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1,栽 培 ヤマアジサイは、地植(庭植)でも鉢植えでも楽しむことができます。ヤマアジサイはア ジサイ(西洋アジサイ・ハイドランジア)にくらべ植物が小型なので手入れさえすれば小 さな鉢でも毎年花を咲かせることができます。趣味でいろいろな品種を集めている方 の多くは鉢植えで育てています。栽培の基本は鉢植えでも地植でも同じなので鉢植え を中心に説明し後で地植栽培(庭植)についてふれることにしましょう。
ここで述べる栽培法は、大船フラワーセンターのアジサイ展で、鎌倉アジサイ同好会 の方からお聞きしたことと、本から拾ったこと等をまとめたものです。山草風の仕立 て方です。 盛り上がるようにたくさんの花を咲かせる仕立て方(鉢花風仕立て)と少 しちがいます。 なお文責はすべて私にあります。 2,鉢栽培・・・山草風仕立て(参考写真) 鉢:特に材質は選びませんが、素焼き鉢のように通気性が良すぎるものは、乾きが早 く適しません。鉢の大きさは、5〜6号鉢(15〜18p鉢)による栽培が管理しやすく見 栄えもします。それ以上の大鉢仕立ては、整枝・剪定・植え替えなどに多くの手間と広 い場所が必要となり、たくさんの品種を育てるのは大変です。3号鉢でも花を咲かせる ことは可能ですが夏冬の水の管理、剪定などより細かな注意が必要になります。 鉢の置き場所:午前中3〜4時間日が当たり、午後は日陰になるところが適します。 日当たりの悪いところでは花付き、花の色つきとも悪くなります。西日は、葦簀(よし ず)等で日除けをします、西日が強いと花付きが悪くなります。 月別の主な作業:開花しているときに購入することが多いので5月から順に1年間 の主な作業を書いてみました。 5月〜6月・・・開花、鑑賞。主な作業は、剪定、花がら摘み、植え替え、肥料、水やり。 挿し木。 a,剪定と花がら摘み:5月中〜下旬には、枝先に蕾が見えるので、蕾のない枝は、 元から切りとります。花を鑑賞するのにもむだな枝がなくすっきりします。切り取った枝 は挿し木に使うことができます。本格的な剪定は花の後に行います。 花後の剪定、花がら取り、植え替えを同時にやると能率的です。花がら摘みと同時 に、来年の花の位置があまり高くならないように、枝分かれのところまで切り戻しをし ます。花がら取りは、枝に少なくとも2節4枚の葉を残します。さらに短く切り戻すと開 花は、再来年になります。切り戻した枝から伸びてくる芽が、9月中に充実した枝にな ると先端の芽が10月に花芽になります。 ヤマアジサイはアジサイと異なり、開花枝を更新する必要がないので根元から伸ばす 枝を決めて、この枝に毎年花を咲かせます。それ以外の根本から伸び出す強い新枝 と、残す枝の根元近くから伸びだす強い新枝を、すべて付け根から切り取ります。この ような根元近くから出る強い枝をそのままにしておくと、そちらに勢力を取られふるい 枝が枯れ込んだり花が付かなくなったりします。 根元から伸ばす枝の数は、鉢の大きさや好みの仕立て方に合わせ、1本から5〜6本 位にします。残す枝の数が多いと花が付かなかったり、装飾花の少ない貧弱な花にな ります。来年咲かせる花の数は、3号鉢で3〜4個、4号鉢で5〜7個、5号鉢で6〜9 個位を目標にすると良いでしょう。大きなテマリ花の品種は少なめに、小さな額咲きの 品種は多めにします。 b,植え替え:剪定と同時に植え替えをします。花を見た株は、鉢の中に根が回って土 が硬くなっているので、花後すぐに鉢替えや植え替えを行います。 