さまよえる宇宙船

 

 

クルー作成&特殊ルール説明 --Starship Traveller-- 

 

 さあ、Livre dont vous êtes le héros(君が英雄になれる本)は新展開、今回からSF作品の『さまよえる宇宙船』に突入します!

 冒険の目的は、未知の宇宙空間で宇宙船トラベラー号を操り、無事地球に帰還することが任務となる。しかし、このGBはいろいろな意味で今までのFFシリーズとは違う。

 まず、宇宙船トラベラー号に乗り組むキャラクターを複数作らなければならない。各乗組員の詳細は以下の通り。

 

1)主人公である船長

2)異星テクノロジーに詳しい知恵袋の科学官

3)船員の健康を司る医務官(文章によるとどうやら女性らしい)

4)機械の修理や改造を行う技官

5)武器の扱いに長け、船の安全を守る保安官

6)保安官の助手である警備員1&警備員2

 

 合計7人分をキャラクターメイキングする必要がある。メイキングの仕方は普通のFFシリーズと同じ。すなわち原技術点1d6+6原体力点2d6+12だ。それから自分の分身である船長のみ原運点が設定される。この値は1d6+6だ。

 というわけで「火吹山〜」と同じようにハウスルールでこれらの能力値を決めよう。船長はd6ダイス4個を割り振り、それ以外の乗組員はd6ダイス3個を割り振っていく。よし、ついでに彼らの名前や人格も脳内設定してしまおう。やっぱり主人公の船長は日本名がいいよな・・・ヒロインの医務官はフランス系のたおやかな美女か?003狙いか??保安官はゲルマン系の無骨な男という設定で・・・と、妄想が膨らんで困ってしまう(笑)

 

○船長 ホクト・サワムラ

 →3,3,5,6 →【原技術点11 原体力点18 原運点12

○科学官 Dr.セルゲイ・ドミトリエフ

 →1,5,6 →【原技術点12 原体力点18

○医務官 ソフィー・ルクレール

 →2,3,4 →【原技術点10 原体力点17

○技官 パウロ・ゴンザレス

 →2,5,6 →【原技術点11 原体力点20

○保安官 ゲオルグ・マイヤー

 →4,5,5 →【原技術点11 原体力点21

○警備員1 グェン・リン・ヤン

 →3,4,4 →【原技術点10 原体力点19

○警備員2 ベルカ・ロバヤニ

 →2,3,5 →【原技術点11 原体力点17

 

 うん!なかなかに精鋭ぞろいだ(^v^) もちろんこのルールを採用した代償として、戦闘時に1ゾロはファンブルとなってしまうので注意が必要だ。惑星に降りるときは、この中から任意にメンバーを選出して調査に赴くことになる。もしその惑星の探索で、乗組員が体力点0になった場合、彼または彼女はLOSTする。その場合は、部署の管理を代行人物が務めることになるわけだが、そいつは前任者ほど有能ではない。だから能力値の現技術点は、前任者から-2となる。

 

 さて、次に宇宙船トラベラー号の性能を決めよう。これも人間とほぼ同じで、1d6+6原武器力点が決まる。宇宙船戦闘時は、これより低い値を出さなければ攻撃が命中しない(同値では外れ)。また、2d6+12原防御力点が決まる。この値が0になれば、宇宙船は破壊されてGAMEOVERだ。

 やっぱりおなじく3個のダイスを振り、それを割り振ることにする。・・・1,1,3。ええっ!

 うーむ、【原武器力点9 原防衛力点14】にしとくか。弱い、弱っちすぎるぞトラベラー号・・・(泣)

 まあ、宇宙船の貧弱さを、乗組員の優秀さで補完することになった。これはこれで、ドラマチックな冒険になるかも知れぬ。

 

 特殊ルールで体力回復について。このGBは体力点+4の食料は与えられない。しかし一つの惑星を離れるたびに、各乗組員は無条件で体力点+2されるそうだ。しかし、これは医務官がLOSTしていない場合に限られる。うーむ。大事にしなきゃな、ソフィーを。

 

 最後に、このGBの戦闘の仕方について。これは大きく分けて3つある。「宇宙船戦闘」「素手戦闘」「フューザー戦闘」だ。

 宇宙船戦闘は、2d6が自分の船の武器力点より低ければ攻撃命中だ。攻撃命中したら2d6を振り、それを敵船の防衛力点と比較する。そして出目が同じかそれ以下なら-2、上回ったなら-46ゾロなら無条件で-6される。そして船の防衛力が0になった段階でどっちかが勝利することになる。

 素手戦闘は、いつものFFシリーズの剣による戦いのやり方と同じ。よってここでは省略する。

 フューザー戦闘は、いわゆるビーム銃によるいちばんおっかない戦闘だ。まず、致死またはショックを選択する。そして2d6を振り、技術点以下なら攻撃は命中する。攻撃が命中した場合、致死なら敵を死亡させる。ショックなら敵を気絶無力化させる。たった一撃だけで!なんてデッドリーな戦闘だ!

 なお、船長、保安官、警備員以外の乗組員は戦闘に不慣れなため、戦闘する際は技術点-3のペナルティを受ける。よって惑星に降着する際は、必ず戦闘要員を連れて行くのがいいだろうな。

 

 今回の冒険は探索型SFアドベンチャーらしく、既成概念の想定外なイベントが続々と起こって、なかなか手ごわそうな予感がする。ようっし、がんばるぞ!

 

 (^v^)ノ

 

 

簡単な任務 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 私の名はホクト・サワムラ。地球連邦軍に所属するS級艦長だ。ちなみにパーソナルデータを言うなら、日本系の28歳男性。家族は父がヨコスカ・ポートに勤めており、母も戦艦「アラスカ」の代理艦長を歴任したことがある。かようにサワムラ家は、先祖代々から艦隊勤務を誇りとしている。いわゆる「宇宙(そら)の一族」だ。

 私も、いつもは巡洋艦「レンジャー」を指揮して、銀河の平和を守るべく任務に邁進している。20代のS級船長任官は史上初の快挙ということだが、そのことで驕るほど、私は愚かではない。

 もちろん、私の今までの輝かしい功績は、たった1人だけで為し得たわけではない。家族とも言うべき、緊密なチームワークを誇る仲間によって達成された面も大きい。

 

 ここで私と航海をともにする仲間を紹介しよう。

 副艦長であり、科学官のDr.セルゲイ・ドミトリエフ。ロシア系の42歳男性。宇宙人類学を専攻していた彼は、こと科学に関しては地球大学の名誉教授でさえも裸足で逃げ出すだろう。またチーム最年長者でもあり、学識豊かな冷静な意見は、頭に血が上りがちな若い私にとって非常に参考となる。

 医務官のソフィー・ルクレール。フランス系の25歳女性。細やかな神経で私の心身両面をバックアップしてくれる。我々乗組員が肉体ポテンシャルを最大限に発揮できるのも彼女の尽力によるものだ。またその美貌ゆえに、彼女が私の艦に配属された時は、同僚からうらやましがられた。

 技官のパウロ・ゴンザレス。メキシコ系の18歳の男性。生まれた時からスパナを握ってきたと噂されるくらい修理が素早い。陽気な青年で、いつもサッカーボールを船内で蹴っては、保安官のマイヤーに叱られている。だが、彼の明るさにはいつも助けられる。チームのムードメイカーと言えよう。

 保安官のゲオルグ・マイヤー。ドイツ系の32歳男性。無骨な巨躯と厳しい表情、また連邦軍屈指の精鋭部隊、装甲打撃師団(パンツァー・ストライクス・ディヴィジョン)出身ということから誤解されがちだが、実は心根の優しい、話のわかる男だ。もちろん、戦闘能力は折り紙つきである。彼のフューザー射撃術から逃れた敵は存在しない。

 警備員のグェン・リン・ヤン。ベトナム系の25歳男性。私と同じPAR(汎アジア連邦)出身なので、私と非常に話が合う。そして彼は補給調達の名人でもある。

 同じく警備員のベルカ・ロバヤニ。ケニア系の20歳女性。寡黙な黒人女性だ。さかのぼればマサイ戦士の家系に繋がるそうで、おそらく戦闘能力はマイヤーに匹敵するだろう。

 

 さて、今回、私はある任務を帯びてセルツィア空間に向かっていた。

 慣れ親しんだ巡洋艦「レンジャー」ではなく、連邦軍より偵察艦「トラベラー」の処女航海を命ぜられたのだ。チームクルーごと艦を移ることになったわけだ。その目的は、この船に搭載された新型ワープエンジンを試験するため、経験豊かなチームクルーが必要になったとのことだ。

 油断するわけではないが、今まで数々の任務をこなしてきた私にとって、非常に簡単な任務である。休暇代わりと考えていいのだろうか・・・

 しかし何だか嫌な予感がする。例えるなら、玄関から外に出たら、黒猫がいきなり横切って行ったかのような・・・。

 

 「船長、何か、考え事ですか?」ソフィー医務官がコーヒーを私の席に持ってきてくれて、こう話しかけてきた。知らず知らず難しい顔をしていたのを、気にかけてくれたらしい。

 「いや、なんでもないんだ。」私はコーヒーをすする。・・・!!! たぶん私は、地球連邦軍でいちばん美味なコーヒーを飲める人物なのかもしれない。「ちょっと変な感覚がしたんでね。私の国の言葉では“ムシノシラセ”と言うのだが」

 「それは非論理的ですね、キャプテン・ホクト」Dr.セルゲイ科学官が励ますように言った。

 「簡単な任務ですよ、早く終わらせちまいましょう!そして地球に戻って・・・俺を待っている女の子と、ラララ〜♪」パウロ技官が鼻歌交じりで陽気に続ける。

 

 そうだな。彼らがいっしょなら、たいていの困難は切り抜けられる。今までがそうだったように。

 船内チャイムが鳴り、あらかじめ航路図にセットした地点に到達したことが示される。

 

マイヤー「艦長、セルツィア空間に到達しました」

ドミトリエフ「航路付近にブラックホールがあります。まあこの規模なら支障はないでしょう」

ホクト「よしわかった。新型ワープエンジン作動!」

ゴンザレス「エンジン作動、アイ!」

ドミトリエフ「出力上昇・・・加速5・・・6・・・7・・・10%定置」

ホクト「出力維持、10分後にカットオフ。これで試験終了だ」

ゴンザレス「HaHa!簡単なもんっすね♪」

 

 そう、簡単な任務のはずだった。この時までは・・・

 

 

 

MAYDAY!! --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

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メイデイ 【Mayday

《助けに来ての意の、(フランス)venez m'aider「助けて」から》

 船舶・航空機などが無線電話で送る国際救難信号。

 単なる符号で、文字自体には意味がない。。≒エスオーエス [ SOS ]

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 嫌な予感は現実となった。

 

 「MAYDAY! MAYDAY! MAYDAY! こちら偵察艦トラベラー、ワープエンジンが10%定速から動かない!!もうすぐ安全範囲をオーバー!」

 いつもは陽気なパウロ技官が切羽詰った声を上げる。他のクルーも青ざめて全員パニック状態だ。

 新型ワープエンジンはとんでもない欠陥品だった!ワープ速度を一度設定したら可変できなくなるウィルスがコンピュータに組み込まれていた。いかなる指示も“CANCEL”の表示しか返さない。つまり、我々はこのままだと超加速の末、宇宙の果てにまで永遠の大航海を続けることになる。

 いや、それだけならまだいい。Dr.セルゲイ科学官がひそひそと私にささやく。他の乗員に聞かれて、これ以上のパニックが起こるのを防ぐためだ。

 

セルゲイ「この付近に小型ブラックホールがありましたよね・・・。ちょうど針路上です。このままですと本艦は突っ込みます・・・!」

ホクト「パウロ、オーバーパワー誤作動の原因解析はあとどれくらいかかる?」

パウロ「ええっと、あと13分!」

ソフィ「それじゃ間に合わないわ!」

グェン「俺たち・・・死・・・ひいいっ!」

ホクト「落ち着け!連邦軍士官たる者、うろたえるな。誰か、何か解決策は?」

セルゲイ「あることにはあります。ブラックホールを逆手に取りましょう。」

 

 Dr.セルゲイ科学官が凄まじい解決案を思いつく。いや、解決案というか、ほとんど自殺案だ。ブラックホールの凄まじい引力圏に弧を描いて飛び、引力に引きずられて減速しながら操縦系を回復させるというものだ。

 やってみる価値はある・・・が・・・。

 

セルゲイ「弧の頂点から方向を変えるタイミングが重要です。私の計算では、誤差0.01秒以内で180度変針が必要です。」

ホクト「可能だと思うか?」

セルゲイ「S級艦長ならば!」

 

 ・・・言ってくれる。私は艦長席について自分の責務を果たすことにする。すなわち、この宇宙船の進路操縦を担うのだ(ご存知のように地球連邦軍の艦船は、自動操縦時以外は、艦長が操縦権を掌握する系統である)。

 ブラックホール引力圏内に入った。船体が振動し、嫌なきしみ音がする。黙って席に座ってベルトを締め、神に祈るクルーの面々。今や我々の船は大渦巻に飲み込まれる帆船といったところだ。

 今だ!そこしかないタイミングで私は思いっきり操縦桿を引く。右舷にぐらりと傾き、偵察艦トラベラーは急転回した。ディスプレイには漆黒のブラックホールが地獄の穴のように待ち受けている。その縁を、我々の船は絶妙の姿勢で航行し続ける!

 

 「加速低下・・・5・・・0・・・マイナス5%!イヤッホー!さすがキャプテン!」パウロが歓声を上げた。私は安堵のため息をつく。平均台の上を全力で走りながら針の穴に糸を通すような操縦で加速は止まった。あとは遠ざかるブラックホールを尻目に、操縦系を回復させていけばよい。原因解明まであと10分弱。

 

 しかし今日はつくづくツイていなかった。

 異変にいち早く気づいたのはマイヤー保安官だ。「艦長・・・速度計が・・・」

 ・・・マイナス10・・・マイナス15・・・マイナス25%・・・

 私は目を見張る。速度が落ち続けている!つまりこの船はブラックホールに引きずりこまれているのだ!!

 Dr.セルゲイ科学官が「変光星ブラックホールか!」と絶望にうめく。つまりは自分の虜にできる引力が一定でなく、潮の干満のように変化する厄介なブラックホール。まるで漆黒の化け物のようにそいつは口を大きく開け、偵察艦トラベラーを吸い込もうとしている。

 

 緊急レッドアラートのボタンを押し、非常制動エンジンを噴射させるも、残念ながら手遅れのようだ。船はブラックホールにぐんぐん向かっていき、高い金属音を上げて振動し始める。次に至る過程は明確である。船体は危険なまでに薄く引き延ばされて分解し、我々は暗黒空間に閉じ込められるのだ。

 

 非常電源がブチンと切れ、ブリッジ内が真っ暗になる。

 

 「だめ・・・もう・・・神様っ!」恐怖に耐えかねたソフィー医務官の悲鳴がブリッジ内に響き、それがセルツィア空間における私の最後の記憶となった・・・

 

 

 

宇宙の孤児 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 ここは・・・天国でも地獄でもないようだ。少なくとも。

 私が目を覚ますことができたのは、先の振動でコンソール上にぶちまけられた、ソフィー医務官の淹れたコーヒーの芳香のおかげである。

 どれほど失神していたか定かではない。が、しかし、偵察艦トラベラー号は存在していた。その中にいる我々も。「キャプテン・ホクト!起きましたか!」マイヤー保安官が安堵の表情で近寄ってくる。身体が頑強なのでいち早く目を覚ましたのであろう、彼と、警備員の2名、グェンとベルカが、他の乗員を応急手当していたところだった。

 やがてクルー全員が気絶から回復する。そして自分の職掌の範囲をこなし始めた。

 

 まずは現状把握。

 最初にいいニュース。パウロ技官の報告によると、ワープ推進機関は停止しているが、230分もすれば原子炉が再稼動できるということだ。

 そして悪いニュース。航路図を参照していたベルカ警備員が、お手上げといった表情だ。どうやらここはコンピュータに登録されていない星図の宇宙空間で、船の現在位置が全くつかめないらしい。

 Dr.セルゲイ科学官が一つの仮説を立てる。「おそらく船はブラックホールを通り抜け、一つの次元から別の次元に転移したのでしょう。つまりは、我々の宇宙と平行して存在している別の宇宙に・・・」

 それは何とも心強い知らせだな・・・。私は頭を抱える。つまり我々は宇宙の孤児だ。銀河のどこらへんにいて、どこに向かえば地球に帰れるのか、皆目見当がつかないのだ。

 Dr.セルゲイ科学官は良心の呵責を覚えたのだろう。私にこう話しかけてきた。

 

セルゲイ「艦長、私のアイデアからこんなことになってしまって・・・」

ホクト「気にするなセルゲイ。私が科学官でもそう発案する。いや、君ほどの頭脳はないから、発案すらできずにブラックホールに飲み込まれてお陀仏だ。」

セルゲイ「キャプテン・ホクト・・・」

ホクト「君は正しい選択をした。結果として、我々は全員生きているんだ。そして、全員生きて、地球に戻るぞ!」

 

 私はDr.セルゲイ科学官の肩に手を置いてなぐさめ、同時にクルー全員を鼓舞した。そう、私には優秀なクルーがいる。絶対に大丈夫だ。私の笑顔で乗組員の顔にも希望の火が灯る。さあ、心を切り替えて、現状に対処しよう!

