D&D3.5キャンペーン第5話

「純愛オーバーラン」

2005/07/23 Dr.リーさん宅にて)

 

---------------------------------------------------------------------------------

その1

孤独なる盲目の魔術師、才能豊かな機械少年の夢、誇り高き少女のほのかな恋心、

そして、巨大都市グレイホークにおける英雄達の諸活動と、恋愛応援ユニット“AHO”の結成について

---------------------------------------------------------------------------------

 

これはフラネスの大地に生きた5人の英雄の物語だ。

彼等は雄々しく戦い、勝利の歓喜に酔い、莫大な報酬を得たが、ときには苦い敗北にまみれ、人生の回り道もした。

そんな生々しい冒険者達の勲であるからこそ、人々に愛され続け、今もなおグレイホークの吟遊詩人訓練所では、バードの鬼教官がよく謡っている。

 

その冒険者達の名前は、と問われるならば・・・

失踪した父の跡を次ぎ、滅した騎士団の再興を託された少女、アレク=カイン=クロフォード

(女性の人間、秩序なる善、ファイター1Lvパラディン6Lv)

キーオランドから来た貴族、太古スエル人の末裔、今回私的に何だかデッカイことが起こる探検家、ティリオン=セカンフォース

(男性の人間、混沌なる善、ローグ3Lvレンジャー4Lv)

心柔らかな(“弱虫”の雅語)、そしてエルフ王族の子孫でもあることも最近判明した、ファーザラード

(男性のエルフ、真なる中立、ウィザード7Lv)

一本気の若き職工ドワーフ、驚異の武器を鍛えることを望む、ドネルガ=バーブン

(男性のドワーフ、混沌なる善、ファイター5Lvバーバリアン2Lv)

ペイロア神の敬虔な信徒であり、名誉ある戦士団長ロベルトを父にもつ頭脳聡明なる娘、リーン=スターファイン

(女性の人間、中立なる善、クレリック7Lv、※NPC

そして彼らに仕える忠実な動物の僕たち。アレクの乗騎シルバーソード号とファーザラードの使い魔カース

 

彼等が前の冒険において、絶望の谷を解放し、シールド・ランド当主カタリーナ殿下の助力を得たところから話は始まる――

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

羊毛湾とニル・デイブ湖の中継地点に位置している自由都市グレイホークはフラネス1の巨大都市である。

そんなメガロポリスにふさわしい高くそびえた城門の前に、カタリーナ殿下の助力で、今、英雄達はたどり着いた。時に幸日月20日。

門番がいやらしい笑いをしながら、賄賂を要求する。

「この門を通りたいなら1オーブ、“よい”情報なら、さらに5オーブ、“普通の”情報なら3オーブ、“下手な”情報なら1オーブ追加だよ、へっ、へっ」

ティリオン、ちょっとむっとしながらも「5オーブの情報をもらおう、ただし、俺たち全員にだ。」

・・・商談成立、門番はどこで手に入れてきたのだろうか、グレイホーク市の詳細な地図を英雄達に渡す。そして門を開けた。

「一つこれはサービスで訓えてやるよ、ここは夢の都なんかじゃない、現実の都さ。せいぜい気をつけるんだな・・・」

そして門を開ける。ぐわあっ・・・と満場の人いきれと喧騒が英雄達を包んだ。そう、ここは金で何でも解決できる“自由の街”、その名もグレイホーク――!!

 

門番から購入した地図です。今回のお話は、これを元に進行していきます。

 

人ごみをかき分けかき分け、メインストリートを歩いていく英雄達である。何から何まで、初めてのものばかりだ。

「何という賑やかさなのでしょう! 今日はお祭りなのかしら??」と目を白黒させているリーンの横で

「ああ今日は厄日だね、何と客の少ないこと!」と嘆く商店主。

次々と遭遇する街頭売り子、ストリートチルドレン、娼婦、露天商、乞食、その他もろもろの退廃と混沌の落としごたち。

奥の裏路地では赤い血を流して動かないローグが、ずるずると何者かに引きずられて、下水道に消えた。偶然目撃して恐れおののくファーザラード。

みんながそれぞれ田舎者である英雄達の財布を狙っている。おのぼりさんだ、おのぼりさんが、来た! キラーン!