3号鉢など小鉢は2年に1度、5号鉢以上の大きな鉢なら3〜4年に1度位でだいじょう ぶです。一回り大きな鉢に植えるなら、鉢から抜き取ったものを、そのまま植え込むこ とができます。同じ大きさの鉢に植え替えるときは、抜いた株の鉢土の下部1/3〜 1/4、肩と周囲を一回り小さくなる位おとして植え込みます。 植え替え後、1週間位は、風の当たらない半日陰で管理してから日なたへ出します。 大きな鉢に鉢土を崩さずに植え替えるなら開花前でも可能です。鑑賞のため化粧鉢に 上げたい時など応用して下さい。また、開花させない株は、3〜5月の植え替えも可能 です。 ○植え替え用の土:青花品種は酸性の土、赤花・ピンク花の品種は、中性〜弱アル カリ性の土にします。 ・青花品種・・・赤玉土:無調整ピートモス*:バーミキュライト=4対4対2に配合 *調整済みピートモスは中性なので不向き。 ・赤花、ピンク花品種・・・赤玉土:腐葉土:バーミキュライト=4対4対2に配合 これは一つの例です。自分の栽培条件に合う土を工夫して下さい。基本は水はけが 良く、しかも保水力の良いことです。 ・他の配合例・・・鹿沼土5、富士砂3,腐葉土2。 鹿沼土を赤玉土に、富士砂を桐生砂に、腐葉土を無調整ピートモス(強い酸性)にか えるなど組み合わせはいろいろできます。
c,肥料:植え替えた株も、植え替えなかった株も、花が終わったら肥料(お礼肥)をあ たえます。 完熟発酵肥料の粒状のものがお薦めです。これなら植え替えてすぐでもだいじょうぶ です。遅効性の肥料なので3ヶ月位ゆくりと効き目が続きます。肥料を年1回にするな らこの時期にします。 年2回の肥料なら2月に寒肥として同じものを同量あたえます。肥料の量は、小指の 1関節位の粒なら、3号鉢で2〜3粒、4号鉢で4〜5粒、5号鉢で7〜9粒位を目安に します。 ・青花品種には、油かすだけの完熟発酵肥料、 ・赤花・ピンク花品種には、油かすと骨粉や鶏糞・魚粉の混合した完熟発酵 肥料をあたえます。 肥料の袋をよく確かめて下さい。間違えると青い花のはずがピンクになってしまいま す。赤花、ピンク花を咲かせる鉢には赤いラベルを立てておくと良いでしょう。 d,挿し木:切り取った不要な枝を使って挿し木で増やすことができます。(別項参照) e,アカダニの発生に注意:乾燥する場所では5月になるとアカダニが発生します。 鑑賞上からも、生育の上からも早期の手当が必要です。 6月〜9月・・・水やり、日除け、追肥、混み合う枝の整理。 a,水やり、日除け:6月から9月の間は、朝夕2回の水やり、日除けなど、午後の強 い陽射しと乾燥に注意して夏を越させる。この期間の生育が翌年の花の善し悪しを決 めます。 b,追肥:あたえるなら、速効性の液肥をあたえます。9月で終わりにします。 c,混み合う枝の整理:7〜8月には、葉の元からそれぞれ新芽が伸び出すので、混 み合うときは適当に間引くと良い。例えば、写真の2本の新芽の内どちらか1本を元か ら切り取る。 9月・・・・挿し木苗の鉢上げ。 6月に挿し木した苗は、9月に1本ずつ鉢上げするか、そのまま冬を越して3〜4月に 鉢上げをします。 10月・・・花芽がおおよそ完成します。勢いのある枝では、頂芽だけでなく側芽にも花 ができます。側芽に花芽を着ける性質は品種により強弱があります。 マイコ、クレナイ、七変化、七段花などは側枝着花性の強い品種です。 11月・・・実生をつくるなら、11月〜年末が種まきの適期です。