---------------------------------------------------------------------------------
その3
ゴードンの悪あがきと身の破滅、世界の中心で愛を叫ぶ少年、明らかになった礎石の謎、
そして、父の背中を追いかける聖騎士の決意と、闇に没した姉の宣戦布告について
---------------------------------------------------------------------------------
見事優勝したイエローエトランゼ号。今まで(八百長らしくゴールデンドラゴン号の圧倒的大差がついていたので)
こんなデッドヒートを見たこともない観客が、興奮してわあっとゴール会場の中央広場(91)になだれ込む。
ドネルガ「やった、やったぞ! 勝ったぞーい」 ファーザラード「賭けに勝って25,000オーブだ!」 リーン「正義は勝つのです!」
と、操縦席の3人が興奮して雄たけび。アレクは重圧が解けてふうっと、御者席で一息。
泣き顔なのか笑い顔なのかわからないくちゃくちゃの顔をしたハリーとボッシュが、英雄達の運転した馬車に駆け寄る。
ウィリアムは「ふっ、負けたよ・・・」と手袋を脱ぎ、勝者に拍手を(流麗な態度で)贈っている。
そんな中で、ティリオンは油断なく周囲に目を配る。絶対何かやってくるはずだ、あのどら息子が・・・
案の定、ゴードンは「審議、審議だ!このレースは不正である!」と怒鳴るも、観客の喧騒に消されている。
「くっ!」と悔しそうに何やら側近に耳打ち。するとどこからか・・・現れたぞレオンとレロン。2人組のアサッシンが。
わいわい群がっている群衆の影に隠れつつ、すたすた・・・と忍び寄ってくる。
しかしこれは油断なく見張っていたティリオンの<視認>判定で見つけることができた。不意打ちは失敗だ。
とはいうものの、なかなか今回のバトルフィールドは難儀である。
民間人のいるスクエアに入れないのはもちろんのこと、彼らはそれぞれ機会攻撃範囲(!)も持っているので、
脅威範囲を無視して隣接スクエアを移動するには<軽業>判定ないし「突き飛ばし」が必要になってくる。
いきおい、ローグ出身のアサッシンであるレオンとレロンが望むままに位置取りするわけだが
レオンは毒を塗ったダーツを構え、レロンは、じいっとハリーを凝視している。アサッシンは3ラウンド観察すると≪致死の一撃≫を行えるのだ。ヤバイ!
この時、いちばんの働きをしたのがウルフのローンだった。ティリオンの合図を受けると、ばう!とハリーに体当たり。
ひょろ長ハリー、対抗判定で成功するはずもなく「うわあ!狼だあ!」と地面に突き倒される。そしてローンはその上に乗っかってかばうことに成功。
アサッシンは舌打ちして、第一目標を切り替え。英雄達に毒ダーツを放つもはずれ。罪無き群衆のうちの一人が毒に倒れる。
ひいいっ!と、パニックになる群集。いかん。何とかここから彼らを避難させなくては・・・とアレク「マイアヘン神の元へ!こちらへ従いなさい!」
しかし、マイアヘン神はグレイホークでもマイナーらしく、目標値20の【魅力】判定に失敗。残念ながら見向きもせず、四方八方に動き回る群集。
ウルフのローンがここでも活躍。ばうばうばう!と牧羊犬のように動き回り、群集をひとかたまりにまとめた。
よし、射間が開いた! ティリオン、誓いの弓の文句を唱えつつ、≪速射≫で弓を放つ。今回から複数回攻撃できるのでまさにマシンガンのように
アサッシンのレオンにアローが打ち込まれる。しかし、弱っているがまだ立っている。そこにドネルガ突進! レオンは粉砕された。