 やがてパウロ技官の卓越した修理技術により、ワープエンジンが復活した。長距離走査を行うと、行く手に3つの星系が示される。

 

1)『生命の存在する星系のうち、前方にあるものをめざすか?』

2)『左舷にあるもう一つの星系に向かうか?』

3)『右舷にある不毛の星系をめざすか?』

 

 (1)(2)には知性体が存在するらしい。ということは、もちろん文明の進歩具合にもよるだろうが、星図が手に入る可能性もあるということだ。私はとりあえず(2)を選択し、左舷にある星系に針路をとることにした。

 

 

 

ガンジグ帝国との遭遇 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 通常速度で航行していると、向こうからやってくる宇宙船がある。慎重に接近するコースを選択したら、感知器によるとD型宇宙巡洋艦らしい。私は防衛膜を作動させて万一に備えることにした。

 メッセージが入電されたのでスクリーンに映してみると、爬虫類を思わせる人型生物が現れた。翻訳機が作動し、彼らの言葉を告げる。「私はガンジグ帝国連邦のムク・マル司令官だ。貴船は無届けで帝国領域を侵犯している。身元と目的を明らかにせよ!」

 

 「生意気言いやがって、トカゲ野郎が!」とパウロが小声で毒づく。確かに高飛車な物言いはカチンと来るが、それだけ、自分の巡洋艦の武装に自信があるということなのだろう。もとより我々はガンジグ帝国と敵対関係にあるわけではない(というか一度も遭遇したことがない)ので、丁寧に遭難した経緯を説明する。

 だがムク・マル司令官は疑っているようだ。そりゃそうだ。そもそも荒唐無稽な話であるし、実はこいつらは仮装巡洋艦で、何かの罠ではないか・・・と、指揮官ならまず考えるだろう。とりあえず基地へ連行し、上司に諮るという。そして私たちの船に一等士官を転送ユニットで派遣したいそうだ。

 私は同意する。ほどなくトカゲが服を着て二足歩行をしたようなガンジグ人が現れた。私が握手しようと進み出ると、彼は歯を剥いて武器を抜く!この露骨な敵対行動にマイヤー保安官も応戦しようとし、ブリッジ内は一時騒然となる。

 そして、このガンジグ人士官は高圧的に「コンピュータルームへ案内しろ!」と私に命じた。何だと!コンピュータ室は船の中枢で最重要機密地域だ。新型ワープエンジンのウィルス事故を引きずっていた私は、当然の如く立ち入りを許可しない。

 私はマイヤー保安官をチラッと見た。このアイコンタクトを彼は一瞬にして理解する。飛び掛ってガンジグ人を押さえ込もうとした!

 しかし、ガンジグ人は素早くベルトについたボタンを押す。

 ばきいいん!目に見えない力場によって、マイヤー保安官の身体が一瞬にして壁際にはね飛ばされた。彼の技術点-1、体力点-2だ。「つまらない真似はやめたほうがいい!」と異星人は警告する。

 どうやらガンジグ帝国は、我々よりもテクノロジーが進んだ国家らしい。私はあきらめて彼をコンピュータルームに案内する。奴はコンピュータを操作し、司令官の搭乗する巡洋艦と誘導ビーコンを結びつけた。そして我々の船は、ガンジグ人の基地までのろのろと曳航されるのだった・・・

 

 数時間航行すると、巨大なドーナツ型の宇宙ステーションが見えてきた。ガンジグ人の宇宙基地だ。トラベラー号は基地を巡る軌道に乗せられ、私はムク・マル司令官との会見に向かう。武装なしでたった1人で来い、と向こうは要求してきた。

 

ソフィ「それはあまりに危険です、キャプテン!」

ホクト「大丈夫だと思うよソフィ。殺すならとっくにやっている。どんなに外見が凶暴そうでも、これだけ高度な文明ならば、捕虜の扱いも心得ているだろう」

 

 私はそう言って部下を安心させると、丸腰で宇宙ステーションの内部に連行された。そしてムク・マル司令官が私を迎える。彼は友好的に握手してきて、部下の手前、そして帝国の治安を守るため、高圧的なファーストコンタクトをとったことを謝罪してきた。私の読みは当たった!

 あの一等士官がトラベラー号のコンピュータをスキャンした結果、宇宙で遭難したという我々の主張が真実であると、ムク・マル司令官はわかってくれた。なので会見は終始友好的に進み、有意義なものとなった。

 彼らも自分達の領域の保安上、我々が早く元の世界に戻ってくれることを望んでいる。だがそうするためには、ブラックホールによって作り出された宇宙ワープに頼るしかない。入り込むのも、出て行くのも、同じやり方というわけだ。

 そのためには突入するブラックホールの時間と場所を間違えないことが肝心だと、彼は述べる。つまりはこの宇宙を探険して、正確な「時間座標」と「位置座標」の情報を得なければならない。

 これら2つの座標について、他には何の手がかりもない。だが少なくとも、地球へ帰る手段はわかった。それだけでも大収穫だ!

 

 私は丁重に礼を言う。そしてバーター取引として我々地球人の情報を提供した。どうせ彼我の相対距離からして、彼らに侵攻される危険性は皆無に等しい。

 さらに彼は私達の船の攻撃武器を危ぶんでいて、ガンジグ帝国の宇宙船には発砲できないよう、標的追跡プログラムに補助指示を加えさせよ、と要求してきた。それさえ行えば、我々を解放してくれるという。

 一瞬躊躇したが、私は了解した。これからはガンジグ帝国の宇宙船に対して、我々のトラベラー号は発砲することができなくなる。だが我々の目的は、戦闘でも、征服でも、国家の面子を保つことでもない。生きて地球に帰ることだ。だからこのハンデは甘んじて受けることにしよう。

 

 私が解放されてトラベラー号に戻ってきたとき、他のクルーはほっとして出迎えてくれた。会見の経過を説明し、ガンジグ帝国船を攻撃できない補助プログラムを戦闘コンピュータに組み込む。パウロ技官はちょっと嫌がったが、しぶしぶ了解する。地球に戻る方法がおぼろげながら見えてきて、クルーの士気は大いに高まった。

 こうして我々はガンジグ帝国の宇宙ステーションを出港し、未知の宇宙空間を探索する航海に出るのだった。果たしてこの先には何が待ち受けているのか・・・。

 

 

 

名前すら決められない星 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 さて、地球への帰り方が判明した以上、ブラックホールに関する情報は数多い方がいい。すなわち、訪れる惑星も多ければ多いほうがいい。

 現在、宇宙船トラベラー号の長距離走査によると、船の左舷に惑星系が見つかる。さっそく私はそちらの方に針路を向けた。この星系には惑星が2つある。大きな赤い惑星と、もう一つは鈍い青色だ。青色ならば水界があり、したがって生命体も・・・と私は淡い期待を抱き、後者の方に着陸することにした。

 思ったとおりだ!鈍い青色の惑星を近距離スキャナーで探査すると、文明を有する生命体が感知された。人口が多いのは大きな島の中央にある都市らしい。私は自分の他に、ソフィー医務官、パウロ技官、グェン警備員を選んで転送ビーム着陸することにした。

 

 着陸したところは大きな街路らしいが、全く人気がない。建物も道の両側に並び、道の突き当りにも大きな建物がある。

 「まるでゴーストタウンっすね・・・」パウロ技官が気味悪がる。

 「それにこれらの家は形も大きさもまちまちです。同一種族の肉体なら考えられない程の居住空間のバラつきです」ソフィー医務官もいぶかしがる。

 どっちにしてもこのまま引き返すわけにも行くまい。我々は用心して、手近な小さな建物の一つに入っていった。ドアが開いているので中に入ってみると、テーブルの上に人影が突っ伏して睡眠中だ。しかし我々に気づくと、一本足で飛び起きた!

 この異星人は二足歩行ではなく、普通の足の代わりに、木の幹の足に似た太い切り株があるだけなのだ。大声で奴はわめきまくり、この言葉は翻訳機にも訳せない。反射的にフェーザー銃を抜いて構えるグェン。

 しかしそれを「待て!」と私は制止した。そしてゆっくりと話しかける。我々は地球人で、君達に害意はない。母星に帰る手がかりを探しにきただけなのだ、と。そうすると相手も落ち着いた。どうやら自分の美的感覚から言って、かなり不細工な面々である我々に起こされたから(!)思わず驚いたらしい。

 彼は自分のことをティモル人だと名乗る。この惑星は入植惑星で、母星での生活に耐え切れなかった者どもの吹き溜まりだそうだ。ここは自由と平等の約束の地というわけだ。だが、その「自由と平等」とやらが行き過ぎて、誰もこの星の責任ある地位につけず、入植して何年もたつのだが、自分の惑星の名前すら決められない始末らしい!

 茶飲み話で聞けるのはこのくらいだ。この異星人は残念ながら天文学や星間旅行には疎く、進歩した文明なら惑星キュールマターにあると言う。とりあえずこれ以上の情報は得られなさそうだ。我々は礼を言って、道の突き当たりの大きな建物に向かう。

 

 「誰も統治権がないとしたら、命令もされないし、命令もできない、というわけか」軍人堅気とは程遠いパウロ技官が、うらやましそうにつぶやく。「パウロ、じゃあこの惑星に住んでみるか。無政府状態とはどういうものか・・・」とおしゃべりしながら私は大きな建物のドアを開けた。

 「・・・いや、ごめんです。わかった気がします」とパウロ。ここは集会場で、大討論会の真っ最中だ。“新しい薬局はどこに建てるか?”そんな仔細な議題で喧々がくがくと口喧嘩している、様々な種族の異星人たち。その混沌さに思わずめまいがしてくる。やがてみずぼらしい青い衣をまとった異星人が我々の元にやってきて、同意を求めてきた。私は(たぶんいないだろうな、と思いつつも)、議長に我々の事情を説明したいと申し出る。するとやはり、この異星人は「ここには責任者なんかいないんだよ。我々はみんな平等なんだ。来なさい、案内してあげよう」と笑って答えた。

 建物全体をざっと見学させてくれるよう、私は希望する。案内役の異星人はフィオラルという名前で、自由と平等の享受されたこの星の素晴らしさを強調する。法律という制約のない、真に素晴らしい惑星であると。

 そして我々は「護衛室」の前を通った。「???」ソフィーが疑問に感じる。「法律がないのに、どうして護衛が必要なんですか?罰せられないんでしょう?」

 フィオラルは答えた。「護衛は品物を護衛しているわけじゃない。ここではそんな必要はないんだ。ただ、我々の社会にも他人を襲撃して楽しむものがいる。もちろん、それは自由なんだが、他のものに不公平のないよう、彼らは制服を身につけて護衛と名乗っている。護衛が通りかかったら自分の身を護衛しろ、と他人に警告しているわけさ。わかったかい?」

 「・・・んーっと?ゴメン、もう1回!」パウロが再度の説明をお願いするが、「要するに、こういうことだ!」とグェンが機先を制して、素早く高分子ナイフを引き抜き応戦の構えをとった。彼らが言う“護衛”の異星人が三人、背後から我々に襲いかかってきたのだ!非力なソフィーを中央に隠すようにして、私、グェン、パウロ(戦闘時は技術点-3)が背中合わせになり、それぞれ1人ずつを相手するように立ち向かう。

 

 何とも素晴らしい惑星だ!

 

 

 

何もかも「自由」とは? --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 襲撃する自由が保障されているとしたら、撃退する自由も保障されているということであり、その機会は平等である。そう結論付けると、我々は自称“護衛”の異星人に立ち向かっていく。初期の組み合わせは以下の通り。

 

【護衛1 技術点8 体力点10】 vs 【ホクト 技術点11 体力点18

【護衛2 技術点7 体力点9】 vs 【パウロ 技術点8 体力点20】【ソフィー 技術点7 体力点17

【護衛3 技術点7 体力点10】 vs 【グェン 技術点10 体力点19

1R 攻撃力(護衛1/13)(ホクト/17) 護衛1/体力点-2

   攻撃力(護衛2/9)(パウロ/11)(ソフィー/12) 護衛2/体力点-4

   攻撃力(護衛3/15)(グェン/20) 護衛3/体力点-2

2R 攻撃力(護衛1/18)(ホクト/16) ホクト/体力点-2

   攻撃力(護衛2/16)(パウロ/18)(ソフィー/1ゾロ) 護衛2/体力点-2

   攻撃力(護衛3/15)(グェン/20) 護衛3/体力点-2

3R 攻撃力(護衛1/15)(ホクト/18) 護衛1/体力点-2

   攻撃力(護衛2/14)(パウロ/18)(ソフィー/11) 護衛2/体力点-2

   攻撃力(護衛3/14)(グェン/18) 護衛3/体力点-2

4R 攻撃力(護衛1/12)(ホクト/16) 護衛1/体力点-2

   攻撃力(護衛2/13)(パウロ/14)(ソフィー/15) 護衛2/体力点-4 ←OverKill!

   攻撃力(護衛3/13)(グェン/15) 護衛3/体力点-2

 ここで護衛2が倒されたので組み合わせが変化。

 「キャプテン、そっちへ行きます!」とパウロとソフィーが私の援護に向かった。

5R 攻撃力(護衛1/17)(ホクト/18)(パウロ/11)(ソフィー/12) 護衛1/体力点-2

   攻撃力(護衛3/13)(グェン/18) 護衛3/体力点-2 ←Kill!

 グェンもさっさと敵を片付け、私を助けに向かう。こうなると14だ。圧倒的有利。

6R 攻撃力(護衛1/12)(ホクト/19) 護衛1/体力点-2 ←Kill!

 しかしその前に私がさっさと片付けてしまった。

 

 通路での流血沙汰が終わると、物陰から案内役の異星人フィオラルがひょっこり現れた。私は突然の襲撃に抗議して理由を尋ねると「理由なんか無いよ。ここでは気が向きさえすれば、何をするのも自由なんだ」と、しれっと答える。肩をすくめる我々・・・。

 これ以上“護衛”の襲撃を受けてはたまらないので、私は建物内の目当ての部屋「旅行・地図室」にとっとと案内してもらった。

 

 そこは本や図面が床やテーブルに散乱している。管理係らしい、大きな頭と青い皮膚の小柄でしなびた異星人(もはや何人か聞く気にもなれない)にこの惑星の地図を見せてもらうが、大して役に立つとは思えない・・・。

 次にこの惑星を巡る星図を見せてもらった。我々がいるこの入植惑星、恒星マグナスを巡る星系らしい。同じ星系上にはトラックスという惑星もある。これはおそらく、最初の選択肢にあった大きな赤い惑星のことだろう。こっちの方は、近年戦争によって荒廃し、住民はこっちの惑星に移住してきているようだ。

 そして別の星系となる最寄の星は、紫色の恒星を持つ惑星キュールマター、そして二重星を恒星をとする惑星マコモンとなる。残念ながら星図にブラックホールは示されていないようだ。

 とりあえずこの付近の星系配置はだいたいわかった。私はこの部屋の管理係に、そして案内役のフィオラルにも礼を述べると、そそくさとトラベラー号に戻ることにする。この惑星の途方もない無秩序ぶりには、上陸員4名ともども精神的限界に近づいていたからだ!