例えれば、グレイホークが大東京だとすれば、ジェドブリッジ(人口7,100)やクリットウォール(人口14,300)は秋田や盛岡といった東北の地方都市レベルだ。

そんな彼らが今までの冒険で得た財宝を持って立ち寄ったとしたら・・・! まさに、ネギをしょった鴨のようなものだ。

いつの間にやらリーン(主に衣服)、アレク(主にアクセサリー類)、ドネルガ(主に食物)、ファーザラード(主に何だかよくわからないもの)

の背負い袋がどんどん膨らんでいくのだった。110オーブの浪費と共に・・・。しかし、貴族で都会出身のティリオンは冷静だった。

「とにかく、まずはジャラージ=サラヴァリアンに会いに行こう。買い物とか何やかやは、それからだ。」

 

というわけでティリオン以外はさらに意志セーヴに失敗し、110オーブをいろいろ消費して、英雄達は上流地区にある瀟洒な3階建ての建物、

ジャラージ=サラヴァリアン邸(20に着いた。屈強そうな魔術師見習いが彼らを出迎える。

ティリオンが前回の冒険の成功の証「バルリットの赤眼」を見せると、奥から「ようこそグレイホークへ」と優美な女性の声が聞こえてきた。

ジャラージ=サラヴァリアンは20代後半の妙齢の女性で、優雅でゆったりとした長いドレスを着ている。

とても端正な顔立ちであるのだが、両の目が塞がっている。どうやら全盲の方らしい。だが魔法で全てを補完しているらしく、日常生活には支障がないようだ。

彼女は魔法使いの秘密結社「八者の円」の一員であるが、この結社は善悪どちらにも与さない中立であることをメンバーに律している。

ところがジャラージは、4年前にアレクの父であるパラディン、グレイ=クロフォードに“秩序にして悪を鎮める礎石”の情報をリークさせてしまった。

(それは4年前、ちょうとグレイ率いる聖戦騎士団が絶望の谷へ進軍したときだ)

「八者の円」はその罰として、彼女の視力を奪い、さらに“秩序にして悪を鎮める礎石”に関する記憶を抹消させてしまったとのこと。

「ようこそお越しくださいました。さて、お知りになりたいことがいろいろあるようですね」

よい香りのする茶を振舞いながら、それでもジャラージは、自分の知っていることを一つひとつ丁寧に答えていく。

 

◆秩序にして悪を鎮める礎石はどこにあるの?

 →グレイホーク大図書館(75)の地下禁書室に安置されています。それが具体的にどんな物であるかは、忘れてしまいました・・・

◆それを奪おうと悪い奴らが狙っているかもしれない。守りたいんだけど、どうやったら入れるの?

 →一級市民(シチズン)の立会いがなければ、地下禁書室に入ることが出来ません。

   最近、地下禁書室に盗賊が忍び込み、何らかの情報を盗んでいったようです。だからよりいっそう警戒が厳重にされています。

◆それは大変! ところで一級市民って何?

 →グレイホーク市に10年以上居住し、なおかつ1年の納税額が1,000オーブ以上の特権階級の方々です。

◆じゃあ、ジャラージさんが一級市民とお知り合いになって、その立会いをもとに、秩序にして悪を鎮める礎石を守る区画に行けばいいのでは?

 →そ、それは・・・(言いよどむジャラージ)

 

アレク、ピンときた。「友達、いないんですね・・・」 ジャラージ、寂しそうにうなずく「・・・ええ。」(笑)

もともと魔術師の秘密結社として「八者の円」は、何となく薄気味悪い存在としてグレイホーク市民から見られている。

ましてや、彼女はそんな魔術師連中から制裁を受けているのである。街の名士からなかなか信用度は得にくいというもの。

というわけで、まずは英雄達が、このグレイホークで一級市民の知り合いを作らねばならないことになった。

そうすれば、彼女も同行して大図書館の地下禁書室に入ることができ、さらなる真実が見つかるだろう、とのことだ。

師匠モルデンカイネンの知人であるから、ジャラージは最大限の助力を申し出る。その好意を受け、とりあえず英雄達はこの屋敷に投宿することになった。

 

あけて翌日・・・に行く前に、ファーザラードがこそこそ夜の街に出かけて行った。いや、正確には使い魔のカースがエルフ魔術師を引きずって行った。

どこへ? ふらふらーと1人と1匹が入っていった先は、カジノ「金の大車輪」(15だ!