リーンもアレクに続いて群集を避難させる。「はーい、ペイロア神のホーリーシンボルの元に集まってくださーい。こっちですよー」
【魅力】判定で20の出目を出し、先導してほとんどの民間人を戦場の外に出すことに成功した。(いつものことであるが、ちょっと凹むアレク)
こうなると多勢に無勢となってくる。アサッシンで残ったレロンはドネルガに毒ダーツを放つも、ドワーフの有り余る頑健セーヴでは完全無効。
そのうちに面白いもの好きのファーザラードがコンフュージョン! う・・・まだ民間人もいるのに、けっこうギャンブルな呪文を・・・
d%ランダム効果は「何もせず、つじつまの合わぬことをぺちゃくちゃとしゃべる」 ファーザラード「よし!」最高の結果だ。
レロンは、真正面にいるドネルガに向かって、自分の生い立ちを語り始めた!(笑)
あとは、民間人を巻き込まないよう、注意深く効果範囲を計算しつくしたファーザラードのウェブでレロンも無力化されたのだった。
あらゆる悪巧みが粉砕され、悔しそうに立ち尽くすゴードン。「く、くそう、こんな薄汚い平民相手に・・・!」
ドネルガ「もうオシマイだのう、どら息子殿!」ティリオン「こちらには捕虜もいる。この暗殺者、貴様にどんな命令を受けたのかな?」
アレク「それにレースの八百長疑惑。民間人の死者まで出ています。」
リーン「アネット=ウェインライト嬢への不法な求婚も、AHOはお見通しですわ!」 じりじりと詰め寄る英雄達。
ゴードン「くそ、くそ!僕にはドラゴングループがついてるんだ!パパ!」
そのとき、ゴードンの後ろから一人の老人がやってきた。彼の父、ドラゴングループの総元締め、ジム=ドラコトゥスだ。
ゴードン「パ、パパン この野蛮な人達が、僕をいじめるんだよう! なんとかしてよ、パパ!」みっともなく父にしがみつくゴードン
だが、これ以上悪あがきしてもどうしようもない・・・父は・・・父は・・・「息子が、すいませんでしたっ!」と潔く土下座した。(笑)
万事休す。へなへなへな・・・とその場にへたり込むゴードン。鼻水を垂らした情けない顔は、権勢を振るった金持ち息子とは思えない醜いものであった。
そして立派な父さんではあるが、ここまでいろいろ迷惑かけた息子を育てた責任は看過できないので、親子ともどもお縄についてもらうこととなった。
(おそらく全財産没収&市街追放、くらいが想像される量刑であろう)
そして改めて、イエローエトランゼ号の優勝者達に、賞金10,000オーブと勝利の月桂冠が授与された。
さらにいちおうチームリーダーのハリーには優勝杯も。照れくさそうに受け取るハリー。
もう彼のことを「キ○ガイ」なんていう奴はいない。明日から英雄だ。きっとボッシュの工房にも仕事を依頼する人がたくさん詰め掛けるだろう。
そして・・・「よ、よかったですわね、ハリー。お兄様の馬車が不調で・・・」と、心裏腹な憎まれ口を叩きつつ、赤面して何か言ってほしそうなアネットがいる。
「う・・・えっと・・・」もじもじするハリー。AHO、アネットの背中を後押し。ドネルガはハリーを後押し。
ほら、がんばれ、ハリー! 英雄達のワクワクする視線を受け、数分経過。意を決したハリーは、馬車に乗って、
(名前のプレートを「イエローエトランゼ」から「亜麻色の髪の乙女」に付け替えてから)こう叫んだ。
「アネット、僕は、君をこの馬車に乗せて、ウィニング・ランがしたいっっっ!!」
言えた!言えたぞ!よくやった! アネットは「そ、そこまで言うのならば、乗ってあげても、よろしくってよ」と笑顔でぴょんと飛び乗った。
ボッシュ「我が一番弟子よ、白のボタンを押せ!」 ぽちっとな。すると、馬車の後ろから、紐に結ばれた缶からが、がらんがらんと飛び出てくる。
