 真ん前のハッチを堂々と開けては、やはり警備システムの注意を呼び込んでしまうだろう。なので自分は側面のハッチを開けることにした。

 

 プシュー・・・

 ハッチをくぐると、そこは本、電子機器、寝台、そのほかの家具が散乱する小さな暗い部屋だ。寝台には白いオーバーオールを着た地球人が、両手で顔を覆い、悲嘆にくれて寝っ転がっている。どうやらコンピュータ技術者のようだ。

 

 (1)この男を攻撃する

 (2)脅して情報を聞き出す

 (3)話しかけて仲良くなる

 

 さっきのフォスニク人と違い、自分と同じ地球人なら、同じ人種に友好的かもしれない。悲嘆にくれた様子なのも拉致されたからか。サイラスのことは敵視しているのかも・・・

 そう考えて(3)だ。注意を向けるため「えへん」と咳払いをする。技術者はガバッと跳ね起き、自分をまじまじと見つめた。

 

技術者「とうとう来たか!君が刺客か?」

ハヤト「え?・・・いや、詳しくは言えないが、地球連邦の者だ。サイラスを拘束するために動いている」

技術者「地球連邦・・・つまり、彼の敵か・・・!」

 

 背中の陰で小型電撃銃の引き金を絞る。もし敵対的なそぶりを見せたら・・・

 だが技術者が次に継いだ言葉は、自分のボスに対する恨み、辛み、愚痴だった。自分は内心安堵の息をついて電撃銃を元の位置に戻す。

 

ハヤト「協力してくれるか?」

技術者「ああ、もちろんだ。あのクソッタレをぜひ捕まえてくれ!」

 

 話すうちに打ち解けてきて、彼は自発的に告白し始める。この技術者は船内ロボットの保守責任者だった。しかしつい最近、サイラスにより解任されたのだ。

 なぜかと言うと、ブリッジの司令ロボットに意見の相違があったらしい。サイラスは「故障」と断じて廃棄処分を命じたのだが、彼は断った。

 その結果ここに隔離されて粛清を待つだけの身の上だったらしい。自分によって解放された彼は、安心からか自分の開発したAIを長々と自慢し始めた。

 

技術者「あの機械は生きているんだ!彼と話してみなければわからない。彼は自分が存在することを、ちゃんと知っているんだ!」

 

 この<ヴァンダーベッケン>を動かす司令ロボットか・・・

 以前会った拘禁室の老人は「狂っている、無視しろ」と言い、この開発技術者は「頭のいいAIだから話してみろ」と勧めている。いったいどっちが本当なのか?

 まあ、会ってみないと、わからないか。

 これ以上ここにいても得られるものは少なさそうだ。自分は丁重に有意義な情報を教えてくれたことの礼を言い、彼の自慢話をさえぎった。

 ちょっと不満そうな技術者は、自分に円筒状の保安キーを渡す。さっきのフォスニク人から奪ったのと同じタイプで、これがあれば、ここから先の区画に出られるそうだ。

 

 こうして自分は技術者の居室を抜け、新たなトンネルに入った・・・

 

 

 

同行者ジェニーはティーン☆アンドロイド --Space Assassin--

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12 装甲点9/10

 

 扉が開くと、明るく照らされた長い通路がずっと向こうまで続いている。だけど気を緩めることなく、熱線銃を構えながらそろそろと警戒しつつ前進していこう。

 

 数分ほど進むと、左側の壁に扉がある。

 壁の陰に隠れながら開閉スイッチを押す。すると扉は横にスライドして開いた。その室内には・・・デザインがまちまちのロボットがうじゃうじゃいた!

 警戒ロボットの待機保管場所だったか?あるいは整備ルームなのかも??分解されたアンドロイドやサイボーグの部品が散らばっている。ここは考えるまでもなく即決即戦だ。このロボットどもが警戒アラートを発する前に、熱線銃のエネルギーを室内に降り注がせることにしょう。斉射!

 バリバリバリ・・・!

 あっという間に自分は様々なロボットのボディに穴を開けた。しかし彼らは・・・反撃しようとはしない?

 そうか、ここにいるのは、みんな修理が必要な物ばっかりだったのだ。つまりはスクラップ置場だ。それがわかって一息つき、この部屋の中に入る。

 天井にクレーンがあり、作業台のそばには工業用切断レーザーや溶接機など・・・どれも重すぎて携帯には向かない・・・いや待て、スクラップボックスの中に、女性アンドロイドの首があるぞ。ティーンエイジを模した召使ロボットのようだ。その顔は絶えず笑みを浮かべ、かいがいしく給仕を申し出てくる。

 

首「ご主人様こんにちは。カクテルはいかがですか?」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

首「といいましても、手腕部は切断されてしまいましたが。エヘヘ・・・」

 

 自分はこのニヤケた首を蹴飛ばそうとするが・・・待てよ。ある考えがひらめく。

 

ハヤト「君、視覚機能は生きている?」

首「はい、ご主人様の顔は、バッチリ確認できます♪」

ハヤト「じゃあ、同行してもらおう」(手で持ち上げる)

首「え・・・何を・・・きゃあっ!」

 

 この首をバッグパックにぶら下げて、彼女の視界を後方に固定させてみた。そして視覚ケーブルを自分のゴーグルとリンクさせてみる。うん、いいぞ!重量がかさばって携行品3個分ではあるが、これで即席の後方警戒装置が手に入ったわけだ。

 

ハヤト「君の視覚内に敵対反応があったら、すぐに報告するんだ。いいな?」

首「ハイ、ご主人様」

ハヤト「君の名前は?」

首「ウェイクマン社製XJ-9型アンドロイド。通称“ジェニー”です」

ハヤト「OK。ジェニー、よろしく頼む」

ジェニー「アイ、サー♪」

 

 こうしておかしな同行者を手に入れた自分は、通路に戻り、先へ進む。

 するとまた左側の壁に扉があった。そろそろサイラスについての手がかりを見つけるために、積極的に動こう。僕はこの扉も開けてみることにする。

 

 そこは何本もの金属レールが走った部屋だった。レールには新品の宇宙服が何着もかかっている。もっと精査するため、ゆっくり、ゆっくり、足を踏み込んでいくと・・・

 

ジェニー「ご主人様、後方に飛来物っ!」

ハヤト「・・・!!!」(がばっ!)

 

 反射的に伏せる!

 すると頭の真上を、シュイイイイン!殺人機械の剃刀ディスクが物凄いスピードで滑空していった!自分のヘルメットのアンテナがぽろ、と1本切断される。もしあのまま突っ立っていたら延髄を切断されて・・・早速ジェニーは役に立ったわけだ!

 いやまだ安全なわけじゃない。剃刀ディスクはブーメランのように大きく向きを変え、再び自分の喉めがけて襲い掛かってくる!自分は小型電撃銃を引き抜いた!

 

【剃刀ディスク 技術点9 体力点1】 (銃撃戦)

※手榴弾 指示なしで使用不可

1R ハヤト銃撃、電撃銃(5)命中 剃刀ディスク/体力点-2 ←Destroy!

 

 BOOM!!西部劇のガンマンよろしく早撃ちは見事に命中し、自分はこの凶器を木っ端微塵にできた。

 それから立ち上がり、改めて部屋の中を調べる。ここは宇宙服のメンテナンスルームのようだ。自分も地球連邦軍支給の宇宙服を着ているのであまり触手は伸びないが、レールの外れに戦闘用の装甲宇宙服が見つかった。サイラスの天才頭脳を見せつけるように、軽量強化繊維で耐久性が高いものだ。

 これに着替えると装甲点は14に上がる。しかしやはり重たくてかさばるので、技術点-1のペナルティが課されるのか・・・どうしようか・・・。

 だけど技術点10でも銃撃成功の確率は高いな。よし、命がまず大事だ。着替えよう。自分はバッグパックを床に置き、いそいそと今の宇宙服を脱着する。

 ここでジェニーが「きゃあ!」と悲鳴を上げた。なにいっ、また別の剃刀ディスクか?!

 

ジェニー「私の視界に入らない場所で着替えてくださぁい。ジェニーは動けないんです!」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

 

 

 

小型ロボットを手榴弾で一掃する --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点18/18 運点11/12 装甲点14/14

 

 通路はかなり進んだ後に折れ曲がる。その角を曲がった途端・・・!

 慌てて通路の陰に隠れる。待ち伏せしていたのは8体の小型ロボットだ!!!

 この小型ロボットは高さ約30cm、装甲が施され、武装していて、4個1ユニットで手軽に運搬することができ、意気地のない警備係が二の足を踏むような任務につけられる。もちろんここでも侵入者である自分を探知すると、激しく銃を乱射しながら追尾してきた。

 

ハヤト「ふむ、銃撃戦で18か・・・」(かちゃかちゃ)

ジェニー「どうしますかあわわわ」

ハヤト「こうするに決まっている!」(ぴん!)

 

 いちいち銃で相手にしていてはきりがない。だから手榴弾のピンを抜き、1・・・2・・・奴らに投げつけた!

 

【小型ロボット1 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット2 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット3 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット4 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット5 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット6 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット7 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

【小型ロボット8 技術点7 体力点2】 (銃撃戦)

※手榴弾 1個使用

 小型ロボット1/体力点-3 ←Destroy!

 小型ロボット2/体力点-3 ←Destroy!

 小型ロボット3/体力点-6 ←Destroy!

 小型ロボット4/体力点-1

 小型ロボット5/体力点-5 ←Destroy!

 小型ロボット6/体力点-4 ←Destroy!

 小型ロボット7/体力点-6 ←Destroy!

 小型ロボット8/体力点-1

1R ハヤト銃撃、熱線銃(6)命中 小型ロボット4/体力点-3 ←Destroy!

   小型ロボット8銃撃、熱線銃(8)外れ

2R ハヤト銃撃、熱線銃(7)命中 小型ロボット8/体力点-1 ←Destroy!

 

 手榴弾で6台までの小型ロボットを一掃する。2台とり残したものの、それらは落ち着いて熱線銃で仕留めることができた。訓練の賜物か、この戦闘でダメージをまったく受けないですんだぞ。だが手榴弾は残りあと2だ。ここぞという使い時を考えておかなければ・・・。

 

 爆発熱で黒ずみ、小型ロボットの残骸が散らばる角の向こう側に出た。

 そこに残っているものは2つの出口だけだ。1つは普通の保安扉、もう1つは短い黒のレバーが2本突き出した扉。どちらも爆発の衝撃でひしゃげてはいるが、開きそうではある。まずは保安扉のほうから開けてみよう・・・。

 

 そこは武器庫だった!

 銃架には熱線銃ライフルがずらりと並び、弾薬箱や興味深い兵器類がある。だけど、自分がこれまで受けた訓練で活用できそうなのは、すでに装備している熱線銃以外には2つの小さな箱のみだ。一方には爆発物、もう一方には奇妙なゴーグルが入っている。重さからいって持っていけるのはどちらか1つ。自分は背中のジェニーに尋ねてみた。

 

ハヤト「画像解析できるかい?」

ジェニー「そーですねー、爆発物はたぶん質量から見て手榴弾です。ゴーグルは・・・あっこれは赤外線暗視鏡ですよ。これがあればどんな暗闇でも見通せますぅ」

ハヤト「なるほど、じゃあこっちの方が役立ちそうだ」

 

 自分は武器庫を出て、ゴーグルを早速ヘルメットに取り付けてみる。最新式だ!節電式ハロゲンランプで照らされているだけの薄暗い<ヴァンダーベッケン>の船内が、まるで昼間のように明るい!