 

 「私たちは恵まれています、ね」自船に戻り、戦闘で受けた私の負傷の手当てをしながら、ソフィー医務官が私にポツリとつぶやいた。「艦長のように、明確な命令指揮系統があるからこそ、社会集団は動くんですね。そうでなければあの惑星のように、どうなっていることか・・・」

 「まあ、その“命令”とやらが絶対に正しいかどうか、自信はないけどね」私はちょっと照れながら受け答えする。「だが、私の命令をしっかり遂行するクルー達がいるから、“トラベラー号”という集団は動いている。いや、私よりもそっちの要素の方が、たぶん大きいんじゃないかな」

 ここらへんで、お互いをおだてて面はゆくなったのか、私とソフィー医務官は顔を見合わせて吹き出してしまった。

 

 こうして我々は「名前すら決められない星」を後にした。なお、惑星を離れたので、私と(以前負傷していた)マイヤー保安官の体力点が2点回復する。

 次のコース設定は・・・ここと同じ恒星マグナスの星系上にあるトラックス。または、おそらくはキュールマターがあるであろう数光年先の紫色の恒星、どちらかである。惑星キュールマターは高文明の惑星という情報があり、いずれは訪れたいところだ。だが、その前に寄り道しても支障はあるまい。

 こう結論づけると、私はトラベラー号を、同じ星系内にある大きな赤い惑星、トラックスへと針路を向けた。

 

 

 

戦場の幻 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 大きくて赤い惑星トラックスを巡る軌道に船を乗せる。地表スキャンでは生命体の痕跡はないが、かつて相当発達した文明の痕跡が見られる。私は人口が最も集中していたと思われる地域の座標を選び、グェン警備員とベルカ警備員を選んで、地表にビーム着陸することにした(ここは戦争によって荒廃した惑星ということなので、上陸班は戦闘要員で固めてみた)。

 

 ビーム着陸した場所は無人の街路だ。道端にある乗物などはかなり高文明のものだが、埃が厚く積もっている。不気味なくらい静かである・・・。

 十字路に近づいたとき、私は物音を聞いた。警戒のハンドサインを出す。警備員の2人はそれに従う。私でもわかるくらいの大きな物音に気づかなかったようだ。おかしいな、こういうとき、普段は五感がずば抜けて鋭いベルカが真っ先に気づくはずなのに・・・?

 「お客人!」突然声をかけてきた相手は人間とほぼ同じくらいの異星人だ。「もう何年もよそから人が来たことはない」とりあえず敵対的ではなさそうなので、地球から漂着したんだと彼に事情を説明しているとき・・・

 ZAP!! フェーザー銃の発射音がする!グェン警備員が相手の胴体にものの見事な風穴を開けてしまったのだ。異星人は地面に倒れて動かなくなる。私は信じられずに振り返るが、グェンは錯乱したわけではなく、平静な面持ちだ。

 「グェン警備員、許可はしていないぞ、なぜ発砲した!」と私は詰問する。すると彼は「なぜ?撃たなきゃ艦長が殺されていました!手に持っていた武器で狙ってたのを見なかったんですか?」と抗弁する。私はもちろんそんな武器は確認していないし、ベルカも見ていない。

 だが、論争は後だ。厄介なことになる前に、私はこの哀れな犠牲者を宇宙船にビーム乗船で運び、ソフィー医務官に治療するよう連絡を送る。だが、彼女からのメッセージが届いた。「キャプテン?ビーム収容では誰も送られてきませんでしたが???」

 では、我々が遭遇したのはなんだったんだ?

 

 薄気味悪さを感じつつ、とりあえず我々は探索を続ける。街路を歩いていると、我々は不意打ちの射撃を喰らった!建物の中から、機関銃をぶっ放されているのだ。銃弾の嵐の中で私は地面に伏せ、グェンとベルカにも「フェーザー銃で応戦用意!」と指示を出す。

 だが、2人はいちおう私に従って銃を構えるも当惑している。「艦長、なぜ道に寝転んでなきゃならないんですか?」グェンは雨あられと降る銃弾の中に、平然と立っているではないか!

 やがて射撃音も止み、私は2人に助け起こされる。「ホクト・・・疲れているのか・・・?」と、ベルカは心配そうに鋭い瞳で私の表情を覗きこむ。

 

 やがて大きな建物に突き当たったので入ってみることにした。どうやらここは図書館のように見える。受付机の上に新聞らしき情報カプセルがあったので持ち去ることにした。今までの一連の奇妙な事件の手がかりになるかもしれない。

 幸い図書館はコンピュータ管理されていて、まだ非常用電源は生きていた。コンソールスイッチを入れると「こんにちは、読書家さん、今日の主題は何にしますか?」と暢気そうな電子合成音が響き渡る。私はこの惑星の歴史を検索してみるが、最新の記述でも数年も昔だ。

 小一時間もすると、目ざとさでは定評のあるグェンが何か見つけたようだ。興奮して私に駆け寄ってきた。「艦長、天文学のファイルを見てたんですが、宇宙ワープの可能性を持つと思われるブラックホールがあるんです。288星区です!」

 さすが調達に長ける男、グッドジョッブだ、グェン!いちばん欲しい情報を手に入れたので、これ以上ここにいる意味もない。私はトラベラー号に帰還するよう、ビーム乗船指示を出した。

 

 トラベラー号に戻った私は、真っ先に心配そうなソフィー医務官による精神鑑定を受けさせられた。しかし私の精神も肉体も健康そのものだ。宇宙船の針路を紫色の恒星に向け、恒星マグナス星系から離脱するあいだ、私はDr.セルゲイ科学官に先ほど入手した情報カプセルを渡し、言語解析を行わせることにした。

 やがて時間もそんなにかからず、Dr.セルゲイ科学官は「興味深い発見がありました」と報告してくる。

 

○惑星トラックスはかなり進んだ文明を持っていた。

○しかし新聞発行の数年前に、異なる2つの思想による大論争が起こった。科学万能主義の「進歩派」と自然生活への回帰を唱える「後退派」である。論争はやがて冷戦に発展する。

○対立の過程で、後退派は進歩派が強力な幻覚剤を開発したのを知った。進歩派は幻覚剤を後退派に使用する計画であったが、両派間の交渉の末、薬のストックを全て宇宙空間に廃棄することに同意した。

○だが事故が起き、薬を積んだロケットは大気圏上で爆発する。その結果空気中に拡散し、惑星の全住民がひどい幻覚に襲われるに至った・・・

 

 新聞が発行されたのは、この問題が持ち上がった最初の頃らしい。

 「・・・なるほどね」私は奇妙な出来事の原因を全て理解した。全ては幻覚で、我々は過去の遺物にいっぱい喰わされたというわけだ。

 「まあ、全く人騒がせな科学というのも、残念ながらこの大宇宙にはあります」科学官のDr.セルゲイは、皮肉というスパイスを効かせて微笑んだ。「たぶんこの幻覚は一過性のもので、あの惑星を離れれば後遺症もないでしょう」

 「まったく、気が狂ったのかと心配しましたよ、艦長!」グェンが陽気に笑った。「うん・・・私も・・・です・・・」ベルカがそれに続く。「夢を見るのは少年の頃だけに・・・いてぇー!」尻馬に乗ってきたパウロ技官の尻を、からかいすぎだとマイヤー保安官がたしなめの意味をこめて、蹴っ飛ばした。

 思わず談笑がもれるブリッジ内。

 

 さあ、紫色の恒星が見えてきた。ここには惑星キュールマターがある。

 

 

 

人口抑制係に拘禁される --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 この星系の第二惑星は、生命の存在に理想的であると走査機が告げる。地表では、かなり洗練された知的活動が行われている可能性が高い。どうやらここが高文明を有する惑星キュールマターだ。ブラックホールに関する何らかの情報を得るには、ここは勝負どころのようだ。先進科学に詳しいDr.セルゲイ科学官と、その護衛役のベルカ警備員を上陸班員として選び、私達は着陸ビームに乗った。

 着陸したところは街路だ。建築様式は異星風だが、人影が全く見当たらない。しかし道の向こうで機械音が聞こえてきて、奇妙な乗物が我々の方に向かってくる。一種の浮上車のようだ。

 穏便なファーストコンタクトの用意をしていると、ヘルメットに内蔵された翻訳機が突然何かの声を聞きつけた。「こっちだ、早く!」見回すと、人間くらいの大きさの昆虫めいた異星人が、自分の建物内に入れと差し招いている。我々は言われるままに従って、建物の中に駆け込んだ。

 「間に合ってよかった!通りでPCどもに見つかったら大変だからな!」親切そうな異星人はそう叫ぶ。

 

ホクト「惑星キュールマターの住民の方ですね。私は地球人のホクト・サワムラです。地球連邦軍偵察船トラベラーの艦長を務めています。」

異星人「地球だって!そんな星聞いたこともないぞ!お前ら侵略者か?」

セルゲイ「いえいえ、敵対する意志はありません。母星に帰るため、ブラックホールの座標を探しているのです。

異星人「なんだ、そういうことか・・・」

ホクト「誰か天文関係に詳しい方はご存知ありませんか?」

 

 私とDr.セルゲイの柔和な口調に安心したのか、相手は落ち着いた。「さっき“PC”と言いましたが、その方が支配階級者なのですか?」とDr.セルゲイが尋ねると、異星人は悲しそうに首を振り、こう言うのだった。PCとは人口抑制係のことだよ」と。

 彼の話によると、医学が発達したこの惑星には、もはや自然死が存在しない(!)。だがそれだと人口が増加する一方なので、人を減らして余裕を作る必要がある。そのため、PCには理由なしで自由に人を殺す権利が与えられているのだそうだ。「戒厳令の時刻を過ぎても外に出ているところを見つかってたら、君も確実に殺されていたよ・・・」

 想像を絶する制度に、思わず顔を見合わせる我々。そこで突然ドアが開き、鎧を着た異星人が3人ずかずかと入り込む。

 「この建物にいたか、外へ出ろ!」PCの隊長株が叫ぶ。「違う、この方たちは戒厳令のことを知らない惑星外からの訪問者で・・・」「やかましい!」 ZAP!! 先ほどまで我々と話していた親切な異星人は、PC隊長が突きつけた指からほとばしった電撃に胸を貫かれ、絶命した!

 マサイ戦士の魂を持つベルカが対応行動をとり、豹のようにしなやかな動きでフェーザー銃を構える。しかし私は「よせ!」と彼女を止めた。この星は我々より進んだ技術を持っている。銃の撃ち合いでは、あまりに分が悪い。

 「・・・おとなしく外に出よう。だが、我々の事情も聞いてくれ」と私は交渉するが、PCは「この時刻に外に出るのは違法だ。罰は死罪に決まっている」と有無を言わせず、たぶん犯罪者移送用であろう乗物に乗せようとする。

 ならばやむをえん!私はベルカとDr.セルゲイにアイコンタクトをとる。そして我々は乗り込むようなふりをして・・・PCのうちの1人を飛びかかって襲う!

 できるならば彼を人質にとろうと思っていたのだが、ものすごい力だ!!あっという間に地面に3人とも吹き飛ばされてしまった。「おろかな犯罪者どもめ!」PCは我々を拘禁して車に乗せ、乗物は発進してしまった。

 こうして死刑囚となった我々を乗せて、車は一路郊外へと走り出す。

 

ベルカ「車を止めろ・・・ここから出せ・・・!」

ホクト「無理だベルカ。彼らに理屈は通じない。体力を温存しよう」

ベルカ「ううっ・・・」

セルゲイ「それより艦長、気づきましたか?」

 

 小声で話す私とDr.セルゲイ。さきほどの取っ組み合いで健闘したのはベルカ警備員だ。倒れながらも奴のヘルメットをひったくって外したのだ。するとそいつはスイッチを切られたように、不自然な格好のままぴたりと動きを止める。しかし隊長が落ちていたヘルメットをまた被せると、たちどころにまた動き出す・・・という光景を、しっかり我々は見た。このことは、無慈悲なこいつらから逃げる際に、何らかの手がかりになるかもしれない(この惑星における技術点チェックの際に-2ボーナスを得る)。

 我々を収監した車は、半時間ほど後に大きな丸い建物の外で停止した。他にも同様の移送車があり、この建物には大勢の異星人が連行されていく。彼らはみな、抵抗せずに粛々と来るべき死を受け入れているようだ!

 「強制収容所、ってやつですかね」Dr.セルゲイが皮肉たっぷりにつぶやく。「私・・・死ぬのか・・・ここで・・・?」ベルカも不安そうだ。

 「大丈夫、チャンスはある。こんな理不尽なことで死ぬわけにいくか!」と、私は彼らを励ますのだった。しかし、そんな私も笑顔が引きつっている。

 我々は他の囚人と共に3列縦隊で並ばされた。そして収容所内を歩かされ、行き着いた先は、がらんどうとした大きな部屋だった・・・急いで行動しなくてはならない!

 

 

 

収容所からの脱出 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 収容所に収監された私は、とりあえず船に連絡をとり、現在の窮状を伝えようとした。しかしリストバンド型通信機を試してみるものの、雑音がするばかりだ。

 「完全な電波障害か・・・」頭をかくDr.セルゲイ。しかし!PCの異星人は、ある周波数でじっと動きを止めて動かなくなるのだ。スイッチを切るとまた活動を始める。「そうか!」それを見てDr.セルゲイが何か考え付いたようだ。ぶつぶつ推論を口にしている。

 我々は大きなゆったりとした部屋に入っている。そして武装したPC達が部屋の奥にある開け放しの戸口を抜けるよう、罪人たちを誘導している。戸口からは鈍く赤い光が・・・

 分子破壊光線だ。まちがいない!我々は列の最後尾に並ばされた。整然と処理されていく罪人たち。背筋に冷や汗が走る。私は叫んだ。「Dr.セルゲイ、結論が出たのなら、早く報告してくれ!」

 Dr.セルゲイは技術点チェックに成功した。「艦長、もう一度通信機を!周波数オメガ、最大出力で!」

 私は言われたようにする。すると部屋中のPCの動きが止まった!「彼らは生き物そっくりに作られたアンドロイドなんです!」そして通信機の電波が、完全に彼らの行動を阻害する悪質なジャミングをかけたわけだ。我々は脱兎の如く処刑部屋を飛び出した!

 

 我々は通路の角から角へ警戒しながら移動しつつ、複雑な作りの施設の中央にあるコンピュータ室を目指す。私たちの船へ何度か連絡をとろうとしたがつながらない。とすれば、電波障害を発生させ続けている装置が絶対そこにあるはずだからだ。

 そして通りかかった部屋の一つが、紛れもない通信室だ!中にはPCアンドロイドが2体いるが、私が通信機の出力を上げると、やはりフリーズする。続いてベルカ警備員が高分子ナイフでヘルメットをぶちぶちっと頭部から分離させて、彼らを無力化した。Dr.セルゲイが「これなら私にも扱えますよ!」と、一心不乱にコンソールを操作する。やがて・・・

 「こちらトラベラー、上陸班員の誰か、聞こえますか?こちらトラベラー、チクショウ、返事しやがれっ・・・このっ」母船にいるパウロの声だ!