(ハネムーンの馬車でよくある、あれですね、あれ) 「備え付けといて役に立ったわい」と悦に入ってにんまり笑うドワーフのドネルガとボッシュ。
こうして英知豊かな少年ハロルド=スティーブンソンと、誇り高き少女アネット=ウェインライトとの交際は、
グレイホーク市民全員が周知するところとなったのでした。
********************************************************
その夜の祝勝会で、ティリオンは父にある決意を話した。
仮にも一日だけの期間だったが、婚約者であったベアトリーチェと結婚することを。
(ここでティリオンのプレイヤーの遊戯の達人さんより、そのようにロールプレイした理由のコメントをいただきました)
「・・・約束したにしろ、ティリオンは好き好んで30歳以上離れたのベアトリーチェと結婚したかったわけではないです。
ただ、異郷の地で死んで、しかも自分が結婚を承諾した為に死んだと言われては、せめて何かの弔いをさせてあげなければ、本当に申し訳が立たないと感じていました。
特にティリオンの父とかつては恋仲であり、それ故孤独な一生を送ったという人生を聞かされると、胸が痛くなる思いでした。
その彼女がティリオンと籍を入れたがっており(少なくとも冗談で結婚話をしないだろうし、高齢の体を押してグレイホークにまで
出向かないでしょう。グレイホークにティリオンがいることを魔法で調べたようです)、ティリオンの顔を見ることすらできずに亡くなったならば、あまりにも哀れに感じてしまいました。
ティリオンが原因で、ベアトリーチェが死んでしまった。しかし、葬儀に参列することも最後の別れをすることもできない・・・
最後の冒険に出向かなければならないティリオンは、キーオランドの火葬場でベアトリーチェに謝罪するという機会を永遠に失ったのです。
結婚もできず、孤独に燃やされて逝く魂を孤独から解放する為には、死者と結婚してあげるくらいしか思いつきませんでした。
死んだ時に悲しむ家族がいないなら、ベアトリーチェの人生は一体なんだったのでしょうか?
ティリオンの想いは、「恋愛」ではなく「憐哀」でした。地位や財産などが目当てではなく、ベアトリーチェの鎮魂の為に死後婚に望み、彼女の死を悼む家族となったのです・・・」
すでに鬼籍に入った婚約者と婚儀を成すわけであるが、稀なケースだが、貴族社会では前例がないわけではない。
(・・・だそうです。DMも知りませんでしたが) しかし、不可思議なことに婚姻を結んでも財産の相続ができないという状況らしい。
そのことを半ば冗談口調で指摘した父親に対し、「それ以上彼女を侮辱するならば、親でも殴る」と本気で怒るティリオンであった。
父から婚姻の話を持ち出しており、かつての恋仲の女性が亡くなっているのに、それに対して失礼な冗談であり、金を目当てだと言われたことに、罪悪感と怒りを感じたのだ。
結局、彼の父クロニンはこの婚姻を認め、翌日ペイロア司祭リーン=スターファインの立会いの下、ティリオン一人だけの結婚式が厳かに行われた。
以後、ティリオン=セカンフォースはネヘリ家英公爵ティリオンと名乗ることになる。
もっとも、キーオランドではドーリンのネヘリ英公爵家はお家断絶で取り潰しとなってしまっているので、本国では未だに誰も認めていない称号ではありますが。
********************************************************
さて優勝の興奮も覚めやらぬまま、英雄達は翌日、グレイホーク大図書館(75)に向かった。今回の目的を果たすのだ。