 思わぬ幸運に自分の胸は高鳴る。ボーナスとして体力点+4(ただしまだダメージを受けていないので関係なし)に運点+1だ。

 

 さて、再び小型ロボットと戦った地点にある、2本の黒いレバーが突き出た扉の前にやってきた。

 この扉は一見他の扉と同じみたいだが、円筒状の保安キーを差し込む穴がない。どうやらレバーの倒し方が正しければ先の区画に進めるようだ。つまりは・・・

 

 左のレバーか?右のレバーか?それとも両方か???

 

 ここでは何の手がかりもない。ひょっとしたら今までの遭遇した者の中で、この地点の情報を持っていた奴がいたのかもしれないが・・・。ええい、いまさら振り返っても仕方がない。当てずっぽうで最初の選択肢から、ひとつずつ試してみるしかあるまい。

 自分はまず左のレバーから倒してみることにした。

 ガタンッ!プシュー・・・

 いきなり空気の漏れる音がして扉が開くと、左右に続く通路が現れる。どうやらここからまた新しい区画が始まるようだ。

 果たしてこれが正解だったのだろうか?それとも他の選択肢が、悪の科学者サイラスへの正しい道筋なのだろうか?

 いまひとつ確証が持てないまま、不安を感じつつ、自分はこの通路に足を踏み入れるしかなかった。まずは右側の通路の先を調べてみるとしよう・・・。

 

 

 

娯楽映写室の奇妙なタイトル群 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点14/14

 

 通路はずっとまっすぐ続くと、扉にぶち当たった。そこを開けると、中は電子装置の研究室か作業室のようだ。小型コンピューターや立体分析装置などが部屋の周囲にとりつけられている。だが、よく観察する暇もないうちに・・・

 

ジェニー「ご主人様、また反応です。強烈な電磁エネルギー!」

ハヤト「ああ、わかってるっ!」

 

 極小型飛行機械(マイクロヘリコプター)が襲来してきた!

 こいつはフットボールほどの大きさだが、虫の羽に似た回転翼や、複眼に似たセンサーが取り付けられ、電撃光線を放ちつつ迫ってくる。もちろん自分は、こいつを撃ち落さねばならない!

 

【マイクロヘリコプター 技術点8 体力点2】 (銃撃戦)

※手榴弾 指示なしで使用不可

1R ハヤト銃撃、電撃銃(7)命中 マイクロへリコプター/体力点-2 ←Destroy!

 

 ガスン!・・・ボウッ!!

 自分の小型電撃銃の一撃でマイクロヘリコプターは床に墜落し、炎上する。その炎はたちまち近くのコンピューターや装置類に引火した。この調子だと、自分もあっという間に火災の中に巻き込まれてしまう。「室温上昇、危険、危険!」ジェニーが背中で大騒ぎだ。

 サイラスの居場所を突き止める上で重要な情報が見つからないか探していたが、これ以上いると装甲宇宙服が傷ついてしまう。やむなく入ってきた扉から出ることにした。しかし部屋を出る前に、以下の中からアイテムを1つ持っていくことができる。

 

◎プラスティックの円筒

◎電卓ほどの大きさの軽いプラスティックケース

◎真っ赤なハートのマークがついた、未開封の厚紙ケース

◎黒い液体の入ったビン

 

(※本文の指示では『目についたこれら4つのアイテムのうち2つを、持って行くことができる』とありますが、携行品は5個までなので、ハヤトの場合、ジェニー(携行品3つ分)と赤外線ゴーグルを有しているので、ここから持っていけるのは残り1つだけになります)

 

 自分はこの中からプラスティックの円筒を選んだ。ひょっとしたらロケットランチャーやバズーカ砲などの重火器かも知れないと思ったからだ。しかしこれは・・・

 中にボールベアリングがいっぱい詰まっているだけの、ただの工業製品だった。がっくりして肩を落とす・・・。しかしもはや、溶鉱炉と化したあの部屋に戻って別のアイテムを持ってくるにはリスクが多すぎる。

 後を振り返らず、先に進むとしよう!

 自分はこのアイテムをバッグパックに入れ、さっきの分かれ道まで引き返し、今度は左の通路に向かう。

 

 通路を進むと、右側に扉があった。この扉を開けると、中は小さな部屋だ。室内にある壁一面の棚のほとんどは、電子記憶カセットで占められている。正面の壁の中央にはテーブルがあり、カセットをダビングする装置が備え付けてあった。

 中に敵はいない。望むならボールベアリングの筒をここで捨てて、カセットを持っていくこともできるが・・・いったい、このカセットにどんな情報が入っているのか?

 自分はカセットに書かれているタイトル名を読む。地球語だ。現代人の自分にとっては、なんだかわけのわからない題名がそれぞれにつけられているぞ???

 

 『星戦争』STAR WARS

 『宇宙船戦士団』Starship Troopers←永久保存版!と落書きされている

 『未来に戻れ』Back to the Future

 『ジュラ紀の公園』Jurassic Park

 『刃渡り走者』Blade Runner←必見!と落書きされている

 『背景基盤』The MATRIX

 『テラ戦士 Ψ BOYMOMOKO

 

 エトセトラ、エトセトラ・・・

 

ジェニー「ええっと、お勧めのものだけでも鑑賞します?」

ハヤト「いや、いい。目眩がしそうだ・・・」

 

 まあ、とにかく、サイラス教授の嗜好はわかった。

 役に立つものが何も見つからなかったことに腹を立てながら、自分は電子記憶カセットをこのままにして、サイラスの娯楽映写室を出て通路に戻るのだった。

 

 

 

異星人の暗殺者 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点14/14

 

 正直、ここまで順調で何ら負傷も無く到達できたので、若干、気が緩んでいたとしても言い訳できない。だがしかし、ここはやはり宇宙最凶の敵根拠地の中なのだ。そのことを次の遭遇で思い知らされることになる。

 

 通路は急に折れ曲がり、大きな部屋に出た。がらんとだだっ広く、まるでトレーニングルームのようだ。部屋には中央の台座に載せられた異星人の神らしい神像がある。昆虫のような胴体と頭、6本の腕にそれぞれ1つの武器を持ち、その中には最新式の・・・驚いて目を見張る。あれは命中させた目標を原子の塵に帰す分解銃じゃないか!

 頭についた無数の複眼が、まるでこちらを凝視しているようだ。自分はじりじりと警戒しながら、部屋の壁に沿って向こう側の出口へ歩いていく。神像の視線はずっとこっちを向き・・・

 いや待て、つまり、奴の頭は動いているということか?

 そう悟った瞬間、奴のたくさんの手足と、異様にくびれた身体が、ギクシャクと動き始めて台座から降りる。こいつは作り物ではない!

 自分と同じウォー・マシーン、宇宙を股にかける暗殺者だ!

 

 異星人の暗殺者は台座から飛び降りると、キチキチキチ・・・を身体をきしらせながら、手にした武器を自分に向けてくる。

 ここでの戦いは銃撃戦となる。こいつは6種類の武器を持っており、それぞれ命中させるための技術点と、命中させたときのダメージは様々だ。その戦闘ラウンドでどの武器を使うかは、1d6を振って決定される。

 

【神像 技術点(※下記参照) 体力点12】(銃撃戦)

 

※神像の使用武器と技術点とダメージは、各ラウンドに1d6で決定

 1・・・鞭(技術点10、ダメージ3

 2・・・大刀(技術点9、ダメージ2

 3・・・槍(技術点7、ダメージ1)  

 4・・・電撃銃(技術点8、ダメージ2

 5・・・熱線銃(技術点6、ダメージ1d6

 6・・・分解銃(技術点5、命中したら即死)

 

※手榴弾 使用せず

 

1R ハヤト銃撃、熱線銃(5)命中 神像/体力点-1

   神像銃撃、鞭(10)命中 ハヤト装甲チェック(自動的に成功)/装甲点-1

2R ハヤト銃撃、熱線銃(10)命中 神像/体力点-1

   神像銃撃、槍(4)命中 ハヤト装甲チェック(自動的に成功)/装甲点-1

 

 ZAP!ZAP!さっきから熱線銃を命中させているが、敵の固い甲殻を貫けない。

 いや待て、あそこを狙え、柔らかい腹部だ!

 

3R ハヤト銃撃、熱線銃(6)命中 神像/体力点-5

   神像銃撃、槍(9)外れ

 

 BASH!!決まった!!敵は白い体液を流し、大いに身じろぐ。

 

4R ハヤト銃撃、熱線銃(7)命中 神像/体力点-2

   神像銃撃、大刀(5)命中 ハヤト装甲チェック(自動的に成功)/装甲点-1

 

 一気に決めるんだ、敵が分解銃を使う前に!

 

5R ハヤト銃撃、熱線銃(9)命中 神像/体力点-5 ←Kill!!

 

 よく狙って・・・死ねっ!!

 

 ビシャア・・・!

 最後の一撃は頭部を貫き、神像に見せかけていた異星人の暗殺者は体液を撒き散らし、もんどりうって倒れた。奴が恐るべき分解銃を繰り出す前に、何とか片付けることができたのだ。

 だがこの戦闘で装甲点-3か・・・。さっき、頑丈な装甲宇宙服に装備変更しておいてよかった。そうでなければここから先はかなりきついことになっていただろう。

 さて、6種類も様々な兵器を持っていた敵だが、使えそうな武器はないかな?

 身体にいくつも風穴を開けられ、もうもうと煙を吐き出している、この神像に近づいてみる。ああそうだ。この原子分解銃があれば・・・と、彼の爪を押し開いて、握っているそれを取り上げようとしたときだ。

 

ジェニー「破壊防衛プログラム感知!作動!」

ハヤト「しまった!!」

 

 BOOOOOOM!!!!

 突然、神像が爆発した!くそ、やられた!奴は自分の身体に最後のワナ、自爆装置を仕掛けていたのだ。自分は体力点に1d6・・・4点ものダメージを負ってしまった!

 神像の身体は、今度こそばらばらに飛び散る。だがこの捨て身の自爆では、装甲点は削られなかった。それが不幸中の幸いだ。

 

ハヤト「あたた・・・」

ジェニー「大丈夫ですかぁ?活性剤服用をお勧めします」

ハヤト「いや、あれは体力点5回復だから1点分がもったいない。先を急ごう」

 

 自分はこの部屋を通り抜け、向こう側の出口から先に向かう。

 出口の外はがらんとした通路になっていて、しばらく進むと突き当たりに扉がある。それを開けて中に入ったら、背後の扉は自動的にロックされてしまった!

 これはつまり、どうやら、先に進むしかないということだ・・・。

 

 

 

外壁に出て冷凍保存室へ --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点14/18 運点12/12 装甲点11/14

 

 自分は今、大きな部屋にいる。背後にはロックされて引き返せなくなった扉。

 床の構造はやや特殊で、縦半分で分割され一方はプールで占められている。もう半分は普通の床だ。その突き当たりに部屋から出る扉がある。

 プールに近づき観察してみると、激しい水流が壁の下から吹き出し、反対側の壁の下に吸い込まれていた。波立つ水面を通して、そこに奇妙な金属類があるのが見える。レール、機械、固定具など・・・水中に潜って調べてみるか・・・

 いや、この激しい水流で、かつ重たい装甲宇宙服を着込んでいることを考えると、溺死する危険がある。よしんば何か発見したとしても、引き上げられるとは思えない。ここはリスク回避だ。

 自分はこのプールを無視し、先の扉を開けることにした。その扉を抜けると・・・

 

 ゴオオっ!