そこではブックメイカー(近日中に起こることに対する予想を賭ける)が行われていた。項目としては・・・

「毎年恒例・大馬車競争グレート・アスレチックの勝者は誰か?」

ふーん、そんなのあるんだあ。あ、外国人街代表の馬車が掛け率大穴だ!(25.0倍)ファーザラードはここに1,000オーブ賭けた。

「第5867回剣闘士定例トーナメントの優勝者は誰か?」

あ! 参加者の一人に「暗黒の女剣士」なんてのがいる! 名前は・・・フローリン卿だって。うーん、わかりやすい偽名だ。

まさかあの方では・・・ともなんとも思わないファーザラードとカースは500オーブを彼女の勝利に賭けた。

(ファーザラードは第2話のとき、彼女に会う寸前でマジックミサイルカウンタースペルを喰らい、気絶してるのです)

あとは「大図書館に忍び込んだ盗賊は逮捕されるか?」「アーンスト伯国の滅亡時期は?」などというのもある。

けっこう有益な情報を手に入れて、ファーザラードは帰ってきましたとさ。

 

今度こそ明けて翌日、どこに行くか決めなければいけないのだが、

アレクとリーンはひとまず面通しということでペイロア寺院(24へ。ファーザラードは見物がてら魔法学院(76へ。

そしてティリオンは出身地キーオランドの大使館がある大使館公邸群(12へ行くことにした。お父さんが来ているらしいぞ! そのツテで情報を探ることに。

ドネルガは外国人街へ。ジャラージの情報により、何でも同じ氏族で旧知の戦友、ボッシュというドワーフが住んでいるらしいので、訪ねてみることにした。

 

というわけでドネルガがぶーらぶーらと歩いていると、前方から暴れ馬の馬車が! あー、ノームの男の子が轢かれそうだー!

ドネルガ、反応セーヴに成功。何とか子供を回転レシーブでかばい、救出した。「こりゃあ!危ないではないか!」

「あー! ごめんなさーい!」 人間の14歳くらいの少年が駆け寄ってくる。どうやらこの馬車を改造した張本人だったようだ。

眼鏡をかけてそばかすが多い、ひょろっとしたこの男の子は、謝罪もそこそこに、いきなり地面に設計図を書き始めた。

「やっぱり流線型公式に照合して・・・加速度が13の二乗とすると・・・だから自動にんじん給餌装置が・・・ぶつぶつ・・・」

ドネルガ、ゴン!と、この少年の頭にゲンコ。「反省せんか!」熱中しやすい少年技師は口を尖らせる「いたいなーもうー!」

ドネルガ「まったく、お前の師匠に文句をつけてやる!」・・・というところで、師匠が登場。タプンタプンに太ったドワーフ。

「いや全くわしの弟子のハリーがとんだ粗相を・・・って、お、お前は!」「おお、何だ!貴様か!」「ドネルガ」「ボッシュ!」

わっはっはっはっはーと、男同士の抱擁。そう、この少年の師匠はドネルガの旧友、ボッシュだったのだ。

そして天才機械少年の名はハリー=スチーブンソン。本当はハロルドという名だが、自分でも立派でこっ恥ずかしいので、ハリーと呼んでほしいらしい。

「太ったのう、ボッシュ」「いやー面目ない。グレイホークは美味い物が多くてなー」と彼らは意気投合し、西街区倉庫(46近くにあるボッシュの工房へ。

そこは改造馬車が置かれている、なんとなくガレージショップのようなところだ。火酒(ドワーフ・スピリッツ)を傾けつつ昔話に花が咲くのだった。

 