今回の報酬として、特級市民のアネット嬢が紹介役として随行、もちろんジャラージ、ついでにハリーもついてくる。
大図書館は、地上建物は一般解放で誰でも入れるものの、地下禁書室に行くには厳しい警備が備わっていた。
役目はある程度果たしたので、技術情報のフロアで(いい雰囲気で)別れるアネットとハリー。ここから先は英雄達の仕事だ。
「エレベータ」という見知らぬ機械に乗りながら、インテリそうな司書官が案内する途中、
地下禁書室で保管されている“秩序にして悪を鎮める礎石”について解説する。
「かつてフラネスの大地に生命を受けた者が、その技術進化の過程で、初めて手に入れた物は、“石”でした。」
(マリエンヌ砦に安置されていた“混沌にして悪を鎮める礎石”「黒曜石のオベリスク」を思い出す英雄達)
「・・・続いて、フラネスの民は、“木”を加工することを覚えました。これにより文明進化は加速します。」
(タングル森に安置されていた“中立にして悪を鎮める礎石”「力の大樹」を思い出す英雄達)
「・・・そして最後に、私達は、“鉄”を鋳造することを覚えました。太古スエルにまつわる悪を鎮める礎石の伝説は、これを素直に継承したものです。」
と、司書官は、ひんやりした空気が流れる一室に英雄達を案内した。そこには石の台があり、その上には・・・
一振りの折れたバスタードソードと、書見台にある解説書(ザ・クロニクル・オヴ・シークレット・タイムズの一節を、さらに一般向けに解説した書物)が安置されていた。
ドネルガ「こ、これはまさか・・・」
司書官「そう、これがグレイホークにある太古スエルの礎石です。最後に鉄を表します。その名もダークスレイヤー。」
“秩序にして悪を鎮める礎石”はダークスレイヤーだった! ・・・しかし、それは真っ二つに破壊されており、武器として、そして礎石の意味を成していない。
司書官、解説書を読む「かつてこの街にて悪事を働いた“狂大魔道師”ザギグ=イラジャーンが、自らを悪の神に捧げる担保として・・・」
ジャラージ「・・・ダークスレイヤーは彼によってこの街に移動され、そして甚大なる悪の力で叩き折られました。」
司書官からの解説を、徐々に同伴していたジャラージが受け継ぐ。過去に封印された記憶が戻っているようだ。
すでに学んでいるので解説書を読むことなく、流暢に、そしてどこか神がかった口調で、彼女は語りだす。
ジャラージ「“本来あるべき場所”からザギグによって移されたとき、黒曜石のオベリスクの台座に刻まれた文言もまた、ひとりでに書き換わった。
ここグレイホークを指すように。おそらく太古スエルの人知れぬ魔法の力で、お互いが共鳴して位置を更新するのでしょう。
私はダークスレイヤーが破壊されていること、そしてそれを復元するために必要なこと、さらに全て失敗したときのための“最終手段”を、
探索の旅に赴いていたグレイ=クロフォードに伝えました。(そして、一方的に善へ加担した罰で“八者の円”から制裁を受けました)
グレイはダークスレイヤーを修復するために必要なミスラル塊を手に入れるため、聖戦騎士団を“絶望の谷”に向け・・・」
アレク「そこで“恐れと炎の目”魔道師バルリット率いるアイウーズ軍に敗れた。」
ジャラージ「いかにも。あなたの父グレイは敗走の途中、絶望の谷の守りを確保してシールド・ランドの安全を得た後に、
“最終手段”として、このダークスレイヤーであり“秩序にして悪を鎮める礎石”が本来安置すべき場所へ向かいました。」
そんなことをしてどうなるのか? いや、そもそもダークスレイヤーがすでに壊されているのなら、
フレイヤが「黒のオベリスク」を叩き壊した時点で、1対2で悪が優勢となり、魔物による大破壊が始まるんじゃないのか?