 「ゴンザレス技官、私だ。ホクト艦長だ。いやしくも地球連邦の軍人ならば、感情的に取り乱すな。」茶目っ気たっぷりに私は返答する。「ああっ、艦長、生きてましたかっ!地表からの発信電波が途絶して心配してたんですよ〜」泣きそうなパウロの声が返ってきた。

 安堵してため息をつくDr.セルゲイと私。「いやまったく、惑星キュールマターの調査はひどい目にあったが、幸運なことに上陸班員は全員無事だ。すぐビーム乗船させてくれ。この地点の座標は254.352.114.1125だ。繰り返す、座標は・・・」

 

 こうして我々は命からがら宇宙船トラベラー号に帰還したのだった。

 我々が遭遇した事実の詳細を聞くと、マイヤー保安官は激昂する。そして今すぐ報復としてフル武装で強襲上陸しましょうと提案した(ドイツ系の彼には、かようなホロコーストについて特別な感情がある)。しかしここで戦闘して余計な火種を蒔くこともないし、クルーの損失も怖い。こんな過酷な社会システムの惑星は自滅するに決まっているのだから、と、私は彼をなだめるのに一苦労だった。

 今回の遭遇でいちばん得をしたのは、実はパウロ技官かもしれない。ベルカがお土産とばかりに持ち帰ってきたPCの軍制品ヘルメットを与えられ、嬉々として改造に着手し始めた。自室にこもって食事以外は出てこなくなり「まるで艦船模型を与えられた子供みたい・・・」とソフィー医務官も呆れ顔だ。

 そして数日たった後、「じゃじゃーん♪見てくださいよ、これを!」彼は、このヘルメットの電子配線を改良して、私の頭に完全にフィットする防具を作り上げてきたのだった。実に進んだ科学の産物と、パウロ技官の才能が結合したこの部品は、高感覚ヘルメットとして進化したのだ!具体的にはこれを被ると、私の技術点に+1ボーナスを与えてくれる。まったくもって素晴らしい才能だと、クルー全員が彼を見直すのであった。

 

 さて、ここから先の針路としては、3.6光年先に生命が存在する可能性のある星系がある。とりあえず私はその星を次の目標地点に設定した・・・。

 

 

 

雨の惑星クリバ --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点12/12

 

 この星系には、中くらいの大きさの青緑色の惑星があり、そこには知的生命体の集団がいくつか見受けられる。さっそく私はビーム着陸を決断した。今回の上陸班員は私と、パウロ技官、ソフィー医務官、マイヤー保安官だ。

 

 着陸した我々をいきなり雷雨が襲ってくる。どこも雨でびしょぬれだ。ここは異星人の村らしきものを見下ろす岩場である。そのうち、長い首と切り株のような足を持った、ずんぐりした体型の3人の異星人が我々を確認した。そのうち1人は村に戻り、残る2人は尖った長い棒を構えて、我々の方に向かってくる。私は彼らがそばまで来るのを待ち、害意はないことを翻訳機で丁寧に説明する。しかし彼らはまだ疑っており、とりあえず長老の元に連れて行かれた。

 「かなーり時代遅れな種族ですね」パウロ技官の言うとおり、文明レベルはかなり低そうな村だ。例えるならばヨーロッパの中世くらいか。広場の中央の大きな家に長老はいた。かなりの皺が刻まれた大柄な異星人だ。

 私が礼儀正しく挨拶すると、向こうの警戒は薄れる。とりあえずこの惑星を住人について質問してみた。長老の話によると、ここはクリバという名の惑星で、遅れた文明ながら、畑仕事をしてみな平和に暮らしていたとのこと。

 「畑仕事?こんな雨の中で?」とソフィーが信じられない顔をする。長老は悲しげに、そう、この数年は悪天候による不作が続いている。飢饉や疫病に見舞われ、村は壊滅寸前なのだそうだ。彼らは天候を司る雨神様という存在を信じており、その神が下した罰により、この冷たい雨が続いているのだ、と。全くもって迷信的な信仰だ!

 「いや、雨神様は実在するのだよ。ここから2時間ほど行ったところにある、お城に住んでいなさる」と長老。雷雨の中で見上げると、確かに山の上に前時代の要塞らしき建造物が見える。

 「ふうむ・・・あそこに誰がいるか・・・大体想像つきますよ。」と、光学双眼鏡で目視するマイヤー保安官。「おそらく、この星の原住民よりも高文明の、どなたかでしょうな。そして無知な民衆に怖れられてお山の大将ってわけだ」

 

 ここで職務上、道義的な良心の呵責が生じたのだろう。疫病に苦しむ村の人々を放っておけないと、ソフィー医務官が異星人を治療する許可を私に求める。我々に対する彼らの友好度が上がるのならば、もちろん拒否する理由もない。さっそく彼女は村人達の小屋に入り、まるで修道女のように手厚い看護を始めた。

 ソフィー医務官が技術点チェックに成功する。「発熱がひどいですね。おそらく新型ビールスによる重度のインフルエンザでしょう。ワクチンを打ちますね」と病因をつきとめ、テキパキと仕事をしていく。

 「うああ、ありがてえ」「よく効くお薬をくだせえ」「痛みが、痛みが消えるう・・・」と、彼女の施す先進治療術により、疫病に苦しむ異星人たちの病状はみるみるうちに好転していく。そして彼女は「女神様じゃ、救いの女神様じゃ!」と原始的な住人達から崇められるのだった。そして手持ち無沙汰に外をうろつく男3人・・・。

 ところが、治療を終えて私の元に戻ってきたソフィーは、顔が青ざめている。

 

パウロ「どうしたんだよ、ソフィー?」

ソフィー「いえ、何でもないわ。ちょっと気分が悪く・・・ゴホゲホっ!」

ホクト「ちょっと待てソフィー医務官・・・(額に手をあてる)うわ、すごい熱だ!」

ソフィー「すいませんキャプテン、私もどうやらこの病気に・・・(ばたんっ)」

ホクト「ソフィー、ソフィー!おいっ!!」

マイヤー「とりあえず安静に寝かせましょう。くそ、なんて星だここは!」

 

 医務官の職務倫理としてがんばり過ぎたのが仇に出たのか、ソフィー医務官もこの病気に感染してしまったようだ。

 運試し・・・吉。ソフィー医務官は自分作成のワクチンをうち、自分の仕事の正確さを自らの身体で証明することになった。彼女の病状は回復に向かう。今は眠っているが、明日になればもう元気になることだろう。

 さて、これからどうすべきか。ソフィーが眠っている隣の小屋で、私とパウロ、そしてマイヤーの男3人は、小会議を開いた。この原始的な惑星クリバではブラックホールの情報など望めないだろう。とすれば、これ以上変な病原菌を植えつけられる前に、さっさと船に乗って離れた方が利口だ・・・と、3人が意見の一致を見たとき、よろよろとソフィーが入ってくる。

 

ソフィー「行きましょう・・・」

パウロ「ソフィー、寝てないとダメだよ!」

ソフィー「私なら大丈夫です。それより、彼らが言う雨神とかいう人に会って、この雨を停止させないと、もっと原住民に犠牲が出ます」

マイヤー「いや、しかし・・・」

ソフィー「医学に携わる者として看過できない事態です」

 

 私はこれでもクルー全員の性格は把握しているつもりだ。いつもは万事控えめなソフィーだが、こうなると、テコでも動かないくらい頑固になる。

 

ホクト「わかった、ソフィー医務官。君の病状が回復しだい、雨神の城に向かおう」

ソフィー「ありがとうございます、ホクト艦長!」

 

 翌日までに気合で彼女は体調を回復させた。長老に教えられた道に沿って、我々は丘陵地帯にある建造物に向かう。彼らの言う“雨神様”がどんな者かはわからないが、とにかくこの天候を停止させるよう、交渉せねばなるまい。

 

 

 

雨神の城に潜入する --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 原住民いわく神様が住むという山上の建築物の門まで近づくと、武装した1人の衛兵が行く手を阻んでいた。どうもガラの悪い雰囲気で異星人の傭兵のようだ。「ハッ、神様があんなヤクザな奴を雇いますかね!」パウロ技官が呆れた声を上げる。

 「全くだ、さっさと障害を排除してしまいましょう」マイヤー保安官がフェーザー銃をショック目盛に合わせて斉射するが、残念ながら射撃は外れてしまう。相手は気づいた!しかしその瞬間、私は間髪いれず自分のフェーザー銃でショック射撃を行う。予期せぬところから不意打ちを喰らった衛兵はどすんと倒れる。

 「ふう。フォローありがとうございます。キャプテン・ホクト」私に礼を言うマイヤー。相手は鎧を着ているので、スタンさせるならエネルギー放出をやや強めにしたほうがいいのだ。さあ、中に入ろう。

 我々は城門に近づき、フェーザー銃を使用してキーロックを溶かし、大扉を開けた。陰に隠れながら慎重に移動して本丸を目指す。だが“雨神”がいるであろう中央の建物の入り口は3人の衛兵で守られていた。さあ、ここでの選択肢は2つ。

 

1)衛兵に近づいて雨神のもとに案内しろと言う

2)フェーザー銃を発砲する

 

 相手の武装もフェーザー銃である可能性が高い。とすると、ここまで侵入してしまった不審者である我々に対して、有無を言わさず発砲する危険もある。相手は我々の姿に気づいていない・・・とすれば・・・。私はフェーザー銃を引き抜いた。マイヤーとパウロがそれに続く。毒を喰らわば皿までだ!

 フェーザー戦闘が始まる。これはいかに先制攻撃を命中させるかが、勝利のカギだ。ただし彼我間には相当の距離があるので、両方とも射撃チェック(技術点チェック)の出目に+1ペナルティを受ける。さらに我々は物影に隠れているので、相手の衛兵達はそれに加えて出目に+1ペナルティが加わる(ただし我々側も、ソフィーとパウロは戦闘外要員なので技術点を-3して戦闘に臨まねばならない)。

 

【護衛1 技術点7

【護衛2 技術点6

【護衛3 技術点7

1R先攻 ホクト(技術点11) → 衛兵1

       射撃チェック (ホクト/9) 命中 衛兵1気絶

      パウロ(技術点8)、ソフィー(技術点7) → 衛兵2

       射撃チェック (パウロ/9) 外れ (ソフィー/9) 外れ

      マイヤー(技術点10) → 衛兵3

       射撃チェック (マイヤー/5) 命中 衛兵3気絶

1R後攻 衛兵2(技術点6) → パウロ

       射撃チェック (衛兵2/9) 外れ

2R先攻 ホクト(技術点11) → 衛兵2

       射撃チェック (ホクト/8) 命中 衛兵2気絶

 

 やや戦闘に不慣れなパウロとソフィーが手間取ったものの、見事な先制射撃で我々は戦いのペースを握り、一方的に勝利した。急いで気絶した衛兵達の体を目の届かぬ所に追いやり、我々は中央の建物に忍び込む。もう少しで大神殿の神様とご対面だ!

 

 

 

人騒がせな商人ブラン・セル --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 しかし・・・そこは予想していたような大広間でも謁見室でもなく、最新型の操作パネルで覆われた大きなコンピュータ室だった。部屋の中央、大スクリーンの前に一人の小男が腰を下ろしている。彼は我々を見ると不敵な含み笑いをもらす。「ほほう、これが侵入者達か。ひょっとして問題解決の手伝いをしてもらえるかもしれないな」

 「あなたがこの気候の原因なのですね!」抗議するソフィー医務官など、どこ吹く風といったところで、彼は我々に状況説明を始めた。彼の名はブラン・セルといい、元々は星間貿易商人である。彼の身の上話はこうだ。

 

○とある惑星に惑星制御コンピュータを輸送する途中、宇宙船の故障でここの惑星クリバに漂着してしまった。

○荷物の引き取り手に事故を連絡したのだが、先方は「言い訳は聞かん!」と一方的に注文をキャンセルしてきた。

○このままだと母星に戻っても破産は目に見えているので、惑星クリバに住み着くことに決めた。

○幸い、最新の知識を持ち合わせていたので、原住民に神と見なされ、まんざらでもない生活だった。惑星制御コンピュータを使用して(彼が言うには)原住民に豊穣を与えていた。

○ところがコンピュータの天候計画装置に異常が発見される。もちろんこの星のテクノロジーでは修理不能な故障である。

○もともと湿度の高い惑星で、無理して好天を続けてきたせいか、大気中の雲は大変な量の雨を蓄えていた・・・そして・・・

 

 「・・・制御がきかなくなって、この豪雨災害というわけだ」ブラン・セルは肩をすくめる。この人騒がせな小男め!だが、彼はこう提案してきた。「君達に惑星制御装置の知識があって、私がもう一度天候を制御できるようにしてくれたら、コンピュータの天文知識の中から君達の宇宙に帰る方法を見つけてあげられると思う」

 喰えない奴だが、確かに魅力的な提案に聞こえる。よし、話に乗ろう。私は科学官のDr.セルゲイをトラベラー号からビーム着陸させて呼び寄せた。

 「こりゃまた年代物の装置ですな・・・」Dr.セルゲイはブツブツ言いながらも、技術点チェックに成功。彼の力により、天候制御プログラムを解析し、新しいプログラムを読み込ませることができた。あとはパウロ技官がちょこちょこっと配線修理して、惑星制御コンピュータは回復する!

 

 惑星クリバに快晴の空が戻る。雨は止んだのだ。パウロ技官によると「頑丈に補修しといたので、あと100年くらいは余裕で持ちますぜ!」とのことだ。原住民たちも喜ぶことだろう。

 もちろんブラン・セルも大喜びで、コンピュータ内の天文知識情報の中からブラックホールについて検索してくれる。しかし、いくつか見つかるのだが、どれが適切なブラックホールかはわからない。それでも、次元転移を成功したいならばワープ速度3で接近する必要がある、ということがわかった。

 それが有益な情報なのかはいまいち不明だ・・・。そもそも、必要とする「時間座標」と「位置座標」とは、何の関係もないではないか!

 しかしまあ、これで惑星クリバに好天が戻り、原住民の生活が改善されるのならば・・・それはそれで、今回は意義のある上陸行動だと言える。私の国の言葉で「情けは人のためならず」ということわざがある。きっとここでの善行は、後々の強運として還元されることだろう。私はそう自分を慰めることにした。

 

 こうして宇宙船トラベラー号は、原住民の感謝の声をバックにしつつ、惑星クリバを離れて別の星に向かうのであった。

 

 

 

パウロ技官の死 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 心機一転、次なる惑星に向かう。ワープ空間から出てくると、赤い惑星が確認できた。そこに向かおうと減速を始めたところで、だがもう一つ、小さな灰色の惑星も近づいてくる。私はこちらを先に調査することを決めた。

 この星は小型惑星で生命が存在しない。だが、スキャナーが何らかの電波を受信した。私はその信号が発せられている地点に無人偵察機を飛ばすことにした。

 

 だが、この決断を、私は生涯かけて後悔することになる。

 

 地表は岩だらけで草一本生えていない。そして我々の無人偵察機は、見たことのない機種の航空ユニットが墜落している映像を届ける。そこに乗り組んでいるはずのパイロットは影も形もない。機内の通信装置が救助信号らしきものを自動的に発し続けているようだ。他には惑星上に見るべきものはないので、無人偵察機を引き上げさせ、トラベラー号の格納庫の中に収納する。ふう、まったくの無駄骨だった・・・。

 

 恐るべき事態はここから始まったのだ。

 最初に異変を報じたのは、帰還した無人偵察機のメンテナンスのため、格納庫で作業をしていたパウロ技官だった。「艦長、偵察艇の帰船を手伝った技術スタッフを3人失いました。3人とも死んだんです!」

 何だと!ブリッジ内は一時騒然となる。ソフィー医務官が治療カプセルを携えて急行しようとするが、Dr.セルゲイ科学官が止めた。

 

Dr.セルゲイ「未知の病原菌かもしれない。病み上がりの君が今行くのは危険だ!」

ソフィー「しかし!」

マイヤー「もし、病原菌だとしたら?」

Dr.セルゲイ「論理的に考えれば、感染源はあの惑星に降りた無人偵察艇しかありえない」

ホクト「パウロ!至急、偵察艇を船外に放出しろ!」(通信機で怒鳴る)

パウロ「アイ・サー!キャプテン!」

 

 いつもの朗らかさとは程遠い、切迫したパウロの声色に緊急さが伝わってくる。無人偵察艇はトラベラー号から切り離され、惑星の大気圏に突入して墜落していった。しかし・・・未知の病原体はみるみるうちに広がり・・・今や機関区全体がレッドゾーンと化した!パウロは切迫して現状を告げる。「さらに2名、病原体に感染!もがき苦しんでます、早く誰か来て!」

 

※本文指示によると、ここで2d6を振り、2つとも1または6が出たら

 つまり2,7,12のいずれかの出目であったら技官は死ぬのですが・・・

 なんと、出目は1ゾロでした!!(これホント)

 

パウロ「ダメだ、俺も、あああああ!」

ソフィー「待っていて、今、ウィルス・データベースを検索しているから!」

パウロ「息が詰まる、くそ・・・うぐっ・・・」

ホクト「おい、どうした、ゴンザレス技官、応答しろ!!」

パウロ「艦長・・・俺の・・・サッカーボール・・・」 ガチャ。ツーツーツー・・・

 

 突然に船内通話が切れた。そんな、まさか、パウロ!!