その頃ファーザラードは、魔法学院(76の前で途方に暮れていた。「・・・入り口、どこー???」

このピラミッドのような正四面体の建物には、どこにも外に通じる入り口がない。

うろうろしていると魔法学院らしき生徒がいろいろと魔術理論を議論しながら・・・ひゅん! テレポートで学院内に入ってしまった(笑)。

「そんなレベルじゃないとここには入れないのかああ」ショボーンとするファーザラード。

と、そこに・・・金髪でツインテールの、13歳くらいの、きれいだが性格がきつそうな目をした、いわゆる“ツンデレ系”の(笑)人間の少女がやってきた。

グレイホーク大学の校章をつけているところを見ると、そこの学生さんのようだ。

しかもお約束で、なにやらプリプリと怒っているぞ! 後ろには白髪の老紳士であるこれまたお約束の執事が日傘を掲げている。

「まったく、ハリーったら、また授業を抜け出して・・・。いつも呼び出しに行くのはクラス委員の私なのよね・・・ちょっと、そこのあなた!」

「は、はいい!」指差されたのは、とばっちりを受けたファーザラードである。

「ハリー=スチーブンソンという男の子を呼んできてくださいませんこと? 今年14歳の人間の男の子で、眼鏡をかけてそばかすで、

 ひょろっとしているから、たぶんすぐにわかると思うわ。外国人街でぶらぶら、変てこな機械を作ってるから、すぐわかるはずよ」

と、ペラペラペラっとまくし立てる。まさに良家のお嬢様らしく、生まれてからこの方、命令することに天賦の才能を見せる。

「え、何で僕が・・・」とファーザラードが異議をさしはさもうとする前に・・・「早く行きなさい!(ビシッ!)

その気迫に圧されて「ひ、ひい、わかりました!」とすたこらパシリと化すファーザラード。

「さてこれでひと段落、と。お買い物に行こうかしらね、執事よ。」「は、かしこまりましたお嬢様」

はてさて、いったいこのツンデレ娘は誰なのか・・・?

 

その頃ティリオンは、人生の一大事に巻き込まれていた。縁談である。

お相手は、母国キーオランドの名家、ネヘリ家英公爵の当主ベアトリーチェ。

飄々としたティリオンの父親クロニン=セカンフォースは、肖像画を彼に見せた。

え・・・(絶句)肖像画に描かれているのは、30歳の【魅力】34くらいの、

何と言うかジャガイモに目鼻を付け足したような、そして塩漬けハムに手と足を生やしたようなご婦人なのですが。

ティリオンの父クロニン、何となく楽しんでる節で、久しぶりに会った三男に紹介している。

「ま、なんちゅーか、あれだな、ぶっちゃけずーっと独身で、結婚相手がおらんでな。

 持参金は何と10万オーブだぞ! ・・・もしお前さえその気なら、彼女もこの街に来ていることだし、

 (ひそひそ)え、なに?(従者と会話)・・・肖像画は20年前のもの? じゃあ、今は50か? ま、ええわな。どうだ、ティリオン?」

どうだ、じゃねーよ!・・・と、とりあえず考えさせてくれ」(ちなみにティリオンは18歳のピチピチ美青年である)

いきなり断るのも失礼なので、ひとまず肖像画を持って帰るティリオン。

しかし変だな、ドーリンのネヘリ英公爵家にそんな醜女がいるとは噂にもならなかったし、

それにこの名前、遠い記憶の片隅に、どこかで聞いたことがあるぞ、ベアトリーチェ、ベアトリーチェ・・・

 

さてさてそれはともかく、ペイロア寺院詣でを済ませてきたアレクとリーン。

午後はどこにいこうかということで、ちょっとウキウキと中央市場(91でショッピング兼情報収集としゃれ込むこととなった。(まあ1516の娘だからね・・・)

すると・・・おや? ドレスショップの前で、なにやら一騒動が起こっている。

「だーかーらー! この店にある服、全部買うって言ってるのですわっ!」(←地団太を踏んで我を通そうとするツンデレ貴族娘)

「か、勘弁して下せええ。明日、貴族様にお届けするオーダーメイド服もあるんですう、全部持ってかれたらウチの信用が・・・」(←泣きを入れている服屋の主人)

「もーう、服がないならアクセサリーを売ればいーじゃなーい!」とまるで「パンがないならケーキを食べ(以下略)」的発言をするツンデレ娘。

「これはちょっと・・・」「ええ、主人が可哀想ですね」と娘2人は助け舟を出すことにした。

「恐れ入りますがお嬢様、こちらのドレスは、ちょっと背丈が足りないかと・・・」と割り込むアレク。

「ま!何ですってええ」キッと目を向けるお嬢様に対してアレクは<交渉>判定をかます。すると一気に態度は友好的に!