そんな英雄達の疑問を受け止めるべく、ジャラージは解説書のあるページを開いた。
フレイヤが破壊した黒のオベリスク。その台座にはこんな言葉が刻まれていたはずだ。これは第2話でティリオンが目撃している。
このオベリスクは、混沌にして悪を鎮定する礎石なり。
同じくして、中立にして悪を鎮めるもの、タングル森にあり。
同じくして、秩序にして悪を鎮めるもの、グレイホークにあり。
善の護り手よ。彼の地も訪ね、悪の封鎖を完璧にせんことを、我らスエルの民は願う。
ジャラージ「この上に安置された黒のオベリスクには、同様に、この台座に続く文言が、記されていました。
しかしアレクの姉であり、ブラックガードのフレイヤが、黒のオベリスクを粉々に破壊したため、あなた方の目に触れることはなかった。」
続く言葉は以下の通りである。
而して力能わず、礎石失われ、悪に均衡が傾きし時は、善に身を捧ぐ聖騎士の本分なり。
礎石滅せし所に赴き、剣の御業を以て悪を鎮め、代理を果たさんとせよ。
其は永劫に続く戦いの業苦なりせば、心騒ぐなかれ。運命を受け入れたれかし。
アレク、背筋に冷たいものが走る。「まさか・・・」 ジャラージは冷静に真実を告げる。
「アレクよ、ダークスレイヤーが失われ、修復の手段も果たせなかったため、善に身を捧ぐ聖騎士の本分により礎石滅せし場所に向かった誇り高き人物がいます。
そして今も、剣の御業を以て、このダークスレイヤーが本来あるべき場所で、永劫に続く戦いの業苦の中、悪を鎮め続けている戦士がいます。
その者こそは・・・あなたの父、グレイ=クロフォードです!」びしっと、彼女を指差すのだった。
「お父さんが生きている・・・」幼き日に見た、父の背中の記憶をフラッシュバックで思い出すアレク。
ドネルガ「よし! じゃあ、筋道は定まったわい。ダークスレイヤーをこの私が、ここにあるミスラル塊とミスラル上級精錬法で復元し、
そしてアレクの父ちゃんがいる場所に直した剣を安置すれば、悪は鎮められるし、誇り高きパラディンも救えるわけだ。」
ファーザラードがボソッと「・・・それを妨害する奴はたくさん出てくると思うけど。フレイヤとかビホルダーとかアイウーズ軍とか・・・いて!」
「どうしてお前は、そう、ネガティブなことを!」とカースに噛み付かれるエルフ魔術師。「まったく、これじゃあいつになったらエルフ王族らしくなるやら・・・」
でも、ダークスレイヤーが“本来安置される場所”とは、どこなのだろう? つまり、アレクの父グレイ=クロフォードが戦い続けている場所というのは?
ジャラージは「地図を見れば自ずから明らかとなります」と、解説書に挟まれたフラネスの地図を出して英雄達に見せた。

正三角形の方陣だ! そしてそれら3つの地点で封じているものは・・・リフト峡谷だ!
ジャラージ「そう、奈落に繋がる穴、フラネスの大地に刻まれた深き傷跡、リフト峡谷です。もし聖戦騎士団長グレイの献身が心半ばで潰えてしまい、
救出すること能わず、悪に天秤が傾いて礎石の鎮めが失われたときは、おそらくこの地より魔物が噴出し、かつてのグレイホーク戦争級の災厄が起こります。
アイウーズ軍はアーンスト伯国を侵攻し、領土を西に広げました。これはリフト峡谷近辺の勢力を確保するために地歩を広げたという見方が正しいでしょう。」
ファーザラード「ひ、ひい! 急がないとダメだよ! リフト峡谷のいきなり近くにタングル森があるじゃないかあ!!!」
ドネルガ「(のん気に)うむ、まず真っ先に焼かれるな、この場所は」 ファーザラード「い、急ごう、早く行こうよ!」
グレイホーク大図書館(75)を出る前に、最後に一人、残るアレク。父さんに祈りを捧げる。
「お父様、私はまだまだ未熟者ですが、あなたの背中を追って参ります。そして誓います。盾持つ乙女のパラディンとして仲間を守り抜くことを。
どうか見守ってください、どんな人でも正しい道を指し示してくださるよう、マイアヘン神のご加護を・・・」
さて、とうとうここまで足取りをつかめなかった謎がある。グレイホーク大図書館の地下禁書室に忍び込み、(おそらく)これらの情報を手に入れて去っていった盗賊だ。
大図書館を訪ねた翌日、乞食組合の長により手がかりをつかんだと思われる場所、フリーシティ闘技場(70)に彼らは向かった。
その日はちょうど月1回の定例トーナメント大会の日で、噂では、あの暗黒剣士フローリン卿(たぶんフレイヤ)も出場する。
“グレート・アスレチック”優勝から2日たったばかりなので、英雄達は万雷の拍手で迎えられ、貴賓席に座った。
そしてトーナメントを戦う8人の戦士が出場する。いずれも英雄達と同じくらいのレベルに見えるが、残りの一人、フローリン卿だけは・・・見ると・・・
ああ、やっぱりフレイヤだ・・・間違いない。何を企んでいるのだ? 実は面識がなく、彼女に賭けたファーザラードとカース、無邪気に応援する。
ティリオン「他の剣闘士達は俺たちと同じくらいの強さだ。これは、いずれ彼女と戦うときの参考にできるかもしれない。」
ドネルガ「うむ、しっかり見ておこうぞい。」 そんな彼らの思惑を尻目に、ただ無表情で漆黒の剣を掲げて観客に挨拶するフレイヤ。
その緒戦「へ、こんな姉ちゃんが相手とは、オレも舐められたもんだ!」とか死にフラグたてまくりの相手ファイターを、試合開始の銅鑼の余韻も残っている1ターン目、
立ちすくみ状態のところをいきなり粉砕。ディストラクションのかかった剣だ! その一瞬の圧勝に沈黙する観衆。しーん・・・
そして何やら闘技場の係員にフレイヤはアピールしている。何を言ってるんだ?