 

 うわあっ!空気が抜けていくすさまじい流れ。あわてて扉を閉め、ヘルメットの気密仕様にして、酸素ボンベのスイッチを入れる。

 扉を抜けた先は、広大な宇宙が待ち構えていた。つまりここは<ヴァンダーベッケン>の外壁に飛び出した、区画と区画をつなぐ外付けで宙釣りの橋の上なのだ。自分は再び、この巨大宇宙船の外に出たわけだ。

 巨象にたかる蚤のように、無重力の中ふわふわと、この頼りなげな橋を渡っていく。厄介なのは、遠心力による自己重力を形成するため<ヴァンダーベッケン>は相当な速度で自転しており、自分はその動きに喰らいつくのが必死だということだ・・・

 

 もし橋の誘導レールから手を離したら、虚空に弾き飛ばされて絶対に助からない。

 

 慎重に、慎重に・・・

 誘導レールをしっかりと握り、自分は橋を移動して新しい区画に向かう。

 やがて橋は二股に分かれていた。左右どちらとも、<ヴァンダーベッケン>の外壁に沿って果てしなく続いていくようだ。この危険はいったいどこまで続くのだろう?右か?左か?

 

ジェニー「ご主人様、右ですよ、右!」

ハヤト「根拠は?」

ジェニー「地球語で、Right(右)はRight(正しい)なんでしょう?エヘヘ」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

 

 まあ確かに、背後で騒いでいるアンドロイドの駄洒落くらいしか根拠は思い浮かばない。自分は右方向への進路をとった。

 しかし、外壁に沿った船外通路の橋は何キロも続く。誘導レールを握りしめている手がいいかげん強張ってきたとき、大きなアルミニウムの立方体にたどり着いた。この立方体もまた<ヴァンダーベッケン>の外壁に外付けされている。

 近寄ってみると家ほどの大きさで側面にハッチがあった。そこには保安用電子キーを差し込む穴がある。自分はそのハッチを開けて、立方体の中を調査してみることにした。

 

 プシュー・・・

 気密ハッチを二度ほど抜けて入った先は、マイナス50℃の環境で固定され、静寂で霜が降りた部屋だ。この立方体は、厳重に絶縁された冷凍保存室だったのだ!

 中には蜂の卵のように、約100個の冷凍カプセルが並んでいる。しかし現在稼動している--つまり、中に誰か入っている--のは、そのうち2個のみ。

 No.48カプセルとNo.64カプセル。

 まずは一番目のNo.48カプセルの冬眠者から蘇生させてみよう・・・カチ、カチ・・・決められた手順に従い、覚醒を開始させる。やがて数分後、カプセルの中で動き出す音が聞こえ始め、突然蓋が開き、蜘蛛のような巨大な怪物が現れた!

 こいつは頭部がやや大きく、腹部は逆に小さいが、それでも外見上は蜘蛛以外に間違いようがない。

 では、やってやるか!彼我の距離が接近していて銃は使えないから、自分はセラミックナイフを握り攻撃の態勢をとろうと・・・

 

 

 

タルン・ドッペルゲンガーの悪寒 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点14/18 運点12/12 装甲点11/14

 

 自分はNo.48カプセルから飛び出した巨大蜘蛛から身を守るべく、セラミックナイフを構えた!

 だがここで・・・戦闘ポジションをとる動作が止まった。士官学校で学習した「異星人種別ⅡBの授業を思い出したからだ。

 ちょっと待て、頭部が大きくて体長約2mの蜘蛛?ひょっとしてこいつは???

 幸いこの科目の成績はA+だったから、すぐに思い出すことができる。

 

異星人「さ、さむい、さむい・・・」

ハヤト「あなたはタイ人ですね?」

異星人「いかにも!」

ハヤト「地球連邦軍中央情報局のハヤト・サワムラ准尉です」(と、タイ語で自己紹介)

 

 次にすることは、両手を振り回し、目をぐるぐる回すことだ。これは惑星タイに居住する蜘蛛型異星人への友好的な儀礼ゼスチャーなのだ。彼は「なかなか上手いじゃないか」と、快くそれを受け入れた。

 これで会話の糸口はつかめたが、残念ながらタイ人の彼--実は香料を専門に研究する科学博士だ--は、役に立つ情報は知らなかった。話題はおおむね惑星タイの昆虫や木々のことばかりだ。サイラスに拉致されて協力を拒否したため、ここに強制冷凍睡眠をさせられていたらしい。

 彼は救ってくれたことを感謝して、自分に小さな香料袋をくれる。これは惑星タイで広く普及している“対軟体動物処方第4号”というスパイスだ。しかし激しい辛味を好むタイ人の嗜好は理解しがたいし、おそらく自分が摂取するととんでもないことになりそうだったから、これを固辞することにした。

 

 カサカサカサと、タイ人の科学博士が冷凍保存室から脱出するのを見送ってから、自分はもう一つのNo.64カプセルを開ける。

 こちらはさっきのNo.48カプセルより、わずかに代謝率が高かった。さっきと同じように覚醒手順にとりかかり、冷凍カプセルが勢いよく開くと、中から出てきたのは人間の男だ。解凍直後なのでまだボーっとしている様子だ。そして彼の顔は・・・<ヴァンダーベッケン>に潜入する前のブリーフィングで穴が開くほど見た顔だ・・・。

 すなわち、サイラス教授!!

 予想外の遭遇に驚愕しつつ、自分は即座に熱線銃を構えて「フリーズ!両手を挙げろ!!」と、サイラスを脅す。するとサイラスは驚いてから、ちょっとムッとした顔で、押し黙った。自分はさらに尋問を続けた。

 

ハヤト「地球連邦軍の者だ、あなたを拘束します」

男「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

ハヤト「地球語が聞こえないのか?無駄な抵抗をするな!」

男「グ・・・ガ・・・っ!!」

ジェニー「注意!彼は地球人ではありません!」

ハヤト「なにいっ?」

 

 サイラスはいきなりゴム人形のようにシュルシュルと身体の形を変える。外皮に体毛が生え、獣のような牙が生えた顔になり、背中に羽が生える!

 つまり彼はサイラスじゃなかったのだ。

 擬態を解いた本当の姿、それは恐るべきコウモリのような怪物だった。こいつはタルン・ドッペルゲンガーという変身生物だ!!

 牙から涎を垂らし自分にのしかかって襲い掛かるタルン・ドッペルゲンガー。不意を突かれた自分はセラミックナイフで応戦せざるを得ない。

 

【タルン・ドッペルゲンガー 技術点8 体力点6】 (格闘戦)

1R (タルン・D/15)(ハヤト/20) タルン・D/体力点-2

2R (タルン・D/19)(ハヤト/17) ハヤト/体力点-2

3R (タルン・D/15)(ハヤト/16) タルン・D/体力点-2

4R (タルン・D/17)(ハヤト/18) タルン・D/体力点-2 ←Kill!!

 

 擬態生物タルン・ドッペルゲンガーは喉笛を切り裂かれて死んだ。しかしその死に際に、最後の力を振り絞り・・・シュルシュル・・・この自分、ハヤト・サワムラの姿に形を変えただと?しかも装甲宇宙服の色や形まで正確に擬態している。触るとただの柔らかい筋肉なので、何とも変な感触だ・・・

 この格闘戦で自分もダメージを負ってしまった。ここで活性剤1つ服用し、体力点を5点回復することにしよう。これで活性剤は残り3つだ。背中越しに心配してくれるジェニー。

 

ジェニー「大丈夫ですかぁ?」

ハヤト「ああ、しかしなぜサイラス教授の姿を?」

ジェニー「過酷な自然環境であるタルン星に生息するこの生物は、生態系の最大強者に擬態する習性を持っているそうです」

ハヤト「なるほど、つまり<ヴァンダーベッケン>の中では、サイラス教授が最大強者であるため、今まで彼の姿をとっていたわけだ」

 

 そして今、戦闘で打ち負かされたハヤト・サワムラに擬態対象を変えた。つまり、自分を最大強者だと認識したのだ。

 生命機能を停止したタルン・ドッペルゲンガー。

 その、うつろな目をした自分そっくりの表情を見て、思わず背筋に寒気が走る。まるで任務に失敗した自分の行く末、死に様を暗示しているようだ。

 ふざけるな、薄気味悪い怪物め!

 自分はこの屍骸を腹立ち紛れに蹴り飛ばしてから、冷凍保存室を出ることにする。

 

 ここの出口は入ってきたハッチだけだ。そこに帰って船外の橋を何kmも後戻りして、先ほどの分岐点にたどり着く。そこから今度は左の道を進むことにした。

 

 

 

常に真ん中を --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点17/18 運点12/12 装甲点11/14

 

 外壁に沿った橋はかなり長い間続いた後、再びT字路に分かれていた。下を見下ろすと、異星の大地が近づいている。どうやらこの惑星で水や食料などの補給をするつもりなのかもしれない。まあ、それはどうでもいいことだ。さて、どちらに行こう?右か、左か?

 

 今回もやっぱり右にしてみようか。

 右の橋を数km進むと、やはり小さなアルミニウム立方体につながっていた。さっきの冷凍保存室と同じように側面の扉があったので、そこから入ってみる。立方体の中は・・・!!

 生物学研究室と、陳列室になっていた。

 壁いっぱいの棚には、サイラスがこれまでに行ったおぞましい生体実験の名残が飾られている。天井まで届く何列ものビンに、内臓や手足が収められているのだ(もちろんその身体器官は、地球人のものばかりではない)。思わずぐっと胃がせり上がり、吐き気を覚える。

 しかも、部屋中央の寝台の上では、手術ロボットに取り囲まれてぐったりとした男が横たわっていた。彼はアフリカーンス系の地球人で筋骨たくましい男だが、どうやら麻酔をかけられているらしく全然抵抗していない。

 手術ロボットは正確な動作で、彼の腕を・・・付け替えるつもりだ・・・何に?

 タコのような触手に!!!

 (1)男のそばに行くか

 (2)おぞましい場面を避けて外へ出るか

 

 もちろん(1)だろう。これ以上、サイラスの悪行を見過ごすわけにはいかない。自分は今まさにメスを入れようとしていた手術ロボットに音も立てず近づき、ドゴン!小型電撃銃で電源装置を破壊する。ウィィィィィン・・・停止するロボット。

 忌まわしい移植手術は中止されたのだ。右腕だけ。

 左腕は残念ながら処置済みだった。ああ、もう少し早くこの部屋に潜入できていたら!