(実生の方法参照) 12月〜2月・・・12月上〜中旬には、落葉して休眠します。強い風の当たらないとこ ろで冬越しさせます。乾いた寒風に当たると枝が枯れ込むことがあるので葦簀(よし ず)などで防ぎます。とくに、エゾアジサイ系は、冬の乾いた寒さに弱いので注意しま す。鉢が乾ききらないように冬の間も灌水を行います。 2月・・・寒肥を与えるなら、この時期に発酵肥料などの遅効性肥料を土の表面に置き 肥として与えます。葉が出る頃に肥料が効いてきます。 完熟発酵肥料の粒状のものがお薦めです。6月に花後の、お礼肥として同じものを同 量あたえます。肥料の量は、小指の1関節位の粒なら、3号鉢で2〜3粒、4号鉢で4 〜5粒、5号鉢で7〜9粒位を目安にします。 ・青花品種には、油かすだけの完熟発酵肥料、 ・赤花・ピンク花品種には、油かすと骨粉や鶏糞・魚粉の混合した完熟発酵 肥料をあたえます。 肥料の袋をよく確かめて下さい。間違えると青い花のはずがピンクになってしまいま す。赤花、ピンク花を咲かせる鉢には赤いラベルを立てておくと良いでしょう。 3月・・・芽がうごき始め、しだいに葉が展開します。開花しない株の植え替えを始めま す。開花株は、6月花の後に植え替えます。 4月・・・葉が展開すると新芽が勢いよく伸び始めます。中旬には、蕾が見えだす株が あります。蕾のない枝は、元から切り取り整理を始めます。切り取った枝を挿し木に使 うなら、枝が固くなる5月中旬まで待ちます。 ◎手軽な挿し木法・・・鎌倉アジサイ同好会の大友氏から手軽で、活着率が良く、 鉢上げが楽で、植え傷みが少ないという一石二鳥以上の方法を教えていただきまし た。 試してみてはいかがでしょう。殖えすぎて里親を捜すことになるかもしれません。 小さな鉢に挿すので、1鉢1品種にすれば品種の取り違えも防げます。 これは私なりにまとめたものです、文責は私にあります。 1.挿し穂を用意する・・・挿し穂は、胴挿しは2節、天挿しは3節として、一番下の節の 葉は2枚とも元から切り取る。残った葉が大きい時は1/2または1/3になるよう に葉を切る。水揚げを30分位行う。挿し木の時期は5月中旬〜6月と9月が良いで しょう。 ![]() 2.挿し床を用意する・・・3号(9cm)〜3.5号(11cm)位のビニールポットか鉢を用 意する。鉢孔を網でふさぎ、網の上に網より少し大きい新聞紙の小片を1枚のせる。 ゴロを入れ、用土を鉢の8分目位入れる。用土lとゴロは粒状の鹿沼土または赤玉 土の単用でよい。水を充分にやり落ち着かせる。 新聞紙の小片は水はけが良すぎるので用いている、万一水が通らないときは鉢孔 から針金を入れ新聞紙に孔をあける。 3.挿す・・・挿し穂を水から上げ、挿し床の鉢の壁にそわせて、垂直に挿す。5月の新 芽挿しの時は、割り箸などで挿し穴をあけて挿すと良い。 6〜8本の挿し穂を鉢の壁にそわせ、円形に挿す。用土を充分に押さえつけ、水を たっぷり与える。品種名を書いたラベルを立てる。 用土と挿し穂を安定させるため、鉢の中心部の用土の上に石を乗せておくのも良 い。 ![]() 4.挿し木後の管理・・・風の当たらない日陰の場所に置く。水を切らさないこと。10日 位たったら風の当たらない半日陰の場所に移す。20日位で根が出る。1ヶ月位した ら極薄い液肥をあたえると良いでしょう。 5.鉢上げ・・・5〜6月挿しは9月下旬から、9月挿しは3月から鉢上げをします。この 方法では円形に挿してあるので、土を崩すことなく鉢から抜き取ることができます。 抜き取ったものは、親指の爪を使って縦に分け目を入れながら、1本ずつ、小さな 苗は2本ずつ分けていきます。