【判断力】判定に成功したリーン、いずれ相対する敵の強さに顔面蒼白になりながら読み取った。
「相手が弱すぎるから、残りの6人を同時に出せと、全員を一度に相手してやる、と・・・」
アレク「いけない!」と貴賓席を飛び出し、アリーナのすぐそばまで駆け寄るが、係員に止められた。
「やめさせなさい! でないと無駄な命が・・・!」 係員「いかにグレート・アスレチックの優勝者といえども規則ですので!」
ともみ合っているうちに、剣闘士の誇りを傷つけられた残り6人が入ってくる。小娘に侮られた怒りを前面におしだして。
「言ってくれるじゃねえか!」「俺の力を見せてやろう!」「呪文でコンガリ焼いてやるぜ!」「まずは一人脱落ってか!」「無知を諭してやる!」「・・・・・・・・・」
とそれぞれに捨て台詞をはきながら、相手の構成はファイター、モンク、ウィザード、ソーサラー&ファイター、リディア神のクレリック、そして最後に、ひっそりとローグ。
それぞれが得意武器を持ち、ぶんぶん振り回して、フレイヤに向かってくる。銅鑼が鳴った。1対6の変則デスマッチだ。
だが、これらもフレイヤは圧倒的な力で蹂躙する。まずイニシアチブを取った初撃で、ファイターとクレリックが即座に玉砕した。この2人は苦しまずに死んだので幸運だった。
ウィザードがファイアボールを放つも、カウンタースペルで自分に降りかかり、自らが炎で生きながら焼き尽くされる。「ぎゃああああ!」
力自慢のモンクは組み付こうとするも漆黒の鎧をつかめない。反撃を受け、下半身が粉砕される。「ひぎいいい!」
ずるずると芋虫のようにのた打ち回るモンクに止めをずぶっと刺し、普通にすたすた歩いてソーサラー&ファイターに近寄るフレイヤ。
怯えきったソーサラー&ファイター、武器を投げ出し土下座。「こ、降伏する、命だけは・・・!!」
フレイヤは抑揚のない声で冷静にこう言い返した。「貴様、剣闘士なら、そのセリフは耳慣れているのじゃないか?」
そして、ちゅん、と首ちょんぱ。ごとっと落ちた頭部を、ぐしゃ、と踏み潰す。白い砂の上に撒き散らされる脳髄。つまらなそうに人間の頭の成れの果てを蹴っころがすフレイヤ。
アレク「あああ・・・もうやめてー!」と目を伏せて叫ぶ。これはもう、戦いではない、ただの屠殺だ。華やかな戦いの業ではない。単なる“処理”だ。
シーンと静まり返る中、最後に残ったローグに歩み寄るフレイヤ。不思議なことに、ローグは何の抵抗もしない。
それどころか、彼女の剣の切っ先を食らうのを喜んで期待しているような感じさえする。
そうか、あいつが大図書館に忍び込んだ盗賊だ。おそらくその後出場者と成り代わって・・・と英雄達がわかったところで・・・
どすっ! 何のてらいもなく、ローグの胴体に黒い剣の一撃をぶち込むブラックガード。
ローグ、断末魔に、何かパクパクとフレイヤの耳元にささやいた。コクリとうなずくフレイヤ。
英雄達、全て理解した。盗賊はアイウーズ軍の密偵であり、彼女に自分の得た全ての情報を話した。そして自ら望んで口封じされた。仕事は完璧だ。
フレイヤは、グレイホーク大図書館の地下禁書室にあった、邪悪を鎮める礎石に関して全ての情報を知った。
今ここに、光と闇の姉妹が、そして善と悪が、同じスタートラインに立ったのだ。