 私は受話器にむかって「応答しろ!」と怒鳴り続ける。だが、もう彼の声は聞こえてこない。感情的にうろたえるままの私と違い、技術点チェックに成功したDr.セルゲイが、冷静に打開策を提案してきた。「艦長、汚染箇所を全て密閉しましょう」

 隔壁が閉鎖され、とりあえずこれで病原菌がトラベラー号船内を侵食し、新しい誰かが感染することはなくなる。だが、問題は汚染箇所で倒れ、苦しんでいる仲間だ。

 

グェン「早く特効薬を作らないと、パウロが、パウロがっ!」

ベルカ「ソフィー、まだ・・・か・・・!!

ソフィー「私だって精一杯やってるの、話しかけないでっ!」

 

 ソフィー医務官が美しい長髪を振り乱してキーボードを叩くも、汚染区域内で生命反応を記す光点が、1つ、また1つと、消えていく。だめだ、彼女の力を以ってしても間に合わない!

 

Dr.セルゲイ「キャプテン・ホクト、端的な処理解決方法があります・・・」

ホクト「言うな。私だって真っ先にそれを考えたさ」

Dr.セルゲイ「この病原菌が空気感染であるのは確実です」

ホクト「ああ、その通りだ。だが、それは・・・」

Dr.セルゲイ「艦長、クルー全員の命が、あなたの指揮にかかっています!」

 

 私は目を閉じ、息を深く吸い込んでから、一つの命令を下した。「マイヤー保安官、汚染区域内の空気を排出したまえ」

 

マイヤー「!!!キャプテン・ホクト、そうすると汚染区域内の乗員は・・・」

ソフィー「窒息します!医務官として断固・・・!!」

ホクト「大気ポンプを作動させろ、空気を全部外に出せ!汚染区域内の乗員は船外宇宙服を着用すればいい!マイヤー、聞こえているのか!実行しろ!時間がないぞ!」

 

 躊躇する心優しいマイヤー保安官に対し、叩きつけるように私は指示を出す。そうだ。私だってわかりきっている。猛然と侵食する病原菌に襲われた瀕死の身体で、パウロが船外宇宙服を着用できるわけがないことを。

 だが、地球連邦軍規定により、トラベラー号の運行に総責任を有する艦長である、私の命令は優先して実行される。毒素を有する汚染空気は速やかに船内から排出された。科学官の調査の結果、全船内がオールグリーンであることが確認される。未知の病原菌の恐怖は、最大効率の追求により、消え去ったのだ。

 

 機関室でパウロ・ゴンザレス技官の遺体が発見された。

 第一発見者のグェン警備員が言うには「最初の彼女からプレゼントされたんですよ!」と彼が陽気にうそぶいていた、愛用のスパナをしっかり握って、安らかな寝顔のような表情で絶命していたらしい。

 「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」すすり泣くソフィー医務官。彼女の検視の結果、彼の体から残留毒素は検出されない。せめて身体だけでも地球を見せてやろうと、遺体を冷凍保存することにした。

 私はブリッジで、安全が船に戻ったことを宣言する。「諸君、ご苦労だった。各員の尽力により病原菌の危機は去った・・・」 クルーの表情は硬い。「・・・全員、若干の疲労が溜まっているようだから半舷で休憩を取ること。Dr.セルゲイ、3時間たったら私を起こしてくれ」

 

 そして自室に戻り、一人きりになったのを確認してから、私はむせび泣いた。

 広い大宇宙の中で、このとき、本当に、私は孤独だった。

 

 

 

虎穴に入らずんば虎児を得ず --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 3時間後、自室のブザーが鳴る。私は飛び起きた。

 「艦長、時間ですが・・・」と先に休憩を済ませたソフィー医務官が、気遣わし気に船内通話殻声をかけてきた。「ああ、ありがとう、今行く・・・」

 ブリッジにはパウロの後任がいた。今回の事件での技術スタッフの唯一の生き残り、ネイ・ムレス技官補だ(能力値は原技術点9・原体力点22)。カナダ系の21歳男性。今まであまり面識がないが、最後の技術専門職なので大事にする必要上、彼は上陸班員に指名できないことは確かである。

 いつものように艦長席に座ると、ソフィー医務官がコーヒーを運んでくれた。いつもよりちょっと濃い目のエスプレッソだ。これでパウロの死を忘れられるはずもなく、気持ちが切り替えられたかどうかもわからない。だが、軍士官らしい平静は取り戻すことができた。

 だが、あの陽気な若い技官がいないブリッジは、何と物寂しい感じがするのだろう!

 

 行く手には惑星が2つある。1つはさっき行き損ねた大きな赤い惑星。もう一つは青い惑星である。さらには高速で動いている小さな光点も確認できた。青い惑星・・・私は何となく地球を思い出し、郷愁に耽った。まさかこんなところに存在するはずもないが、どれも手がかりがないのなら、そこに近づいてみよう。

 青い惑星に近づいて軌道に乗ると、地表は知的生命体によってかなり開発が進んでいることがわかる。組織化された社会があるのだろう。

 コンタクトを求めていろんな周波数を試していると、スクリーンに異星人の顔が浮かんだ。全体としては人間に似ているが、体が細く、球根を思わす大きな頭と骨ばった手を持っている。彼はジョルセン第三惑星政府のイ・アベイル一等士官だと名乗った。私は礼儀正しく自己紹介し、この大宇宙で遭難している事情を説明する。

 

ホクト「侵略する意思も、敵対行動をとるつもりもありません。ただ母星に帰ることを第一任務としております」

イ・アベイル「ふむ・・・力になれるかもしれないし、なれないかもしれない。私の事務所で詳細を聞かせてくれないか?」

ホクト「わかりました。さっそく上陸班を編成して訪問しましょう」

イ・アベイル「いや、複数人の来訪は拒否する。責任者の貴官だけ来たまえ。座標は・・・」

 

 どうもジョルセン第三惑星の異星人は、我々地球人よりも知能が発達しているらしく、イ・アベイルは私を見下した態度をとっているのがありありとわかる。だから何かが引っかかる・・・。

 だが、高度な先進技術を持つ星ならば、ブラックホールの情報も有しているに違いない。私は「承知しました、私一人で伺います」と彼に連絡した。

 通信が切れた後、収まらないのは私の無事を心配するクルーたちである。「あまりにも危険です!」とマイヤーが厳しくたしなめる。「高確率の割合で罠です」と冷静に進言するDr.セルゲイ。そして「まさかとは思いますが、自殺願望など・・・」と私を心理分析しようとするソフィー医務官。私は「虎穴に入らずんば虎児を得ず」なのだと根気強く彼らを説得した。

 私は努めて陽気に言う。「なに、心配はいらない。単なる責任者同士の会見交渉だ。すぐにブラックホールの情報を手に入れて戻ってくるよ。だがもし3宇宙日経過しても私が戻らなければ、副艦長のDr.セルゲイ、君が指揮を執れ」

 「縁起でもない!」とDr.セルゲイが何か言い返す前に、私は着陸ビームに乗って、彼らに手を振って笑みを浮かべると、ひゅん、と姿を消した。

 

 私がいなくなったブリッジではこのような会話が交わされていた。

 

マイヤー「おかしい。いつもならあんな無謀なことは絶対しない、慎重な人だったのに・・・」

グェン「おまけにちょっと陽気だったぜ。俺、手を振ってバイバイする艦長なんて、始めて見た」

Dr.セルゲイ「ソフィー、君ならどう見る、キャプテン・ホクトの心理を?」

ソフィー「そうね、やはりいつもと違います。」

グェン「具体的には?」

ソフィー「具体的に言えば、焦っています。ここ最近、ブラックホールに手がかりを見つけていないこと、そしてパウロの死・・・ベストを尽くしているにもかかわらず、成果が出ない。」

マイヤー「だから個人プレイか!それこそ、いつものキャプテン・ホクトなら言うだろうな。“落ち着け、連邦軍士官たるものうんぬんかんぬん”って」

ベルカ「ホクト・・・バカだ。」

グェン「へ?」

ベルカ「私、聞いたよ・・・ビームに乗るとき・・・小さく・・・つぶやいていたよ」

Dr.セルゲイ「君の並外れた聴覚で何を聞いたんだ?ベルカ?」

ベルカ「もうこれ以上失う人は見たくない。俺一人でいい、って」

 (しーんと沈黙するブリッジ)

ソフィー「(小声で祈る)なんて人!・・・でも・・・無事に帰って・・・お願い・・・」

 

 そんなブリッジ内の会話や祈りもつゆ知らず、私はイ・アベイルの事務所で最先端知能を有する異星人に面会する。告白するが、確かにこのとき、私の精神状態は通常ではなかった。連邦軍士官として失格といわれてもしょうがない。

 だが私の身と引き換えに、トラベラー号が地球に戻れるのならば・・・!

 

 

 

時空の狭間に踏み込む --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 ジョルセン第三惑星は、やはり科学の進んだ惑星だった。イ・アベイルの事務所に足を踏み入れると、机の天板は宙に浮いており、壁にはぐるりとホログラム映像が飾られており、イ・アベイル自身も空中に浮遊しているように見える。彼は私に「まあかけたまえ」と椅子に座るよう促す。何もないので用心深く腰を下ろしてみると、何か目に見えないものが私の体重を支えてくれる。

 イ・アベイルが通信機で2,3言発すると、奴隷階級の異星人が飲食物らしき物を乗せた盆を持って現れた。彼は「長旅で疲れたろう、どうぞ食べたまえ」と、私に薦めてきた。だがそれは・・・まるで飼い犬に餌をやるような目付きだ!

 幸い、今まで技術点も体力点も減少していないので、ここで無理に回復させることはない。というわけで私はその飲食物の摂取を固辞した。

 イ・アベイルちょっとむっとしたようだが、気を取り直し、首都を案内しようと申し出た。こちらについては拒否する理由もない。移動ベルトに乗り、いくつものチューブやトンネルを抜け、まるで昔のSF小説に出てきそうな未来都市を、彼は案内してくれる。

 やがて着いた場所は研究室の入口のドアだ。イ・アベイルが説明する。

 

 「この研究室では、時空間の入口を開発した。君の宇宙と我々の宇宙との間にドアをつける。だが、まだテストされていない。君に最初の被験者たる機会を提供してもよい。もしかしたら、これで君の宇宙に帰れるかもしれないし。」

 

 そう言うと部屋の隅にあるものを指差す。戸枠を大きくしたようなものだ。本当にこれが次元間の移動を可能にするものなのか?覗き込んでも中に見えるのは虚空の闇ばかりだ。

 

イ・アベイル「ちなみに実験は最終段階だ。ここから入り、また戻ってこれれば、次元間移動の安全が証明されることになる」

ホクト「あなた方の開発している次元間移動が実用段階に入る、と?」

イ・アベイル「そうだ。そのためには、崇高なチャレンジャーが必要だ」

ホクト「(にやりと挑発的な笑みを浮かべつつ)そのチャレンジの報酬は?」

 

 イ・アベイルは“この俺と取引するのか、原始人のくせに!”というような驚きの表情を一瞬浮かべたが、すぐに打ち消し、こう提案してきた。「私の持つブラックホールに関する情報をお教えしよう」

 

ホクト「OK、実験を引き受けましょう。ただし条件があります。」

イ・アベイル「何かね?」

ホクト「もし私がこの中でロストしてしまっても、ブラックホールに関する情報はいただきたい。軌道上で停泊しているトラベラー号にデータを転送してほしいのです」

イ・アベイル「わかった。約束しよう」

 

 この異星人たちは頭がいいことを誇りにかけている。だから最悪そういう事態になったとしても、約束を反古にすることはないだろう。そう私は直感した。

 彼と握手を交わす。全宇宙共通の、契約成立の証だ。

 技師の一人がキーボードに指示を叩き込む。ブーンと音がして入り口が作動し始めた。そして私は、意を決して戸枠の中に入るのだった・・・。

 

 中に入った瞬間、私は前のめりになって墜落した!

 「うわ、うわあああああ!」恐慌をきたして叫び声を上げるが、やがて、墜落しているのではなく、何もない空間を漂い降りていることがわかる。

 次第に周囲が明るくなった。時空と時空の狭間は、実体でできていないエネルギー(何と矛盾した言葉だ!)で構成された迷路図だ。ねじれたり曲がったり、分かれたり合流したり、まるで黒い虚空の中に広がる蜘蛛の巣のようだ。

 私は足元を探るように慎重に歩き出した・・・。

 

『やがて行く手は左右の分かれ道に着く』

『しばらく続いた後に、また左右に分かれる』

『曲がりくねりながら続いた後で、また別の左右の分かれ道に着く』

4本の道が出会う地点だ。手前から二本が合流し、また二本に分かれて左右に伸びている』

 

 ・・・ ・・・ ・・・

 

 全く手がかりがない以上、この迷路を当てずっぽうで進んでいくしかない。

 果たして私は、時空の狭間から、無事帰還することができるのであろうか・・・???

 

 

 

ノリ・メ・タンゲレ(私に触れてはいけない) --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 たぶんここでは、時間の意味もないだろう。

 だからもう、どれくらい歩いたかわからない。だが非常食レーションの減り具合からすると、虚空に突入してから3日はゆうに経過していてもおかしくはない。トラベラー号は無事だろうか・・・そんなことを漠然と考えつつ、私はただひたすら歩く。

 

 右、左、右、左 ・・・

 

 次々と遭遇する左右の分かれ道。気のせいか、何度も同じ分岐点に戻っている錯覚も覚える。10数回、この決断を繰り返しただろうか。すでに私の足は疲労を通り越して棒のようになっている。

 

 だが・・・ やがて・・・ ついに・・・!

 

 !!! 私は歩き続けた末、ついに道の終点に辿り着いた。

 

1)『道を降りて虚空に足を踏み入れるか?』

2)『それとも道を後戻りして最後の分かれ道を通り越し、その前の分かれ道を右に折れるか?』

 

 ここまできて引き返す手はない。また虚空の迷路を彷徨することになるのはゴメンだ。よし!私は(1)を選択し、前に進もうとする・・・そのとき!

 私は見た気がした。前方に広がる虚空の中にパウロ・ゴンザレス技官の姿を。

 決して私はオカルト主義者ではないし、(この時代の普通の人間と同じく)霊魂など非科学的なものだと捉えている。だが彼は確かにそこにいた。悲しそうな表情で笑みを浮かべつつ、私を両手で押しとどめるような格好をしていた。

 私の足が止まる。

 「そうか、ここから先は、来てはいけないのか・・・さようなら、パウロ・・・」

 私はそうつぶやくと、引き返し、別の道を行くことにした。

 

 やがてそちらの道も終点に辿り着く。勇気を出して、足を踏み入れる。

 

 すると!何か実体を持つものに足が支えられた。電気的なブーンという音がして閃光に目がくらむ。私は戻ってきた。イ・アベイルと技師達が出迎える。実験は成功したのだ!