こうすると土を崩さずに分けることができ、植え傷み を少なくできます。 定植用の鉢に網、新聞紙片、ゴロ、用土少々を順に入れ、挿し木苗を入れ、鉢の8 分目まで用土を入れる。用土を充分に押さえつけ、水をたっぷり与える。安定させる ため用土の表面に桐生砂などを敷くのも良い。 6.鉢上げ後の管理・・・植え込んだ鉢は風の当たらない日陰の場所に置く。1週間位 したら風の当たらない半日陰の場所に移し、通常の管理をしていく。 3,地植栽培・・・地植は、西日の当たらない適湿の地があれば栽培は容易です。 日当たりは、午前中3〜4時間日が当たり午後は日陰になるところが適します。日当 たりの悪いところでは花付き、花の色つきとも悪くなります。西日が強いと花付きが悪 く、アカダニが発生しやすく見栄えがしません。 地植栽培の場合は鉢ほど細かな管理は必要としません。毎年同じ背丈で咲かせるこ と、枝が混みすぎないように注意することが主な管理です。 ・植え込み・・・植え穴を掘り、鉢から抜いた株をそのまま植え込みます。3月〜6 月、9月〜10月頃ならいつでも可能です。根元から出す枝(開花枝)の本数は5本位 にします。それ以上ある時にはすべて切り取ります。本数が少ない場合は、翌年根元 から伸び出す枝で補充します。この枝が樹形の基本となります。ヤマアジサイは、アジ サイと異なり開花枝が古くなっても交代させる必要がありません。毎年この枝に花を咲 かせていきます。 ・開花前の手入れ・・・5月中〜下旬には、枝先に蕾が見えるので、蕾のない枝は、 元から切りとります。花を鑑賞するのにもむだな枝がなくすっきりします。切り取った枝 は挿し木に使うことができます。本格的な剪定は花の後に行います。 ・花後の手入れ・・・花の後すぐ(6月中)に花の咲いた枝は、適当なところまで切り 戻します。この時、混みすぎている枝、弱く形の悪い枝なども元からから切り取ります。 次の年からは、6月中に前の年の高さまで切り戻せば毎年同じ位の高さで開花させる ことができます。切り戻す時期が遅いと花をつけません、注意。10月に蕾ができます が、充実した枝を育てるのにこの位の期間が必要です。6月の切り戻しが終わると翌 年の開花まで剪定してはいけません。蕾を切り落とすことになってしまいます。 ・混み合う枝の整理:7〜8月には、葉の元からそれぞれ新芽が伸び出すので、あ まり混み合うときは適当に間引くと良い。 ・肥料・・・肥料は、6月(花後)のお礼肥と2月の寒肥が基本です。鉢栽培を参考に して下さい。 4,鉢花風仕立て・・・こんもりと盛り上がるように咲かせる作り方です。経験がないので本からの抜き書きです。本は、ガーデンライフ1984年6月号「鉢作り(ベニヤマアジサ)・長瀬 治」「ベニガクのミニ作り・押田 廣」です。参考までに載せておきます。 a,鉢作り、品種:ベニヤマアジサイ・・・3年目に6号鉢、4年目に8〜9号鉢で開 1年目:9月下旬〜10月上旬・挿し木。今年伸びた充実した枝を使用。頂芽挿し3節。 b,ベニガクのミニ作り・・・2年目に4号鉢(12p)で開花させる。パイプハウスで |
![]() 左:ベニヤマアジサイ、右:ベニガク |
○山草風仕立ての株元参考写真:大船フラワーセンターアジサイ展で すでに不要な枝が切り除かれています。ヤマアジサイは針金かけができないので ・3〜4号鉢の例 ・5号鉢の例 |
○小品盆栽
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