「しょ、しょうしゃ、フローリン卿!」動揺した闘技場の係員が悲鳴のように叫ぶ。
フレイヤは無表情で剣についた血を拭う。そして(大観衆の中からどうやって見つけたのかわからないが)アレクに目を向けた。
無言で黒い剣の切っ先を彼女にすうっと向ける。これは・・・宣戦布告だ。
「父を救えるものなら、やってみるがいい。だがその前に立ちはだかるのは、この私だ」という・・・
その挑発を真っ向から受け止め、視線を反らさず、見つめ返すアレク。フレイヤはふっと笑みを浮かべ、闘技場の地下に去った。
続く表彰式に彼女は来なかった。第5867回剣闘士定例トーナメントは、優勝者棄権という前代未聞の結果に終わった。
(当然、賭けも不成立。儲けそこなったファーザラードとカースはショボーン・・・)
その後、闘技場付近の地下水道から市外に向けて、ふよふよ浮かびながら壁を破壊しつつ、
真っ直ぐに移動してグレイホークを出て行った球体の怪物と女剣士がいたらしい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(グレイホーク地下水道にて)フレイヤ「・・・ん?」
ビホルダー「フレイヤ様、何を笑っているビホ? 珍しいビホね?」
フレイヤ「ビホルダーよ、おぬし、自分の戦いの力を最大限に発揮してもよい好敵手に出会ったら、どうする?」
ビホルダー「あーん、そいつはうれしいビホね。戦いに勝ってそいつを叩き伏せて、奴隷にできたら、なおさらビホ!」
フレイヤ「だろう、私もうれしいのだよ。立派に育ったな・・・あの泣き虫だった妹が・・・」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
最後の悪の目論見を阻止することは失敗したものの、英雄達はグレイホークで、
馬車競争“グレート・アスレチック”優勝者としての名誉と、そして優勝賞金だの賭けの勝ち金など、大金を手に入れた。
その潤沢な資金で優秀な武器を取り替え、マジックアイテムを装備し、新たな冒険へと闘志を燃やす。
こうして彼らの旅は新たな局面を迎えた。まずしなければならないことは、壊れたダークスレイヤーを復元すること。
そして、そのダークスレイヤーを本来あるべき場所に安置し、そこで戦い続けているアレクの父グレイを解放してあげること。
しかしそこに至るまでには、まだまだ、困難極まる茨の道が待ち構えているのだろう・・・
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
・・・というところで、教官であるロビン=ザ=バレルエスケープからの話を終わる。全員、直れ!
貴様らのようなバード見習いの豚娘どもに話すにはもったいない歌であるが、これが吟遊詩人訓練所の卒業試験であるからして、
各人シッカリ覚えておくようにしろ。さもないとタマ切り取ってグズの家系を絶ってやる!
なに? 長すぎるだと? 貴様、セイウチのケツにド頭突っ込んでおっ死ね!(ビンタ)
俺たちの商売は何だ、お嬢様?(バード!バード!バード!)豚娘達は吟遊詩人を愛しているか?(生涯詠唱!喉枯れるまで!歌う!歌う!歌う!)
よし、起立! 声帯を引き締めろ! 1万オーブの歌詞をひねり出せ! さもないとクソ地獄だ!
〜 5つめのお話 おしまい 〜