 麻酔がかかって茫洋としながらも、かろうじて意識のある手術台の男は、かすんだ目で自分を見上げる。そしてひび割れた唇で、絞り出すような声を上げた。

 

男「あ・・・あ・・・あんたは誰だ?」

ハヤト「地球連邦軍のハヤト・サワムラ准尉。任務目的はサイラスの身柄拘束だ」

 

 自分の名を聞いて、男はヴォーっと、弱々しく驚きの叫びを上げた。目に涙がうっすらと浮かんでいる。

 

ハヤト「大丈夫か?今、束縛を解く・・・」

男「いや、いい。解放されたとしても、この腕だ」

ハヤト「悲観するな!地球に戻れば治療を受ければいい。さあ、ベルトを切断するぞ!」

 

 がちゃ。彼の拘束を外す。

 だが、男の呼吸はかすれて蚊の鳴くような音になっている。命の炎が尽きそうだ。「拒絶反応で壊疽が致命的に進行しています。どう見たってこの移植手術は失敗ですぅ」自分と視覚リンクしているジェニーが、背中から申し訳なさそうな声で教えてくれる。

 男は触手で自分の顔をなでようとするが、上手くいかないようだ。

 

男「それよりも、聞け。私のパートナーから伝言を預かっている」

ハヤト「何だって?」

男「私は民間のバウンティ・ハンター組織に所属していた。君と同じように、サイラスを暗殺する目的で忍び込んだのだ。だが、こうして捕虜となり、こんな目に遭うこととなった・・・」

 

 自分の視界がぐるぐると回っているような感覚を覚える。

 

ハヤト「まさか、あなたのパートナーは・・・」

「ベルカ・ロバヤニ。君に関わりの深い人物だ。彼女から君の自慢話を聞かされたよ。まるで自分の子供のように話すんだ、ベルカは」(少し微笑む)

ハヤト「ベルカさんは、どこに!」

男「いや、君は知らない方がいい・・・」

 

 そう言いつつも、男の視線は、壁に陳列された一つの身体標本に・・・

 ああ・・・そんな・・・まさか・・・!

 絶対に許さないぞ、サイラスっっ!!!

 

男「ベルカは、次にサイラスを倒しに来る者に、この言葉を必ず伝えろと・・・」

ハヤト「いや、しゃべらなくていい、安静にしていろ!」

 

 だがもう、どんなことをしても、彼は助からないだろう。壁に誇らしげに飾られている、ベルカさんの変わり果てた姿と同じく・・・

 もはや完全に目の周りに死相が浮き出た男は、耳を貸せ、と言うしぐさをする。そして、最後の力を振り絞って、パートナーであったベルカさんの遺した最後のメッセージを伝えるのだった。

 

「真ん中を、常に、真ん中を行くんだ」

 

 コク、コクとうなずく。彼は、自分が聞き届けたことを理解したら満足げにうなずき、やがてひっそりと・・・呼吸を・・・停止した。

 

ハヤト「・・・!・・・!・・・!」(無言でドン、ドン、と拳を床に打ちつける)

ジェニー「あのう、お気持ちはわかりますが・・・」

ハヤト「ああ、わかっている。だけどちょっと待ってくれ・・・」

 

 気持ちが乱れては任務を遂行できなくなる。機械のように冷静であれ!自分は呼吸を丹田に集中させて気持ちを落ち着ける。

 ここの出口は入ってきたハッチ1つだけだ。このおぞましいアルミニウムの立方体を出て、元の外壁通路に戻ろう。そこから出るとき、最後にもう一度だけ、振り返った。

 

 さよなら、ベルカさん・・・

 

 

 

間抜けな警備兵の詰所を突破 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点17/18 運点12/12 装甲点11/14

 

 ベルカさんの復讐の気持ちを引きずりつつ、自分は外壁通路の橋を戻る。T字路を通り過ぎ、今度は左側の通路へ。橋はわずかにカーブした後、巨大な灰色の壁に入り込んでいた。どうやらここで外壁に沿って伸びる船外のルートは途切れて、再び<ヴァンダーベッケン>内部に進入するようだ。

 

 気密ハッチを通り抜け、突き当りの扉を開ける。すると警備詰所とおぼしきところに出た。詰めているのは半球形のヘルメットを被った警備兵2名。プロテクトスーツ、ブーツ、ホルスター、どれも黒一色の装備を着用している。2人は大きなコンソール(制御台)の前に座り、10台の警備用モニターで<ヴァンダーベッケン>内に異常がないか監視する係だ。

 当然自分のここまでの行動も逐一モニタリングされている・・・と思ったら、そのモニターに映し出されていたのは、イプシロン・インディ星系から実況中継されているファングボール(無重力下のフットボールのようなもの)だった。彼らの怠慢に助けられたわけだ!

 サボタージュを邪魔された警備兵たちは自分の侵入に驚くと、ぱっと立ち上がり、身構える(表紙のイラスト参照)。

 

警備兵「誰だ、貴様?」

ハヤト「地獄の使いだ、迎えに来たぜ」

 

 間抜けな兵隊に戦場を生き抜く資格はない。自分は口元を歪めてそう言い放つと、歯で手榴弾のピンを引き抜き、コロンと放り投げる!

 しかし警備兵たちは持ち前の臆病さでコンソールの陰にすばやく隠れた。そのため、手榴弾の1d6ダメージを-1しなければならない。

 

【警備兵1 技術点6 体力点4】 (銃撃戦)

【警備兵2 技術点6 体力点4】 (銃撃戦)

 

※手榴弾 1個使用

 警備兵1/体力点-0

 警備兵2/体力点-1

 

 思ったより手榴弾の効果は無かった。かっこつけたセリフを吐いたりしたのが失敗だった!

 

1R ハヤト銃撃、熱線銃(7)命中 警備兵2/体力点-6 ←Kill!!

   警備兵1銃撃、熱線銃(2)命中 ハヤト装甲チェック(成功)/装甲点-1

2R ハヤト銃撃、熱線銃(6)命中 警備兵2/体力点-5 ←Kill!!

 

 だが、続く熱線銃のライフル射撃は、訓練どおりに落ち着いて行動。装甲点に被弾したものの、警備兵たちを最短時間で射殺する。横たわる2人の戦闘犠牲者の顔面に、自分は情け容赦なくとどめの電撃拳銃をぶち当て、確実に始末した。

 しかし彼らはやっつけたが、コンソールでは赤いランプが瞬いている。誰かが、あるいは何かが、異常に気がついたのかもしれない。急いだ方がいい!

 

 ここには入ってきた他に2つのドアがあった。1つは保安扉、そしてもう一つはスライド式の単純な扉だ。

 大きな保安扉はこの部屋からの出口として、スライドドアの方はこの部屋に付属した、武器庫か何かかもしれない・・・装備の補給目的でスライドドアの方を開けると、そこはコーヒーとサンドイッチがこしらえてあるキッチンだった。

 軽食を摂りながらスポーツ観戦か。は、はは・・・。

 自分はニヤニヤ笑う。撃ち殺したあの馬鹿者どもは、ここまで呑気だったわけだ。とりあえず人間らしい食い物を食べたかったので、サンドイッチをパクつき、コーヒーを流し込む。思わぬ栄養補給と心の余裕を楽しみ体力点+5だ。さあ心機一転、保安扉から先の区画に進もう!

 

 出口の向こうは通路になり、その先は広々とした円形の部屋だった。

 その床はほとんどが水で覆われており、プールのようだ。水は深く、水面には波ひとつない。水で覆われていないのは、部屋の周りをぐるりと取り巻く通路と、水面の中央を横切る手すりのない細い橋だけだ。どちらでも向こうの出口に通じているのが見えるのだが・・・どっちのルートをとるべきだろうか、中央の橋か、周りの通路か?

 真ん中の細い橋には手すりも無く、なにやらリスクの高い香りがする。だとすれば・・・ 

 自分は壁に沿って、注意深く熱線銃ライフルをプールに向け、じりじりと周りの通路を進む。だがこのとき、ハッと気がついた。

 ベルカさんは、なんと言ってたっけ? 

 

 だが次の瞬間、彼女の「常に真ん中を行け」という最期の忠告に従わなかった自分は、高い代償を支払わされる羽目になる。プールの水面がさざなみ立ち・・・

 人間ともタコともつかないような、緑色の触手ミュータント2体が襲い掛かってくる!

 奴らの触手はくるくると自分の身体を捕まえ、自分の身体は巻き上げられた。背骨に軋みが走る・・・ぎりぎりと締め上げられ・・・くっ、手・・・榴・・・弾を!

 

 BAHOOOOOM!!

 

 ここで1d6を振り、出目は奇数。その結果は・・・

 渾身の力で取り出した最後の手榴弾は、水中に落下して爆発。天井まで届く巨大な水柱を噴き上げた。おそるべき振動とともに、ミュータントに通常の効果通り1d6ずつのダメージを与えた。1体目は体力点-12体目には体力点-6で、2匹目は身体が四散して爆発!!

 

ジェニー「残り1体、まだ生きています。触手が来まーっす!!」

ハヤト「こちらでも認識している、さえずるな!」

 

 身体の自由を取り戻した自分は、セラミックナイフを抜き、残ったミュータントに応戦する!

 

【ミュータント1 技術点8 体力点7】 (格闘戦)

1R (ミュータント1/12)(ハヤト/19) ミュータント1/体力点-2

2R (ミュータント1/14)(ハヤト/20) ミュータント1/体力点-2

3R (ミュータント1/16)(ハヤト/20) ミュータント1/体力点-2

4R (ミュータント1/12)(ハヤト/22) ミュータント1/体力点-2 ←Kill!!

 

 思いもかけない広域殺傷兵器に怯んだ敵は、士気が阻喪して及び腰になっていた。そうなればもはや脅威はない。ただの軟体動物だ。残った1体もセラミックナイフで手際よく切り刻んで、格闘戦はあっという間に終わった。

 奴らの死体はプールにぷかぷか浮いている。安全を確認できた自分はため息をついた。ふう、ベルカさんの忠告を忘れたため、余計な危険に遭ってしまった。

 しかも手持ちの手榴弾は使い切ってしまった。後は射撃だけで障害物を排除していかねばなるまい。授業料は思いのほか高かった・・・。

 「常に真ん中を行け」

 この言葉は、これからも忘れないようにしよう。

 

 

 

ザルク人のナゾかけと反物質の球体 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点10/14

 

 出口の向こうには部屋があった。

 今度はどんな遭遇があるんだ?半ばやけくそ気味に侵入すると・・・

 自分の目の前に現れたのは、にゅっと突き出た分解砲の砲身だ。いかにも残忍そうな顔をした異星人が、ごてごてと大きな装甲アーマーに身を包み、命中した者を確実に原子の塵に変える大致傷兵器を抱えて待ち構えている。

 

 ・・・ちょっと待て、それはあまりにも想像外だった!

 

 確実に奴は自分を雲散霧消できる位置にいる。引き金を引けば一生の終わりだ。

 たぶん他に正解のルートがあったのだろう。だが今となっては確かめようもない。<ヴァンダーベッケン>における自分の任務は、こんなあっけない形でゲームオーバーとなってしまった。

 

ジェニー「ご、ご主人様」

ハヤト「まあ、な・・・ここまでか・・・」

ジェニー「だめですか?」

ハヤト「だめだろう」

ジェニー「でも・・・」

ハヤト「自分の仕事は、こうなるリスクもある。承知の上だ」

ジェニー「・・・彼は、ザルク人ですよ」

ザルク人「止まれ!ここを通りたいなら、俺の出す問題に答えろ。それを解けるだけの頭が、お前にあるつもりならな!」

ハヤト「・・・ええっ!?」(驚愕)

 

 圧倒的に自分が優位な立場にありながら、何を言い出すんだコイツ???

 後で知ったのだが、この異星人はザルク人という高知能種族だ。そしてザルク人は、自らの知能の高さをひけらかすことを無常の楽しみとしている。その感情は自分の立場に課せられた任務よりも優先する!