「ん・・・そうかもしれないわね・・・」おとなしくなった。さすがパラディン、じゃじゃ馬慣らしはお手の物だ!

「こちらのフリルつきの方がお似合いですわ(喜)」「そ、そうかしらね・・・」「・・・いーえ、違います!」

きらーんと目を光らせ、何やらこだわりがあるリーンが口を挟む。「金髪に映えるのはやはり黒の布地でしょう、シンプルに、しかし、上品に!」

「それは異議あり!」「アクセサリーはシルバーでなくては!」「やはりフリル!」「ええっと買うのは私・・・」

きゃいきゃい、わあわあ、ぺちゃくちゃ、うふふふ・・・それを見て執事がホロリ。「お友達ができて、ようございましたな・・・お嬢様・・・」

ま あ そ ん な わ け で ・・・

乙女達のショッピング談義の後、お嬢様のドレス購入は10着程度にとどまった(それでも20プレート相当の買い物なんだけどね)。

取り潰しを免れ、「ありがとう、ありがとう!」と涙目でアレクとリーンに礼を言う服屋の主人。

アレク「はあ、いい事しましたね」リーン「楽しかったですねえ!」と去ろうとする2人に対し「お待ちなさい!」と声をかけるお嬢様。

ちょっと顔を赤くして「こ、このドレスの試着もあるし、もしよろしければ、我が家に招待しても、よろしくってよ」

アレクとリーンはにこっと笑い「ええ、お誘い光栄ですわ、お嬢様♪」と答える。そしてとても立派な馬車に乗り込むのでした。

 

ボッシュの工房での火酒飲み比べは、ドネルガの勝ちに終わった。【耐久力】判定に負け、テーブルにぶっつぶれるボッシュ。

ぎゃはぎゃは笑うドネルガ。そんな師匠にそっと毛布をかける弟子のハリー。

「ボッシュ師匠はいい人だよ、孤児の僕を育ててくれて、今はグレイホーク大学に通わせてくれてるんだ。いろんなことを学ばなきゃいけない、ってね。」

ボッシュは友達思いのいい奴で、グレイホークの大図書館で、剣を鍛える旧友ドネルガのためにいろんな資料も写していた。

彼の書庫にある資料の中には、ミスラルと鉄を混合させ、尋常ならざる硬度を顕現させる「ミスラル上級精錬法」の手法もあった。

ドネルガ「おお!これさえあればダークスレイヤーすらも鍛えられるぞい!」

「じゃが肝心のミスラルを大量に使うんじゃあ・・・」むにゃむにゃと答えるボッシュ。

「いや、ミスラルの塊なら持っとる」 ピカア!前回、“絶望の谷”で入手したミスラル立方体を見せるドネルガ。

「うあああああ! こ、これだけあれば、僕の馬車の強度が・・・ねえ、それ使わせて、って、ダメだよねおじさん・・・」とハリー。

「まあこれは上げられんが、少年よ、どうして馬車を強化改造したいんだ?」とドネルガ。

「それは、今度開催される馬車競争大会“グレート・アスレチック”に優勝するためさ!」

「どうして優勝したいのかな?」と再び突っ込むドネルガ。「そ、それは・・・」なぜかハリーが顔を赤くしたところで・・・

謎のお嬢様のパシリと化していたファーザラードがやってきた。メッセージを聞いて、慌てふためくハリー。

「あー!今日、大学で授業があるんだった!忘れてた!」なんでもクラス委員のアネットは、とても怖い女の子だそうだ。

脱兎の如く駆け出して大学へ向かうハリー。その背中を、ドネルガはニコニコとして見送る。そして呟く。

「・・・なるほどな、女の子にかっこいいところ見せたい、と言うわけか。」

じゃあ僕もこれで、と帰ろうとするファーザラードを、ドネルガ引き止める。「待てえ、酒の肴でも、作っていかんかい!」

「トホホ、何で僕がこんなこと・・・」と言いなりになって厨房に入るファーザラード。あーあ、今日は散々だね。

 