 イ・アベイルは私を連れて事務所に戻り、私の脳波をモニターで観測した結果、いくつかの興味深いデータが見つかったと興奮気味に話してくれる。

 

イ・アベイル「特にここだ。ほら、大きく精神波が増幅され、君は歩行前進をやめて引き返している。今までの犠牲者の例からすると、実際ここで次元漂流を起こす危険はかなり大だったのだよ」

ホクト「(無表情で沈黙する)・・・」

イ・アベイル「だが、君は踏みとどまった。いったい何があったのかな?」

ホクト「ああ、それは、かけがえのない部下が守ってくれたのです」

イ・アベイル「???」

 

 まあ、彼に理解できる観念ではないだろう。私自身、十分に理解できていないのだから。

 イ・アベイルは言葉を続ける。次元間移動に開発の道筋がついたにしても、まだまだ実用には時間がかかる。君達の宇宙船を手っ取り早く元の宇宙に戻すには、この戸枠よりずっと大きな入り口が必要だ。と述べる。そして星図を持ち出してきた。

 「私の調査によると、近いうちに159星区でブラックホールが発生する兆候がある。」そう言って彼は骨ばった指でその区域を示してくれる。私は目指すべきブラックホールの「位置座標」のうち、1つを手に入れた!

 私はさらにこの付近の星系について詳しい情報を求める。すると彼は、ここから数光年の距離にある鉱業惑星マリニを訪れてはどうか、と提案する。それなりに高い文明を有する異星人たちが住んでいるそうだ。

 

 こうして私はジョルセン第三惑星を離れ、トラベラー号に帰還した。私の持ち帰ったデータにはクルー全員が喜んでくれて、閉口したことに帰艦記念パーティまで企画していた。うれしいことはうれしいが、とりあえず艦長として叱ることにする。「これはいったい何の馬鹿騒ぎだ!」

 

 「3宇宙日後は私が指揮を執る命令でしたので、艦長代行として許可しました。まさか、お忘れですか?」いつもは沈着冷静なDr.セルゲイが、めずらしくいたずらっぽい笑みを浮かべていた。「まあ艦長、たまにはいいじゃありませんか」と、マイヤー保安官がビールのジョッキを手にして近づいてきた。

 

マイヤー「(小声でひそひそと)最近、クルーの士気が低下気味でした。いいストレス解消になったと思います」

ホクト「それはやはり、パウロの死のことで・・・?」

マイヤー「いえいえ、みんな艦長のことを心配していたんですよ」

ホクト「わかったよ、私にもブランデーを!」

 

 やけになって私はぐいっとグラスを空ける。「今回の情報入手は艦長の殊勲ですね!キャプテン・ホクトに乾杯だ!」まるで自分のことのように、グェンが得意気に、高らかに宣言する。

 私は回るアルコールの残り香に咽びながら、私はこう答えた。「いや、これは、ゴンザレス技官の殊勲だよ。パウロの・・・うっぷ!」

 しかしそのつぶやきは、私に泣きついてきたソフィー医務官にかき消された。新しい発見だ。彼女は泣き上戸だったのだ・・・。

 

 

 

煉獄の惑星 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 ジョルセン第三惑星を離れ、我々は生命体の存在を探して長距離スキャンを行った。すると、小さな黄色い惑星が発見されたので、私はトラベラー号の針路をそちらに向ける。

 だが、その星は火山が多く、地表が熱い。スキャナーには生命体が存在されていないようだ。しかし何かしらの手がかりがあるかもしれない。私は探険するためビーム着陸を決断した。今回の上陸班員は、私と、地質学の知識がある科学官のDr.セルゲイ、そして戦闘要員のグェンだ。

 我々が惑星の地表に姿を現すと、猛烈な熱気が襲う!特殊服の冷却装置を全力運転しなければならない。

 大気成分を調査すると、硫黄、メタン、一酸化炭素・・・まあ人の住める環境でないことは確かだ。周囲の地面が小刻みに噴火して溶岩を噴出している。まるで聖書に出てくる煉獄のような光景だ。

 

ホクト「グェン、生命の存在を探ってみよう」

グェン「ダメですよ艦長。地表温度が高すぎてスキャナーが上手く作動しません」

Dr.セルゲイ「これじゃあ調査になりませんね」

 

 とりあえず我々は徒歩で探険してみる。大きなクレーターの縁に近づいたとき、突然背後の地面が裂け、そろって体勢を崩してしまう。足元には灼熱の溶岩流が!「う、うわ、うわあああ!!!」 ここで3人とも技術点チェック。技術点を上回る目を出した者は足場を失って縁から転がり落ち、下の地獄穴で一巻の終わりだ!

 

 ホクト(2d67)で成功。

 グェン(2d65)で成功。

 Dr.セルゲイ(2d612・・・彼の技術点は12なので辛うじて成功!

 

 落下していく科学官の腕を、まるでアクション映画のように、すんでのところでつかむ私とグェン。

 

Dr.セルゲイ「うわあっ、助けて、死ぬ!」

ホクト「セルゲイ!手を離すな!」

グェン「大丈夫です、ゆっくりと引っ張り上げて、よし、よーし!」

 

 はあ、はあ、はあ・・・。無事彼の身体を担ぎ上げ、クレーターの縁でへたり込む我々3人。

 また優秀なクルーを失うところだった。私は、これ以上の調査は危険だと判断する。そして我々はトラベラー号へ早々に帰艦することにした。地獄を脱出できてやれやれだ!

 

 さて、ここを離れると、長距離スキャンの結果、最寄りの星系は2.3光年先にある大きな灰色の惑星だ。そこがどうやらイ・アベイルの言っていた鉱業惑星マリニらしい。私はコースを設定してそちらの方面へトラベラー号をワープさせる。

 ワープアウトすると、船の右舷に大きな宇宙港が浮遊していた。立ち寄ろうかとも考えたが、幸い、ここまで宇宙船戦闘を一度も行っていないため、トラベラー号の船体は別段何の破損もしていない。よって修理の必要性もないため、この宇宙ステーションは航過する。

 

 やがて大きな灰色の惑星が見えてきた。ここではどんな遭遇がトラベラー号を待っているのだろう・・・。

 

 

 

宇宙鉱夫どもの競技会 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 この鉱業惑星マリニには知的生命体が存在しているのは確実なので、私はありとあらゆる周波数で交信を試みる。しばらくすると返信があり、おちょぼ口と平たい鼻を持つ異星人がブリッジのスクリーンに映った。彼はマリニ鉱山出張所のクテイトと名乗る。

 

クテイト「ようこそマリニへ!諸君らはいいところに来た。ちょうど競技会開催期間の真っ最中でね、よかったら着陸して覗いていくといいよ!」

 

 気さくな口調で話しかけてくるクテイト。彼らの言う競技会とは、マリナイト鉱石を採掘する鉱夫達のために催される娯楽とのことだ。郷に入っては郷に従え。ここで信頼関係を築ければブラックホール座標を教えてくれるかもしれない。または宇宙船推進燃料として最適なマリナイト鉱石を取引することもできそうだ。

 私が訪問に同意すると、さっそく着陸の座標を教えてくれるクテイト。だが彼の送信機は旧型のようで、着陸座標の設定が電波混乱にあってしまった。223.473.85だったのか、それとも223.473.83だったのか、最後の彼の言葉を上手く聞き取れたか自信がない・・・。

 とりあえず上陸班員を私の他に2名選ぶ。今回は荒くれ鉱夫と渡り合うことを想定して戦闘重視だ。マイヤー保安官とベルカ警備員がいいだろう。そしてうろ覚えではあるが、とりあえず223.473.83に座標を合わせてビーム着陸することになった。

 

 惑星マリニに降り立った我々はほっとする。選んだ座標は正しかったらしい。異星人のクテイトが笑みを浮かべて我々を事務所に招きいれてくれた。

 会談は終始友好的に進んで、私はトラベラー号の置かれている状況を話す。誰かこの星に、ラックホールの情報を教えてくれる者はいないだろうか?

 

クテイト「ふーん、たぶんいるだろうがね、今は競技会の最中でみんな浮き立っていて・・・」

 

 ここでクテイトの机の上のブザーが鳴った。クテイトは「あ、ちょっと失礼。闘技場に呼ばれたようだ」と言って、そそくさと中座してしまった。

 ぽつんと取り残され、1時間ほど待たされる我々3名。「いささか非常識ですな!」とマイヤー保安官はご機嫌斜めだ。私は「まあ、彼らにとって重要なお祭りなんだろう・・・」と鷹揚に構えていた。娯楽の少ない宇宙鉱夫にとってみれば、異星人とのファーストコンタクトよりも外せないイベントなのかもしれない。

 

 やがてドアが開き、1台の浮遊ロボットが入ってきた。我々の存在を感知すると、何やら指令中枢と交信している模様だ。そして「ツイテキナサイ、ピピッ!」と、この部屋から出るよう促す。

 やれやれ、やっとクテイトとの会談再開か、と思って素直にロボットに従う我々3名。こいつが案内した部屋に入ると、また我々は放っておかれる・・・。

 誰も来ない・・・。

 さすがにこれはおかしい。母船に戻った方がいいのではないだろうか。そう思った我々はこの部屋から出ようとする。ところが!バリバリバリ!目に見えないエネルギーフィールドによって体が弾き飛ばされた。我々は知らぬ間に捕虜になっていたのだ。

 

ベルカ「だせー!うぉー!」

ホクト「(前にも同じシチュエーションがあったなあ、と思い出しながら)ベルカ、ここは体力を温存しておいた方がいい。」

ベルカ「ううぅ・・・」

マイヤー「私としたことがミスをしました!もっと早く罠だと感じ取っていれば!」

ホクト「まあ気にするなマイヤー。相手の出方を見よう。しかしどうも解せない。なぜ我々をこうして捕らえておく必要があるのだろう?」

 

 その答えはあまり時間が経たずに導かれた。この施設の衛兵と監督官がやってきて、こう尋ねる。「競技会に出場するつもりか?」

 いや我々はただこの惑星に立ち寄っただけで・・・と、喉まで出かかったが、ここで私は頭を働かせる。クテイトが我々を罠に嵌め、競技会に出場させようとしていたのは明らかだ。先ほどクテイトから「闘技場」という言葉が出たからには、荒くれ者の宇宙鉱夫が好む何らかの戦闘競技なのだろう。物珍しい異星人の戦い方を鑑賞して、新鮮な感動に浸りたい、そんなところか。

 これに参加して勝利すれば、ある一定の名誉と尊敬を得る可能性はある(幸い、今回の上陸班員は戦闘に長けたマイヤーとベルカである)。だがぐずぐずと拒否し続ける臆病者ならば、我々に存在価値はない。そして現状、我々にここを脱出する手段がないとすれば、末路は容易に想像できる。良くて鉱山送り、悪くて原子分解処分だ。

  とすれば・・・。私はマイヤーとベルカにウィンクする。これは地球独特のゼスチャーだ。異星人である衛兵と監督官にわかるはずはない。だいたい私を同じことを考えていて、さらに私の意図を察したマイヤーとベルカの表情が、ここでさっと変わった。そう、戦士の顔だ。臨戦態勢に入ったのだ。

 なんと頼もしい部下だ。私はまるでスペースオペラの主人公になったように、自信たっぷりな気分を演じて答えることにする。

 

 「ええそうです。我々をバトルフィールドに案内してもらいたい。」

 

 

 

闘技場の英雄 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 衛兵達は我々を控室に連れて行く。そこには他の競技者が数名おり、どれもこれも、うちのマイヤー保安官と互角の勝負ができるほどのこわもてぞろいだ。

 だが、話しかけてみると気のいい男達だ。彼らはクォーク・テストに出場する(クォークとは鋭く長い嘴を持つ宇宙怪獣である)。フェーザー銃で3040匹のクォークを相手に運試しをして、勝利すれば自由と相当量のマリナイトを報酬として手に入れるらしい。

 では、我々が行う競技はどういうものか・・・と質問しかけたところで、ブザーが鳴った。先客は闘技場に追いやられていく。「がんばれよー!」とすっかり親しくなったマイヤー保安官が、彼らにエールを送った。笑顔でうなづき返す彼ら。アスリート同志の交流が生まれた。

 この控室の上が闘技場らしい。天井からワーワー、と歓声が聞こえてくる。やがて一団と大きく「ワーっ!」とボルテージが上がった後に、しーんと静まり返った。

 そして、我々の目の前を担架が通り過ぎていく。そこに乗せられているのは、先ほどまで我々と歓談していた先客だ! 残念ながら夢破れたのだろう、ものの見事に切り刻まれ、血まみれの物言わぬ肉塊となり果てている・・・。ここまでやるのか!

 「こりゃあ、手ごたえのありそうなスポーツですね」と、マイヤーがつぶやく。私は無言でこくり、とうなづいた。やはりこの選択は失敗だったのか?

 だがもう後には引けない。やがて我々の出番が来た。

 

 我々はまず身体にぴったり密着した戦闘服に着替えさせられた。そして頑丈なヘルメットと、剣や槍、棍棒といった前時代の奇妙な白兵武器を持たされる(ちなみに私は以前、技術点+1を加えられるヘルメットを持っていたので、支給品のヘルメットは被らない)。

 そしてトンネルをくぐって出ると・・・耳もつぶれんばかりの大歓声が我々3人を包む。ここは広々とした闘技場だ。その中央にいるのは黒色で両手にチタンブレードを装着した重装備の殺人ロボット(=人を傷つけてはならない、というロボット三原則プログラムを解除したロボット)だ。我々を感知すると近づいてくる! さっそく私はロングソードを、マイヤーはモーニングスターを、ベルカはジャベリンを構えて応戦体制をとった。このとき、観客の興奮は最高潮に達する。

 この殺人ロボットは卓越した戦闘能力を有し、我々3人の攻撃それぞれに対応可能である。つまりは通常の白兵戦闘と異なり、全員と1回ずつ戦うことができる。手ごわい相手だが体力点は低い。ここに勝算がありそうだ。

 

【殺人ロボット 技術点10 体力点4

1R 攻撃力(殺人ロボット/15)(ホクト/1ゾロ)(マイヤー/17)(ベルカ/17) ホクト/体力点-3

   殺人ロボット/???

 

 恥ずかしいことだが気負いすぎて私は転倒してしまい、殺人ロボットの刃をまともに食らう。ところがそれが格好の囮となったのか、マイヤーとベルカが続けざまに一撃を浴びせた。ところが殺人ロボットは破壊されない!

 

ホクト「あたたたた・・・ん、なぜ壊れないんだ!それ相応の打撃は与えたはずだ!!」

ベルカ「・・・奴の殻、固い!」

マイヤー「シャイセ(クソ)!奴の装甲は強化金属プラスチックです!」

ホクト「どうする?逃げ帰るか?降伏するか?」

ベルカ「マサイの戦士は逃げない・・・弱いとこ・・・見つける・・・!」

マイヤー「とにかくガンガンぶっ叩けば、奴の装甲も凹んできますよ、キャプテン!」

ホクト「よし、戦闘続行!」

 

 地球連邦軍の名誉にかけて降伏などするものか。戦闘は再開される。だが、奴の装甲はあまりにも固い。我々がダメージを与えたとき、1d6を振る。1-4ならば攻撃は無効だ。5-6ならば殺人ロボットの体力点を1点だけ引ける。

 

2R 攻撃力(殺人ロボット/16)(ホクト/17)(マイヤー/19)(ベルカ/22

   装甲貫通チェック(ホクト×・マイヤー×・ベルカ○) 殺人ロボット/体力点-1

3R 攻撃力(殺人ロボット/16)(ホクト/19)(マイヤー/15)(ベルカ/17) マイヤー/体力点-2

   装甲貫通チェック(ホクト○・ベルカ×) 殺人ロボット/体力点-1

4R 攻撃力(殺人ロボット/14)(ホクト/18)(マイヤー/18)(ベルカ/15

   装甲貫通チェック(ホクト×・マイヤー×・ベルカ×)

 くそ!なんて硬い装甲だ!普通なら体力点を16点削るくらいのダメージなのに!!