 そして今、自分の話相手がのこのこやってきたので、興奮してなぞなぞ勝負を挑んできたというわけだ。いやあ、それはもう、願ったりかなったりで、自分に生きるチャンスが一片でもあるなら、それにすがるしかない。あえて平静さを装い、自分は返事する。

 

ハヤト「問題とは、どんなやつだ?」

ザルク人(得意げに)「こうさ。OTTFFSSEという文字列の、次に来るアルファベットはなんだ?」

ハヤト「え?」

ザルク人「どうした、聞こえなかったのか!?」

ハヤト「それが君の問題?」

ザルク人「その通りだ。どうだ難しいだろう。降参するか?」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

ジェニー「私の電子頭脳では0.01秒で解に到達しました♪」

ハヤト「ああ、自分もそうなんだが・・・」

 

 One-Two-Three-Four-Five-Six-Seven-Eight ときて、次の数字の頭文字だろ。簡単すぎてワナなんじゃないか?そんな疑いが消えないのだが。でも、それ以外にどれだけ考えても、他の答えの可能性は見つからなかった。・・・答えてみよう。

 

ハヤトN

ザルク人「正解だ!通っていいぞ!!」

 

 ナゾナゾ勝負に負けたザルク人は、晴れやかな表情で自分に握手を求めてくる。よくぞあっぱれ我に勝った、といった風情だ。どうやら彼らの星では、この知恵勝負は騎士の馬上試合に匹敵するほど高潔な精神で行われるらしいのだ。自分は口元を引きつらせた笑みで握手に応じる。わかったよ、君の尊敬の念はわかったから、その分解砲の砲口を下に向けろ!

 まあとにかく。

 彼の背後には3つの扉がある。右と、真ん中と、左だ。

 「常に真ん中を行け」

 ベルカさんの遺したメッセージに従い、自分は真ん中の扉を抜ける。

 

 扉の先の通路を進むと部屋があり、そこに入るといきなり、宙を漂う7080個の黒い球体が目に入った。

 それらはどれも真っ黒で、まるで宙に穴が開いているようにも見える。物憂げに円軌道を描きながら室内を浮遊しており、壁や床のどこにも(球体同士にも)触れ合おうとしない。

 部屋の突き当りには、漂う球体群の向こうにが見える。

 ポイントはこの部屋をどう突っ切って行くかだ。

 球体を無視してまっすぐ歩くか、それとも球体をよけながら歩くか。

 もちろん引き返してさっきのところに戻り、別の扉に向かうこともできるが、あの凶悪な分解砲を持ったザルク人と再びナゾかけ対決をするのは避けたい(さっきは運が良かったものの、今度のナゾナゾは地球人の思考の範疇を超えている可能性もある!)。

 自分は、しばしこの球体を観察することにした。

 

 ・・・

    ・・・

       ・・・そして顔面蒼白になった。

 

 あまりにも小型だが間違いない。あの黒い球体は・・・どう見ても反物質だ。それが70数個も!ひとたび何かが触れたら対消滅を生じて惑星規模の大破壊が起きる!!ちょっと待て、何でこんな危険なエネルギーが無造作に置かれている?というか、なぜ今まで<ヴァンダーベッケン>は無事でいる???

 脂汗を額に感じつつ、ここで仮定を立ててみる。

 おそらく優れた科学力を持つサイラスは、反物質の生成と制御に成功したのだろう。そして対消滅を避けるよう、彼によって作り出された反物質は意図的に「正」の物質と触れ合わないよう、ネリゲーション法則を内包しつつここに存在している(反物質が存在、というのもあり得ない表現ではあるが)。と、すれば・・・。

 

 唾を飲み込み、一歩、踏み出す。よけない。堂々と。歩くんだ。

 バーラム仮説によれば、黒い球体は自発的に物質とのインパクトを避けるはずだ。

 そう信じて・・・。

 

 

 

偽名のセンスが未熟で死にかける --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点18/18 運点12/12 装甲点10/14

 

 賭けに勝った。

 自分が堂々と進んでいくと、反物質の黒い球体は道を開けてくれる。だけど焦って急な動きをしてはならない!ゆっくりと漂う球体の速度と近似値をとらなければ、リコツェイクの数式が完成しないのだ。ダッシュしたい気持ちを懸命に抑え、一歩、二歩と、向こう側にある扉に近づく。もう少し、もう少し・・・たどり着いた!!

 扉を開け、この恐るべき破壊エネルギーに満ち満ちた部屋を脱出する。ふうー!自分とジェニーは同時に安堵のため息をついた。

 だが、次のセクションはいったいどういうところなのだろうか?

 

 ここは天井の高いホールだ。ホールの両端には一列ずつ低い台座があり、その上に小さくて奇怪な怪物像が並んでいる。アルミニウムの鳥、タングステン鋼の亀、その他、見たこともない生物をかたどった像・・・全部で8体、4ある。

 ワナに備えて熱線ライフルを構えつつそろそろとホールを進んでいくと「ビー!」と警告のブザーが鳴った。そして最初の一対がピクリと動き、自分の方に顔を向ける。

 

怪物像1「月は赤く、空はピンク色」

怪物像2「光と時間と、どっちが速い?」

 

 ここでもナゾかけ、か・・・。しかも、さっきのザルク人のよりも、はるかに難しい。「光」と「時間」、どっちが速いと答えるべきだろうか?

 多少時間をかけたが、しかし自分は、じきに解へ到達した。ゆっくりと・・・答える・・・。

 

ハヤト「・・・時間」

 

 光はlight5文字、時間はtime4文字、言い終わるのが速いのは、時間だ。

 怪物像は「合格」「右に同じ」とそれぞれが言うと、台座上でくるりと背を向いた。

 だがこれで合格ではないらしい。またちょっと歩くと、次の二対目はこんな質問をしてきた。

 

怪物像3「上は上、下は下」

怪物像4「だが、それらは実在か、それとも幻か?」

 

 むむ!これは難解だ。ゆっくり考えるものの答えは出てこない。実在か?幻か?むなしく時間が過ぎていく・・・。ところがここで助け舟を出したのは背中に下げたアンドロイドの(の首だけの)ジェニーだ。「あのう、ここは宇宙船内ですんでぇ・・・」そうか、宇宙空間では上下など作られたものに過ぎない。

 

ハヤト「・・・幻だ」

怪物像3「あたり!」

怪物像4「まさしく!」

 

 二対目も自分の顔から目を逸らし、天井を見つめる。さて、次の三対目の質問は・・・

 

怪物像5「ヘイ!そこのヘルメット頭!!」

怪物像6「いったいどこへ行く?」

 

 おっと、今度は謎かけではないのか。さて、なんと答えよう???

 

 (1)サイラスを探している、と答える。

 (2)作り話をすることにして、保安チェックのために船内を調べている、と答える。

 

 どう見てもこの怪物像たちは侵入者排除用の保安システムだ。狂える科学者のサイラスによって作られたので、一癖も二癖もある構造ではあるが。なので素性をばらすこともあるまい。自分は冷静に虚偽情報を彼らに告げる。

 

ハヤト「私はセキュリティ・チェッカーだ。名前はホアン・シーラ・ベル。このセクションの侵入者排除プログラムが正常に作動するか調査を・・・」

怪物像5「愚か者め!!!」

怪物像6「我々に嘘をつくな!!!」

 

 なぜバレたのか?自分の発音は完璧だったはずなのに!

 (ここで「発音は最高でもセンスは最低ですから」と、ジェニーがぼそっとつぶやく)

 まずいことに、怪物像のうち最後の2体を除いた6体が、胸や足、翼の下など、それぞれ熱線銃の銃身を突き出した。標的は・・・もちろん自分だ。

 完全に取り囲まれている上に、手榴弾は使い切っている。そんな絶望的な状況の中で、情け容赦なく6本の光線がバリバリバリ!と自分を襲う!これはまずいぞ、非常にまずい!!!

 

【怪物像1 技術点8 体力点3】 (銃撃戦)

【怪物像2 技術点8 体力点3】 (銃撃戦)

【怪物像3 技術点7 体力点3】 (銃撃戦)

【怪物像4 技術点6 体力点2】 (銃撃戦)

【怪物像5 技術点6 体力点2】 (銃撃戦)

【怪物像6 技術点5 体力点2】 (銃撃戦)

 

※手榴弾 指示なしで使用不可

 

1R ハヤト銃撃、熱線銃(10)命中 怪物像1/体力点-4 ←Destroy!!

   怪物像2銃撃、熱線銃(9)外れ

   怪物像3銃撃、熱線銃(11)外れ

   怪物像4銃撃、熱線銃(5)命中 ハヤト装甲チェック(成功)/装甲点-1

   怪物像5銃撃、熱線銃(2)命中 ハヤト装甲チェック(失敗)/装甲点-1、体力点-5

   怪物像6銃撃、熱線銃(6)外れ

 

 ガツーン!どてっぱらに衝撃を受け、視界が真っ赤になる。したたかなダメージを被った!

 

2R ハヤト銃撃、熱線銃(10)命中 怪物像2/体力点-4 ←Destroy!!

   怪物像3銃撃、熱線銃(9)外れ

   怪物像4銃撃、熱線銃(8)外れ

   怪物像5銃撃、熱線銃(6)命中 ハヤト装甲チェック(成功)/装甲点-1

   怪物像6銃撃、熱線銃(10)外れ

 

 痛みをこらえつつ床を転がり、ライフルで怪物像の頭を撃ち抜く!

 

3R ハヤト銃撃、熱線銃(9)命中 怪物像3/体力点-2

   怪物像3銃撃、熱線銃(3)命中 ハヤト装甲チェック(成功)/装甲点-1

   怪物像4銃撃、熱線銃(9)外れ

   怪物像5銃撃、熱線銃(8)外れ

   怪物像6銃撃、熱線銃(5)命中 ハヤト装甲チェック(成功)/装甲点-1

 

 「右下方、射撃来ます、左方ベクトル4°!!」ジェニーの運動指示を受けつつ、自分は絶えず位置を遷移し、相手の光線をひらりひらりとかわし続ける。

 残りの怪物像は全て体力点2点以下なので、ダメージ1d6の熱線銃でなくともよい。よって2点を確実に与える電撃拳銃に持ち換えた。しかしエネルギーパック装弾に手間取り・・・

 

4R ハヤト銃撃、電撃銃(11)外れ

   怪物像3銃撃、熱線銃(4)命中 ハヤト装甲チェック(失敗)/装甲点-1、体力点-1

   怪物像4銃撃、熱線銃(6)命中 ハヤト装甲チェック(失敗)/装甲点-1、体力点-5

   怪物像5銃撃、熱線銃(9)外れ

   怪物像6銃撃、熱線銃(10)外れ

 

 攻撃を外してしまった!

 

5R ハヤト銃撃、電撃銃(8)命中 怪物像3/体力点-2 ←Destroy!!

   怪物像4銃撃、熱線銃(6)命中 ハヤト装甲チェック(失敗)/装甲点-1、体力点-3

   怪物像5銃撃、熱線銃(11)外れ

   怪物像6銃撃、熱線銃(10)外れ

 

 装甲点が低下すると一気に形勢は不利に転がっていく。ここから持ち直せるか???

 

6R ハヤト銃撃、電撃銃(6)命中 怪物像4/体力点-2 ←Destroy!!

   怪物像5銃撃、熱線銃(10)外れ

   怪物像6銃撃、熱線銃(4)命中 ハヤト装甲チェック(失敗)/装甲点-1、体力点-2

 

 果てしない死闘も、ついにクライマックス。残り2体だ。

 自分はここまでで体力点-16。即死まで残り2点。もう装甲点はボロボロなので、命中したら1d6のダメージを受けるしかない。さあ、運命の第7ラウンド!!