さて、大使館公邸群から、午後は情報収集で学芸街を出歩くことにしたティリオン。

するとねじくれ心橋(83付近で、ドスンと、彼の背中に誰か人が走ってきてぶつかった。

刺客か?それともスリか?身構えるティリオン。だが、ぶつかったのは・・・眼鏡のひょろひょろした少年ハリーだった。

ティリオンだって痩せ型体型なのだが、それでも吹っ飛ばされて地面に転がるハリー。

「いたあ、正面衝突だよ!・・・ん、待てよ、衝突・・・そうか!衝突強度を利用すれば!!」

と、また何やら地面に馬車の図面を書き始める。こと機械に関して熱中すると周りが見えなくなるのだ。そのうち書くものがなくなって

ティリオンに手を差し出し「ちょっと、そこの人、チョーク持ってないかな・・・?」「いや、持ってない」「もう、使えないなあ!」「何い!」

そんなこんなしているうちに、きーんこーんかーんこーん・・・鳴り響くグレイホーク大学のチャイム。

授業が終わったのだ。「あー!」夢中になって忘れていてがっくりしているハリー。しょぼーん・・・

とりあえず見るに見かねて、と言うか好奇心が先にたって、ティリオンは彼を誘い、近くの学食のような居酒屋「ロック&オリファント」(72に入った。

我に戻ったハリーは、ぶつかった非礼をわび、ティリオンに食事をおごる。

ドワーフの師匠だの馬車競争だの怖いクラス委員の女の子だの、そこでいろいろと身の上話を聞いているうちに、

2人の不良学生が、ハリーにいちゃもんをつけてきた。「こんな場所に、外国人街の貧乏馬車屋のせがれが、何のようだ?」

「な、なんでもないよ・・・」顔を伏せるハリー。どうやらこの性格が災いしてか、いつもイジメに遭っているようだ。

ティリオン、凄みを利かせて「おっと待てよ、俺を無視するなよ。ん?」

冒険者として死線を潜り抜けてきたティリオンの殺気に、気圧される不良学生。するとその後ろから・・・

「いったい何の騒ぎなのかな・・・?」しゃなりしゃなりと悪趣味な成金衣装を着飾った、マッシュルームカットの金持ち息子がやってきた。

ひそひそと、ハリーが呟く。「ドラゴングループの一人息子、ゴードン=ドラコトゥスだ。言葉には気をつけたほうがいいよ。」

ドラゴングループとは、グレイホークで急成長している宿屋コンツェルンだ。「●竜亭」の名のつく宿屋の全ては、彼の父の配下にある。

ゴードンの父は、グレイホークで(ということはフラネス全土で)初めて、そして唯一、チェーン店の展開に成功した実業家なのだ。

しかしその息子は・・・甘やかされて育ったせいもあり、この街の退廃を具現化したかのような、札付きのワルである。

ひとしきりティリオンとガンを飛ばしあった後に「まあ、申し訳なかったね、ウチの手下が・・・これは慰謝料だ、取っておいてくれるよね?」

といちいち癇に障る言い方で、ゴードンはちゃりんちゃりんと貨幣を床に投げ捨てる。

そして「失敬するよ、どうもこのような埃っぽい場所は苦手でね、うふふふふ・・・」と、扇子をパタパタして去っていくのだった。

ティリオンは抜け目なく彼の隙を探した。ゴードン自身は戦いの技は持っていないらしく、隙だらけだ。

しかし天井に、2人のローグのような黒い影が忍んでいるのを感知できた。おそらく彼の護衛なのだろう・・・

 

アレクとリーンを乗せた馬車は、街の外に出て、一路お嬢様のお屋敷ウェインライト卿の荘園(87へ・・・って、ええ?