 奴はまだ立っていて両腕の刃を振り回してくる!

5R 攻撃力(殺人ロボット/15)(ホクト/17)(マイヤー/22)(ベルカ/17

   装甲貫通チェック(ホクト○・マイヤー×・ベルカ×) 殺人ロボット/体力点-1

 だが、私の渾身の一撃で頭部から黒い煙が漏れ出した。もう少しだ!

6R 攻撃力(殺人ロボット/16)(ホクト/22)(マイヤー/17)(ベルカ/19

   装甲貫通チェック(ホクト×・マイヤー×・ベルカ×)

 マイヤーがベルカに話しかける。ベルカがこくっとうなずいた。

 彼は私に怒鳴る「艦長、私達が牽制します、そのスキを突いてください!」

7R 攻撃力(殺人ロボット/18)(ホクト/21)(マイヤー/13)(ベルカ/14) マイヤー/体力点-2

 ベルカ/体力点-2

   装甲貫通チェック(ホクト○) 殺人ロボット/体力点-1 ←Destroy!

 

 マイヤーとベルカは、あえて緩慢な動きで殺人ロボットの攻撃をひきつける。奴のチタンブレードが両者の身体に叩き込まれ、彼らは苦痛のうめきを上げる。だが、両腕が開いたおかげで、胴体が丸見えだ。胸部と腹部の境目にある装甲板の継ぎ目に、私は思い切り剣を刺し込んだ!

 ビビィー!!!!けたたましいアラーム音が鳴り、奴はどうと倒れる。そして巻き起こる大歓声。我々は勝利したのだ!観客である鉱夫たちの熱狂的な賞賛の中で、我々3人はハイタッチをかわす。疲労してはいるが、なかなかにいい気分だ。

 こうして、私達はこの惑星の英雄になった。鉱山のお偉方から相当量のマリナイトをもらい、さらには宇宙飛行本部に連れていかれ、本部長に面会することになった。

 驚いたことにその本部長とは、我々を引っ掛けたクテイトだ! 彼は陳謝すると、お詫びとして1枚のプリントアウトされた用紙を提出してくれた。それによると、我々が探しているブラックホールの位置座標は083星区にあるらしい。

 

クテイト「しかしすごい連携攻撃、見事なチームワークだった!今年のバトルは大盛り上がり、競技会は大成功だ!なあ、ここに残る気はないかい?君達ならチャンピオンとして英雄になれる。私の目に狂いはない!」

ホクト「マイヤー、ベルカ、残るか?」

 (2人とも、ぶんぶんぶん、と首を振る)

ホクト「ということですクテイト本部長。我々のチームは合意に至りませんでした」

クテイト「そうか・・・契約金が折り合わないのなら・・・」

ホクト「(クテイトの言葉に被せて、きっぱりと言う)大変恐縮ですが、チャンピオンの座は返上させていただきます!!」

 

 もうこれ以上の会話は無用。私は礼儀正しくチャンピオンベルトを彼に返還した。そして残念そうなクテイトを後に残して、我々は乗船ビームで母船に戻り、この星を旅立つことにする(この時点で私とマイヤー保安官とベルカ警備員は、体力点が2点回復する)。

 なお、我々が持ち帰った抱えきれないマリナイト鉱石は、トラベラー号の乗員みんなで分配することにした。無事地球に帰れれば、それなりの危険手当額にはなるだろう。

 

 

 

高磁力の恐怖 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点17/18 運点11/12

 

 ここから先の針路の候補は2つある。

 

1)宇宙に浮かんで回転している巨大な車輪上の建造物をめざすか?

2)超空間に突入して小さな黒い惑星まで一気にジャンプするか?

 

 (1)はおそらく先ほど通過したのと同じ形の宇宙ステーションであろう。宇宙船の修理などが行えるのかもしれないが、現状、我々の乗り組むトラベラー号に修理の必要性はない(あったとしても、パウロ技官亡き今、有効な修理が行えるとは思えない)。よって私は(2)を選択し、ワープ空間に突入した。

 超空間を脱すると、そこは小さな黒い惑星だ。スキャナーを使うが地表に生命体の痕跡はない。さらに繰り返し走査すると、ここは密度の高い惑星で地表は金属性であることがわかる。さっきの火山惑星と同じで、無駄骨かもしれないが・・・。しかし、ここまで集めたブラックホール情報は、位置座標はあるものの時間座標を入手できていない。この星に手がかりがあるならば、いやあってほしい、と、私は着陸を決断した。上陸班員は、私と、Dr.セルゲイ科学官、そしてソフィー医務官だ。

 

 酸素が存在しないので宇宙服を着込んだ我々は地表に降りる。着陸した惑星は黒い岩がごつごつとした不毛の惑星で・・・やはり・・・何も見当たらない・・・。

 

Dr.セルゲイ「何もありませんね。要するにこの星は、ただの石ころです。」

ホクト「やはり手がかりなしか・・くそっ!」

 

 私は地面の岩塊を悔し紛れに放り投げた。なぜかその岩は、地表でバウンドせず、ぴたりと地面に吸着した。

 さすがに焦ってくる。果たして我々は地球に還れるのか・・・。そんな私の焦燥を悟ったのか、ソフィーがつとめて明るい声で私に話しかけてきた。

 

ソフィー「艦長、くさらないくさらない。ちょっと骨休みできたと思えばいいですよ」

ホクト「いや、まあ・・・たしかに大気型惑星にはない、壮大な景色だな。」

 

 30分ほど我々は、気分転換として低重力空間のレクリエーションを楽しんだ。そして・・・

 

ソフィー「さあ、酸素がそろそろ切れますし、トラベラー号に戻りませんか?」

ホクト「そうだね。荒涼な光景にも飽きた。セルゲイ、トラベラー号に現在座標を送ってくれ。」

Dr.セルゲイ「いや、それが・・・」

ホクト「どうした?Dr.セルゲイ?」

 

 通信が繋がらないのだ。

 

 我々は慄然とする。

 通信が繋がらないということは、母船に着陸ビームの座標を送れない。

 母船に着陸ビームの座標を送れないということは、我々は母船に戻れない。

 そして宇宙服内の酸素は・・・!!!

 

Dr.セルゲイ「そうか!この惑星の岩石は磁力を帯びてるんです!」

ソフィー「(息苦しくなりながら)だから・・・?」

Dr.セルゲイ「電波妨害が起こるんですよ。それも、ものすごいジャミングで!」

ホクト「3人同時に最大出力で発信しよう。チェックチェック!こちら上陸班のホクトだ!応答せよ、トラベラー号!!」

 

 だが応答はない。磁石の真ん中で3粒の砂鉄が何かを伝えようとしても、その圧倒的な磁力の前には無意味だ。

 1時間・・・5時間・・・10時間・・・酸素残量という、悪魔のカウントダウンが始まる。

 ときどき、数10km単位で外れた見当違いな地点が、ビーム光でぱあっと明るく光る。トラベラー号でも(おそらくマイヤーあたりが)パニック気味に、何とか我々を収容しようと、めくらめっぽうで着陸ビームを放出しているのだろう。くそっ、我々はここにいるのに!なんら知らせる手段がない!!

 我々は無駄な会話をして酸素を消耗することを避け、背中合わせに無言でじっと座る。そして母船からの着陸ビーム送信が運よくここにヒットしてくれるのを待つ。だがやはり次第に息苦しくなってくる。こんなところで緩慢な死を迎えるのか・・・?

 

ホクト「Dr.セルゲイ、あの着陸ビームが我々の地点にヒットする確率は・・・?」

Dr.セルゲイ「地表総面積から算出すると・・・0.00001%・・・いや、それ以下・・・です・・・ごほっ」

ホクト「ソフィー、酸素残量は?」

ソフィー「成人の呼吸量平均で・・・あと5分くらい・・・かな・・・キャプテン・ホクト・・・」

ホクト「ん?」

ソフィー「私・・・死にたくありません・・・」

ホクト「すまん。私のせいだ。焦ったばかりに君らを危険に遭わせた。」

ソフィー「伝えたいことがあるんです・・・」

ホクト「君の口から言わなくてもわかるよ。私は艦長失格だ」

ソフィー「いいえ違います」

 

 なぜか、ぎゅっと私の手を握るソフィー医務官。だがそれを最後に彼女は応答しなくなった。低酸素ゆえに失神したらしい。

 だめか・・・こんなところで・・・こんなくだらない判断ミスで・・・

 悔しくて涙が溢れてくる。私は上空を見上げた。空気がないので澄んだ星空だ。このように満点の星を眺めながら死ねるなら、「宇宙(そら)の一族」として本望ではないか。そう思って自分を慰める。いよいよ目がかすれてきた・・・

 

 ZAP! ZAP! ZAP!

 私の感傷は、いきなりフェーザー銃の発射音で吹き飛んだ。 

 見ると科学官のDr.セルゲイが最後の力を振り絞り、自分のフェーザー銃を地表に向けてぶっ放している。ついに錯乱したのか?いや違う、彼は技術点チェックに成功したのだ!

 目標となった岩石がフェーザー銃の熱線で白熱する。そうか!ここで私も悟った。トラベラー号の惑星スキャン装置には光熱探知能力もあったはずだ。

 私もDr.セルゲイと同じ岩に照射した。轟音で失神から覚めたソフィーも、セルゲイと私の行動に倣う。岩石が見る見るうちに溶けていく。3人で行えば、それ相応の熱源になるはずだ。

 気付いてくれ・・・頼む・・・!

 

 次の瞬間、着陸ビームが我々の頭上に降り注いだ!

 そして・・・我々は懐かしいトラベラー号の転送ユニット室内にいた。マイヤー保安官とグェン警備員が喜ばしげにハイタッチをかわしている。

 私は宇宙服のヘルメットを脱ぐ。ああ、空気だ!美味しい空気だ!

 

 我々はまたもや、何とか生き残ることができたのだ。

 (惑星から離れたので体力点が2点回復。原点まで戻る)。

 

 

 

星を司る子供 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 さあ、体調も十分回復した私は、ブリッジに戻り指揮をとることにする。もうなるようにしかならない。感情的に焦ることはやめて、どっしりと構えることにしよう。

 周りの宇宙空間をスキャンすると、前方に灰緑色の惑星がある。数時間で到着できる距離なので、今度はその星までトラベラー号を飛ばすことにした。惑星に近づくと生命、それも知性体が存在しているようだ。

 ファーストコンタクトを試みると、細く色白で、骨張った長い顔の異星人がスクリーンに映される。彼の名はラフと言い、ここはテリアル第6惑星という星だそうだ。「この星に着陸したいって?いいよ!じゃあ、座標を送るね!」まるで少年のような快活そうな声をしているラフの導きで、我々はビーム着陸を許可された。

 今回の上陸班員は、私と、グェン警備員、そして続けざまで悪いが、ソフィー医務官だ。我々は一瞬のうちに指示された座標地点へ姿を現した。だがそこは地表上ではなく、広大な反重力プレートの上だった!かなり下の方の地面には工場らしきものがいくつかと、その周りを農地が囲んでいる。我々は空中に浮かんだ台の上にいるのだ!

 我々を出迎えてくれたのは、ほっそりした3人のテリアル人と、その子供が2名。子供のうち1人が、私の手をつかみ「お兄ちゃん、こっちこっち!」と別の方向へ引っ張っていこうとする。

 「こらこら、お兄さん達は、大事な話があるんだよー」とグェン警備員がやんわりと子供を諭して拒否しようとするが「あの大人達にわかるもんか!早く来なよ!」と、子供は頑として聞かない。さすがに困るグェン。「艦長、どうします・・・?」

 そういえば何かの映画であったな。大人で悪人の陰謀を少年たちが突き止め、未然に大事故を防ぐストーリーだ。子供向けのよくできた話の映画であったが・・・。例えば、テリアル人の成人層が何かしらの罠を企んでいて、それを知らせようとしてるのかもしれない。

 私は3人の大人の方に「大変恐縮ですが、あなた方のご子息のお誘いに、先に招かれたいと思います」と丁寧に言葉を送る。すると驚いたことに、大人たちはそれを止めようともせず、ただ老人のようにゆっくりとうなづくだけだった。

 

 子供たちは我々をとある建物の中に引っ張り込む。そこには他の子供たちもいて、さながら少年探偵団のようだ。我々が入ってくると「異星人だ!」と興奮して騒ぐ。そのうちリーダー格の男の子がやってきた。その者は、先ほど我々と交信した、ラフだ!

 「ええ!ボクがファーストコンタクトをとったのか!」驚いて素っ頓狂な声を上げるグェン警備員。無理もない、手先が器用な彼ですら、惑星間通信機器の修得には丸1年を要したというのに。

 「ラフ君、えらいねー!」とソフィー医務官が現地人の信頼度を上げようと、保母さんのようにラフ少年の頭をなでてやる。

 ところがラフは迷惑そうにそれを拒み「ボク、ボク、と子ども扱いするな!この星の外務大臣に対して失礼だぞ!」と感情を害するのだった。

 

 彼が言うには、テリアル第6惑星は子供によって切り盛りされている。テリアル人は異常なまでの知性と持って誕生し、年をとるにしたがって大変な速さで老化現象が進むのだそうだ。だから誕生後すぐに高い社会的地位に就き、やがて成熟するにつれて、もっと若い子供にその地位を譲るらしい。

 「まさかそんな人種が存在するなんて!」医務官として興味が刺激されたのか、小声で深くソフィーが唸った。

 「なんてとこだよ、子供の言うことを聞く大人の星なんて、あべこべだ!」年長者を重んじるアジア系のグェンにも、この価値観が理解できないらしい。

 「僕から見ればね、よぼよぼの老人が宇宙船なんか動かしている地球人の方が、よっぽど危なっかしく見えるけどね!」と、ラフがむっとして反論する。

 

 テリアル人の特殊事情を知るわけがなかった私は、いや悪気はないのだ、と部下たちの非礼を詫びる。幸い、ラフは子供ゆえに思考が柔軟で、すぐに気分を切り替えて許してくれた。

 我々のトラベラー号が宇宙空間を漂流している事情を説明すると、ラフは同情して耳を傾けてくれる。そして我々の宇宙へ戻るブラックホールを探す手伝いを引き受けてくれた(何だかんだ言って、ソフィー医務官が甘えさせてくれたことに、まんざらでもなかったようだ)。

 「だけど条件があるよ」と、ラフはこの星を切り盛りする政治家の表情になって言う。「君たちの船に乗り込んで、武器装備や防衛装置の技術的説明を受けたい。我々の星にはないテクノロジーがあれば、それを吸収したいんだ」

 

 ぐっ・・・私は言葉に詰まる。前に一度、ガンジグ帝国人にトラベラー号を内部公開したことはある。しかし今回のように、惑星指導者に至るようなの高位の人物を、方面軍司令部の許可なしに連邦軍艦船に乗り込ませることは、重大な軍規違反である機密漏洩罪にあたるのだ。

 他の条件ではダメかと交渉するが、ラフもこの件については一歩も引かない。テリアル政府側にとっては、交渉が不首尾に終わっても何ら損をするところはないのだから、当然と言えば当然である。だが我々にとってみれば、ここで拒否したらブラックホール情報は得られない。

 なかなかどうして大した政治家だ!交渉の勘所で大人である私の方が振り回されている!

 

 少し時間をもらった後、私は決断を下して回答した。「わかりました。ラフ外務大臣の申し出を承諾いたします」

 「艦長!」「キャプテン・ホクト!」ソフィーとグェンが相次いで驚きの声を上げる。機密漏洩罪は軍法会議ものだからだ。

 「告発したければしたまえ。ソフィー、グェン。どっちみち別次元のテリアル第6惑星が、地球に攻め込む可能性はほぼ0%に等しい。とすれば、我々の持つテクノロジーを流出させることによる危険は見当たらないよ。」

 そしてにこりと笑い、私はこう言葉を続けるのだった。

 「私の任務は軍規を守ることじゃない。トラベラー号のクルー達を、無事に地球へ帰還させることだ」

 

 

 

約束を守る大人 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 そうとなれば話は早い、とばかりに嬉々としてラフはいくつかの建物を通りすぎ、我々を天文台に案内した。複雑な天体望遠鏡を操作しているのは、やはり子供だ。彼らはよどみなくコンピュータのキーボードを叩き、数秒足らずで検索結果情報が示された。この宇宙と我々の宇宙が重なり合うのは、21恒星日とのことだ。

 待ちに待っていたブラックホールの時間座標だ!これで位置座標と時間座標が入手できたので、地球に還れる目処が立ったことになる!