 

7R ハヤト銃撃、電撃銃(7)命中 怪物像5/体力点-2 ←Destroy!!

 

 ここで怪物像6が熱線銃を命中させたら、自分は死ぬっ!!

 

   怪物像6銃撃、熱線銃(9)外れ

 

 バリバリバリ!!自分の真上を熱線銃の光線が通り過ぎていく。

 かわした!かわした!最後の・・・止めだ!!

 

8R ハヤト銃撃、電撃銃(10)命中 怪物像6/体力点-2 ←Destroy!!

 

 BOM!!態勢が崩れながらの自分の一撃は、かろうじて怪物像6の頭部に当たり、奴の作動は停止する。ホールに静寂が戻った・・・。

 

 

 

最後まで役に立ってもらおう --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点2/18 運点12/12 装甲点1/14

 

ハヤト「・・・ジェニー、作動してる?」

ジェニー「はぁい。オール・グリーンみたいですぅ・・・」

 

 自分はなんとか警備システムを構成していた怪物像6体を破壊することができた。だがその代償は高くつき、体力点は残り2点、装甲点は残り1点。身体の筋肉はボロボロで宇宙服のあちこちから火花がショートしている。とりあえずは体力点回復の活性剤を・・・いやだめだ、まずはこのホールから出て、安全を確保しないと・・・

 よろよろと自分は向こう側の出口に近づく。だが、そんな自分をあざ笑うように、出口のハッチは左右に一つずつ存在して、その脇に最後の怪物像2体が建っていた。

 

怪物像7「お前の進むべきは、右の扉だ」

怪物像8「そいつの言うことは信用するな。そいつは嘘ばっかりついているんだ」

怪物像7「いつもというわけじゃないさ」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

 

 もし正しい方を選べば出られるのだろうが、そうでなければ、こいつらの熱線銃で焼き殺されるのは正当な結論だ。さあ、右と左、どっちのハッチを選ぶ?

 

 怪物像7は「右」と言っている。

 怪物像8は「怪物像7はうそつき」と言っている。

 怪物像7は「いつも嘘ばかりつかない」と言っている・・・

 

 論理的な条件付けにならないぞ。どうも故障が生じているようだ・・・。それとも疲労の極に達した自分の頭が故障しているのだろうか・・・。

 もう、どうにでもなれ。行き当たりばったりに・・・右だ。右にしよう。ふらふらと自分は右のハッチの前に立つ。すると重さを感知して、しゅん、とハッチが開いた。

 外は安全な通路だった!ふいーっ!!

 ここで改めて腰を下ろし、自分は残っていた活性剤3錠を集中投与した。これで体力点は17点まで回復だ。だが、これでもう体力点を回復できる術はなくなった。あとは消耗していくだけだ・・・。

 なあに。宇宙(そら)の一族のサワムラ家の一員である自分にとって、ちょうどいいハンデさ。行くところまで、行こうじゃないか!

 自分はそう決意すると、再び<ヴァンダーベッケン>内の新たな区画に侵入していく。

 

 次に現れたセクションは細長い部屋だ。

 突き当たりにある出口ハッチの前に、2台の警備ロボットがいる。こいつらは円盤型の重装甲タイプで、床の上30cmほどのところにエア・ラフト式動力で浮かんでいる。そして部屋に足を踏み入れた自分に対し、ZAP!!ZAP!!問答無用でレーザーを発砲してきた!

 慌てて戸口を遮蔽物にして陰に隠れる。こりゃあ相当にしぶとそうな連中だな。対してこっちは、もはや敵の命中はそのままダメージになってしまう。ロボット工学についての知識も自分にはないし、この<ヴァンダーベッケン>内でもそんな情報を入手できる機会はなかった。こりゃあ絶体絶命か?

 

 ・・・いや、待てよ。

 この部屋をちらりと覗き込み、天井を確認した。うん、やっぱりだ!

 やや低い天井はロフトスペースになっており、金属パイプで格子状に構成されている。これならうまくいけば、やってやれないこともない!!

 自分は装甲宇宙服を脱ぎ、インナーのボディスーツだけとなった。どうせもう装甲点1しかないのだ。敵の銃撃を防ぎきれないならば、身の動きの邪魔になるだけだ。

 そして、ジェニーをバッグパックから取り外し、やさしく話しかける。

 

ハヤト「ジェニー、どうやら君の同行もここまでだ」

ジェニー「はい。私、首だけでも自重が相当ありますし、ここから先は荷物になってしまいます」

ハヤト「今まで後方警戒をありがとう。君の尽力に感謝している」

ジェニー「そんなもったいないお言葉・・・って、ご主人様?何で私を片手に持って・・・ぐるぐる回して・・・あーれー!!!」

 

 最後まで役に立ってもらおう!自分はアンドロイド・ジェニーの首を、部屋の向こうに思いっきり放り投げた!!

 ZAP!!ZAP!!ZAP!!ZAP!!ZAP!!ZAP!!

 当然、警備ロボットは彼女に砲火を集中させる。そのすきに自分はすばやく登攀して天井裏にへばりついた。そして格子に隠れながら、向こう側の出口に向かうことにしたのだ。

 ジェニーの悲鳴に紛れて天井裏に響く自分の磁力ブーツの足音。もちろんそれを感知した警備ロボット2体は、囮であったジェニーへの射撃を停止し、今度は天井に向けて発砲してきた。

 ZAP!!ZAP!!ZAP!!・・・BAM!!BAM!!BAM!!

 下からのレーザー射撃が周囲の格子に当たって、激しく火花が散る。だが溶けた金属パイプが折れ曲がっていくのにかまわず、自分は腰をかがめて格子の上を駆け抜けていく。身軽になるため装甲宇宙服は外している。一発くらえば、自分もベルカさんの下におさらばだ!!

 ここで運試しは・・・自動的に吉。

 何とか命中弾をくらわずにすみ、部屋の向こう端までたどり着いた。だが、すぐ真下には警備ロボットが健在で、自分の周りに猛攻を仕掛けている。そして出口は2対の警備ロボットの間に存在している。距離にしてほんの2mだ。

 ならばこの手しかないな。せーのっ!!

 自分は天井から振り子の要領で警備ロボットの間に飛び降りた。まるで父の友人であるグエンおじさんが出演していたアクション映画みたいに!

 ここでもう一度、運試しは吉だ!自分は出口のすぐ上の頑丈そうなパイプに飛びつき、ぶんと身体を振って・・・(がつん!あれ?何か蹴ったぞ?)・・・激しいレーザーの銃撃をかわしつつ、ハッチに身体もろともぶつかって、勢いよく室外に出た。成功だ!

 

 空気が通常なのを確認してから、ヘルメットを外し、額の汗をぬぐう。ふうう、生きている感触がする。自分の足元に、さっきのアクションで蹴り倒してしまった何かがある。

 よく見るとそれは・・・ウェイクマン社製XJ-9型アンドロイドの首だった。要するに・・・ジェニーだ。そりゃあよかった。何よりだ。慌てて自分はジェニーの記憶回路を探り当て、前後3分間の記録を抹消し始める。

 

ハヤト「・・・ジェニー、作動してる?」

ジェニー「はぁい。オール・グリーンみたいですぅ・・・」

 

 記憶回路リセットは・・・よし、できた。ジェニーはこの部屋に入ってから、何をされたか覚えていない。

 

ジェニー「いったい、なにが起こったんですかぁ?」

ハヤト「まあ、たいしたことじゃない。とにかく無事でよかったよ」

 

 さあ、先に進もう!

 

 

 

高知能ロボットは暗殺者の夢を見るか? --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点17/18 運点10/12 装甲点-/-】

 

 出口は細い通路に通じており、しばらく曲がりくねると、扉に突き当たった。

 もう装甲宇宙服を着ていない自分は、ダメージを跳ね返す手段がない。敵が待ち構えていたら厄介なことになるな・・・。そう思いながら、慎重に扉を開ける・・・

 

 最初に目に入ってきたのは、満天の星空だ。

 それが展望ディスプレイの大画面だとわかるまで、しばらく時間がかかる。遠く宇宙を見渡せるディスプレイのみならず、立体作図装置、三次元星図、数々の通信機器が、ずらりと並んでいる。

 ここは<ヴァンダーベッケン>の艦橋(ブリッジ)なのだ!

 そして操縦装置のそばに、へその緒のような動力コードにつながれて、人間型ロボットが立っていた。驚くほど精巧な作りで、全身が強化タングステン鋼できらきらと光っている。

 以前、捕虜の老人や開発技師から情報を集めていたから、自分はすぐに彼の役割がわかった。そう、彼こそがこの巨大宇宙船のパイロットだ。

 金ぴかのロボットは自分の存在を感知すると、こっちに向き直る。なんて滑らかな動きだ!相当に値の張るAIを搭載しているに違いない。

 

ロボット「ああ、やっと来たか。君のような面白い人物が来て、話し相手になってくれるのを、私はとても楽しみにしていたんだよ!」

 

 心なしか微笑むような表情で、こいつは親しげに話しかけてくる。どうしよう、話に付き合うべきだろうか?それとも攻撃してしまうか?

 いや待て、以前遭遇した開発技師は「彼は、自分が存在しているのを、ちゃんと知っているんだ」と言っていた。まだ彼は正常・・・だと信じよう。とすると、攻撃して何がしかの警戒アラートを呼び覚ますと厄介だ。せっかく<ヴァンダーベッケン>の中枢までやっとたどり着いたんだ。ここは慎重に行動しないと。

 おずおずと自分は銃を降ろす。そして彼の話に付き合うことにした。

 「来たまえ、来たまえ!」ロボットはよっぽど孤独だったのだろう、発声すること自体が楽しそうに、自分を手招きして椅子を勧める。それから早口でまくし立て始めた。

 

ロボット「君は生と死、意識と無意識を扱う人間だから、一つ聞きたいのだが--君と私のどちらかが、相手の心の産物に過ぎないという可能性があるだろうか?君が私の夢、あるいは、私が君の夢、ということがありえるだろうか?」

 

 ・・・え、何だって?

 (背後でボン!という音が聞こえた。ジェニーの思考回路は一時的にショートしたようだ)

 ロボットはうずうずして私の答えを待っている。

 とりあえず、情けない微笑とともに、自分は相槌をうった。

 

ハヤト「あー・・・。ありえる、かも、しれないな・・・」

ロボット(ますます興奮して)「それでは!君は明らかに、自分に意識があると思っているわけだ。これを自明の理として受け入れよう。それを踏まえたうえで、たとえ私が創造の産物であっても、君の意識が知らない事柄を、私の意識が経験できると思うかい?私は君の、一種の従自我となりえるだろうか?」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

 

 何だか変なスイッチを押してしまったようだ!

 たぶんこの高思考ロボットは長い間孤独で過ごすうちに、ある程度までの哲学理論を完成させてしまったらしい。そして自分の思考を自分で修正し、突き詰めていくうちに・・・要するに・・・発狂したのだ。

 そうか、以前遭遇した拘禁室の老人は「何があっても“知らない”と言え」と情報提供してくれたなあ、と、今さらながらに思い出す。余計なことを言って刺激しない方がよかったのか。だがここで一方的に議論を打ち切っても、かえって敵意を抱かせてしまうかもしれない・・・。

 こうなれば毒くらわば皿まで!