2人は呆然としていた。その広大さに。そう、このツンデレお嬢様は、グレイホーク有数の大富豪ウェインライト家の長女アネット様なのである。

ちなみに、ウェインライト家のお住まいはというと・・・

(市街の地図と見比べてみると、その広大さがわかろうというもの)

口を埴輪のようにあんぐり開けているアレクとリーン。

彼女の祖父は成功した冒険者であり、それより代々、ウェインライト家は有り余る財力でグレイホーク郊外に大荘園を所有している。

そして、その冒険者魂は確実に受け継がれている。中庭ではカッコイイお兄様のウィリアムが、自家製カスタム馬車に乗り、グレート・アスレチックに備えて猛練習をしていた。

ウィリアム「おや、アネットに友達なんて珍しいね(きらん!)」アネット「もお、お兄様!」ウィリアム「ハハハハ、失敬失敬。まあ、ゆっくりしていってくれたまえ。」

そんなわけで、第14番屋敷のワードローブにて、アネットの即席ファッションショーが行われることになった。

楽しい時間はあっという間にすぎて夕暮れ。そろそろ帰ったほうがいいのかな、だけどこの広大な敷地から、どうやって帰ればいいのかしらん・・・

アネット「あら! もしよろしければ、ここでお泊りしておしゃべりしていっても、かまいませんことよ」同世代の友情に飢えていたアネット、引き止める。

というわけで、そのまま娘3人はパジャマパーティになだれ込むことになったのだった。

大きなベッドに3人ゴロンと横になり、取りとめのないことから重要なことまでいろいろと話す。

アレクとリーンはグレイホークに来た目的、つまり大図書館の地下禁書室のことを話した。一級市民の立会いが必要だということまでを。

目を丸くするアネット「まあ・・・執事、執事! 我がウェインライト家の市民等級は何級なのかしら?」

執事「はっ、特級でございます。お嬢様」 アネット「・・・ということで、力になれるかもしれませんわ」

それはありがたい! ・・・だけど、ただ施しを受けるだけでは心苦しいので、そのお礼に、何をすればいいのかしら?

それなら、もし助力を頼めるなら・・・と、顔を赤くしてアネット、ポソポソと、自分の秘めたる想いを打ち明ける。

つまりその、ハリーという機械いじりが大好きなクラスメートの少年がいて、その子がどうしても気になってるのですわ・・・

馬車競争のグレート・アスレチックに彼は勝とうと努力しているから、いっしょに出場して御者になって、彼の手助けをしてくれないか、と。

いえあの、恋愛感情とかそういうことじゃなくてよ、グレイホーク大学クラス委員として、彼のことを更正させなきゃいけないから・・・

別にたぶんウィリアムお兄様のほうが強いと思うし勝てないとは思うんだけど、だけど、まあこれで彼の気持ちが済んで、

大学に戻って勉学に励むようになったら、そのとき応援していた私のことも、意識して、くれるんじゃないかなあ、と・・・

そんなことを小声でモジモジ、ムニャムニャ、テレテレと、打ち明けるアネットお嬢様。

(まあ、なんと可愛い依頼なのでしょう・・・!)最近お互いに殺伐としたイベントが多かったアレクとリーン、感動にぶるぶる震える。

よーしわかったあ! お姉さん達にまかせなさーい! と、二つ返事で引き受けるアレクとリーン。

彼女の依頼は、グレート・アスレチックで、ハリーの作成した馬車に搭乗して、できれば勝利を収めること。

そしてその報酬は、グレート・アスレチック終了後、大図書館の地下禁書室へ一緒に行ってもらうこと。

そのとき、中庭で馬車競争のトレーニングをしていたウィリアムが爽やかに戻ってきた。

ウィリアム「おやおや、乙女同士盛り上がっているね、何の話だい?」

アレク「ウィリアム卿、私達もグレート・アスレチックに出場します。・・・全力を尽くしますよ!」と、びしいっと挑戦状を突きつけた。

ウィリアム、紳士らしくその挑戦を受け止め、レディに対して優雅に一礼し、爽やかに去る。リーン、アレクに駆け寄って激励する。

「がんばりましょうアレクさん! 私たちは無敵の“アネット初恋応援隊”ですね!」

AnnetteHatsukoiOuen・隊・・・って、ちょっと、それって・・・

リーン、拳を握り締めて高らかに宣言する「(大真面目に)ええ、略称は“AHO”ですわ!」 思わず頭を抱えるアレクであった・・・

 

 

(その2へ続く)