 

 「さあ、今度は君たちの番だよ!」とラフがニコッと笑う。そして研究員を連れてくるから、ちょっとここで残っていてくれ、と言う。ここで一瞬だけではあるが、この場に我々だけとなった。

 そのときすかさず、グェンとソフィーがひそひそ、と私につぶやく。

 

グェン「トラベラー号にいるDr.セルゲイに秘密連絡をしておきました。」

ホクト「・・・!!!」

グェン「ワープエンジンは我々を回収しだい、すぐに作動準備OKだそうです」

ソフィー「ですので今すぐ着陸ビームで収容されて、この星を離れましょう」

ホクト「ラフ君を置き去りにして?」

グェン「もちろん。そうすれば艦長は機密漏洩罪に問われません」

 

 そして我々はブラックホール情報だけ持ち帰ることができる。正しい、グェンとソフィーの進言は、全く妥当だ。しかし・・・

 

ホクト「グェン・・・君は、純粋な子供を騙す大人を、尊敬できたか?」

グェン「いや、それは・・・」

ホクト「ソフィー、君は?」

ソフィー「でも、それじゃキャプテンが!」

ホクト「私は、地球人として恥ずべき行動はしたくないんだ。」

 

 ひょっとしたら航海は失敗に終わり、我々は地球に戻れず、全員死滅するかもしれない。だが結果としてそうなったとしても、今まで訪れた星々には、我々の足跡は記録されている。それは地球人の代表としてファーストコンタクトをとった記録だ。だから悪し様に書かれたくはない。トラベラー号の誇り高いクルーの名を汚れた記述で残されたくはないんだ。それこそが、我々がこの大宇宙に存在した証なのだから。

 

 そう私が主張すると、2人は押し黙ってしまった。

 

ホクト(照れくさそうに)「これは全く感情的で理性の欠片もない考えだ。自分でもわかっている」

ソフィー「なんて・・・なんて人・・・」

ホクト「だが、すまない。譲れないよ」

グェン「申し訳ありません。出すぎた真似をしてしまいました」

ホクト「今回は不問にする。だが、もうこれで、この議論はおしまいにしよう。ほら、ラフ君がやってきたぞ」

 

 3人の子供からなる研究員を連れてきたラフは、まだ残っていた我々を見ると、ちょっと驚いた顔をした。

 「逃げ去ると思っていましたか?」私は先手を読んでラフに皮肉を利かせたジョークを言う。「あいにく地球人は義理堅い方でしてね。特に大人は」

 ラフはにやりと笑い返した。「テリアル人の子供並みにね・・・!」

 そして私は異星人を連れてトラベラー号に帰還した。驚いたのは母船にいたDr.セルゲイ科学官である。まんまとテリアル人を出し抜き、上陸班員だけが乗り込んでくるとてっきり思っていたからだ。私は艦長権限で、テリアル人を地球連邦軍偵察艦トラベラー号に招待した旨、クルー全員に通達した。そして連邦軍の一員として、信頼に満ち、尊敬に値する態度をとるよう厳命する(前代未聞ではあるが、超法規的措置というやつだ)。

 

 2時間ほど我々はトラベラー号の機関区を案内する。ラフは11つの装置をチェックし、それが何の働きをするのか科学官に質問してきた。Dr.セルゲイは、ええい、こうなりゃヤケだ、といった面持ちで正直に答える。

 大体の視察が終わったとき、ラフはこう結論付けた。「この船には・・・僕たちが参考にすべき部分はないね。」あっさりとそう言う。

 これには意外だった。「それはおかしい!例えばワープドライブなど、地球人の科学は、ある程度そちらの星を上回っている部分もあるはずだ!」と、当初の企みを忘れて、Dr.セルゲイは憤然と言い返す(「おいおい、いいじゃないか得る物がないってんなら」と呆れ顔のグェン)。

 研究班の子供技師は不満げな顔をしているものの、テリアル人の団体は、ラフの命令で今回の収集資料を全部その場で破り捨ててしまう。そして彼らは離艦を希望した。ラフは、ゆっくりと、言い含めるように私にこう告げた。

 

 「いやあ、我々が吸収する技術は何もなかったよ、キャプテン・ホクト」

 

 ・・・! そこで私は理解した。

 にやっと、ラフが私に笑いかける。

 

ラフ「すまなかったね。君の立場が悪くならないよう、僕なりに考えたつもりだ」

ホクト「まったく、何の役にも立てませんでしたが・・・」

ラフ「いや、君たち地球人は、信頼するに足る人種だということがわかった」

ホクト「お褒めの言葉感謝します。貴星の発展を心より祈念します。どうにも頭の悪い大人たちですが、祈ることはできます」

ラフ「こちらこそ、航海の無事を祈ります。還れるといいね・・・地球に・・・」

 

 こうして私とラフは友愛に満ちた握手を交わした。

 テリアル人が地表にビーム着陸したのを確認してから、我々のトラベラー号もゆっくりとこの星の軌道を離れるのだった。

 

 さあ、いよいよこの航海も終末に近づいている・・・。

 

 

 

勝負のとき --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 こうして私が指揮する宇宙船トラベラー号は、地球が存在する次元界を結ぶブラックホールについて「位置座標」「時間座標」2つを手に入れた。

 

 クルー達に動揺が広がっている。この果てしない探索行も、いよいよ終わりになるのか。懐かしい地球に帰れるのか。それとも・・・

 私はあえて沈黙を守り、自室に引きこもる。ここが勝負の時だ。他の雑念を払って慎重に考えたい。一人で静かに。だが、2時間ほどザゼンを組んで精神を集中するが、どうにも迷いが振り切れない!

 ここでブラックホールへ向かうべきか、それとも、決定的な情報を収集できるチャンスが、まだここから先にあるのか・・・。

 そのとき、艦長室をノックする者がいた。副艦長のDr.セルゲイ・ドミトリエフ科学官だ。

 

Dr.セルゲイ「キャプテン・ホクト。全乗組員を代表して“偵察”しに来ました」

ホクト「わかっているよ、セルゲイ。長い付き合いだからね」

Dr.セルゲイ「ええ、長い付き合いです」

 

 私とDr.セルゲイは微笑み、私は彼を部屋に招き入れるとブランデーを勧めた。任務中なので1杯だけ、カチンとグラスを合わせて乾杯する。ブリッジでの2人とは違う、リラックスしたムードがその場に漂った。

 

ホクト「初航海のときを覚えている?僕が駆逐艦ムラサメの艦長に着任したときだ」

Dr.セルゲイ「ええ。あなたはまだ16歳でした」

ホクト「・・・今はそのときより緊張している」

Dr.セルゲイ「大丈夫ですよ。あなたとコンビを組んでいるうちは、私は殉職しないと思います」

ホクト「何を根拠に?」

Dr.セルゲイ「勘です」

ホクト「・・・」

Dr.セルゲイ「最後は勘ですよ。艦長。どんなに理屈をつけたって、死ぬ時は死ぬ、生き残る時は生き残る。人間なんてそんなものでしょう。運命の女神様にはかないっこない」

 

 そう言ってうちの科学官はぐいっとグラスをあおった。まるでらしくない、一方的な科学否定に私は目を丸くする。そしてぷっと吹き出した。Dr.セルゲイも笑う。高らかな男2人の笑い声が狭い部屋に響く。

 これで決心がついた。私は彼に指令を下す。

 

ホクト「1時間後にクルー全員をブリッジに集合させてくれ」

Dr.セルゲイ「アイ・サー、キャプテン!」

 

 私はトラベラー号全乗員にブリーフィングを行う。地球への戻り方はこうだ。

 

 『位置座標の数値から時間座標の数値を引いて、答えの数値と一致するパラグラフへ進め』

 

 だがここで1つ問題がある。我々が手に入れた位置座標は3つあったのだ。

 

1)288星区  (2159星区  (3083星区

 

 このうちどれを選ぶかで結末が違ってくる。入手した時間座標は1つ(21恒星日)しかないので、すなわち進むべきパラグラフは

 

(1)288-21=「267」  (2159-21=「138」  (383-21=「62

 

 この三択だ。正しければ地球に戻れる。間違っていれば・・・。

 「ど、どうなりますんで?」とグェンが心配げに質問する。「こうなる」と答えて、私はあらかじめセットしてあった船内放送のスイッチを入れた。

 突然、古臭いTVゲームのGAME OVERのメロディが流れる!私のいたずらに意表を突かれて張り詰めた空気が緩み、クルー達が談笑を浮かべた。ブリッジ内に明るい雰囲気が生まれる。

 私は艦長として決定を伝えた。「正直に言うが・・・特に根拠はない、が、位置座標はジョルセン第3惑星で入手した159星区を採用したい。異論は?」

 誰も何も言わない・・・。ただ、じっと、私を見つめている・・・。

 それを私への信頼だと良い方に解釈し、私はトラベラー号をその針路に向け、ワープインした。

 

 私はコースを設定し、ブラックホールの手前でワープから脱した。Dr.セルゲイ科学官が入射角と速度を慎重に計算する。彼が私にうなずく。私はアイコンタクトでうなずき返す。準備は終わった!私は高らかに宣言する。

 

 「全乗員に通達!トラベラー号は、これより地球に帰還する!」

 

 やがて我々の宇宙船は暗黒空間に船首から突っ込んだ。

 ぐぐっ・・・強大な引力に捉えられるのを感じ、やがて操縦桿が微動だにしなくなる。私は全乗員に対し、座席に身体を固定するよう命じる。クルー達がそれぞれの信じる神様にブツブツと祈る声が聞こえてくる。

 突然、船が激しく揺れて加速が始まる。

 なんて激しいGだ!

 ぐんぐん増してくるGに気絶するまで、私は小声で、自分の下した決断に間違いがないことを自己確認していた。

 

 大丈夫だ。イ・アベイルからもらった158星区で間違いない・・・

 大丈夫だ。あのとき、次元の狭間でパウロが私を押し止めてくれた・・・

 大丈夫だ。その結果として得た情報だ・・・

 

 大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・

 

 

 

340!そして次の冒険への幕間 --Starship Traveller-- 

 

【技術点11/11 体力点18/18 運点11/12

 

 私はブラックアウトから目を覚ました。

 体が丈夫なため、すでにいち早く意識を回復していたマイヤー保安官に、他の乗組員も異常ないか点呼を取るよう命令する。すぐに彼から報告が上がってきた。全員無事のようでほっとする。

 だが、ここはどこだ?

 新しい次元界か、それとも地球の存在する、私の知っている宇宙なのか・・・。私は高いGでフリーズしていたスクリーンのスイッチを再起動した。心臓の動悸がはっきりと聞こえる。くそ、落ち着け、落ち着くんだ、ホクト・サワムラ!

 スクリーンに映された船外の光景は、満天の星空だ。我々は少なくとも宇宙空間にいる。

 

 突然、いちばん視力のよいベルカ警備員が「お、おお!おおおおお!」と感極まった叫び声を上げた。

 

ホクト「どうした、ベルカ!」

ベルカ「キャプテン・ホクト、私達、私達は・・・」

ホクト「ベルカ、顔を覆っていてはわからない」

ベルカ「あれ、あれを・・・見て・・・」

 

 ベルカが震える指で船外カメラを操作する。やがてその画像が拡大された。長距離スキャナーで辛うじて捉えた人工の構造物は・・・!!!

 

マイヤー「艦長!前方から信号です。準ステーション・アインシュタインと名乗っています!」

 

 紛れもなく地球連邦の宇宙ステーションだ!

 

グェン「うまくいったんですよ!」

Dr.セルゲイ「ハラショー!!(Great!!)」

ベルカ「帰れた。帰れたよ・・・」

ソフィー「見て!アインシュタインの向こうに、青い惑星が。なんて綺麗な・・・美しい・・・」

 

 ソフィーが示したのは、この航海で何度夢見ただろう。地球そのものの姿だ。

 情けないことに、私は歓喜の瞬間、ヘナヘナと艦長席で固まってしまい、椅子から立てないでいた。いろんな出来事が頭をよぎる。ガンジグ帝国とのファーストコンタクトに始まり、戦場の幻影、惑星キュールマターの強制収容所、雨の惑星クリバ、星間有毒ガスによるパウロ技官の殉職、時空の狭間の迷路、火山惑星の恐怖、コロシアムでの対ロボット戦闘、高磁力の惑星で酸欠しかかったこと、大人な子供のラフ少年・・・

 長かった。今回の航海は、とてつもなく長く困難な旅だった・・・

 

 と、感傷に浸る間もなく、涙を浮かべたソフィーが私の手をとって立ち上がらせてくれた。そして私と彼女は任務完了のハイタッチをかわし合う。

 

 かくて地球連邦軍偵察艦トラベラー号は、地球に帰還することに成功した。

 地球連邦軍による入念な大気圏外調査の後、ケープ・カナベラル宇宙港に着陸した我々を待っていたのは、報道記者たちによるフラッシュの嵐だった。

 すでに偵察艦トラベラー号の遭難事故は全世界の関心事であり、マスコミは記事をことさら英雄的に書きたて(ワープエンジンの故障を陰謀仕立てにすることも忘れずに)今回の航海について雨後の筍のようにルポルタージュや伝記を出版した。果ては映画まで作られて全世界で公開されることになってしまった(万事抜け目ないグェン警備員が本人役で出演していたのには、大いに驚かされた)。

 ここから約1年間くらいは、トラベラー号で見知らぬ宇宙空間を漂流していた方が、まだマシかと思えるほどの多忙さだった。

 

 だが、それもひと段落して、人々も私の顔に飽きてきた頃だ。

 ここまで読んでくれた賢明な読者諸氏にはもうおわかりだろう。私は、お互いに深く知り合ったソフィー・ルクレール嬢に求婚し、優秀な医務官はこれに同意した。式はつつましやかに執り行われ、トラベラー号の全乗員を招待したので、彼らから手厚い祝福を受けた。そのときの写真は今でも居間に飾ってある。

 その後もいろいろあったが、おおむね、私のチームは無難に任務をこなしていき、やがてそれぞれの道に進むことになった。

 Dr.セルゲイ・ドミトリエフ科学官は地球科学大学の総長になり、ゲオルグ・マイヤー保安官は装甲打撃師団の師団長に出世し、グェン・リン・ヤン警備員は民間に下って性格俳優として名を馳せ、ベルカ・ロバヤニ警備員は賞金稼ぎとなって星々を渡り歩いている。

 そしてパウロ・ゴンザレス技官の墓はメキシコにあり、我々は休暇を調整しつつ年1回、その場所に集まり、あの困難に満ちた航海の昔話をすることにしている。

 

 私、ホクト・サワムラもソフィーと幸福な家庭を築きつつ、無事、五体満足に45歳の退役を迎えることができた。

 私と愛する妻との間に生まれた、一人息子のハヤト・パウロ・サワムラは、今年で16歳となった。不肖な父親と同じ道を選び、来春から連邦軍士官学校に入ることが内定している。

 「見てあの顔、あなたの若い頃にそっくり・・・」と、ソフィーは昔を懐かしむように彼のことを話す。多少無鉄砲なきらいはあるし、親の贔屓目もあるが、確かに素直で正義感の強い青年に育ったと思う。

 彼の人生には、どんな冒険が待ち受けているのだろう?

 

 かくして「宇宙(そら)の一族」の物語は、まだまだ続いていくのである。

 

【『宇宙の暗殺者』へ続く】

【でもいったんファンタジー編に戻ります。次は『盗賊都市』です】