 自分はこのロボットが吹っかけてきた議論に応戦することにする。

 

ハヤト「うむ、そうだな・・・」

ロボット「 ・・・(わくわくしてハヤトの意見を待っている)・・・ 」

ハヤト「もし世界中が僕の心の作った物なら、自分の心の産物に意識を与えられないはずはなかろう?だが、それで僕は、神ということになってしまう」

ロボット「おお、神!神とは!君の口からアウグストゥス教学を聞けるとは思わなかった!いや失敬失敬、続けて、続けて」

ハヤト(咳払いして)「自分では意識していないにしても、それでもある種の自我が内在包括することによって、その中に意識はあると思う、これは例えばプラトン式イデア論なのだが、つまり・・・」

 

 ・・・ ・・・ ・・・ (小一時間ほど経過)

 

 自分とロボットは正気と狂気の境界線上を喧々諤々と議論し続ける。ここで私に潜入した当初の目的を思い出させてくれたのは、背中に担いでいたジェニーだ。

 

ジェニー「(ひそひそと)もしもーし、ご主人様ーっ!」

ハヤト「あ・・・。大変失礼ながら、これで失礼する。何せ私の自我ときたら、君のそれとちがってE=mc2を正確に守ることが扱いづらく・・・」

ロボット「うむうむ、そうだね、それでいて時間とは有限素数に準ずる存在で・・・」

ジェニー「(ひそひそと)おねがーい、戻ってきてー!!」

 

 こうして(実るものがまったくない)議論は終わった。最後に<ヴァンダーベッケン>の操縦担当である金ぴかロボットは、こう結論付けるのだった。

 

ロボット「すばらしい!それはまったく、私の考えと同じだ!!」

ハヤト「あ、ああ、そうかい・・・」

ロボット「君はなんと素晴らしい頭脳の持ち主なんだ!私たちは最高の友達になれるにちがいない!」

ハヤト「うれしいよ。は、はは・・・」

 

 ロボットは自分の腕をとり、三日月のマークがある扉を指し示した。

 

ロボット「あれが見えるね?あの向こうに、君の求めるものと、君の運命とが待っている。さあ、行きたまえ、我が心の子よ!!」

 

 ブリッジから出るには3つの扉がある。左には星印が、真ん中は三日月が、そして右には「コンピュータ」という文字が刻まれた扉だ。

 そう、ここでも「常に真ん中を行け」だ。

 自分は金ぴかロボットが勧めたとおり、三日月の扉を開ける・・・

 

 

 

追い詰めたぞサイラス! --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点17/18 運点10/12 装甲点-/-】

 

 三日月の扉が開く。

 すると広々とした部屋に出た。ゆったりとした椅子、絵画、異世界のじゅうたん、革装の本がずらりと並んだ棚。まるでアンティークな城の居室といった感じだ。

 そして、椅子に座っていたのは・・・目を丸くして自分を見返している中年の男。彼は慌てた様子で読んでいた本をぱっと置くと、腰を浮かした。まさかここまで侵入を許すとは思っていなかったようだ。

 

 サイラス!!!!!

 

 手配写真を何度も見た自分には見間違うべくもない。いささか孤独に疲れ果てたのか、やつれて神経質そうなやせ男。しかしその正体は、巨大宇宙船<ヴァンダーベッケン>を操り、オド星域を恐怖のどん底に陥らせた悪の科学者。彼だ。間違いない!

 「ああ・・・ようこそ、ここへ」彼は卑屈な表情で薄笑いを浮かべるのが精一杯だ。軍事訓練で鍛えられた戦士の肉体を持つ自分に対し、頭だけが取り得の科学者サイラスはいかにも不利。彼はこの窮地から何とか突破口を探そうと、目をきょろきょろと動かす。

 そんなサイラスに油断せず、自分は熱線銃を彼に向けながら、じりじりと近寄っていく。

 

ハヤト「地球連邦軍のハヤト・パウロ・サワムラ准尉だ。ドクター・サイラス、貴方を拘束する」

サイラス「まあまあ。落ち着いて・・・。まずは飲み物でも、どうかね?」

ハヤト「断る!」

 

 父と母のかけがえない友であり、自分が憧れていたバウンティハンターのベルカさん。彼女の変わり果てた亡骸が胸をよぎる。こんな奴と杯を交わす必要はない!

 自分はゆっくりと接近を続ける。セラミックナイフを抜き出し、いつでも彼の喉元に突きつけられる態勢もとった。

 

ハヤト「無駄な抵抗をするな。私は貴方を殺す権利も与えられている」

サイラス「待て、待ってくれ!自由を失う人間の、最後の望みを叶えてやってくれ!いま少しの猶予を!」

ハヤト「星間刑務所でいくらでも時間はあるさ」

 (BAZ!!足元に威嚇射撃!)

サイラス「ひっ!!」

ハヤト「おそらく貴方の罪状なら懲役999年は固い」

サイラス「わわわ、わ、私はギャンブルが好きなんだ。ひと勝負でいい、私とカードをしてくれないか?」

ハヤト「・・・なにぃ?」

 

 (1)カードをする

 (2)問答無用で彼を捕まえ、今すぐけりをつける

 

 バカめ。誰がどう見ても(2)だろう。戯言に付き合っている暇はない。自分はセラミックナイフを構え、彼に飛びかかっていく!

 ところがサイラスはさっと脇に飛びのき、テーブルから何かの機械をひっつかんで、怒鳴った。

 

サイラス「止まれ、動くな!この機械は、最近、私が開発した、非常に複雑な装置だ。こいつは強烈な装甲貫徹力を誇る誘導ミサイルを発射する!!」

ハヤト「 ・・・ ・・・ ・・・ 」

サイラス「絶対に外れることはない、さあ、道を開けろ!」

 

 どう見てもぜんまい仕掛けのアンティーク時計にしか見えないが・・・

 しかし、相手は天才科学者のサイラス教授だ。その彼をチェックメイトまで追い詰めている。ここまできて油断してはいけないぞ・・・自分は身動きを止め、ひとまず彼を凝視する。そして視覚リンクしているジェニーにひそひそとささやいた。

 

ハヤト「ジェニー、見えるかい?」

ジェニー「今・・・分析してます・・・。もう少し待ってくださぁい」

 

 機械を抱えてじわじわと壁際に寄っていくサイラス。だけど自分は熱線銃を構え、それを睨み続けるしかない。撃ってみろ、撃ち返してやるぞ。自分の射撃術なら、この距離で外しはしない!

 お互いに対峙したまま、ゆっくりと時間が経過していく・・・永遠とも思えるような・・・

 

ジェニー「危険性0.00!ただのガラクタです!!」

ハヤト「よしっ!」

 

 ジェニーからGOサインが出た!

 自分は再び攻撃行動を開始する。

 しかしその瞬間、サイラスは背後に存在していた壁の照明スイッチを切った。

 

 カチ!・・・ブゥゥゥゥゥン・・・

 

 モーター音の停止とともに部屋が暗転する。この隙に逃亡するつもりだな。だけどそうなることは考えていたさ!自分は慌てずに<ヴァンダーベッケン>内で手に入れていた赤外線ゴーグルを作動させる。

 部屋の中に浮かび上がるサイラス教授の身体の熱。見えるぞ、はっきり見える!

 彼は壁掛けの絵画の一つに歩み寄ると、それをぐいっと捻る。すると壁に小さな秘密のパネルが開くではないか。そしてサイラスはその中に・・・飛び込んだ!

 

 もはやこの部屋にとどまる理由はまったくない。

 もちろん自分も彼の後を追い、秘密の脱出経路の中に飛び込む。

 絶対に逃しはしない!!

 

 

 

最後の決闘 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点17/18 運点10/12 装甲点-/-】

 

 エスケープ・シュートを抜けると、そこは小型宇宙艇が1隻存在している格納庫だった。どうやら逃亡を企てるつもりだったんだな。自分は熱線銃を油断なく構えながら、ゆっくりと格納庫に進入していく。

 

ハヤト「サイラス、出て来い!」

 

 だだっ広い格納庫の中に、自分のマグネットブーツの靴音だけが響く。

 

ハヤト「無駄な抵抗をすれば君を殺害する。降伏するんだ!」

 

 相手の返答はない。

 確か、彼は居室から脱出したときに、ろくな武器を持ってはいないはず。1発、威嚇の意味で格納庫の壁を射撃してみた。BAZ!!

 ・・・どうだ?これでサイラスは戦意喪失だろう。なにせ彼は戦闘トレーニングなどしていない、ただの中年男なのだ。

 しかし、自分の甘い予測は覆される。

 

 ZAAAAAAAAP!!

 

 ビリビリ空気が震える振動音とともに、高圧レーザーの白い光をコンテナの陰に確認。そしてそのコンテナは、白い奔流で一瞬にして真っ二つになる。太いレーザー光波はまっすぐ自分の方に向かって・・・危ない!!

 すんでのところで飛びのく。自分の背後の壁が誘爆した。

 なんだあの武器は!あんな重エネルギー兵器、生身の人間で扱えるわけが・・・

 

サイラス「ふははは、インナーのボディスーツだけとはね!」

 

 コンテナの陰から出てきたのは、機械歩兵使用の重装甲スーツだった。こいつは手足の数こそ同じだが、操縦者の動きを何十倍にも増幅させる人型戦闘機械だ。もちろん操っているのはサイラス。奴は薄い防護皮膜のボディスーツしか着ていない自分に、砲口が50cmほどもある工業用レーザーガンを向ける。

 

サイラス「戦闘を決定するのはね、火力と装甲なんだよ、キミイ!」

 

 チュイイイイイイン・・・ZAAAAAAAAAP!!

 

 また発砲!強大な火力の前に、自分は回避するのが精一杯だ。慌ててコンテナの陰に隠れるが、それをスポンジのように切り裂く白い光。高笑いするサイラス。自分を遠ざけたのを確認すると、ズシン、ズシン、と、ゆっくり小型宇宙艇の方に歩いていく。こっちが手を出せないのをいいことに、悠然と脱出する構えだ。

 

ハヤト「S##T!ここまで来て、奴を逃がすの・・・か・・・」

ジェニー「彼の欠点はあの自重ですぅ」

ハヤト「自重?重いのか??」

ジェニー「はい。もともと無重力の宇宙空間での使用を前提に設計されていますので、重力空間ではバランス悪いです」

ハヤト「そうか!ジェニー、君は最高の相棒だ!」

ジェニー「えへへー♪」

 

 自分はバッグパックからボール・ベアリングの筒を取り出し、床一面にばら撒いた!

 ビー玉のように格納庫の床に転がる鉄球は、つつーっと重装甲スーツの足元に達して・・・ズシィィィン!彼を転倒させる!!

 

サイラス「な、なんだとおっ!」

 

 急いでバランスを修復させる重装甲スーツ。サイラスは必死に操縦しているが、なかなか鈍重な工業用レーザーを拾えず、やむを得ず背中に収納されていた熱線銃を取り出すことにした。

 これで武器は互角、しかもサイラスは足元が不安定なので技術点-1になる。こうなれば任務を果たすまでだ。サイラスに接近して銃撃戦を挑め!

 もう自分は装甲宇宙服は着ていない。命中したらそのままダメージを受けるしかない。自分の体力点とサイラスの体力点、どちらが先に尽きるか、最後の決闘が始まる!!

 

【サイラス 技術点8 体力点12】 (銃撃戦)

 

※手榴弾 指示なしで使用不可

 

1R ハヤト銃撃、熱線銃(3)命中 サイラス/体力点-2

   サイラス銃撃、熱線銃(4)命中 ハヤト/体力点-4

 

 うわっ、相手の熱線銃は自分のより高性能だった。右足を撃ちぬかれ、痛みにあえぐ。

 

2R ハヤト銃撃、熱線銃(3)命中 サイラス/体力点-2

   サイラス銃撃、熱線銃(6)命中 ハヤト/体力点-3

 

 だがここでひけるか!猛然と撃ち返す。

 壮絶な射撃戦。先に音を上げたのは・・・

 

3R ハヤト銃撃、熱線銃(7)命中 サイラス/体力点-1

   サイラス銃撃、熱線銃(11)外れ

 

 ・・・サイラスだ!奴は怯えて手元が狂う。

 休むな、加えて熱線銃のレーザーを叩き込め!

 

4R ハヤト銃撃、熱線銃(8)命中 サイラス/体力点-2

   サイラス銃撃、熱線銃(10)外れ

 

 ボスン!バスン!!奴の重装甲スーツが次々と火を噴き始める。

 「うわあああ!」命を切り貼りするような戦いに慣れていないサイラスは恐慌状態になった。

 自分は転がりながら次の射撃点を探す。

 

ハヤト「このラウンドだ・・・」

ジェニー「すでに戦闘駆動系は損傷甚大。あとはパワードライブです」

ハヤト「この一撃で決めるんだ!」

ジェニー「そこを撃ち抜けば、作動停止します」

ハヤト「それはどこに!」

ジェニー「あなたの目の前、ちょい左っ!」

ハヤト「ここかっ!」(照準セット)

サイラス「馬鹿な、この、この、天才科学者の私がぁっ!!」

 

5R ハヤト銃撃、熱線銃(4)命中 サイラス/体力点-5 ←Destroy!!

 

 ZAP!ZAP!ZAP・・・BAHOOOOOOM!!

 

 自分の熱線銃による最後の一撃は、見事に重装甲スーツのパワーユニットを吹き飛ばした。高駆動エンジンを完全に破壊したのだ。その帰結として、巨大なクロム合金の塊はその場に倒れて動けなくなる。プシュー、ブスブスブス・・・と嫌な音を発して、黒い煙を吐くだけだ。

 

 ・・・???中にいるサイラスの反応がない。

 

 彼の身体ごと撃ち抜いてしまったのか?いや、奴は生きている!あまりの衝撃に失神しているようだ。

 自分の怪我の手当てをしないまま(どのみち活性剤は使い切っているのだ)、重装甲スーツに近づく。そして非常用コックをつかんでぐるりと回し、コクピットを開放した。バシュー!空気の漏れる音がする。ぐったりしている操縦者が確認できた。

 網膜パターン確認・・・OKDNAパッチを奴の頬に当て・・・うん、完全に一致している。

 間違いなくサイラス本人であるのを確認した自分は、奴の身体をずるりと引きずり出す。

 

 ここに、自分の任務は完遂された!

 

 

 

400!そして次の冒険への幕間 --Space Assassin--

 

【技術点10/11 体力点10/18 運点10/12 装甲点-/-】

 

ジェニー「ご主人様、彼を・・・殺すのですか?」

ハヤト「まさか!」

 

 いくらベルカさんの仇で憎さ百倍とはいえ、その罪は生きて償え。ほぼ永遠にな。

 自分は電子手錠を取り出し、ぐったりと伸びている彼の手首にはめた。そして上半身に拘束具を被せ、さらに舌を噛み切らないよう、発声可能型の猿轡もかませる。

 そして、奴が脱出に使おうとしていた小型宇宙艇に乗り込んだ。

 うん、やはり。<ヴァンダーベッケン>はもともと地球連邦軍の巨大モニター艦だった。だからここにある宇宙艇も、地球連邦軍使用の単純なものだ。この操縦系なら自分でも動かせる!

 

 もうここに用はない。

 

 自分は格納庫の扉を開け、サイラスを連れて<ヴァンダーベッケン>から脱出した。黒々と広がる大宇宙。久しぶりに見た惑星オドの太陽。こころなしか、自分の晴れ晴れとした気持ちに比例して、煌々と鮮やかな太陽風を発しているようにも見える。

 自分は通信チャンネルを呼び出した。交信対象は<ヴァンダーベッケン>のテロリストどもに対処すべくオド星域に緊急配備された海兵隊強襲艦「アンツィオ」だ。あらかじめ定めていたコードネームで発信する。

 

ハヤト「アロー、アロー、こちらゴンチョン、リザードキング、聞こえますか、どうぞ?」

通信士「!!!・・・こちらリザードキング・・・おめでとう・・・」

 

 通信士は突然の受信に驚いていた。まさか悪の総本山から生還できるとは思っていなかったのだろう。

 だが、自分は任務をやり遂げた。サイラスの拘束に成功したのだ。

 やがて、自分を収容してくれる友軍の宇宙船が見えてくる。あれが強襲艦「アンツィオ」だ。中には実力行使に踏み切るべく、エンドルフィンが流れっぱなしの宇宙海兵隊員300名がぎっしり収容されている。

 

ハヤト「ゴンチョンは寄生に成功。繰り返す、ゴンチョンは寄生に成功」

通信士「オーライ、ゴンチョン。ご苦労だった。あとはリザードキングに任せてくれ。まずはブラックライオンどもの出番だ」

 

 ぷしゅ・・・ぷしゅ・・・ぷしゅ・・・

 自分の成功報告をきっかけとして、強襲艦から光点が打ち出されるのを自分は見届ける。自分たちの符丁であるブラックライオン、すなわち宇宙海兵隊の機動歩兵が<ヴァンダーベッケン>目がけて射出されているのだ。彼らの任務は突破口を開き、テロリストどもの残党を掃討すること。主人であるサイラス教授の天才頭脳がなくなった今、それはたやすく達成されるだろう。

 やがて<ヴァンダーベッケン>のあちこちで爆発光が打ち上がる。海兵隊の仕事は迅速だ。もっとも海兵隊の通信を傍受するに、自分が遭遇した士気が弛みきっていた警備兵どもは、続々と降伏しているようだ。サイラスの睨みがなくなった今、完全に奴らは烏合の衆と化している。

 「ぐ・・・む・・・」後ろでサイラス教授が気絶から目覚める。自分は皮肉を利かせて操縦している小型宇宙艇を<ヴァンダーベッケン>が望めるようにフライパスさせ、彼の帝国が崩壊する様を見せつけてやった。

 

ハヤト「独裁国家の崩壊だ。サイラス、気分はどうだい?」

サイラス「い、いいわけがなかろう・・・」

ハヤト「貴方には黙秘権が与えられている。もっとも、黙秘権があったとしても、執行刑に猶予がつくとは思えんがね」

 

 サイラスはむすっとして自分のからかいに答えない。その代わり、インシグニアが刻まれた、自分の官給品ヘルメットに目をつける。

 

サイラス「黒い稲妻・・・君は中央情報局か・・・」

ハヤト「ああそうだ。」

サイラス「ふ・・・ふふふ・・・こんな若造に・・・老いたな私も・・・」

ハヤト(ちょっとムッとして)「サワムラ家に若造はいない」

サイラス「・・・ほう?」

ハヤト「ただ、誇りを重んじるサムライがいるだけだ」

サイラス「つまりは・・・誰よりも先に見よ、か」

ハヤト「そう、誰よりも先に聞け」

サイラス「誰よりも先に知れ」

ハヤト「誰よりも先に・・・死ね」

 

 ・・・ ・・・ ・・・ 

 

 それが彼と言葉を交わした最後で、後はお互い、終始無言だった。

 悪の科学者サイラスは強襲艦「アンツィオ」内でしかるべき当局筋に引き渡され、保安裁判機構によるスピード審理で懲役1,536年(概算)の刑が確定し、星間刑務所に移送された。<ヴァンダーベッケン>に巣食っていたテロリストの残党もまとめて送られた。

 無力化した<ヴァンダーベッケン>は再び地球連邦軍の所有となり、モニター艦「ミチノク」として復帰した。しかし3宇宙年後に謎の爆沈を遂げる。操縦系を司るパイロット・ロボットに潜伏型電子ウィルスが感染していたらしい、という噂もあった。だが今となっては旧<ヴァンダーベッケン>は宇宙の塵と化してしまい・・・真相は不明だ。

 父と母の元部下、バウンティハンターのミス・ベルカ・ロバヤニの亡骸は丁重に引き取られ、サワムラ家の墓所に安置されることになった。彼女の葬儀には久しぶりに偵察艦「トラベラー」の面々も集った。自分も列席したのだが「あなたが見つけてくれたのが、彼女にとってせめてもの救いね・・・」と、母ソフィが寂しげにつぶやいたのが、今でも印象に残っている。

 

 さて・・・自分はこの任務成功で特別昇進を果たし、大尉となった。

 さらに言えば、危険に比して雀の涙ほどであった特別任務手当も支給されたのだが、それについてはウェイクマン社製XJ-9型アンドロイド“ジェニー”の胴体購入資金に充ててしまい、結局ほとんど残らなかった。

 まあ、彼女はその後も長年に渡り、自分の諸事雑務を片付けてくれたので、それはそれでよかったのだが・・・「尉官待遇の若造のくせに秘書型アンドロイドだと?」と、隠居していた父ホクトにずいぶんからかわれた。

 自分のその後のキャリアは、その後も様々な命のやり取りを繰り返しつつ、中央情報局での勤務を3期勤め上げる。その後は外惑星艦隊司令部の参謀となり・・・最終階級は准将だった。

 私生活面では、外交官を勤めるレムリア人の妻を娶り、3人の子供が生まれた。留守がちな自分と妻に代わって育児の面倒を見てくれたのは、召使アンドロイドのジェニーだ。長男マサト、次女ケイト、三男リュートともども、適性を伸ばしてくれる立派な英才教育を施してくれたので、本当に感謝している。

 自分が職務に精励しているときも、大宇宙における人類の版図は拡大し続けた。やがて人類統合政体である地球連邦は「銀河連邦」(Galaxy Unionと、ついにその呼び名を変える。

 

 だが、人々の営みは変わらない。

 親は子を産み、育て、そして子供は親の元を巣立ち・・・

 

 そうしたように、自分の子供たちも、それぞれ大宇宙に自分の居場所を見つけるため、様々な方面へと羽ばたいていく。

 正義感の強い長男のマサト・サワムラは、銀河警察の道に進んで連邦麻薬捜査官となった。ここ近年、爆発的に蔓延し始めた不法幻覚剤セイトフィル-Dの密売組織を撲滅するため、命を賭けて心血を注ぐことになる。

 次女のケイト・サワムラは、ジェニーが自慢げに話す<ヴァンダーベッケン>での冒険談をいちばん熱心に聞いていた。そしてサワムラ家伝統の軍隊勤めを選び、しかも自分と同じ情報将校になった!その後彼女は、対アルカディア抵抗戦争において、ある重要な役割を帯びる。

 三男のリュート・サワムラは、惑星タロスで開拓農民となった。昔からおっとりしていて暢気な末っ子だった彼らしい選択だ。恐竜牧場の経営に携わり、巨大ロボットを動かしながら厳しい自然と向き合っている。

 

 彼らの「宇宙(そら)の一族」の物語は、またどこかで語る機会があることだろう。

 

 

 

『宇宙の連邦捜査官』に続く】

【でもその前に、次回は特別編。『フリーウェイの戦士』がスタートです!】